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仕組み化のバイブル「はじめの一歩を踏み出そう」の要約と書評 その1

この記事では、何回かに分けて、仕組み化のバイブル「はじめの一歩を踏み出そう」の内容について補足説明を加えながらご紹介してきたいと思います。 既に何度も読まれている方、まだ読まれていない方、双方の方にとってお役に立てる内容にしていきたいと思っていますので、ぜひお付き合い願えればと思います。

「はじめの一歩を踏み出そう」とは?

 

マイケルE.ガーバー著の「はじめの一歩を踏み出そう(原題:E-Myth Revisited)」は、「起業家の視点(職人、マネージャー、起業家という3つの人格)」、「ビジネスのシステム化」、「フランチャイズプロトタイプ」、「ビジネス開発プロセス」などの新しい概念を提唱し、現在につながる、スモールビジネス経営の新しいスタンダードを創りました。

同書は、16カ国語に翻訳され、500万部以上のベストセラーとなっています。また、Inc 500社(急成長企業500社を選出したランキング)のCEOが推薦する書籍として、「7つの習慣」や「ビジョナリーカンパニー」などの名著を抑え、ナンバーワンを獲得しています。

出版後、10年以上経った現在においても、「最も影響力のあるビジネス書25選(米タイム誌)」、「もっとも役に立ったビジネス書ベスト5(米ウォールストリートジャーナル)」に選ばれるなど、スモールビジネス経営のバイブルとしてロングセラーとなっています。

 

著者のマイケルE.ガーバー氏とは?

マイケルE.ガーバー氏はセールスの仕事をしていくうち、企業向けのコンサルティングを依頼されるようになりました。そして本格的に起業家や経営者に対するコンサルティングを提供するため、1977年にマイケル・トーマス・コーポレーションを設立。世界初のビジネスコーチング会社になりました。

マイケルE.ガーバー氏はクライアントに教えている「起業家の視点」を自ら実践し、創業後、わずか2年でコーチングの現場から離れ、起業家としてのビジネス構築、コーチの育成、世界展開の活動へと軸足を移しました。その後、同社は過去約40年間にわたって、7万社のスモールビジネスに対するコーチングを行い、後に「E-Myth革命」とも言われるほど、世界中のスモールビジネスに変革をもたらしてきました。

ガーバー氏の独特の視点の基となっているのは、子供の頃に習っていたサクソホンの先生からの教え、百科事典のトップセールスマンとしての経験、そしてかつて没頭していた思想家や哲学者からの学びだったとされています。

サクソホンの先生からは、物事を極めていくために必要な心構えと順序を学びました。それがクライアントにコーチングをする際のプロセスに反映されています。セールスマン時代には、営業をシステマチックなものとして捉えて成功し、それが“ビジネスのシステム化“の発想へと進化しました。

また、グルジエフなどの思想家、哲学者からは、人間や人生に対する深い洞察を得て、それが経営者の人生に関する考え方、社員と経営者、そしてビジネスとの関わり合いに対する考え方に影響を与えています。

 

「はじめの一歩を踏み出そう」の原題

「はじめの一歩を踏み出そう」は、原題が「E-Myth Revisited」となっており、直訳すると、「E-Mythの再訪」と言うことになります。
E-Mythというのは、Entrepreneur Myth(起業家の神話)の略であり、”世の中のほとんどの起業家の実態は、メディアに出てくるような華々しい起業家とはかけ離れている”ということを意味しています。

世の中のほとんどの起業家は、本当の意味での起業家とは言えず、職人型の経営者によって運営されるビジネス(というよりも仕事)であり、小さいままで留まっているというわけです。

E-Mythというのは、このような思想でもあり、ガーバーが創業した会社の社名でもあり、そして、ガーバーが最初に書いた「The E-Myth(邦題:成功する「自分会社」のつくり方)」(絶版)のタイトルでもあります。

ちなみに米国ではE-Mythという言葉がかなり有名であり、ガーバーの思想に沿って運営され、成功しているビジネスは、E-Mythed Business(E-Myth化されたビジネス)とも呼ばれています。

その「The E-Myth」を書き直して完成したのが、「E-Myth Revisited(はじめの一歩を踏み出そう)」というわけです。基本的な思想は、前作と変更ありませんが、ストーリー仕立てになっていて読みやすいなどの理由から、前作をはるかに超えるベストセラー、ロングセラーになっています。

 

読者の方からの疑問・質問

私たちは普段、本書を多くの経営者の方にお勧めしていますが、読者の方からの良くいただく質問があります。まずはその質問にお答えしておきたいと思います。

その質問とは、

良い内容だとは思いますが、発想はアメリカ的ですよね。日本では会社を売ることを前提にしている経営者なんてほとんどいませんし。。。

というものです。

まず、あの本には、会社を売れるようにしなくてはいけない、とは書いてありますが、会社を売れ、とは書いていません。

事実、米国のCRMソフトウェア会社Infusionsoft社の創業メンバーは、ガーバーの講座に参加した際、会社を成長させて20億円くらいで売却する予定でした。

しかし、講座中に、そんな目標は意味がない、ということに気が付き、ワールドクラスの会社を創ることに目標を設定し直して急速に成長し、現在では年商100億円のビジネスになっています。

要するに、会社を売れ、ということではなく、あなたの会社をぜひ買わせてほしい、というような価値あるビジネスを創ることが大切なのです。

また、日本では会社を売ることを前提にしている経営者なんてほとんどいない、と言うことに関しても最近では情勢が変わってきています。

いま多くの中小企業で後継者問題や事業承継の問題が生じていますが、それもすべて、日本の経営者が、会社を売れるように(経営者が変わっても経営できるように)作ってこなかったことが要因になっています。それに伴って、いま、M&Aの市場は日本でも真っ盛りです。

東証一部上場企業の中で最も平均年収が高い会社は、M&Aの仲介会社です。平均年収が2000万円を超えています。もちろん、テレビ局や大手広告代理店を凌いでいます。それだけ会社の売買が日本でも一般的になってきたということだと思います。

また、仕組み化、マニュアル化についても同じようなことが言えます。なぜアメリカでシステム化(仕組み化)をテーマにした、ガーバーの書籍が大ヒットしたのか?

仕組み化やマニュアル化をすれば効率化が出来、業績に直結する、ということもありますが、アメリカのような多民族国家では、多種多様な価値観や思想を持った人が社員になり、顧客になるために、会社を運営するには統一されたルール作りや手順、基準が必要だったのです。

一方の日本は、島国と言うこともあって、似たような価値観、思想を持った人たちしか社員や顧客になりませんでした。だからマニュアル化しなくても、阿吽の呼吸で仕事が出来たのです。

しかし、これも最近は状況が変わってきています。外国からの社員を受け入れている会社も増えてますし、海外に出ていく会社も増えています。世代間の考え方のギャップも広がっているようです。

そんな状況に対処するには、仕組み化、マニュアル化していくしかありません。要するに、「はじめの一歩を踏み出そう」の内容はアメリカ的というよりも、アメリカで日本よりも先に起こっていた状況に対応するものなのです。

というわけで、2003年に発刊(前作は1985年)された「はじめの一歩を踏み出そう」は、いま日本の会社が直面する課題に対応する内容として、いまだ多くの経営者の方からの支持を得ています。

 

「まえがき」と「はじめに」の解説

本書は一流企業をつくるという、終わりのない旅のガイドブックでもある。この旅では、ゴール地点もすぐにスタート地点へと変わってしまう。

本書はスモールビジネス経営者を対象にしていますが、会社を仕組み化して、時間的にも経済的にもそこそこゆとりが出来れば良い、というレベルを目指すためのものではありません。

ここに書いてあるとおり、一流企業(ワールドクラス)を目指すためのものです。実際のところ、経営者に高みを目指すというビジョンがなければ、本当の意味での仕組み化は難しいのです。

あらゆる仕組みには、”〇〇を達成するための仕組み”というように目的が必要であり、その最終的な目的がビジョンです。つまり、仕組みはすべて、最終的にビジョンの達成へと繋がっている必要があります。そして、その仕組みを作るためには、社員の方にも協力をしてもらう必要があり、彼らに仕組み化の必要性を伝えるためにも、壮大なビジョンが必要なのです。

とはいえ、創業していきなり壮大なビジョンを持てる起業家も稀です。そこで、”この旅では、ゴール地点もすぐにスタート地点へと変わってしまう。”という言葉が出てきます。これは文字通り、会社を成長させたものの、あっという間に倒産の危機になってしまう、という意味合いもあると思います。

一方で、かつてはゴール地点だと思っていた場所が、実はスタート地点に過ぎなかったことに気が付く、という意味もあります。実際、マイケルE.ガーバーは、創業して過去30年近く経営してきた会社を引退した時、そこがまだゴールではなかったことに気が付き、68歳の時に新しいビジネスをスタートさせています。創業した会社が、一般的に見れば大成功したにもかかわらず、です。

ガーバーはかつて次のように言っていました。

”多くのビジネスオーナーは、山頂にたどり着いたとき、はじめてそこが本当の山頂ではなかったことに気が付く”

後から振り返ったときに小さく思えたとしても、まずはビジョンが必要であり、自身や会社の成長によって、ビジョンが大きくなっていくことは良くあることなのです。

 

彼らが成功した理由は、何かを知っていたからではない。現状に満足することなく、もっと知ろうと続けたからである。(中略)経営者がマネジメントや会計、マーケティング、現場の実務を知らないからと言って、経営に失敗することはない。

職人型の経営者は、自分が知っていること、やれば出来ることを軸にしてビジネスを創ります。だからこそ、もっと”仕事のやり方”を知ろうとし、それがビジネスの成長につながると信じています。しかし、起業家が学ぶ必要があるのは、”ビジネスのつくり方”です。”仕事のやり方”と”ビジネスのつくり方”の間には、だいぶ差があります。

「はじめの一歩を踏み出そう」は、”仕事のやり方”ではなく、”ビジネスのつくり方”が書いてある本です。

 

高みを目指す経営者とは、きわめて現実的な性格の持ち主であり、日常生活にありふれた細やかなことにまでこだわりを持っていた。

あとから書籍の中にも出てきますが、IBMの初代社長トム・ワトソン氏は、IBMが成功した理由として、最初から一流企業のように厳しい基準を持って経営したことである、という言葉を残しています。

有名な話ですが、IBMは、まだスモールビジネスの頃から、IBM:International Business Machine(国際的なコンピューターを売る会社)と名乗っていました。そのような自己認識が厳しい基準に繋がり、現実にIBMは一流企業になりました。

 

事業は経営者の人柄を映す鏡である。

マイケルE.ガーバーは、”ビジネスを変えたいと思っているビジネスオーナーは多いが、自分が変わろうと思っている人はそれほど多くない。”と言っています。

しかし、事業は経営者の人柄を映す鏡である、との言葉通り、ビジネスを変えようと思ったら自分の働き方や考えを変えなくてはなりません。基本的に、”社内が今のような状態になっているのは、全て自分がそのような生き方、働き方をしているから”という認識を持つ必要があります。

ザッポスなど、いわゆる”今風”の企業文化を持っている会社は、経営者が自分の価値観を明確にし、それを社内のあらゆる側面で表現することで成功している会社を創っています。もし、いまの状況が好ましくないのであれば、そのような状況を生み出しているのは、自分のどのような価値観や信念が基になっているのか?を見ていくことが大切になります。

「起業家の神話」の解説

起業家熱にうなされる人たちは、必ずと言っていいほど誤った「仮定」を置いてしまうようだ。(中略)致命的な仮定とは、「事業の中心となる専門的な能力があれば、事業を経営する能力は十分に備わっている」ということである。

「起業家の神話」は、既にほとんどの方はご存知だと思いますが、世間一般的な起業家像は、あまりにも美化され過ぎており、大半のスモールビジネス経営者の実情とは程遠い、ということです。
本書のタイトル(E-Myth:Entrepreneur Myth」にもなっている通り、中心的なテーマになります。

そして、大半のスモールビジネスがうまく行かない理由は、起業するほとんどの人が、「致命的な仮定」を信じてしまっていることだと書いてあります。職人的な仕事を行う能力と事業を経営する能力が別物なのです。

場合によっては、その業界の門外漢の方がビジネスを成功させるのに適しているケースもあったりします。業界の門外漢であり、職人的な能力を持っていないために、「起業家的な視点」を持たざるを得ないのです。

たとえば、ガーバーの教えを受けた、連続起業家(シリアルアントレプレナー)のロジャーフォード氏は、完全な門外漢であったペットビジネスに参入し、わずか2年で売却できるビジネスを創りました。いまは同じく門外漢である心臓の医療器具のメーカーの経営に携わっています。

ただし、これは別にスキルを活かして独立してはいけない、ということではありません。問題は次に登場する、「3つの人格」をコントロール出来るかどうかになります。

 

「3つの人格」の解説

私たちの誰もが、「起業家」と「マネージャー」と「職人」という3つの人格を併せ持っている。そして3つのバランスが取れたときに、驚くような能力を発揮するのである。(中略)しかし残念なことに、私の経験から言えば、起業した人の中で3つの人格をバランス良く備えている人はほとんどいない。

これも我々のメルマガやブログをご覧の方は、既にご存知のお話かと思います。たまに、「私は起業家的な人格だから、マネージャー的な人を雇いたい」とおっしゃる方がいますが、これはそういう話ではなく、経営者自身がすべての人格をバランスよくコントロールする必要があります。会社が小さいうちは、どうしても自分で様々なことをこなす必要があるからです。

3つの人格のバランスは、一般的なスモールビジネス経営者が、

起業家10%、マネージャー20%、職人70%

であるのに対し、

起業家33%、マネージャー33%、職人33%

という割合が理想的なバランスとなります。

 

どんな事業を始めれば良いのだろうか?これが本当に起業家的な質問なんだ。

ガーバーは起業家的な人格を表に出すために、まずは「なぜこの事業をやっているのか?」を自問自答すべきだと書いています。
職人型ビジネスの大きな特徴は、起業する際の「事業内容の選択が受身的である」ということです。

つまり、それまで培ってきた専門能力をベースに起業するために、どんな業界や業態に参入するか、どんな利益モデルにするか、どんな顧客を相手にするか、どんな成長の機会があるのか、といったことを考慮せずに起業してしまうということです。

これは本来の起業家の決断とは正反対です。本来の起業家は、まず市場を見て、どこに機会があるのかを見定めて事業を選択します。
そもそも事業自体に革新性がなければ仕組み化しても大して成長できません。

マクドナルドがあれほど世界中に広がったのは、”第一店舗目が既にほかのハンバーガー屋とは圧倒的に一線を画していたから”です。だからこそ、それを仕組み化することで世界中に広がったのです。

昔、経営者の方と一緒にガーバーのところに行った際、その方がこのようなことをガーバーにおっしゃいました。

「うちの業界は全体的に縮小傾向にありますが、私はやり方次第でまだまだ生き残れると思っています」

その時のガーバーのコメントは、

「なぜわざわざ縮小している業界で生き残る必要があるのですか?あなたの貴重な人生の時間を、そのような事業に投資する理由は何ですか?」

というものでした。

その経営者は単に、いままでその業界でやってきたから、という理由だけで、これからもその業界で生き残っていこうと考えていたのです。もしかすると、その業界の関連市場で、より成長の機会が見込める分野があるかも知れないにも関わらず。

日本人は特に地道にやることに重きを置く傾向があります。それは大事だと思いますが、地道な努力が実を結ぶのは、正しい山を登っている時だけです。まずどの山に登るか?という質問がありきで、その次に、どのようにして登るか?という質問が続きます。

起業もこれと同じようなもので、まずどの事業をやるのか?そして次に、どのようにやるのか(仕組み化するのか)?という順序になります。

 

「幼年期ー職人の時代」の解説

事業の幼年期を見分けるのは簡単である。なぜなら、オーナー=事業なのだから。

幼年期とは、ビジネスがまだ小さい状態のことを指していますが、小さいと一言に言っても、いくつかのパターンがあります。

一つ目は、スタートアップと呼ばれる、出資を受けて急成長を前提としている企業の初期段階。

二つ目は、普通のスモールビジネスであり、これから成長しようとしている企業の初期段階。

三つ目は、いわゆる”パパママ”ストアと呼ばれる、成長することを前提としていない会社。株式会社ではなく、個人事業主である場合も多いです。

四つ目は、”ライフスタイルビジネス”、”ノマド”などと呼ばれる、個人ブランドをベースにした仕事で独立するケース。

ガーバーの考えでは、世の中にインパクトがあり、成長するビジネスを創ることを前提にしているので、一つ目か二つ目のビジネスがここで言う幼年期に当てはまります。逆に今が三つ目、四つ目の状態であり、かつ、いまのままで良い、という人には本書はあまり向いていないかもしれません。

 

お店の経営が、きみの才能や人柄、そしてやる気に依存しているのなら、きみがいなくなれば、お客さんもどこかほかの店に行ってしまう。(中略)きみが現場で働かなければならないなら、それは事業を経営しているとは言わないんだ。それは仕事を抱え込んでしまっているだけじゃないのかな?(中略)きみが事業を立ち上げた目的が、これまでと同じ仕事をしながら、もっとお金を稼いで自由時間を増やしたい、ということなら、それは単にわがままで欲張りなだけじゃないのかな?

これは、経営者の才能や人柄は事業運営と関係ない、ということではありません。経営者の才能は価値提供の仕組みを作ることによって、会社にとっての競争優位性になりますし、経営者の人柄をベースにしたブランド作り、そして、それを顧客に届ける仕組みがあることによって、顧客を引寄せ続ける会社が出来ます。

 

「青年期ー人手が足りない!」の解説

事業の青年期は、人手が必要だと感じたときから始まる。

幼年期を経て、多少安定した売り上げが見込めるようになると青年期に移行し始めます。青年期では、いよいよ人を雇うときが来た、ということになり、多くの場合には、あまり採用基準なども考えず、自分がやっている雑務をやってくれる人を雇うことになります。

青年期では、マネジメントの仕組みを作らなければ、人が増えれば増えるほど問題が生じます。そして、最も多い問題が、本書にも出てくる、「管理の仕事の放棄」です。

 

ハリー(最初の社員)に権限を委譲したといえば聞こえが良いが、「管理」の仕事を放棄した弊害が、あちこちで噴出してきた。

これはなにも、スモールビジネスにおける「最初の社員」だけに当てはまることではなく、日本のあらゆる組織で起こっている問題だと思います。大企業の管理職であっても、管理とは何か?を正しく理解して仕事をしている人は少ないでしょう。そのために、あちこちで放任や責任の放棄が起こっています。

 

事業が成長するにしたがって、経営者の管理能力を超える瞬間は必ずやってくる。(中略)手ごろなサイズを超えて事業が拡大するにしたがって、会社内部の混乱は加速し始める。

青年期で混乱に陥った会社が取る選択肢として、本書では3つを挙げています。

1.事業を縮小して幼年期に戻る。
⇒結局のところ、これも時間が経てば2番目のとおり倒産に向かいます。

2.倒産に向かう。
⇒勢いでムリな成長を求め、さらに混乱して倒産する。早く失敗して、早くやり直せるだけに、最も痛みがないとも書かれています。

3.青年期でのサバイバルレース。
⇒いわゆる中小企業として生き残り続ける。様々な問題と闘い続けることになるため、経営者としては最も試練が多くなります。

もしかしたらあなたも、経営者としていろいろな問題に直面されているかも知れません。問題というのは、理想と現状のギャップです。つまり、理想が高ければ問題が多くなります。

実際のところ、社内で様々な問題が発生していると感じるのは、経営者の志が高いからなのです。会社を成長させて世の中にインパクトを与えようという経営者の志が問題の発生源なのです。

志がないのであれば、ここに書いてある通り、幼年期に戻るか倒産させて他の仕事を探したほうがはるかに合理的な選択なのです。青年期から抜け出て、志を実現させようと思ったら、次の成熟期に出てくるように「起業家の視点」を身につける必要があります。

 

結局のところ、サラはエリザベスのことを良く知らないままに信じていたのだ。サラはただ、エリザベスを信じたいと思っていたのだろう。なぜなら、彼女を信じてしまえば、面倒な仕事をせずに済んだからである。

本書では、主人公サラが雇った最初の社員、エリザベスが経理の仕事をこなし、後から入ってきたスタッフの面倒も見ている設定になっています。つまり、エリザベスが実質的なナンバー2になっています。

エリザベスがいたことで、サラの仕事はだいぶ楽になりました。このような、”ナンバー2が会社を回してくれている”、状態を理想的だと考えている方も多いかも知れません。事実、ナンバー2を養成する研修なども流行っています。

しかし、本書にも出てくる通り、それではナンバー2に依存する職人型ビジネスに過ぎないのです。社長に依存するか、ナンバー2に依存するか、ただそれだけの違いです。サラの場合には、エリザベスが辞めると同時に、ほかのスタッフも辞めてしまいました。

青年期では、こういった人に関するトラブルが多発します。それに場当たり的に対処していては、先ほどのサバイバルレースから抜け出せません。サバイバルレースから抜け出して、成熟期へと成長していくには、人の問題に仕組みで対処していくという視点が必要になってきます。

 

「成熟期」の解説

成熟企業の創業者は、事業に対して普通とは全く異なる視点を持っていたのである。

これはいつもお伝えしている職人の視点と起業家の視点の違いのお話になります。本書にはあとから職人の視点と起業家の視点の違いについて書かれていますが、中でも私が決定的に異なる点だと思うのは、起業の出発点です。

職人型ビジネスにおいては、自分の持てる能力やスキルが起業の出発点です。その能力やスキルを求める人がどこかにいるし、将来も必要とされるだろう、という希望的観測で起業します。

一方の起業家型ビジネスにおいては、顧客や世の中が抱える課題が出発点です。その課題を解決するためにどんなビジネスが必要かという考察の元に起業します。前者は自分を必要としてくれる人を探すところから始まりますが、後者においては既に自社のビジネスを必要とする顧客が存在するので、成長するのも早くなります。

 

重要なのは商品やサービス自体ではなく、起業家の視点を持って経営することであり、優れたビジネスモデルをつくることなのである。

「はじめの一歩を踏み出そう」を読むと、どうしても「仕組み化」や「自分がいなくてもうまく行く仕組み」に目が行きがちになりますが、その話の前に、優れたビジネスモデルをつくることが重要である、と書いてあります。

実はこれは原文では、「ビジネスモデルをつくることが重要である」とは書いておらず、そのまま訳すと、「ビジネスがどのように行われるか?が重要である」と書いてあります。

(ちなみに「はじめの一歩・・」は、私たちがガーバー氏と会うはるか前に出版されているので、本書の翻訳や出版には私たちは一切関与していないのです)

最近は日本でもビジネスモデルという言葉が普及しているので、そう書いてあるのだと思いますが、原文を見ると、一般的に言われるビジネスモデルとは少し異なることが分かると思います。

ビジネスモデルと聞くと、利益を上げる画期的な構造を想像してしまいます。しかし、たとえば、ガーバーの話によく出てくるマクドナルドやスターバックスは昔からある飲食業なのでビジネスモデル的には単純です。

ただ、他の飲食業とは、”やり方”が異なります。構造自体は一緒でも”やり方”が異なるのです。その他とは異なるやり方を探すことこそ重要である、と書いてあるわけです。

 

事業には基本となる理念も必要だ。その理念にしたがえば、今日どんな仕事をやるべきなのかがはっきりするだろう。そのため事業は、誰にでもわかるような明文化されたルールにしたがって運営されなければならない。

ここで出てくる”理念”という言葉は、いかにも日本的で、”うちの会社は〇〇で社会に貢献します”というような曖昧なものを想像してしまいます。

しかし、これも、原文を見てみると、”(日々の仕事で活かされる)基準、型や方式、在り方”となっています。

なので、理念よりも基準と置き換えたほうが分かりやすいかも知れません。その会社独自の基準に沿って日々の仕事を行うこと。まさに仕組み化そのものと言えます。

 

職人タイプの経営者は長期的な展望をもたないまま、目の前の仕事ばかりに気を取られがちである。このタイプの会社では、ある仕事が終わったからといって、次の段階に進めるわけではない。

この一文はさらっと書いていますが、非常に重要だと思います。起業家型のビジネスにおいては、まず長期的なビジョンがあり、日々の仕事はそのビジョンに近づくために行われます。しかし、職人型のビジネスでは、ビジョンがないために、日々の仕事を完了させることこそが目標となってしまいます。

そして、次にやってくる仕事も、前回と同じようなタイプの仕事なので、収入は得られるかもしれませんが、ビジネスの根本的な成長につながるようなものではありません。言ってみれば、あらゆる仕事がルーチン化してしまっているのが職人型ビジネスの典型的な症状と言えます。

そうならないためにも、まず、経営者の人生の目的や価値観から生まれているビジョンが必要となります。

 

起業家は、顧客が現在や将来に欲しがるものを探し続けなければならない。

先ほど述べた通り、起業家型のビジネスは顧客の課題を解決することが出発点です。そして、顧客の課題は時代が変化するとともに変化するので、起業家はいつでもそこにチャンスを見つけることが出来ます。

ガーバーは、”真の起業家は、顧客が自分で気が付くよりもはるかに早く、顧客の課題とその解決策を見つける”と言っています。これをやったのがスティーブジョブズ(Mac)や、日本で言えば井深大(ウォークマン)などの偉大な起業家です。

彼らは顧客が欲しいとも言っていないものを顧客の目の前に提示し、”そうそうこれが欲しかったんだ”と言わせたのです。起業家の仕事は、顧客が将来欲しがるものを探すこと、ともいえるかもしれません。

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