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仕組み化のバイブル「はじめの一歩を踏み出そう」の要約と書評 その3

前回前々回から引き続いて、 仕組み化のバイブル「はじめの一歩を踏み出そう(http://amzn.to/1b3OHPG)」を読み解いていきます。

 

「ステップ1.事業の究極の目標」の解説

私は事業が人生のすべてだとは思っていないが、人生の中でかなり重要な役割を担っていると考えている。だからこそ、事業の目標を考えるうえで、「あなた」にとっての人生の目標を無視することはできないのである。

本書の中でも紹介されている通り、ビジネスとは、ビジネスオーナーも含め、それに関わる人たちの人生を豊かにするための乗り物です。その認識があれば、事業の前にビジネスオーナーの人生に焦点を当てるということは腑に落ちやすいと思います。

特に今の時代では、経営者の情熱や人生の目的、価値観を発見し、それらが反映されたビジネスを作ることがとても大切になっているといえます。経営者の人生が反映された事業は、顧客から見ても、社員から見ても求心力を発揮します。

それはカリスマ的な経営者が求心力を発揮するのとは違います。カリスマ性は属人的なので複製ができませんし、組織が大きくなるほど全員には伝わりにくくなります。そこで事業のあらゆる側面で、経営者の情熱や人生の目的、価値観を反映させた「仕組み」を作ることが大切になってきます。

仕組みやマニュアルはあくまで「器」ですが、それに経営者の情熱や人生の目的、価値観が反映されることで、「器」に人間的な魂が入ります。

 

昔、人生を無為に過ごす若者がいた。彼の人生に目標などなかった。・・・

この章では、ここからマイケルE.ガーバーがいまのビジネスを始めるに至ったストーリーが語られています。本書の原本は30年くらい前に出版されたものですが、ガーバーは今でも講演するときに同じストーリーを語っています。それだけストーリーを伝えることが経営者にとって重要だということを示唆しています。

ビジネスや宗教も含め、あらゆる偉大な組織がストーリーから始まっているのは偶然ではありません。先ほど言った経営者(創設者)の情熱、人生の目的、価値観を伝えるためにはストーリーを使うのが最も効果的なのです。

ガーバーは、自分の創業ストーリーを伝えることで、

・会社にはシステム(仕組み)が必要なこと、
・どんな業種であっても経営者の悩みは一緒であること、
・若くなくても起業して成功できること(ガーバーは42歳で起業)、
・誰にでも起業家精神が備わっていること(ガーバーは百科事典の普通のセールスマンだった)、

など、たくさんの示唆を同時に伝えています。そして、彼の作った経営者向けプログラムには、これらの示唆が反映されています。

このように、自分のストーリーというのは、会社のDNAを作るうえでとても大切な役割を果たしますし、それを作る過程で、この章にあるような「人生の目標」を発見することもできます。

ちなみにストーリーを作る方法としては、以下に示すヒーローズ・ジャーニーという流れが一般的です。これは映画「スターウォーズ」のシナリオ作りに使われたことで有名になった手法です。

ぜひご参考にされて、自社のストーリー作りをしてみてください。

 

ヒーローズ・ジャーニーのフォーマット:

 

1. 日常の世界
主人公が日常の世界に登場する場面の描写。主人公の人生に何かが欠けているが、その欠けているものが何なのか、気が付くことができない。創業ストーリーでは多くの場合、このシーンで、あなたがビジネスを始める前の話を描写する。

 

2. 天命
主人公を旅へと駆り立てる何かに出会う。予期せぬ何かとの出会いが、旅へと導いていく。

 

3. 賭け/決断
天命によって旅に導かれるが、主人公は、果たしてその道に進むべきなのかどうかを葛藤する。自分は日常の世界に留まるべきなのか、それとも新しい世界へと足を踏み入れるべきなのか。

 

4. 探索
「新しい世界」に足を踏み入れ、主人公が新しいことを体験し始める。

 

5. 困難
冒険の中で、困難に突き当たる。新しいビジネスを始めたものの、徐々に停滞、上手くいかずに行き詰る。ライバルや敵との対立によって、主人公が叩きのめられそうになることで、ストーリーに引き込む力が生まれる。

 

6. 変革
主人公が困難に遭遇し、それを乗り越える過程で、英雄として成長していく。読み手は、その姿を自分と重ね合わせることによって、感動したり、勇気をもらったりする。

 

7. ひらめき
日常の世界で常識として考え、行動してきたことが、新しい世界、新しい世界では、通用しないことに気が付き、ひらめきの瞬間がやってくる。いままで自分が経験してきたことが全て統合され、ひとつの結論に至る。創業ストーリーでは、多くの場合、現在行っていることのきっかけとなるひらめきを指す。

 

8. 挑戦
これまでのシーンを統合させ、より大きなものに挑戦していくことを描写。挑戦がまだ道半ばでも良い。

 

「ステップ2 戦略的目標」の解説

戦略的目標とは、その名の通り、会社が目指す姿、目標のことです。いま、私たちはそれをビジョンという言葉で表現しています。本書の原書には、各章毎に引用文が紹介されています。この章の引用文は、次の通りです。

「あなた方の矢が届かないのは」と、師は注意された。「精神的に十分に遠くへ届いていないからです」
– 「弓と禅」 オイゲン・ヘリゲル著

「弓と禅」 は、ドイツ人哲学者ヘリゲル氏が、日本滞在時に弓道の達人、阿波研造氏に弟子入りした時の話を描いた書籍です。”心を無にして弓を射る”ことの意味を考え続けたヘリゲル氏のストーリーによって、武道と禅の真髄を解き明かした本として知られています。

先の引用は、その中の一文です。その一文の次には、下記のような文が続きます。

”あなた方は、的が無限に遠くにあるように振舞わなくてはなりません。”

これが会社の経営にも通じるものとしてガーバーは書籍の中に引用したのです。すべての仕組み化は、この章で紹介されている戦略的目標、ビジョン達成のために行われます。つまり、戦略的目標を定めることこそが仕組み化の第一歩なのです。

 

私は起業することの最終的な目的は「会社を売却する」ことだと考えている。会社を立ち上げ、成功させ、売却することで十分な報酬を得るのである。

いままでの日本においては、自分が創業した会社を売却することは一般的とは言えませんでした。しかし、いまでは状況が異なります。多くの会社が経営者の高齢化を迎え、後継者不足に悩まされているのは、端的にいえば、創業者が会社を売れるように作ってこなかったことが要因です。

実質的に会社を売却する、または株式公開して一般の投資家に会社を売る、いずれにしても、創業した会社を最終的にどうしていくのか?を決めなくていけません。それが戦略的目標を決めるということになります。

 

取り組む価値があるかどうかを見極めるためにも、次の質問に答えてみてほしい。「あなたが考えている事業は、多くの消費者が感じている不満を解決するものだろうか?」

いまの事業で対象としている顧客がそれほど多くなければ、大きな戦略的目標は達成することができません。ガーバーは、「大半の成功しているビジネスは、ごく普通のビジネスである」といっています。

普通のビジネスとは流行が廃れない商品やサービス、いわゆるコモディティ商品を売っているビジネスを指しています。食べ物、健康、衣類、コミュニケーション、交通などです。これまでになかったような商品やサービスは、ニーズがあるかどうかわからず、将来的にどれくらいの市場規模になるかもわかりません。

それよりも、もともと顧客となる人たちが存在しており、ニーズも明確な普通のビジネスを選んだほうが良いというわけです。成功するためには、普通のビジネスを、他とは異なるやり方でやることである、とガーバーは言っています。

本章では、主人公のサラが7年後のお店「オールアバウト・パイ」の将来図を語っています。このように、将来のある時点での明確な自社の姿こそが戦略的目標です。ぜひサラを習って、自社の戦略的目標を立ててみてください。

 

「ステップ3 組織戦略」の解説

 

指揮・命令系統や仕事の内容を明確にした組織図がなければ、会社は迷路に入り込んでしまうのである。

「組織を作る」とは簡単にいえば、大きな仕事を分業することです。社長だけではやっていけない規模の仕事量になったときに、組織が必要になります。

最近では「一人起業」なども流行ってますが、大きなビジネスをしよう、世の中にインパクトのあることをしよう、と思ったら一人では絶対に無理です。正社員にしろ、パートにしろ、外部パートナーにしろ、組織が必要になります。そして、組織ができたら、組織図が必要になります。

「指揮・命令系統や仕事の内容を明確にした組織図」とありますが、「指揮・命令系統」というトップダウン型の言葉に違和感があるならば、これを「情報の流れ」と置き換えてもいいかもしれません。

いずれにしろ、組織図がないとトラブルの原因になります。一番多いトラブルは、責任の擦り付け合いでしょう。誰がどの仕事をどれだけやるか?が曖昧なために、「なんで自分ばっかり・・・」「あいつはいつも仕事してない・・・」というような不公平感が噴出します。

そのほつれが個人間、部門間に広がり、人間関係のトラブルが増え、組織の生産性が著しく落ちます。人間関係のトラブルが増えると、多くの会社では、コミュニケーションや人間力向上の研修などを取り入れ始めます。しかし、根本的な解決にはつながりません。

「構造が変わらない限り、同じ問題が繰り返される」

というのが原理原則だからです。

中にいる人を変えても、組織構造を変えない限り、同じ問題が起こります。だから、まず組織図が必要なのです。

 

二人はお互いが書いたことについて話し合い、人生の夢を共有する。この過程でおそらく、兄弟とはいいながらもお互いの知らない一面を発見するはずである。

本章では、ジャックとマーレイという兄弟が会社を一緒に創業するというストーリーで、組織戦略の重要性が語られています。兄弟に限らず創業メンバーはお互いのビジョンや夢、価値観を共有する必要があります。

そのためにも、前々回ご紹介した人生の目的を明らかにすることが有効です。以前、私が創業メンバーだったベンチャー企業では、その共有をしていなかったことが失敗の一因となりました。最初のうちは、みんな新しいビジネスに没頭しています。

しかし、そのうち軌道に乗ってきて組織も大きくなり始めると、創業メンバーが各自、その組織を使って自分のやりたいことをやり始めてしまったのです。明確な組織図もなかったために、各自の仕事内容も定義されていなかったのです。そして資金の使い道がバラバラになり、本業のサービスにも力を入れなくなり、すべて崩壊してしまいました。

 

株主としてジャックとマーレイはそれぞれの役職を任命するという最も大切な仕事を始める。

組織図を作る際にポイントなのは、代表取締役もいずれ誰かに委任するつもりで作ることです。代表取締役というのは、取締役会で選出された、いちポジションに過ぎません。

そして、取締役会というのは、会社のオーナーである株主に代わって会社の運営をしています。大半の中小・スモールビジネスでは、創業者である代表取締役がほとんどの株を持っているために、その辺の切り分けが曖昧になってます。

「社長=絶対的なボス」となっていることが、権限移譲が進まず、自律型組織構築の妨げになっていたりします。代表取締役も数ある役職のひとつ、と考えることが大切です。

 

グルジェフという思想家は、他の人格に指示を出す人格を「御者」と呼んだ。また、グルジェフは「御者は馬と馬車を制御している」ともいった。事業を動かす御者として、まずは馬と馬車を制御しなければならない。

グルジェフは、ガーバーが昔、心酔していた思想家です。いまでもガーバーの言葉には、グルジェフの思想が反映されているときがあります。

組織図を作って、それをもとに会社が動き出したら、社長は自分の立場をわきまえて働く必要があります。これはどういうことかというと、もし、あなたが代表取締役と営業担当者という2つのポジションを兼任しているのであれば、”営業担当者として働いている時間”は、他の営業社員と同じルールに従って働かなくてはならない、ということです。

ほかの営業社員が営業日報を書いているのであれば、あなたもそれを書く必要があります。営業支援ソフトにデータを入れているのであれば、あなたもそれをやる必要があります。

つまり、そのポジションの帽子をかぶって仕事をしている際には、そのポジションで求められる基準に従わなくてはならないのです。これをガーバーは、エンプロイーシップのルール、と呼んでいます。

このルールを破ると、社員からは「社長ばっかりずるい」というような不満が出てきたりします。組織が出来てくると、ガーバーが本書で書いている通り、「事業は働く場所から見守るべき対象へと変わっていく」ことになります。まずはその段階を目指して、組織図づくりに取り組んでいただきたいと思います。

 

「ステップ4 マネジメント戦略」の解説

管理システムとは、マーケティングの効果を高めるために、事業の試作モデルに組み込まれたシステムのことである。

この一文だけだと意味が分かりにくいかもしれません。これを理解するには、マーケティングの定義を少し変えていただく必要があります。

マーケティングとは、プロモーション、広告、見込み顧客開拓などのことである、と思われています。しかし、ガーバーのいうマーケティングとはそれらとは異なります。これはガーバーも認めていますが、ガーバーのマーケティングの捉え方は、セオドア・レビットの思想に影響を受けています。

セオドア・レビットは、フィリップ・コトラーと並び称されるマーケティング巨匠で、過去には有名なビジネス雑誌ハーバードビジネスレビュー誌の編集長を務めたこともあります。

レビットのマーケティング論は、現代のマーケティングに多大な影響を与えたとされています。マーケティングを少し勉強された方であれば、”ドリルを買いに来た人が本当に欲しいのは、ドリルではなく、壁の穴である”という有名な逸話を聞いたことがあると思います。

顧客の本当のニーズを知ることで、新しいビジネスの機会が生まれることを示した逸話です。この話も、レビットが何十年前に出した書籍が出典となっています。レビットがすごかったのは、製品中心、売り手中心だった時代に、顧客志向、サービス志向の考え方を提唱したことです。いまでは、レビットの提唱した概念が一般的になっており、先見性の高さが改めて評価されています。

ガーバーは、レビットの考えを起業家やスモールビジネス経営者に伝わるように言い換え、次のような言葉でマーケティングを表現しています。

”起業家は会社を作る時点でマーケティングをしています。彼らは誰を相手にするかを決め、極めて差別化された方法で運営される会社を作ります。それら全体がマーケティングです。”

ここでいうマーケティングとは単に商品を広く認知させる活動ではなく、顧客を惹きつけ続けるためのあらゆる活動や仕組みのことを指しています。本章では、ホテルベネチアという宿泊施設の卓越した管理システムが紹介されていますが、それも顧客を惹きつけ続けるための仕組みといえます。

 

これらは、マーケティングの効果を高めるためのマニュアル的な業務となっており、ホテルの管理システムの一部となっていたのである。

本章では、ガーバーが体験した、ホテルベネチアのホスピタリティ(おもてなし)が中心的なテーマになっています。おもてなしは個人に依存するもの、というのが日本人の考え方ですが、本章では全く逆の考えが提唱されています。それは、管理システムがあることで、いつでも誰でも卓越した”おもてなし”が可能になる、ということです。

マニュアル化できないおもてなしこそが日本の強みである、という日本人の常識に疑問を投げかけてくるようなストーリーですもちろん、これは単に作業をマニュアル化すれば実現できるわけではありません。次章で出てくる”人材戦略”と合わさることで最大の効果を発揮します。

 

従業員がスムーズに仕事を進められる仕組みがあることが、私たちのホテルの良いところかもしれません。

仕組みやマニュアルとは、会社のトップが、作業のやり方を強制するためのものではありません。仕事をより効率的に、より効果的に行うためのものです。それがあることで、社員は無駄な努力をしたり、無駄な時間を費やしたりする必要がなくなります。そして、仕事をより効率的に、効果的に行うにはどうすればよいか?と問いかけで、創意工夫が生まれます。

本章を簡単にまとめれば、次のようになると思います。

会社は何かしらの「約束」を顧客に対して行い、その約束を守り続けることで成り立っています。約束を守り続けられた分だけ、顧客は商品を買い続けてくれます。そして、その約束を守るための仕組みが、本章のテーマである管理システムなのです。

 

「ステップ5 人材戦略」の解説

ガーバーが感銘を受けたホテル、ホテルベネチアのマネージャーとの会話を通じて、人材戦略を紹介しています。

 

従業員を思い通りに働かせるなんてできっこないよ。まずは働くほうが自分のためになるんだと思える仕組みをつくることだね。成果を上げることにやりがいを感じるような仕組みをね。

動機付け、モチベーションアップの社員研修は昔からたくさんありますが、ガーバーは、社員に成果を上げさせるために、彼らのモチベーションを上げるなどできない、と断言しています。

逆に、社員に成果を上げさせることでモチベーションが上がるといっています。これはご自身の経験を振り返ってみても納得できることかと思います。何かを習うとき、ひとつずつ課題をクリアしたり、できることが増えていくことに楽しみを感じ、さらに上達しようと思うものです。

これは人間が本能的に”成長”を求めているためです。したがって、本章の人材戦略とは、まさに社員に意義のある成果を上げてもらうにはどうすればよいか?を提示したものです。

社員に成果を上げてもらうためには、これまで本書に出てきた、何が成果なのかを理解してもらうことや仕組みづくりが必要になります。

 

ホテルという事業を通して、自分の信念や価値観を実現しているように思えたのです。(ホテルベネチアのマネージャーのセリフ)

本書では、事業とは人生を豊かにするための乗り物である、という言葉が紹介されていますが、ホテルベネチアのオーナーは、まさに事業で自分の人生を表現しているといえます。

事業において自分の信念や価値観を表現できればできるほど、顧客と社員を惹きつけることができます。カリスマ的な政治家や社会活動家には人が集まります。それは彼らがダイレクトに自分の信念や価値観を民衆に伝えているからです。

彼らは、”誰もが心の中で思っていたが言葉に出来なかったこと”を明文化してわかりやすく表現し、伝えています。だから、民衆は、”自分も前からそう思っていた。この人は話のわかる人だ。”と感じ、同じ方向に向かおうとするのです。

会社のリーダーもそれと同じです。ビジョンや価値観を明文化する必要があるのはそのためでもあります。

 

オーナーは事業とは自分を鍛錬する道場のようなものだと考えています。道場での戦いは、敵との戦いではなく、自分自身との内面的な戦いなのです。(ホテルベネチアのマネージャーのセリフ)

この話は当然ながら、日本人になじみ深い武道から来ています。私も昔はいわゆる自己啓発に、はまった時期があります。本や教材はもちろん、海外のセミナーまで足を運んでいました。しかし、ガーバーに会ってからは、そういったセミナーに参加するのは控えめにしています。

なぜならば、最高の自己啓発とは事業に真剣に取り組むことである、とガーバーから教わったからです。ガーバーは次のように言っています。

”オーナーがビジネスに対する視点を変えない限り、ビジネスは決して改善しない。これが33年間してきたことの中で、鍵となる点である。変革する必要があるのは、オーナーなのだ。だから私たちのマイケル・トーマス・ビジネス・デベロップメント・プログラム(ガーバーの創業当初のコンサルティングサービスの名称)は、ビジネスに関するものである一方、本当はいままで作られた中で、最も包括的な自己開発のプログラムになっている”

ビジョンや価値観を発見し、日々の仕事の中で自分がリーダーシップの機能を果たすことで自分との内面的な戦いがあり、はじめて人間として成長することができます。それは自己啓発セミナーに参加して体験できるものではありません。

 

事業とはゲームのようなものである。

本章で重要なメッセージのひとつがこれです。ゲームには目標があり、ルールがあり、やり続けることでプレイヤーの成長があります。

事業も同じように、目標を作り、ルールを作り、社員が成長できる環境を作る必要があるということです。そのゲームは、各会社ごとに異なります。

また、ガーバーは、採用について次のように言っています。

”採用するポジションによって、候補者に求める能力は異なるが、唯一、採用する全ての人に求めるべきなのは、「初心者の心」である。

彼らがどんな学歴だろうと、どんな経歴、トレーニングを受けていようと、あなたの会社の“ゲーム”の中では、「初心者」になってもらうべきである。”

ここにあるように、新しく入ってきた社員には、そのゲームに慣れ親しんでもらうことです。彼らがこれまでに慣れ親しんだゲームではなく、あなたの会社のゲームに慣れてもらう必要があります。

新入社員がベテランの場合、”前の会社ではこうだった”、”私のやり方とは違う”と言って、あなたの会社のゲームを変えようとする人がいますが、それを許してしまっては、また属人的な職人型ビジネスに戻ってしまいます。

 

「ステップ6 マーケティング戦略」の解説

マーケティングは顧客に始まり、顧客に終わる。(中略)たいていの場合、「顧客が望むもの」についてのあなたの想像は外れてしまう。

マーケティング活動の最初の一歩は、顧客が望むもの(困りごと)と自社の商品やサービス(解決策)を合致させることです。これができないと当然、商品はたいして売れません。

スタートアップ界隈では、プロダクト・マーケット・フィット(商品と市場のフィット)という言葉があり、これが早くできればできるほど、ビジネスが早く立ち上がります。

当たり前の話のように思えますが、自分が想定している顧客のニーズと、本当のニーズが違っていることに気が付かず、商品開発や広告投資を進めてしまうことが多々あります。

時間とお金をかけて、誰も欲しくない商品やサービスを作ってしまうケースは、中小・スモールビジネスに限らず存在します。自分が想定している顧客のニーズあくまで仮説にすぎず、本当にそこにニーズがあるのかどうかはテストしてみなければわかりません。そのテストをいかに高速に行えるかが、ビジネスの成長のスピードに直結します。

 

顧客のセンサーが記録するのは、あなたのお店やオフィスの中で感知できるすべての情報である。(中略)購買の意思決定を行うのは、あらゆる行動の原点となる顧客の「無意識」である。

顧客が商品の購入を決めるのは、商品の機能(スペック)だけではありません。顧客があなたのビジネスと出会ってから体験するすべてのことが購買に影響を与えます。その体験すべてを自社に好ましいように設計していく必要があります。

中でも、五感に訴える要素が大事になります。我々は、それら五感に訴える要素を「感覚パッケージ」と呼んでいます。感覚パッケージは、顧客の無意識に訴えかけ、購買活動に影響を与えます。

いわゆるブランド品を売っている会社や高級ホテル・旅館などはもとより、高級品を売っている場合でなくても、ユニークなブランドを作っている会社は顧客体験や感覚パッケージが素晴らしく整えられており、それが差別化要因になっています。

 

常にライバルが「約束」できないようなことを「約束」し続けることが、3人の副社長をまとめる社長の仕事なんだよ。

ここでいう約束とは、あなたの会社が顧客に対して行っている約束のことです。あらゆるビジネスは、顧客に対して何かしらの約束をしています。

自分たちは顧客にどんな約束をしているのか?というのは重要な質問です。

それはキャッチコピーのように明文化されているものもあれば、本書に登場するサラのお店の「思いやり」のように明文化されていないものもあります。約束こそが顧客があなたのビジネスと取引をしている理由であり、その約束をいかに守るかがビジネスの存続を決めます。自分たちは顧客にどんな約束をしているのか?ぜひ一度考えてみてください。

 

「ステップ7 システム戦略」の解説

システムは、相互に作用するモノ、行動、アイデア、情報の集合体である。そして、相互作用を繰り返す中で、他のシステムへの働き掛けも行う。

「仕組み」を英訳すると「メカニズム」という言葉が当てはまるので「システム=仕組み」というわけではありません。ただ、ややこしいので、システムと仕組みという2つの言葉をほぼ同義としてご紹介しています。

会社におけるシステムとは何か?を理解する際には、私たちの身体を思い浮かべてもらうとわかりやすいです。私たちの身体は様々な臓器や血液、骨、筋肉が組み合わさったシステムです。そして、臓器や血液、骨、筋肉がそれぞれ相互作用しています。

どこか一つのパーツに不調が出ると、周りのパーツにも影響が及び、体調が悪くなります。会社もそれと同じで、どこか一か所のシステムに不調が出ると、他のシステムにも不調が及びます。

たとえば、経理のシステムに不調が出て、仕入れ先への支払いが遅れると、在庫のシステムにも影響したり、引いてはセールスのシステムにも影響が出ます。

会社をシステム化していく際に難しいのが、本当はどこに原因があるのか?を探ることです。私たちも体調が悪くなると、体調が悪いのは自分で認識できますが、どこに原因があるのかを自分で発見することは難しいものです。

システムは相互作用しあっているので、こちらを立てればあちらが立たず、というように、堂々巡りが起きがちなのです。実際には最も今の状況にインパクトがあるシステムを探し出し、そこから手を付けていくことになります。

 

従業員を本来の仕事に集中させることがシステムの目的なのである。

システムがあることで、仕事のやり方を悩むことが少なくなります。ですから端的にいえば生産性が上がります。この作業をどうやってやろうか?と考える必要がないのです。

そのため、より高度な”考える仕事”に時間を使えるようになります。これまでに何度かご紹介していますが、システムとは、社員の考えや行動を縛るものではなく、逆に彼らの可能性を最大限に発揮させるものなのです。

 

企業には、ハードシステム、ソフトシステム、情報システムの三種類がある。

本書では、ハードシステムの例としてホワイトボード、ソフトシステムの例として販売システム、情報システムの例として、販売の数値化が登場します。

これら3つの区分けはそれほど気に掛ける必要はありませんが、とにかく、あなたの会社にはすでに様々なシステムがあり、それが上手く機能しているのか、または機能していないのか、どちらかです。
そして、うまく機能していないシステムを人のせいにせず、いかにシステム的な視点で改善していくか?がとても大事です。

 

まとめ

さて、以上、「はじめの一歩を踏み出そう」を解説してきました。

参考になりましたでしょうか。

この本は、原書(EMyth Revisited)が出版されたのは1995年、さらにその前身となる本(EMyth)は1985年の出版です。つまり、核となるアイデアが紹介されてから既に30年以上経っています。

にもかかわらずいまだに様々なメディアで取り上げられているのは、やはりスモールビジネス経営の原理原則が書かれているからだと思います。

私が個人的にこの本が好きな理由は、本書がガーバーの個人的な体験談でもなく、コンサルタントや学者が書いたものでもない、ということです。

大半のビジネス書(経営書)は、個人的な体験談か、学術的な理論が書かれているものに大別されます。

個人的な体験談というのは、成功した経営者やコンサルタントが書いた本であり、確かにインスピレーションを受けたり役に立つ点はあるものの、体系的とは言い難く自社の状況に照らし合わせて考えることが難しいものです。

学術的な理論が書かれている本は、その大半が大企業のマネジメント向きなので、スモールビジネス経営にはあまり当てはまりません。

ガーバーはコンサルタントと呼ばれることもありますが、実際には起業家です。コンサルティング会社を起業した起業家です。

ですから「はじめの一歩を踏み出そう」は、体系的に書かれていながらも、経営者が抱える悩みに即した内容になっています。既に一回お読みいただいた方も、ぜひこれをきっかけに再読していただければと思います。