仕組み化とマニュアル化の違いと正しい進め方



清水直樹
今日は仕組み化とマニュアル化の違いをご紹介し、正しい仕組み化、正しいマニュアル化の進め方をご紹介していきます。

 

マニュアル化は仕組み化の一部

日頃、多くのお客様の仕組み化やマニュアル化をご支援しているのですが、両者の違いについて質問いただくことがあります。

  • 仕組み化って、業務をマニュアルにすることですよね?
  • うちにはマニュアルがあるので、仕組み化できていると言っていいですかね?

という感じです。

どちらも部分的には正しいのですが、仕組み化=マニュアル化ではありません。マニュアル化は仕組み化の一部と言えます。図で示すと以下のようになります。

事業を仕組み化していく全体像

この図に基づき、仕組み化とマニュアル化の関係性を見ていきます。

 

仕組み化の意味とは?

まず、仕組み化の意味について考えてみましょう。

仕組み化とは、

  1. 目的(得たい結果)を実現するために、
  2. 複製可能な仕事のやり方を設計すること

です。

例を挙げてみましょう。

ドミノピザの30分で届ける仕組みはどう出来たか?

ピザの宅配と言えば、ドミノピザが生み出した「30分以内にお届けできなければ無料」というキャッチコピーが有名です。ドミノピザは、ピザは熱々の状態で食べてもらうことが最もおいしい食べ方である、と考えました。一方、宅配にはどうしても時間がかかります。そこでまず、「30分以内に届ける」という「目的(得たい結果)」を定義しました。

では、その目的を実現するためにはどうすればいいでしょうか?

仕組み化の発想が無い場合には、ドライバーに道を完璧に覚えさせ、運転テクニックを上達させ、、、などのように、”人力によるガンバリ”で実現しようとします。

中には、熟達したドライバーがいて、30分以内に配達できるケースもあるかも知れません。しかし、新人が宅配したら1時間もかかる、というのでは「複製可能な仕事のやり方」とは言えません。

つまり、これは30分以内に届ける仕組みができているとは言えないのです。

いつでもだれでも30分以内に届けるためには、宅配を「複製可能な仕事のやり方」にする必要があります。

そのためドミノピザでは、「届け先に近い場所に店舗があればいいのでは?」と考え、商圏を小さくし、店舗数を増やす方法を採りました。届け先が近ければ、新人ドライバーが安全運転しても30分以内に届けられます。つまり、「複製可能な仕事のやり方」が出来たのです。

まとめると、ドミノピザの宅配の仕組みは、

  1. 30分以内に届けるという目的(得たい結果)を実現するために、
  2. 商圏を小さくした出店戦略を実施する(これは世界中で複製可能)

ということになります。

これにより、個人のガンバリに依存することなく、成果が出るようになっているわけです。

仕組み化には創造力が欠かせない

ドミノピザの例で重要な点は、30分以内に届けるという目的があったとき、それを複製可能な形でどう実現するか?というアイデアを生み出す部分です。ここには創造力が求められます。よく、仕組み化したり、マニュアル化すると社員の創造性が妨げられる、という意見がありますが、実は全く逆なのです。創造力がなければ有効な仕組みなどできないのです。

この、目的をどう実現するか?を考えることを”探索”と呼ぶことにします。

目的⇒探索⇒マニュアル化⇒改善

ドミノピザの場合に戻って考えてみましょう。



彼らは探索の結果、商圏を小さくした出店戦略を思いつきました。おそらくですが、彼らが次にやったことは、「では、どれくらいの商圏にすればいいのか」という基準を決めることだったはずです。30分以内に届けられて、かつ十分な採算がとれる商圏を導き出す必要があります。たとえば、「半径5キロ圏内に人口1万人以上」等です。このような自社独自の業務基準を定める作業を”標準化”と呼びます。

標準化が出来たら、次がマニュアル化です。先ほど決めた「半径5キロ圏内に人口1万人以上」という基準が、社内で徹底、共有されるためには文書化しておく必要があります。Aさんはその基準を知っているけど、Bさんは知らない、というのでは意味がありません。そこで「店舗を出店する場合には、商圏分析を行い、半径5キロ圏内に人口1万人以上の場所に出店すること」というような感じで文書化し、社内に流通させるわけです。これがマニュアル化です。

仕組み化はここで終わりません。次に改善が必要になります。改善とは、今行っている業務のやり方が実態にそぐわない場合にやり方を変更したり、もっとうまいやり方を見つけた場合に変更することを指します。また、当初の目的に変更があった場合にも改善が必要となります。

ドミノピザでは、いまは30分以内どころか、5分以内、10分以内というより高い基準を目指しているそうです。そのためには、今の仕組みを改善する必要があります。マニュアルもそれに合わせて、半径5キロ圏内ではなく、3キロ圏内に変更する必要があるかもしれません。

このように、仕組みやマニュアルは作って終わりではなく、より高い基準を目指して改善をしていくものなのです。

という感じで、仕組み化の意味からマニュアルの位置づけをご紹介してきました。

 

仕組み化とマニュアル化の正しい手順

次に、より身近な例とともに、仕組み化とマニュアル化の正しい手順を見ていきましょう。

仕組み化の最初のステップは目的(得たい結果)の定義

最初のステップは、目的の定義です。全ての仕組みには目的があります。目的不在の仕組み化は、単に会社を官僚組織にしてしまうだけになります。会社は様々な仕組みで成り立っており、それぞれが関連しあっています。そして、すべての仕組みに個別の目的があります。

さらに、社内の全ての仕組みは、最終的にひとつの目的につながっている必要があります。その目的とは、会社の理念(ビジョン、ミッション、バリュー)です。全ての仕組みは理念を実現するためにあります。

つまり、仕組みを創る場合には、それがどう会社の理念実現につながっているか、という視点を持つことが欠かせません。

具体的に例を挙げてみましょう。

ウェブデザイン会社の例

あなたが法人向けにウェブサイトデザインのサービスを提供している会社を経営しているとします。あなたのビジョンは、日本全国の1割の会社に自社のサービスを届けることだとしましょう。日本で法人組織として動いている会社数は大体50万社なので、その1割と言うと5万社になります。5万社に自社のサービスを届ける。これがあなたの会社のビジョンです。

すると、会社内の全ての仕組みは、このビジョン達成のために設計する必要があります。

現在の仕組みでは、一案件をこなすのに、一人のデザイナーが3か月かけているとします。これで1年で4件こなせます。デザイナーを20人抱えているとすると、会社全体では、年間80件がキャパシティということになります。そうなると、いまの仕組みで5万社に対応しようとすれば、625年もかかることになります。超長寿企業にならないとこれは無理です。

また、マーケティング面も考えないといけません。5万社にリーチするためには、いまのマーケティングの仕組みではとても無理かも知れません。5万社の中には、予算がそれほど無い会社もあるはずなので、価格設計も考えなおす必要があります。

では、5万社に自社のサービスを届けるにはどのような仕組みが必要でしょうか?

たとえば、

  • 1案件3か月ではなく、1か月で納品できる仕組みにしたらどうか?これによって、対応スピードは3倍になりますので、ビジョン達成は208年に短縮されます。
  • デザイナーの育成スピードを早める仕組みを考え、20人ではなく、40人に増員したらどうか?これによって、さらにビジョン達成は104年に短縮されます。
  • サービス内容を特化させ、より安価で幅広い会社に対応できるようにしたらどうか?これによって、予算が無い会社でもサービスを受けられるようになるかもしれません。

これらはあくまで空想上の話ですが、このように創造力を働かせることこそが、起業家的な経営者が行っていることです。

私はビジネスの世界に入って早い段階で、ビジネスを構築するにあたって、ビジネスリーダーが職人的な技術に没頭してしまっていることが、大きな負債であることを学んだのです。つまり、職人的な状態であることは、失敗が運命付けられている。

ビジネスが完成したとき、どうなっているのか?という明確なビジョンがなければ、職人的な知識、マネージャー的な知識があっても、組織図の一番下のところで、枝葉末節のことを繰り返しているに過ぎません。

-ロジャー・フォード(Anthem Equity Groupパートナー・連続起業家・プロ経営者)

 

目的を達成する方法を探索する

様々な思考の結果、納品を3か月から1か月に短縮することを”目的”として定義したとしましょう。これは最終的にビジョンとつながっている目的です。もちろん、これは非常にチャレンジングな課題です。事業モデルを完全に作り替えないといけないかもしれません。しかし、納品を1か月に出来たとしたら、社内的に生産性が高まるばかりではなく、お客様からも喜ばれるはずです。短納期が評判となり、自社の強みとなり、5万社にリーチするマーケティングの仕組みも現実味を帯びてくるかもしれません。

さて、ではどうやって3か月から1か月に短縮できるでしょうか?

ここから”探索”モードに入ります。

3か月の納期を1か月にするには?

ここでデザイナーを徹夜させて納期に間に合わせよう、と考えたのでは仕組み化の発想とは正反対です。繰り返しますが、仕組み化とは、「複製可能な仕事のやり方を設計すること」です。理想的には、デザイナーが悠々自適に働きながらも、1か月で納品できる仕組みを設計しなくてはいけません。

無能な将軍のもとでは、兵士がムダな血を流すことになります。有能な将軍は、まず戦わずに、つまり、兵に血を流させることなく勝つことを目指します。

同じように、社長が行うことは、社員が楽に働きながらも、成果を出せる仕組みを創ることです。

マイケルE.ガーバー著「はじめの一歩を踏み出そう」の中では、経営者が持つべき人格として、「職人」「マネージャー」「起業家」が登場します。このうち、「起業家」の人格が行うべきことが、”目的”と”探索”です。ここに創造力が求められます。

創造力が求められるので、根を詰めて目の前の仕事をこなしているだけでは、決して答えがやってきません。だから自分でなくてもできる仕事は他の人に委任し、”起業家の時間”を持つことが大切なのです。

 

誰でもできるように標準化する

”探索”の結果、納期を1か月にするアイデアが見つかったとしましょう。今度は、そのアイデアを具体的に業務プロセスとして組み立てることが大切です。これが標準化です。Aさんは出来るけど、Bさんは出来ない、というのでは標準化できていません。

 

標準化された業務をマニュアル化(文書化)する

そして、マニュアル化です。標準化されたやり方を文書に落とし込みます。マニュアル化することによって、全デザイナーに1か月で納品する方法を正しく伝えることが出来ます。また、新人デザイナーが入ってきた際にも、そのマニュアルに基づいて教育することで、早期に戦力化が可能になります。

仕組みが圧倒的差別化を生み出す

ここまで来ると、あなたの会社は、他のデザイン会社と比べて、圧倒的な差別化を実現していることになります。普通にやったら3か月かかるところを1か月で納品でき、教育するためのマニュアルがあるので、デザイナーを増やすこともできます。

このように考えると、マニュアルというのは、自社にとっての非常に重要な知的資産であることがわかると思います。たまに、”仕組みやマニュアルは他社のものをパクってくればいい”というコンサルタントがいますが、容易にパクれるマニュアルなど何の意味もないことがお分かりいただけると思います。

ここまで見てきて、理想論に過ぎない、と思われる方もいるかもしれませんね。しかし、社長は理想論を追求しないといけないのです。社内で誰も理想論を掲げなくなったら、その会社に未来はありません。

誰かが、ビジョンを繰り返し思い出させる人が必要なんだ。我々は着実に進んでいる。ゴールは蜃気楼なんかじゃないと言う必要がある。- スティーブ・ジョブズ

 

絶え間ぬ改善のプロセスを回す

最後(と言ってもループするのですが)のステップは、改善です。改善とは、より良いやり方を見つけるための絶え間ないプロセスです。過去40年間、世界中のビジネスを見てきたマイケルE.ガーバー氏によれば、”どんな仕組みであってもまだ改善の余地がある”とのことです。

仕組みの改善とは、”いまと同じか、それより少ない労力で、今以上にお客様に大きな価値を提供する方法を探すこと”です。これ以外の定義はありません。言い方を変えると、インプットを減らし、アウトプットを高めるということになり、生産性を高めることと同義になります。

 

仕組み化とマニュアル化を進めるなら仕組み経営

というわけで、仕組み化とマニュアル化の関係性から、仕組み化、マニュアル化の正しいステップをご紹介してきました。ぜひご参考にされてください。

なお、仕組み経営では、社長がビジョンを描くところから、それを実現するまでの仕組み化、マニュアル化までを一貫してご支援しています。

詳しくは以下からガイドブックをダウンロードされてください。

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