キャッシュフロー改善に向けた完全チェックリスト



清水直樹
言うまでもなく、キャッシュフローはビジネスの血液です。本記事では会社の仕組みを精査することで、“キャッシュ、キャッシュフローを最大化”するための方法をご紹介します。

 

キャッシュフローに関する成長のパラドックス

成長すればキャッシュが潤沢になるが、成長するためにはキャッシュが必要です。これは多くの経営者が頭を悩ますパラドックスだと思います。早く成長しようとすればするほど、多くのキャッシュが必要になるわけです。

たとえば、集客や営業にお金が必要となり、より多くの在庫を仕入れるためにもお金が必要です。品質管理やカスタマーサービスのシステムを向上させるためにもお金が必要となるでしょう。

 

キャッシュフローを改善する6つの方法

ビジネスの“勢い“は、スピードと大きさによって決まります。弾丸は大きさは小さいですが、スピードが速いために勢いがあります。雪崩はスピードは遅いですが、大きい(重い)ために勢いがあります。

これはビジネスについても同じことが言えます。キャッシュの量が多いほどビジネスに勢いが生まれるし、キャッシュを動かすスピードが速いほど勢いが生まれます。

では、どのようにして、キャッシュフローの勢いを作ったら良いでしょうか?これには基本的な6つのルールがあります

  1. 資産を減らす
  2. 負債や資本を増やす
  3. 売上を上げる
  4. 現金支出を減らす
  5. 生産性を上げる
  6. タイミングを最適化する

多くのビジネスオーナーは、売上を上げ、キャッシュの支出を減らすことしか頭にないのですが、実際には他の方法もあります。上記それぞれの方法には、リスクや落とし穴が存在し、また、各会社で違う戦略が必要になることがあります。

 

1.資産を減らす

使っていない資産がないかどうかを見極め、ビジネスに悪影響をもたらさない範囲で資産をキャッシュに換えることができます。旧式で生産性の低い機械や設備はないでしょうか?社員は効率的な作業を行っているでしょうか?また、作業工程の一部を外注することで、設備を不要にできないでしょうか。

 

2.負債や資本を増やす

銀行や投資家からの資金調達によって、現金を増やすことができます。ただし、これはあなたの会社をコントロールする力を低減させることになり、受け取る収入も減らす可能性があります。

 

3.売上を増やす

これはもっとも望ましい現金を増やす方法です。しかし、通常売上を上げる前に現金の投資を必要とします。現金の投資を必要としない方法としては、価格を上げる、支払いの期日を変更する、前払いシステムを導入する、などがありますが、いずれも慎重に行わなう必要があります。支払い方法の選択肢を増やすことで、現金の流れを速めることも出来ます。

・前払い制度・・・販売価格の全部、または一部を前払いしてもらう。

・現金払い・・・可能な限り、現金払いをしてもらったほうが良いのは当然である。

・支払期日の設定・・・早期割引制度など、期限日までに支払うことで値引きが得られるようにすれば、現金の受け取りを早めることが出来る。

・オンライン決済システム・・・様々なタイプのオンライン決済システムが存在し、通常のクレジットカード決済よりも早く現金化できるシステムもある。たとえば、Paypalは決済後、1-2営業日で現金化が可能。

 

4.現金支出を減らす

これも好ましい方法です。支出を無くす以外にも、支払いを遅らせたり、分割払いにする方法があります。また、通常、大量に備品や商品を購入すれば、割引を受けることが出来ます。仕入先と協力することで、キャッシュフローを速めることも出来るでしょう。

 

5.生産性を上げる。

これはどんなビジネスにおいても、追求できる可能性があります。システムや人材のより有効的な活用を通じて、使える現金を増やすことができます。

 

6.タイミングを最適化する

受け取る、または支払い現金の総量を変えずに、使える現金の量を増やすことができます。これには一般的に3つの方法があります。

・支払い期限を延ばす

これは現金を保持しておくのに良い方法ですが、取引先との関係性に気を配る必要があります。また、支払いを延ばしたことによって、値引きの機会を逃したり、金利などの負荷を課されたりする可能性もあります。

・受け取りを早める

売上の受け取りを早くすることで、使える現金を増やすことができます。ただし、これも同じく利点と欠点があります。

・ジャスト・イン・タイム

これは備品や在庫などを、“貯めておく”のではなく、“必要なときにその都度”仕入れるということです。それによって、大型の現金支出を控えることができます。ただし、うまくコントロールしなければ、必要な備品や在庫を切らしてしまい、機会損失が生まれる可能性もあります。

 

いずれの方法も現金を増やすことに役立ちますが、どれが最適かはそのビジネスによって異なります。あなたの状況に合わせて、使える方法を検討するようしましょう。

 

キャッシュフロー改善のためのチェックリスト

このチェックリストを使うことによって、どのようにして、お金の流れを“スピードアップさせるか?”、会社のどこに現金が“隠れているか?”を検討することができます。もちろん、これで会社のお金に関するすべてをカバーできるわけではないし、会社によっては当てはまらない項目もあるかも知れません。しかし、いずれにしろ、キャッシュフロー改善について考え始めるための良いスタートとなるでしょう。

それぞれイエス/ノーで答えてみましょう。



支払勘定.(未払い金)

  • 毎月の平均支払日数をチェックしている。
  • 数量や付き合いの深さに基づき、より好ましい仕入れ価格をベンダー(仕入れ業者)と交渉している。
  • 年に1、2度、確認のために他の仕入れ元と比較を行っており、ベンダーとの取引は最高のものに近づいて行っていることを理解している。
  • 支払を引き延ばす目的でベンダーとの間で分割払い制度を採用している。
  • 価格や支払い期間の譲歩と引き換えに、ベンダーと排他的/長期的な提携を行っている。

 

売掛勘定

  • 毎月の平均売掛日数をチェックしている。
  • 平均受取日数は35日未満である。
  • 顧客には支払いが30日より遅れた者・社はいない。
  • 一部の顧客に早期支払いに対する割引を提供している。
  • 集金システムは可能な限り確実なものになっている。
  • 支払いの遅延が現実になる前にそれを検出する目的で、受取勘定を頻繁に確認している。
  • 顧客との関係を悪化させることなく、現金回収の速度をめる (早期の支払い、迅速な支払い、現金、電子決済) 可能性を常に追求している。
  • 未回収金がある場合、債権回収業者に依頼している。

 

設備

  • 短中期的に必要性のない遊休設備および施設について調査を行っている。
  • 生産性を高め、キャッシュフローを改善する目的で、時代遅れの設備および施設を入れ替えることを検討している。
  • 設備からキャッシュフローを産み出す目的で、リースバック契約の可能性を追求している。(※リースバック・・・事業用資産を売却し、それをそのまま使用しながら、買主に使用料を支払う方式)
  • 設備や施設を購入するのではなく、アウトソーシングできるものがないかどか、検討している。

在庫

  • 事務用品の在庫を管理する手法がある。
  • 在庫量を減らす目的でジャスト・イン・タイム方式を検討している。
  • 在庫が何日分あるか、常に把握している。
  • 在庫の資産価値を常に把握している。
  • 遊休在庫 (材料および部分完成品は「遊休状態にある」) をなくす目的で、業務の再設計を検討している。

マネジメント

  • 自分の会社で働いている家族あるいは親戚はいない。
  • 私は週に45時間以下しか働いていない。
  • 与信条件での販売を少なくする目的で利用する、かなり厳しい与信承認プロセスがある。
  • 一部の業務を顧客に行ってもらい、そのことにより支出を削減する方法を検討している。
  • 社員は現金および支出に関する切迫感をもっており、また、倫理的と考えられる範囲内で現金をより早く手に入れ、より遅く支払うように積極的に行動している。
  • 望む限り長期間、社員を雇用し続ける (社員採用と研修の費用を最小化することになる)。
  • 新たな社員を雇用する前に、当社がその人物を本当に必要としており、その雇用なくしては業務を革新あるいは遂行できないことを徹底的に確認している。
  • 季節性の需要の波に合わせて、正しく人員配置を行う方法が確立されている。(まったく季節性のない事業の場合は、空欄のまま)
  • 残業代はほとんど発生しない。
  • 社員の生産性を確認し、業績の検討を行い、また、社員がその業務に完全にコミットしていることを確認する目的で、EDMを定期的に開いている。
  • 私以外にも簿記業務を行っている者がいる。

セールス&マーケティング

  • リード(見込み顧客)と24時間以内に連絡をとる方法を知っている。
  • 顧客がどこで当社のことを知ったのかの質問を行い、それを記録している。
  • マーケティング活動の効果を追跡している。
  • 既存の顧客と月に1回以上のペースで連絡をとっている。
  • 顧客データベースは十分に管理されており、リードを効率的に活用していることを知っている。
  • 営業担当者がリードを「選り好み」しないための方法がある。
  • 各営業担当者のコンバージョン(成約)率を確認することができる。

 

財務管理

  • キャッシュフローを増やす目的で、銀行サービスを利用している。(利付当座預金口座、デイリー投資口座、電子バンキングなど)
  • 銀行の担当者と、キャッシュフローをどのように改善するかについて、話し合っている。
  • 一定額以上の支出に対し、発注書および/または経営陣の承認を必要としている。
  • 原価(率)の業界標準を知っている。
  • P/Lまたは関連する報告書により原価(率)を把握することができる。
  • コストを管理する目的で、誰かが原価のパーセンテージを管理している。
  • 社員の賃金は業界の平均賃金よりも高いわけではない。
  • 利益分配制度またはその他のインセンティブ制度を利用して人件費を削減することを検討している。
  • 私は会社を通しての個人的な支出は一切行っていない。
  • この6か月間に、P/Lを1行1行分析した。
  • 予算計画をもっており、各月末の予算差異報告書を翌月の10日までにチェックしている。
  • 翌月5日までに、前月のP/L書類を手に入れている。
  • 損益計算書とは別に、毎月、営業キャッシュフローを確認している。
  • 損益計算書とは別に、資本の予算計画をもっている。
  • 四半期に1回以上、会計士と相談している。
  • 収益性および/またはキャッシュフローを増大させることに関して、会計士と協働している。
  • この6か月間に価格を見直した。
  • 設備の減価償却、R&D(研究開発)費用の償却などを通じて、キャッシュフローを増やす目的で、非現金性の支出を増やすことを検討している。
  • サプライヤーおよび、彼らとの購買契約の条件が書かれたリストがあり、個々のリストは、関係についてのメモとともに、交渉のための手段についても書かれている。
  • キャッシュフロー計画を利用して、現金残高を遅くとも3か月前までに予測している。
  • 予算計画を準備し、また、その他のより高レベルの財務管理業務を行うコントローラー、または他の人がいる。
  • 長期的な財務目標および計画を話し合えるCFOまたは他の人がいる。

 

キャッシュフロー改善の仕組みを創ろう

以上、いかがでしたでしょうか。

なお、このサイト「仕組み経営」ではキャッシュフローを改善する仕組みづくりもご支援しています。詳しくは以下からどうぞご覧ください。

 

 

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