本日は「はじめの一歩を踏み出そう」著者のマイケルE.ガーバー氏による記事をご紹介します。記事のタイトルは、「すべての会社は家族経営」です。
家族経営とは?(前提知識)
記事をご紹介する前に、家族経営という言葉についての前提知識のご案内です。家族経営というのは、言い換えると、同族経営と言います。最近では欧米に倣って、ファミリービジネスとも言ったりします。
一般に、創業家一族が経営陣となって実質的に経営を支配している場合には、家族経営となります。となると、ほとんどの中小企業は家族経営、ということになりそうですが、実際にそうなのです。日本は国際的に見ても家族経営の会社が非常に多い国と言えます。また、大企業であっても、家族経営の会社は多数あります。たとえば、トヨタなどは上場していて創業家の株主比率が低かったとしても、実質的に経営を創業家が支配しているので家族経営と言えます。
米国をはじめとする海外では、会社の所有権と経営が分離されていることがあります。数十人程度の中小企業であっても、オーナーの経営者(CEO)が別、というのは良くあることです。このような場合には、家族経営とは言えないかも知れません。しかし日本ではそのようなことはほとんどありません。会社を創業した人がオーナー兼経営者として何十年も経営をし続けるのが一般的です。そのような風潮があるために、家族経営の会社が多いのです。
家族経営(同族経営)についてはこちらに別途記事がありますのでご参照ください。
すべての会社は家族経営
さて、一方で今回の記事のタイトルは、「すべての会社は家族経営」です。ここで言っている家族経営という言葉の意味は、上記で説明した定義と異なります。マイケルE.ガーバー氏は、すべての中小企業は経営者の家族の影響を受ける、という事実のメタファーとして家族経営という言葉を使っています。それを踏まえて、以下の記事をご覧ください。
すべての会社は家族経営である。
この事実を無視すると悲劇が訪れる。
会社が実際に、家族で経営されているかどうかは関係ない。会社と家族が、実際にどのような関係にあろうとも、会社における意思決定は、家族からの影響を受けるものだ。
それを無視することは出来ない。
不幸なことに、大半の経営者は、彼らの仕事を家族とは関係ないものと考えている。
夫は妻に言う。
“お前には関係ない。”
と。
しかし、それは真実ではないのだ。
家族と会社は切っても切り離せないものだ。
会社の中で起こることは、家庭の中でも起こる。
・仕事で苛立っていれば、自宅でも苛立っている。
・会社をコントロールできなければ、家庭もコントロールできない。
・会社でお金にトラブルを抱えていれば、家計にもトラブルを抱えている。
・会社でコミュニケーションのトラブルを抱えていれば、家庭でもコミュニケーションにトラブルを抱えている。
・会社でメンバーを信頼していなければ、家族のことも信頼していない。これらのことによって、あなたは信じられないほど大きい代償を支払っているのだ。
スティーブとペギーという夫妻の話をしよう。
スティーブとペギーは会計の専門学校で出会い、結婚した。
卒業後、2人はそれぞれ別の会計事務所に勤め始めた。
数年も経つと、スティーブは事務所の方針に納得がいかなくなり、自分でビジネスを始めようと考えた。
2人は慎重に話し合った結果、スティーブは自分のビジネスを始め、ペギーはいままでどおり、会計事務所に勤め続けることになった。
最初は順調だった。折からの住宅ブームに伴い、街に引っ越してくる人たちが増え、新しいクライアントの獲得には困らなかった。
1年経つと、スティーブはオフィスマネージャーを雇い、事務作業をしてもらうようになった。さらに、アシスタントの会計士も雇った。
スティーブとペギーは最初の成功を祝った。
クライアントは増え続け、2年目の終わりには、2人のフルタイムスタッフと、2人のパートタイムスタッフがいた。
クライアントとスタッフが増えるにしたがって問題が増えた。特に問題だったのは、多くのクライアントからの支払いが遅れるようになったことだった。
サービスを提供してからお金が振り込まれるまで、90日かかることもあった。
スティーブは、“ビジネスはビジネス”というポリシーを崩さなかった。
“会社でのことをやりくりするのは自分の仕事。ペギーは会計事務所での仕事と息子の面倒を見る。“
と考えていた。
しかし、問題が悪化するにつれ、スティーブはペギーに不満を感じ始めていた。
ペギーは自分の抱えている問題を全く理解してくれない。時に彼は自宅でストレスを当り散らした。
ペギーから会社のことについて、色々聞かれるのが嫌になり、次第に、ペギーが眠っている時間を見計らい、夜遅くに帰宅するようになった。
リビングのソファーで寝て、まだ誰も起きていない時間に出勤するようになった。
同じ頃、会社でも同じようなトラブルが起こり始めた。
クライアントからの支払いが遅れても、スタッフに給料を払わなくてはいけない。
彼はスタッフが思ったように働いてくれないことに苛立っていた。自分がなんとかお金のやり取りをして給料を払っているのに、彼らはそのことに無頓着だった。
会社でもスティーブは、誰も自分のことを理解してくれないことに苛立っていた。
そのうち、スタッフの2人が辞めたいと言い出した。増え続ける仕事にストレスが溜まり、耐えられなくなったのだ。
スティーブは会社を続けるか、止めるかの瀬戸際に立たされるようになった。
このようなケースはあらゆるビジネスで起こりうるものだ。
スティーブは全てを自分でやろうとした。ビジネスを成功させ、想像していた生活を家族にもたらし、彼のプライドを保とうとした。
しかし、そうなる代わりに、彼は孤独になり、想像とは逆のことが実現してしまった。
ビジネスがスタートしたとき、最初に代償を払うのは家族である。スティーブが自分の創ってしまった檻から抜け出すためには、彼自身の弱さを認めなくてはいけない。
彼自身、そして家族に対して、ビジネスのこと、そしてそれをどのように成長させれば良いのかわかっていないことを言わなくてはならないのだ。
もう一度繰り返そう。
全ての会社は家族経営である。
ビジネスは経営者の人格の反映である
いかがだったでしょうか。
あなたの会社が実際に家族経営であろうが、無かろうが、経営者であれば身に覚えがあるのではないでしょうか?
マイケルE.ガーバー氏は、ビジネスは経営者の人格の反映である、と言っています。その人格は家庭内だろうが、会社内だろうが変わることがありません。そのため、
・仕事で苛立っていれば、自宅でも苛立っている。
・会社をコントロールできなければ、家庭もコントロールできない。
・会社でお金にトラブルを抱えていれば、家計にもトラブルを抱えている。
・会社でコミュニケーションのトラブルを抱えていれば、家庭でもコミュニケーションにトラブルを抱えている。
・会社でメンバーを信頼していなければ、家族のことも信頼していない。
といったような家庭と会社の関連性が生まれてくるのです。
ぜひご自身の家庭や会社を振り返り、”すべての会社は家族経営”という言葉をどう活かせるかを考えてみてください。
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