新規事業の進め方「ゴールデンピラミッド戦略」


清水直樹

今日はマイケルE.ガーバー氏の提唱した新規事業の進め方「ゴールデンピラミッド戦略」をご紹介します。

 

マイケルE.ガーバー氏・・・世界700万部のベストセラー「はじめの一歩を踏み出そう」の著者であり、世界No.1の中小企業アドバイザー(米INC誌による)に選ばれた。当サイト「仕組み経営」のもとになっている思想を提供してくれた人物。詳細はこちら>>

以下の記事は、ガーバー氏の音声を要約したものです。

新規事業の進め方

ゴールデンピラミッド戦略とは、新規事業を進めるためのプロセスである。新規事業の立ち上げだけではなく、既存事業の見直しやゼロの状態から起業する際にも同じく当てはまる。

ゴールデンプラミッド戦略を活用すれば、新規事業を進めるのに多額のお金は必要ない。想像力や知識も要らない。要るのは、やることにコミットすることだ。

ステップ1. 自社のリソースを認識する

ステップ1は、古い会社を認識することだ。古い会社というのは、あなたの既存事業である。まったくのゼロから起業するのであれば、あなたが持っているスキルのことである。

「古い会社に存在する、他の人が買ってくれることとは何だろうか?」

これが最初で、欠かせない、発展性のある質問である。あなたの持っているスキルは何だろうか。あなたができることで他の人が買ってくれるものは何だろうか。リストを作るところから始めよう。考えすぎないように、まず描き始めることである。初心者の心と真っ白な紙で。

ステップ2. ニッチ市場をリストアップする

全てのニッチ市場をリストにしよう。つまりそれは顧客を意味する。あなたのサービスを提供できると考えられる顧客である。そう、あなたはサービスビジネスを作ろうとしている。あなたがいま出来る中で、最も簡単で最もコストがかからず、お金がかからないことである。

ステップ3. 商圏を明確にする

あなたの商圏を認識する。商圏とはあなたの主な顧客が生活している、地理的なエリアのことである。言い換えれば場所を選ぶことだ。それは、国内かもしれない、国際的でもあるし、いたるところにある。インターネット上で、あなたは電気的にそれを届けるのだろうか、あなたは物理的にそれを届けるのであろうか、またはあなたがそこにいてそれを届けるのだろうか、顧客があなたのところにやってきて、それを届けるのだろうか。市場を選ぼう。あなたの商圏を選ぼう。例えばレストランのビジネスであれば、あなたの場所から車で10分のところに顧客が存在するかもしれない。あなたの商圏はカギである。やってみよう。

ステップ4. 最も魅力的な顧客を選ぶ

10個の最も魅力的な顧客カテゴリーを選ぼう。たとえば、太りすぎている人、糖尿病の人、高級車を運転している人、徒歩通勤している人、文字が読めない大人、確定申告の準備をしている人。なんでも良い、すべて、なんでも良い。あなたがやろうと決めたことに対して、10個の最も魅力的な顧客カテゴリーを選ぼう。

ステップ5. 顧客を絞り込む

最も魅力的な顧客のカテゴリーを1つに絞ろう。これからあなたはその1つの顧客カテゴリーに意識を集中させる。いくつもの強力な理由で、そのカテゴリーを選ぶこと。

  • 成長している市場である
  • 満たされていない強力なニーズが存在する
  • あなたがその分野ですでに専門家である
  • 縮小したり、消えたりする兆候がないマーケットである
  • 十分な顧客数、そして国内で拡大できるほど多くの商圏がある
  • あなたのコアな能力に興味を示している市場
  • 潜在的な競合が有効なニッチ市場だと認識していない市場

以上のようなことに当てはまる市場だ。

例えば、糖尿病、太りすぎている子供、エコロジーに関心のある消費者、80才以上の消費者、70才から75才の消費者、などなどである。あなたのマーケットを選ぼう。このプロセスを経験することによって、あなたのマーケットが勝手に明らかになる。あなたの経験によって明らかになる。あなたの中にある興味によって、何かが引き金となって明らかになる。いずれにしろ、それは、勝手に明らかになる。私を信じて欲しい。

ステップ6. 顧客について全て学ぶ

一つの顧客カテゴリーについて、学べることを全て学ぶ。あなたが知る必要のあることを全てリストしよう。もう一度言おう。全てである。あなたはその顧客カテゴリーについて、全てを知るべき、ただ1人の人物である。

図書館でスタートすることもできる。司書にリサーチを頼んでみよう。彼女にあなたの知りたいことを、興味のあることを伝えれば、彼女はあなたが想像できない、いろいろなものを探してくれるだろう。

インターネットで調べることもできる。 Google で調べることもできる。その顧客カテゴリーについてより多くのことを調べることができる。

その顧客カテゴリーについて、とにかく調べることである。

  • あなたの顧客がどのように感じているのか。
  • 朝、何を思って起きるのか。
  • どのような気持ちで仕事に行くのか。
  • 仕事中はどのように感じているのか。
  • 仕事中はどのように感じているのか。
  • 彼らはどこに住んでいるのか。
  • 彼らの家はどんなものだろうか。
  • 家具はどのようなものだろうか。
  • 彼らのアパートメントはどんなものか。
  • どんな食べ物を食べているのか。
  • どんな服を着ているのか。
  • 彼らの友達は誰だろうか。
  • 彼らの友達は何をしているだろうか。
  • 彼らが支持している政党は何だろうか。
  • 彼らの宗教は何だろうか。
  • 彼らが運転している車は何だろうか。

あなたは彼らにとって、何が重要なのかを理解する。そして何がフラストレーションなのかを理解する。

もう一度言わせて欲しい。

何が彼らをイライラさせているのか。

彼らの心理は何だろうか。彼らの医療の状況はどうだろうか。彼らはどれくらいの頻度で医者に行くのか、などである。

覚えておいて欲しい。これら全てのことがあなたにとって重要である。あなたは学ばなければいけいけない。

この最も重要な顧客について博士論文を書くように、あなたがプラクティス(仕事)を作ろうとしている顧客に対して、彼らのためだけに。生活がうまくいってないその人のためだけに。彼らの生活をうまくいかせることは、あなたの仕事である。他の人が真似できない、あなた自身のユニークな偉大な方法で。

なぜこれが重要なのか理解しただろうか?



ステップ7.  価値提供のための仕組みを作る

価値提供の仕組みを作る。初めから終わりに向けてデザインをする。顧客と最初にコンタクトをする時から彼らとの関係性を全てデザインする。視覚的に、感情的に、機能的に、財務的に設計する。

私たちがやるべきことは、顧客の経験、視覚的経験、感情的経験、機能的経験、財務的経験を深く掘り下げることである。価値提供の仕組みは、約束を守るために設計する。あなたの特別な顧客、あなたが誰よりも知っているその人に向けて、その人の満足を満たすように設計される。

注意深く、同情深く、愛情を持って、気をかけてデザインする。あなたの人生がそれにかかっているかのように設計すること。あなたがマクドナルドやスターバックスやウォルマートを作っているように考えよう。顧客層が充分に存在する場所であれば世界中どこでも、世界中の至る所でその仕事が何万回も行われることを想定しながらデザインする。

あなたが信じていようが、信じていなかろうが、あなたの差別化の肝は、価値提供の仕組みである。あなたはユニークで愛されるような経験を、あなたの特別な顧客のために提供する。全てのパーツを細かくデザインし、それをもう一度、一緒にまとめ上げる。これを何度も何度もやること。そうすれば準備ができる。

ステップ8. リードコンバージョン(営業の仕組み)を作る

リード・コンバージョンの仕組みを作る。リード・コンバージョンとは、あなたのしていることに興味を示した人が、あなたのところに現れたときに発生する。あなたは、彼を迎える準備をしなくてはならない。価値提供の仕組みを最初に準備しなければならないのはそのためである。

あなたは彼らに対して準備ができなくてはならない。リードコンバージョンの仕組みには、たとえばスクリプトが含まれる。それを記録し、練習し、何回も何回も練習し、見込み客があなたのドアから、インターネットから、電話からやってきたときに、セールスが完了するようにしなくてはならない。

覚えておいて欲しい。あなたの見込み客は説得される必要はない。彼らはケアされることが必要なのである。それをどのようにやるかが、あなたのリード・コンバージョンの仕組みである。それを描き、練習して、完成させてテストする。それこそがうまく機能させるための唯一の方法である。その価値はゴールドよりも重いものである。

ステップ9. リードジェネレーション(集客)の仕組みを作る

あなたは見込み客に対して、約束をしようとしている。あなたは彼らが誰であるかを知っている。彼らがどこに住んでいるかを知っている。商圏の中で住んでいることを知っている。あなたは彼らのフラストレーションを知っている。あなたは彼らを苛立たせるものを知っている。あなたは彼らのためだけのサービスを設計した。そう彼らのためだけの。あなたはこれから今私が言ったようなことを、できるだけ簡潔で直接的に彼らに伝えるための言葉を選ぶことになる。

あなたは彼らに伝える。あなたは彼らに販売する。彼らに、あなたが彼らの問題を、他の誰もがやっていないような方法で解決すると伝える。あなたは彼らのユニークな問題に対する、あなたの特別な解決策を経験して欲しいのである。あなたは顧客が滞りなく経験し、何も苦労する必要がなく、最も道路が空いているときに利用できて、家までの行き帰りが便利な方法で、彼らにとって最適な結果を生み出すために、さほど負担のかからないコストで、あなたの仕事から利益を得られるために、リソースを、多くのリソースを集結させる。

リード・ジェネレーションとは、あなたが顧客を集めるために行うあらゆることである。郵便受けに届けるリーフレット、E-mail、地元の教会でのスピーチ、首から「お問い合わせお待ちしています。私はさびしいのです。」と掲げて町をランニングしているときに至るまで。理解できるだろうか。リード・ジェネレーションは仕組みになるのだ。

ひとたびそれが上手く機能すると確証が取れたならば、それが機能しなくなるまで、やり続けることだ。たとえば、グランドオープニングのキャンペーンはすぐに使えなくなる。ビジネスをどんなに情熱的にオープンさせようとも、6ヶ月以上、グランドオープニングのプロモーションをすることは出来ないだろう。他のリードジェネレーションの仕組みも同様に、いつか機能しなくなる。しかし、そうなるまではやり続けることだ。

ステップ10. 効果をテストする

これまでの仕組みの効果をテストする。効果をテストするには一つの方法しかない。たとえば、リード・ジェネレーションの行動に対して、

  • どれくらいの見込み客が反応したのか
  • 彼らが誰なのか、彼らがどこにいるのか
  • 彼らの個人情報
  • 彼らが欲しているもの
  • 彼らがどのような行動をとったのか
  • 彼らが購入したならば、どのような結果だったのか
  • いつ購入したのか、取引が完了したのかどうか
  • 彼らが幾ら使ったのか

等を調べることだ。あなたが毎日、これらの情報を得ることによって、事実をより詳しく知ることが出来るだろう。

しかし、あなたの事業の真の姿は、毎日のオペレーションの経験の中に現れる。1人のセールスマンとして、1人の実践者として、マッサージセラピストとして、循環器専門医として、会計士として、経理として、自動車修理工として、機能を満たす中に現れる。

あなたが今していることは、これまでしてきた中で最も重要な仕事である。あなたのビジネスがこれからエンタープライズ(大きな事業)になる DNA である。一つ一つの仕事を設計し、構築し、複製するのである。

あなたの事業は機能しているだろうか。もししてないならばなぜなのか。これまでの仕組みが使いものにならない程悪いものであるということはめったに起きない。先に話したようにあなたが顧客を知ろうとしてきたこと、あなたの顧客について知ったことに基づいてプラクティスを準備したこと、あなたがリード・ジェネレーション、リード・コンバージョンの活動をテストしたならば、練習したならば、注意深く繰り返すならば、それは、100回中、99回はうまく行く。あなたの顧客は、あなたが彼らのために構築しようと決めたものを欲しがるだろう。するべきことはそこに留まることである。それがスイス製の時計のようにうまく機能するまで。そしてそれはそうなる。そうなるものである。

あなたは違いを作ろうと決心し、沢山の人々があなたの決心から利益を得られるように、それを拡張しようと決心したからである。そこに疑いはない。ここまで来ればあなたは、事業を拡張させる準備ができている。

ステップ11. 仕事(業務)を文書化する

これまでテストし、成果を上げてきた方法を文書化する。どのようにしてリード・ジェネレーションするか、どのようにリード・コンバージョンするか、どのようにサービスや商品を提供するかを、あなたは正確に理解しているはずである。それら全体を文書化しよう。フランチャイズのオペレーションマニュアルを作っているかのように。他の誰かが、あなたがうまくやれることを正確に行えるように。

そうすれば、仕事を次の人に手渡せるようになる。あなたの仕組みは知的財産である。それは、多額の価値がある。あなたはうまく行く仕組みを創るために、たくさんの時間と知恵と忍耐と決意を注ぎこんだ。それこそがあなたの知的財産である。そこで、あなたのリーチを広げることができる。つまり、あなたがやってきたことを他の人でも出来るように、他のエリアでも出来るようにするのである。そのために、あなたのやり方を文書化しないといけない。それが、事業をスケールさせるための最初の仕事である。

ステップ12.  (雇用)契約書を作る

事業をスケールさせるためには、あなたがこれまでにやってきたことを他の誰かにやってもらう必要がある。そのためには、誰かを雇用するか、フランチャイズ化することである。いずれにしろ、契約書が必要である。誰かを雇う前に契約書を作るのである。

あなたの知的財産を守りたければ、将来的な関係性を理解と信頼に基づくものにしたければ、このステップを慎重に進めてほしい。とても重要なステップである。したがって、あなたは法律関係のサービスを提供してくれる人を慎重に選ばないといけない。

ステップ13. 最初の人材を採用する

最初の人材(またはフランチャイジー)とは、あなたがやっていることを、自分もやりたい、と思っている人である。彼らを採用する際、あなたの有利な点は、あなたがすでに、それをやる経験を積んでいることである。それが彼らにとっては、素晴らしい取引の価値になるのである。

ステップ14. 人材トレーニングの仕組みを作る

最初の人材をトレーニングする。これは厳格に行うプロセスである。なぜならば、彼らはあなたのトレーニングに反抗する可能性があるからである。なぜ彼がそれに反抗するかというと、世の中が基準のない世界になりつつあるからである。私たちの大半は、厳格なトレーニングを要求されることに慣れていない。

従って、全てのステップで、とても明確な道筋が作られる必要がある。彼らがプロフェッショナルとして、弟子として、価値提供できるようになるまで。人材トレーニングの仕組みは、人材を連れてきてから作ればいい。

幸いなことに、このトレーニングの仕組みを作る過程において、これまで作った、価値提供、営業、集客の仕組みの改善の地を見つけることが出来るだろう。新しい人材を参加させたとき以上に、仕事を改善する機会が発生することは無いのである。



ステップ15. マネジメントの仕組みを作る

人が増えるにしたがって、仕事が事業へと昇格する。それによって、マネジメントの仕組みが必要になる。マネジメントの仕組みは3つの目的がある。

  • 一つ目は仕事の成果を監視すること
  • 次に仕事の運営システムを改善すること
  • 三つ目に現在の基準を超えて、可能性を継続的に拡大させること

ステップ16.事業を複製する

今、あなたのマネジメントの仕組みは、機能を果たし始めた。そうなったら、事業を複製するときである。つまり、他のエリアに拡張したり、新しいサービスを提供できるようになる。あなたが創り上げた仕組みは、それらの場所でも同じように機能するだろう。このようにして、最初は1から始まった事業が10へ、100へと拡張していくのである。そしてゴールデンピラミッドが完成する。全ての仕組みが統合されるのだ。

新規事業の進め方を図にしたまとめ

以上、ガーバー氏のゴールデンピラミッド戦略についてご紹介しました。英語のものを翻訳したため、また、ガーバー氏独特の言い回しがあったため、分かりにくい部分もあったかもしれません。そこで、内容を図にしてみました。

新規事業を進めるゴールデンピラミッド戦略

自社リソースと顧客ニーズのマッチング

上記ピラミッドは下から見ていきます。まず、自社リソース(能力や技術、組織等)を棚卸し、顧客ニーズとマッチングさせます。顧客ニーズは一見して明らかではない場合が多く、そのために顧客について学ぶ必要があるとガーバー氏は述べています。顧客のデータを調べるだけではなく、顧客に聞くだけではなく、顧客を観察し、顧客と一緒に過ごす時間を増やすことが大事となります。

特定の顧客に向けた価値提供、営業、集客の仕組み

次に、選んだ顧客に対する価値提供、営業、集客の仕組みを作ります。これは私たちが”商売の基本サイクル”と呼んでいるもので、少なくとも会社がそれほど大きくないうちは、この商売の基本サイクルを以下にうまく回すかが成長のカギを握ります。したがってまずは社長自身(事業責任者)がこのサイクルを自分で回し、上手く成果が出るまで探索を続けることが大切です。

マネジメントの仕組み

商売の基本サイクルが上手く回りだしたら、そろそろ人を入れて、自分の代わりにやってもらうタイミングです。そのために、商売の基本サイクルの実行方法を文書化することが欠かせません。

そのうえで、マネジメントの仕組みを作ります。本記事によれば、マネジメントとは、

  • 商売の基本サイクルの成果を追跡すること
  • 商売の基本サイクルを改善すること
  • さらに新しいやり方を探索して商売の基本サイクルを改革すること

の3つになります。

エンタープライズ(複数事業管理)

ここまで来るとひとつの事業が無事に立ち上がったことになります。今度は、その経験を踏まえて、別の場所に拠点を展開したり、サービスを横展開したりすることが出来ます。その際の方法は、すでに出来上がった仕組みを複製することです。

 

以上、本日は新規事業を進めるためのゴールデンピラミッド戦略についてご紹介しました。これはあくまで全体像を述べたものなので、細かい仕組みづくりについては触れていません。個別の仕組みづくりについて知りたい方は、仕組み経営のトップページからご覧ください。

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