ホーソン実験(エルトン・メイヨー)で分かった人間関係論について解説。



清水直樹
今日はホーソン実験、ならびに実験で中心的役割をになったエルトンメイヨーの話をしたいと思います。

 

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目次

ホーソン実験とは?

ホーソン実験とは、シカゴ郊外にあるウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場において、1924年から1932年まで行われた一連の実験と調査です。

ホーソン実験の目的とは?

ホーソン実験に大きく貢献したエルトン・メイヨー氏は、さまざまな大学で研究をしてきて、最終的にハーバード大学院に招聘され、勤務することになりました。そこでの研究所の名前が、疲労研究所。

テイラー主義でどんどん工場が生産性を上げていく中で、人が疲れるという問題が出てきました。疲れるという問題で生産性が下がるので、疲労の問題をどうにかしないと、これ以上生産性が高まりませんよね、ということでどうやって疲労を軽減させるかを研究するのが疲労研究所でした。ここでメイヨーが勤務することとなります。

テイラー主義についてはこちら:

科学的管理法(by フレデリックテイラー)とは?問題点、メリット、デメリットについて解説

ホーソン実験でエルトンメイヨーが導き出したのは人間関係論

そして、とある時にAT&T(日本で言うNTT)という電話事業者の子会社の工場から依頼され、工場の生産性を高めるためにはどうすればいいかを研究してほしいということで、工場にいきます。

工場の名前がホーソン工場だったので、その工場で行われた実験をホーソン実験と呼ばれ今でも有名な実験と言われています。

この後、どういう実験が行われたということと結果についてお話したいのですが、簡単に結論から言いましょう。

ホーソン実験は8年間くらい行われたのですが、一つの実験だけでなく、いろんな実験を行い様々なデータが集まりました。

メイヨーの結論としては、「作業条件だけ変えても生産性は高まらない、それよりも職場の人間関係の方が工場の生産性に影響を与えるのだ」という結論を導き出しました。それが「人間関係論」と呼ばれるもので、のちにも続いていくものになるのですが、

ホーソン実験には批判もあった

一方で、ほかにもその研究・実験データを元に分析した人がいて、データの分析の仕方、視点によって結論が違ったりするわけですね。

なのでメイヨーは人間関係が影響すると結論つけたのですが、他の人は「こういう要素が影響している」「やはり科学的管理法の言ってることは間違っていない」というような議論が起こりました。なので諸説あるのですが、一応、ホーソン実験の大枠の結論としては「人間関係が生産性に影響を与える」という話になっています。

 

ホーソン実験(1924年~1932年)で行われたこと

ホーソン実験は、1924年~1932年にホーソン実験が行われたと言われていますが、その前後にいろんな実験が行われていますので、この年代については諸説あります。

ただ、メイヨーが主に関わったのはこの年代であるということになります。

いくつか実験が行われたのですが、メインとしては以下の3つ、または4つです。

  • (照明実験)
  • リレー組み立て作業
  • 面接調査
  • バンク配線作業

照明実験がカッコ書きになってますので、これを入れると4つで除くと3つということになります。

 

1.(照明実験)

まず、照明実験。なぜカッコ書きになっているかというと、メイヨーがホーソン工場に来る前から行われていた実験だからです。

最後の方に少し関わったのですが、そういう意味でカッコ書きになっています。この実験は内容自体はたいして面白くない実験なのですが、結論が面白いのでそれを紹介したいと思います。

これは電気事業者の依頼を受けて実施したもので、日本でいうと東京電力など電機を作っている、電気関係の会社から「照明の明るさを上げれば工場の生産性が上がるだろう」という仮説を検証してほしいという依頼を受けて実施したものです

工場の明かりをたくさんつけて工場を明るくすれば生産性が上がるという仮説が実証されれば、彼らとしてはおいしい。電球もどんどん使ってくれるし、電気もどんどん使ってくれるので自分たちのビジネスも潤う。

証明実験の結果:照明を明るくしても生産性は変わらず

この実験をやってそういった結論を導き出したかったのですが、結果として何も変わらなかったという結論が出て、見事にもくろみが外れたという結論が出ました。作業場の照明を変えても作業効率は変わらなかったということですね。

もう一つ面白いのが、暗すぎると作業効率が下がることがわかったということです。

暗すぎるというのがどのくらいのレベルかというと、作業員の手先が見えなくなるまで暗くすると生産性が下がるという結果が出たという、すごく当たり前なことを結論として導き出したというのがこの照明実験になります。

 

2. リレー組み立て作業

5名の女性陣が選出されその人たちの生産性を実験したというのがリレー組み立て作業です。作業条件を変えて、作業量を計測したというものです。



この作業条件というのは賃金・休憩・軽食・室温・湿度を変えてどういう条件にすれば作業量が増えるのかというのを実験しました。

リレー組み立て作業の結果:作業条件を変えても生産性は変わらず

ただ、これも当初の仮説とは異なり、作業量は条件を変えても変わらなかったという結論になりました。賃金を上げても休憩を増やしても意外なことに作業量は最終的に変わりませんでした。

なぜ変わらなかったのかということも諸説ありますが、一つは、5人の女性陣は大勢の作業員の中から選ばれて実験に参加した、且つ実験というのはハーバードの大学院が関わっている非常に由緒正しい実験でした。

その実験に選ばれたという誇り、名誉があり、彼女たちは一生懸命働いたと言われています。

このような効果をのちに、ホーソン効果と呼ぶようになりました。その人に期待をかけたり誇りを持たせたりすると生産性が高まるというのをホーソン効果と呼んでいます。

なので、このリレー組み立て作業では作業条件を変えても作業量は変わらなかったという結論が出たということになります。

 

3. 面接調査

次に面接調査。ここからメイヨーが主となり関わっていた実験と言われています。

工場は実験をやりながら稼働しているので、を請けていたのですが、工場の規模が拡大してビジネスが成長してきました。

そして人が増えてきたのですが、人をマネジメントするのに管理者が足りず、管理者訓練の必要が生まれてきました。

管理者を訓練するのに、作業員の不平不満を聞いてみようということで、面接調査が始まりました。計、2万人以上の面接が行われました。

面接調査の結果:感情が生産性に影響を与える

ここでメイヨーが中心となってどういう質問をすべきかということを研究しながらやっていたのですが、ここで分かったのは、作業員の不満は事実に対する不満もあるし、感情的な不満もある、ということで彼らの不満は作業状況以外にも色々あり、実は作業条件以外の要素も生産性に影響を与えることが分かったというのが、多くの人たちへのインタビューで分かりました。

この面接調査というのは、非常にカウンセリング的な要素もあり、今、カウンセリングなども会社内で行われているケースがありますがその走りとなったのがこの面接調査だと言われています。

なので、ここで分かったのは、人々が思っていることは作業条件以外にもあり、ほかの要素が生産性にも影響を与えているということが分かりました。

 

4. バンク配線作業

4つ目、バンク配線作業。これは、作業者同士の人間関係を調べるために実施されました。

ここでは、作業所の正式な組織図以外の、非公式集団の存在が発覚しました。公式な組織では、例えばAというグループ、Bというグループがあって、ABグループの作業員同士の交流というのは普通に考えると無いと考えられています。

バンク配線作業の結果:非公式集団が生産性に影響を与える

しかし、実際はそうではなく、Aグループの~さんはBグループの~さんと非常に交流があり、そこで意見のやりとりがあり、そのやりとりの内容が生産性に影響を与えているのが分かったというのがこのバンク配線作業というものになります。

今考えると非常に当たり前だと思われるれるかもしれませんが、当時はそういう考え方はなかった。

集団的作業量制限行為(集団的サボり)

そして、「集団的作業量制限行為が生まれた」ことがわかりました。

これはなにかというと、例えば、とある作業グループがあったとします。5人でやっているとします。

5人の平均的な生産高は一人当たり10個だとします。一日で一人当たり10個製品を作れるとします。その時にある一人がすごく頑張って一人だけ一日15個作れるようになった。

そうすると、他の4人は「1日に15個も作るな。10個にしておけ」というような生産性を抑えるような働きかけを行うというのがこの集団的作業量制限というものです。

こういったことが工場の中で日常的に行われていて、それが全体の生産性を下げていることが分かったということでした。

なぜ、頑張っている人を抑えようとするのかというと、一人の人が15個作って、他の人が10個しか作れないとなると、グループの管理者は、「一人15個作れているのだから他の人も頑張れば15個つくれるだろう」と考えます。

そうすると他の1日10個作っていた人たちは、もっと頑張って15個作らないといけないというプレッシャーをかけられるわけです。それが嫌だったということですね。

なので、一人とがった人が頑張り始めると他の人が抑えにかかるということが行われてきたというものです。



今でもありますよね。特に新人が入ってくるとこういうことが起きますね。今まで10個くらいで適当にやっていたのが、新人が意気揚々と頑張って15個作ってしまうと、いままでサボッてきたことがばれてしまうので、新人に対してあまり頑張るなと言って生産性を下げるという行為が蔓延していたということが分かりました。これがバンク配線作業というものです。

 

ホーソン実験の結果:人間関係論

というわけで、ホーソン実験で得られたことをまとめていきます。

ホーソン効果:人は経済的成果よりも社会的成果を求める

まず、ホーソン効果。人は経済的成果よりも社会的正解を求めるということ。

経済的効果というものは「これをやったらいくらもらえます」という賃金のことですね。

それよりもその仕事に対して誇りを持てるか、人から賞賛されるかということの方が生産性に影響を与えるということです。

人は合理性よりも感情に左右される

人はこうすれば賃金が上がる、と合理的に理解していても、感情次第でその行動を起こさないこともあるということです。

人は公式ではなく、非公式集団に影響を受ける

公式組織のボスである監督者の言うことより、非公式集団の同僚の言うことを聞いてしまうということですね。

 

レスリスバーガーによるホーソン実験のまとめ

もう一つ別のまとめ方をします。それが「レスリスバーガー」によるまとめというものです。レスリスバーガーはメイヨーと一緒にホーソン実験に関わっていた人で、メイヨーの同僚です。

彼がこのホーソン実験をうまくまとめているので最後にそれを紹介したいと思います

 

仮説①労働条件を変えれば生産性が上がる

当初の実験の仮説としては作業条件を変えれば生産性が変わるだろうという仮説でした。

なので、工場サイドとしては、どういう風に労働条件を変えれば生産性が変わるか試したかったということです。

それで最初の組み立て作業のように色んな条件を変えてテストしたのですが、結果としては工場の思った通りにはならず何を変えても生産性は高まりませんでした。

仮説②みんなのやる気が生産性に影響を与える

じゃあ何が影響していたかというと、労働条件でなくて、みんなのやる気(モラル)が生産性に影響していたということです。

これは個人個人のやる気というよりも、集団全体のやる気。日本で言うと、組織の士気や全体の一体感みたいなものがこのモラルです。これが非常に生産性に影響を与えていることがわかりました。

仮説③個人的来歴と非公式集団が生産性に影響を与える

では、みんなのやる気に影響を与えるものは何かというと、面接やいろんな実験をして分かったのがこの2つ。

一つは個人的来歴。これは、その人の今までの経験やその人の置かれている家庭環境。仕事以外の面でのその人の人生です。これが、個人の働きぶりに影響を与えている。

もう一つは非公式集団の影響で決まるということです。なので、実は労働条件で決まると思われていた生産性は、このような他の条件によって決まるということが分かりました。

 

ホーソン実験を現代に活かすには?

なので、ホーソン実験から僕らが学べる事としては

  • 作業条件を変えても大して会社の生産性に影響はしないということを理解する
  • みんなのやる気を高めないといけない
  • 非公式集団の扱いを大切にする

ということが分かります。

ホールネス(Wholeness):一体性、全体性を実現しよう

これを一言で表すとすると「Wholeness 一体性、全体性」かと思ったので紹介します。

Wholenessというのは一体性、全体性という意味です。

ほとんどの職場で働いている人は、職場で働いている自分とそのほかの場所にいる自分を切り分けています。



ティール組織の著者のラルーによると多くの人は朝、家から出るときに職場に行く自分という仮面をかぶって出かける。一日仮面をかぶったまま働いていて、家に帰ってきてその仮面を脱ぐ、ということを言っているんですね。

そしてその仮面をかぶっている状態というのが非常に生産性を下げているという話なのですが、「仮面をかぶらなくても職場でも普段通りの自分でいることができたらすごく会社はよくなるし、生産性が高まりますよね。」というのがラルーが言っていることです。

Wholenessを取り入れると、今までみんながマスクの下に隠していた内面をさらけ出すので、一機に職場が活気づき、エネルギーであふれるようになります。

Wholenessにより、自分が自分らしくいられるだけでなく、今まで自分でも気が付かなかった才能や資質を開花させる契機になることもあります。

仮面をかぶっていると、本来その人がやりたいことや言いたいこと、もしくは本当はこれができるけど今は職場では仮の姿で生きてるのでそれを表に出さずにみんな働いているというようなこと。それが非常に組織としては、もったいないことなのです。

まさにみんなのやる気を高めるために必要なのがこのWholenessだと思います。Wholenessを実現できれば、個人的来歴を共有することもできるし、非公式集団も活性化してそこでみんな言いたいことを言えるようになる。それがモラルに影響して生産性が高まっていくという循環が作れるんじゃないかと思います。

wholenessを実現するために

ではこのwholenessを実現するためにどうしたらいいか?

リーダーから始める

リーダーがいかに自分の仮面を取ってメンバーと接することができるか。その度合いによってメンバーがどれだけ自分の仮面を取れるかが決まってくるということです。リーダー以上にはみんな仮面は取れません。リーダーが100%仮面を取れば、ほかのメンバーも90%80%仮面を取れるようになる。

でもリーダーが50%なのに他のメンバーに80%90%を望むのは無理だよねという話なので、まずはリーダーから始めないといけいない。会社であればまずは社長から始めるということですね。

一対一の対話

あとは一対一の対話を持つということですね。ホーソン実験で面接というのがありましたが、そういう対話を持つということですね。

場を設定する

そして、場を設定する。これは、非公式集団を作るための場を設定するということです。

昔日本企業だと、運動会とかやってましたよね。今は無理ですが飲み会とかも活発に行われていて

それで非公式集団を作り上げて全体の士気を上げていくということを日本企業はやっていましたが、最近それがないのでその変わりになる場が必要かと思います。

というわけで、結論としてはホーソン実験は人間関係が生産性に影響するということでしたが、

その一つの解決策として、Wholenessを考えてみるといいんじゃないかと思います。

 

補足:現代のホーソン実験?「プロジェクトアリストテレス」

最後に補足です。現代のホーソン実験が行われたということで、プロジェクトアリストテレスというものです。

皆さんご存じの方も多いかと思いますが、googleがホーソン実験のようなことをやりました。

チームの生産性を高めるためにはどうしたらいいかとうことを色々な調査を行いました。

まさに現代のホーソン実験です。その結果、分かったとしては心理的安全性があるチームは生産性が高いということが分かりました。

心理的安全性というのは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のことです。これはまさに仮面を外した状態ですね。

Wholenessを実現した状態になると心理的安全性が実現されるといことになります。なのでgoogleが現代のテクノロジーの力を使って実験をしましたが、結果としては100年前に行われていた実験と大して変わらなかったとうことを感じたので最後にご紹介させていただきました。

 

社内の人間関係を強化し、生産性を高める仕組み

というわけで今日はメイヨーとホーソン実験のご紹介をさせていただきました。私たち「仕組み経営」では、ホーソン実験の結果で得られたような、社内の人間関係を良好にする仕組みを構築し、生産性の高い会社作りをご支援しています。詳しくは以下からご覧ください。

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