社長の時間管理術。働く時間を減らしながら会社を成長させる。



清水直樹
今日は、社長の時間管理術、働く時間を減らしながら会社を成長させる9つの方法という話をしていきます。私たちは日頃、経営者の方の会社の仕組みづくりをお手伝いしていますが、その仕組みづくりをするにあたって、必ず必要になるのが、社長の働き方を変えるということです。そしてこの働き方を変えるにあたって、同じく伴ってくるのが、社長の時間の使い方を変えるということです。そこで、今日は社長の時間管理術のヒントをご紹介していきたいと思います。

 

動画でも解説しています。

 

社長と社員の時間管理の違い

世の中に、時間管理とかタイムマネジメントの話はいっぱいあると思います。そういう方法論は、いかに限られた時間内で多くの仕事をやるか?にフォーカスが当たっています。なぜかというと、そういうノウハウの多くが、一般社員向けの内容になっているからです。一般社員の場合には、働く時間が決まっていますし、上司から言われた業務量があって、いかに時間内で上司から与えられた仕事をこなすか(効率性)ということがテーマになります。

ただ、社長となるとちょっと話が変わってきます。社長は働く時間というのは自分でコントロールできるので、いかに短い時間で多くの仕事をやるかということではなくて、いかに少ない仕事で会社を成長させるか(効果性)ということにフォーカスを当てることになるんです。そのための時間の使い方を紹介していきたいと思います。

 

時間管理術における大切な考え方

社長の時間は会社の最大の資産

よく会社の最大資産というのは人材であると言われます。この考え方には、半分同意していません。なぜかというと、資産というものは自分でコントロールできるものです。例えばお金だったり、会社の設備というのは100%自分たちで管理できるわけです。ただ、人材はそうじゃないんです。人材はあくまで人なので、その人がいつ会社から去ろうが文句は言えないわけです。そして、例えば病気であったりとか、もしくは定年退職でいつか辞めてしまうということがあるわけです。と考えたら、人材は、会社が、もしくは社長がコントロールできるものではないということなんです。

では、会社の最大の資産は何かというと、お金とか設備もありますが、一番大きいのはやはり社長の時間だと思います。社長がいかに時間を使うかによって、会社の成長が大きく変わってきます。売上が1兆円の会社の社長であろうが、売上が1000万円の会社の社長であろうが、持っている時間は24時間しかないわけです。その中で一兆円あげられる社長もいれば、1000万しかあがらないという社長もいるわけなので、時間というのは使い方次第で大きなレバレッジがかかるものです。

そういう意味で、会社の最大資産は社長の時間であるということなんです。社長がどう時間を使うかということは、社長の個人的なテーマであると思うんですけど、社員の人たちにも大きく関係してくる話であり、責任が大きいということになってきます。

 

時間はたっぷりある

時間の流れ方は、相対的なものです。楽しい時間であればすぐ過ぎてしまうし、手持ち無沙汰でやることがないという時は時間がゆっくり流れると言われています。これを私が感じたのは、会社員を辞めて独立した時です。会社員の時は営業職だったので、外に出てお客様ところを回っているわけです。そうすると移動時間とかもあるので、午前中に一件行って、昼飯をどこか外で食べて、午後二件回るみたいな感じです。そして、会社に戻ってきてちょっと仕事して、7時とか8時くらいになったら同僚と飲みに行く、みたいな生活をしていたわけです。

そうすると、一日が本当にあっという間に過ぎてしまって、「今日何してたんだろう」みたいな日が結構あったんです。なので、当時は時間が非常に短く感じていました。ところが、いざ独立してみると、時間というのは非常にたっぷりあるんだということに気付いたんです。独立すると、誰からも「あれやれ」「これやれ」と言われないし、最初はお客さんがいないので、外に出歩くこともないわけです。一日中借りているオフィスの中で自分の時間を自由に使えるわけです。

そうすると、「何しようかな」と、逆に時間の使い方に非常に悩んだ時があったんです。その時にやはり時間は相対的だなと思って、時間というのはたっぷりあるんだなと気が付いたんです。

例えば、スマホとかパソコンなどのデジタル機器を一切持たずに時間を過ごしてみると、意外と時間はたっぷりあるんだと思うんです。その時間に考え事をしたり、本を読んだりすると、時間がゆっくり流れていくということに気付くと思います。忙しい忙しいというのは、要はパソコンいじったりとか、スマホいじったりしているからあっという間に時間が過ぎてしまうわけです。でも本来は、時間というのはたっぷりあるんだと。その時間をどうやって使うかということを真剣に考えなくてはいけないと思います。

 

成長と時間は両立できる

これは多くの社長が思い込みしてることです。会社を成長させようと思ったら、自分の働く時間をもっと増やさなくてはいけないと思ってる、逆に言うと、自分の働く時間を減らしたら会社の成長は止まってしまう、と考えている。でも実は、これは逆で、会社の成長と社長の自由時間というのは両立できます。さらに言うと、自分の働く時間を減らせば減らすほど、会社を成長させることができます。これは私自身の経験だけでなく、私たちのお客様の経験でも、そういうことが言えるんです。なので、投入した時間に対して会社は成長するという考え方は、いったん隅に置いておいていただくといいのかなと思います。

 

価値観の変革

時間管理の基本は、大事なことにいかに時間を使えるかということですが、その大事なことというのは何なのか?というのが社長によって変わります。なぜ社長によって変わるかというと、社長によって価値観が違うからです。

この価値観というのは、何を大事に思っているか?ということですが、どの仕事が自分にとって大事なのか、どの仕事が自社にとって大事なのかということは、皆さんの価値観によって変わるわけです。そうすると、時間管理術は、価値観によって左右されます。なので、時間の使い方を変える前に、価値観を変えて行かないと、時間の使い方は本質的な意味では変わらないということになります。

 

時間管理術①何に時間を使っているのかを知る

私の師匠でもありますマイケルE.ガーバー氏は、まだ自分が現場でクライアント向けにアドバイスをしていたとき、最初にクライアントにしてもらっていたことは、一体何に時間を使っているのかということを自己認識してもらうことだったそうです。

例えば、朝9時~10時までは会社でミーティングをしていたとか、10時~10時半まではお客さんと電話をしていたとか、そんな感じで一日の仕事内容を全部記録させたんです。それで果たして、経営者の人が本当に大切なことに時間を使えてるかどうかというのを自己認識させたのです。

なので、時間管理術の最初の一歩は、自分自身がどのように時間を使っているかというのを知るということです。これを皆さんもぜひやっていただくといいのかなと思います。そのためのアプリなどもありますが、紙でも良いと思います。紙に一日のタイムスケジュールを書いて、それで後から見直すということをお勧めします。

 

時間管理術②3つの人格のバランスを取る

マイケルE.ガーバー氏の理論では、経営者は3つの人格をバランスよくコントロールしないと会社は成長しませんよ、という話です。その3つの人格は何かというと、職人、マネージャー、起業家です。詳しくは「はじめの一歩を踏み出そう」を読んでいただくといいと思うんですけど、職人の人格は目の前の仕事をこなす人格。マネージャーは、会社の仕組みづくりとかルールづくり、体制づくりをする人格。起業家の人格は、会社の未来を作る、会社の理念、ビジョン、長期的な戦略や展望を作る人格。

会社がうまく成長していくには、この3つの人格を1/3ずつバランスを取ってコントロールしていくことが大切になるわけです。一番目の方法の自分の時間の使い方を計測して見てみると、ほとんどの社長は職人の人格で時間を使っているということが分かると思います。職人の人格は、目の前の仕事をするということなので、例えば、来たお客さんに対応するとか、商品を作る、商品を発送する、営業をするとか、今やらないといけない緊急の仕事にほとんど時間を使っているということなんです。

1番目の方法で、自分の時間の使い方を把握できると思いますが、この3つの人格を自分はどれだけ使っているのかというのをぜひ見て欲しいんです。おそらくほとんどの方は職人の時間を7割8割使っていると思います。残りの2割が、マネージャーの人格です。起業家の人格は5%くらいしか使っていないと思います。会社の未来を考える仕事というのは、全体のうちの5%くらいしかやっていない。これだと会社は成長しません。なので、意識して職人、マネージャー、起業家という人格を使っていきましょう。

 

時間管理術③時間管理のマトリックスを社長業に使う

時間管理というと、必ず登場するのがこのマトリックスです。7つの習慣に出てくる時間管理のマトリックスです。このうち重要だけど緊急ではない仕事、これをやらないと実りある人生やビジネスはできませんよというのが7つの習慣の教えです。ここで大切になってくるのが、自分たちにとっての、重要だけど緊急ではない仕事というのは、一体何なのかということです。

ここで一番最初にお話した価値観の話が出てきます。ある社長にとっては重要である仕事も、別の社長にとっては重要ではないと判断されるわけです。この違いは何かというと、価値観の違いです。ここでまた3つの人格の話が出てきます。経営者の中で、先ほどの職人の人格に支配されている社長にとっての重要な仕事というのは、今目の前の仕事をやることです。目の前のお客様、目の前の大口顧客、目の前の大口の契約、これを何とかしてゲットしてお金を回収してくるというのが自分にとっての重要な仕事だと認識してると思います。

でも一方で、職人、マネージャー、起業家の3つのバランスをうまく取って、経営している社長にとっての大事な仕事というのは、起業家の仕事です。起業家の人格の仕事というのは、会社の未来を作ることで、会社のビジョンや長期的な戦略、長期的な計画を作る仕事です。

なので、社長がどの人格に自分の価値観を支配されているかによって、重要だけど緊急ではない仕事が何なのかが決まってくるということなんです。これが最終的に会社が成長できるかどうかに影響してきます。というわけで、先ほどの3つの人格をベースにして、自分にとっての、自社にとっての重要だけど緊急ではない仕事が何なのかというのをぜひ考えてみるといいのではないかと思います。



 

時間管理術④月一回は会社から離れる

これは私も日頃、周りにいる経営者の方にぜひオススメしているんですけど、月一回は一人合宿しましょうということです。さっき言った重要な仕事に集中するためには、会社の中にいるとなかなか難しいです。なぜかというと、会社の中は社員がいたり、お客さんがきたり、電話がかかってきたりとかするので、集中することができないんです。

起業家の人格で仕事をするには、集中できる環境が必要なんです。そう考えたら、会社の中で日常業務をこなしながらは難しいので、月一回は日頃の雑踏を離れて、仕事を自分だけでやるという時間を取ってみてはどうかとお伝えしています。これをまさに実践していたのが、マイクロソフトの創業者のビルゲイツで、彼は年に一週間、シンクウィークという時間を取っていたと言われています。そして、会社の未来を作るための仕事に集中していたんです。これによってマイクロソフトは何度も経営の危機を回避することができたと言われています。

 

ビルゲイツのシンク・ウィーク(Think Week)

 

もう一個例を挙げますと、二宮尊徳。薪を担ぎながら本を読んで勉強していた勤勉の代名詞です。彼は農業の改革をしたことで有名です。荒れ果てた土地を、繫栄する土地に変えていく方法を確立したことでよく知られています。ある時、二宮尊徳が、荒地を立て直すプロジェクトの指揮をとっていたんです。しかし、なかなかそのプロジェクトがうまくいかない。土地の農民からも反対されて、行き詰った時があったんです。

その時、彼はいったん仕事から離れ、お寺にこもったと言われています。要は現場を離れて自分だけの時間を取ったんです。そこでなぜこのプロジェクトがうまくいかないかを内省して、うまくいく方法を一人で考えたんです。しばらくたってから現場の荒地に戻ってきて、考えたことをベースにもう一回改革に取り組んで成功させました。二宮尊徳は普段は朝4時から現場で必死に勤勉に働いていたんですけど、色々な雑念があると重要な考える仕事に集中できないということで、いったん離れたんです。

これをぜひ皆さんにもモデリングしていただいて、一人合宿をやってみるといいんじゃないかと思います。

 

時間管理術⑤重要な顧客、重要な商品に集中する

要は2対8の法則です。会社の8割の利益というのは2割のお客様とか、商品が生み出しているということです。今回の大きなテーマは、会社の成長と時間のゆとりを両方実現するということですが、その肝となるのがこれです。

2対8の法則というのは非常に有名なので、皆さんもご存じでしょう。一方でこれを本当に活用している会社は少ないのかなと思うんです。なぜそうなるのかと考えたら、やはり価値観が邪魔をしているのかなと思うんです。冒頭でお話しした通り、時間管理をするには価値観の変革が大事ですが、ここでも価値観がカギを握ります。やはり、どのお客様にも大切に対応するという価値観がこびりついていると、数字では分かっていても、残りの8割のお客様も切れないということがありあす。全てのお客様に対応するために一生懸命働くという価値観になってしまっているので、なかなか実現できないのです。

なので、時間のゆとりと会社の成長は実は両立できるし、むしろそうした方が時間のゆとりも会社の成長も促進されるんだと価値観を変えていかないと、知っていても実現できないことになります。

 

時間管理術⑥時給を知る

社長の時給は一体いくらなのか?もちろん社長は時給制度で働いているわけではないので、何時間働いたからいくらと決まっているわけではないと思います。ただ、目安として自分の時給はいくらなのかと知ることは非常に大切です。まず自分の時給を知って、それ以下でできる仕事は自分でやらないと決めるのが非常に大切です。

自分でやらないということは社員の人に委任する、もしくは外注に出すということです。参考までに、年収で1000万円の社長の時給は、だいたい5,200円くらいになります。同じように年収1億はその10倍なので、時給は5万2,000円になります。

まず皆さんが今取っている報酬額を時給換算するといくらなのかと計算してみるといいと思います。その上で、自分が取りたい収入との差を見てみましょう。取りたい収入以下でできる仕事は、社長はやってはいけないという話になります。これは一番目の方法と同じで、自己認識です。自分の時間の使い方と、自分の時間の価値というのを知るということです。

 

時間管理術⑦1週間3分割法

これは私が海外のビジネスコーチから学んだことです。社長の集中力を高めるのに非常に大切になってきます。一週間を3つのパターンの日に分けましょう。準備の日、集中する日、フリーの日です。

集中する日

社長にとって大事な仕事をする日です。具体的に言うと、さっき言った起業家の人格で働く時間とか、マネージャーの人格で働く時間、これが集中する日です。もちろんこの集中する日がずっと続けばいいわけですが、人間そうはいかなくて、色々な雑多なことがあるし、メンタル的に疲れている日もあるし、体力が続かない日もあるので、ずっと集中する日を継続するのは難しいです。そこで、他の2つの日を設けましょうことです。

 

フリーの日

これは仕事を離れる日ということです。仕事を離れてプライベートのことをケアする日。例えば家族と過ごすとか、普段より多く運動するとか。社長なので身体は仕事から離れていても、頭の中のどこかに仕事のことを考えていると思います。そうすると、予期せぬアイディアが生まれたりするので、フリーの日というのは結構大事です。

 

準備の日

準備の日は、集中する日に本当に集中するために準備をする日です。具体的には何か調べものをしたり、社内で発生する雑多なこと、大切な仕事ではないんだけれど、社長としてやらないといけない仕事というのをこの準備の日にあてます。

それぞれどれくらいのパーセンテージでやるかは皆さんにお任せします。例えば集中する日を一週間のうち3日あてるとします。フリーの日を1日、残り3日は準備の日にあてるという感じです。そうすると非常にバランスの取れた働き方ができます。

 

時間管理術⑧部下の仕事を省く

社長が時間をうまく使うためには、部下も時間をうまく使っていないといけないということです。部下がしょっちゅう社長に問い合わせをしてくると、社長も仕事に集中できないわけです。なので、部下との余計なインタラクションを減らす上でも、部下が自分の仕事に集中できるようにしてあげることが大切になってきます。

戦略という言葉は、余計な戦いを省くと言われますけど、別の意味でいうと、部下の余計な戦いを省くということもあるんです。例えば戦場で、戦略がまずいと部下が余計な血を流すわけです。会社も同じで、上司の戦略がまずいと、部下が余計な体力っやエネルギーを消費してしまうんです。部下のパフォーマンスが落ちると、社長が尻拭いをしないといけないので、社長の時間がどんどん削減されしまいます。というわけで、部下の仕事っぷりと社長の時間管理は密接に繋がっています。

具体的には部下が大切なことに集中できるようにしてあげたり、コミュニケーションのルールを作る、「この時間はちゃんと話そうね」とか、「この時間はお互いやることやろうね」とかです。あと、部下に対しても、時間の使い方を教えてあげることです。部下がうまく働けるようになれば、その分だけ社長の時間はフリーになるので、重要な時間に時間を使えるということになります。

 

時間管理術⑨朝のルーティン

これは私が非常にオススメしていることです。『The 5 AM Club』というロビン・シャーマという人が書いた本があります。この本の中で、朝5時に起きてこういうルーティンやりましょうと書いてあります。それを実践することで、その日一日生産性が高まります。

ポイントは、出社前に重要なことを終わらせること。例えば、8時に出社すると考えたら、朝5時~8時までの間に社長としての重要な仕事は全部終わらせるということです。そうすると、出社してからの時間は、例えば、部下と時間を取って話したり、お客様と時間を取って話したりするということができるようになります。朝に全部大事なことを終わらせてますので、非常にゆとりを持って人と接することができます。

物事を処理する場合には効率が大事で、人と接する場合には効果が大事です。なので、部下やお客様と話す時に効率重視でどんどんどんどん仕事を進めようとすると失敗します。昼間の時間に効果的に人と接するためにも、物事の処理は朝の時間に効率的にこなすのです。これで1日非常に有意義な時間が過ごせます。



 

 

成長と時間のゆとりを両立させるなら仕組み経営

というわけで、今回は社長の時間管理術の考え方と方法をご紹介しました。全部できなくてもいいので、参考になる部分があればぜひ活用してもらえればと思います。なお、仕組み経営では、社長が重要な仕事に集中し、会社の成長を実現するための仕組みづくりをご支援しています。詳しくは以下からぜひご覧ください。

属人経営から仕組みで成長する会社へ

 

 

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