フラット(型)組織を創るには?メリット、デメリット、事例を解説。



清水直樹
最近フラットな組織を作りたいというご要望が多いので、今日はフラット型組織のメリットとデメリット、そして事例を解説していきます。

※動画でも同じ内容を解説しています。

目次

フラット(型)組織とは?

まずフラット組織、またはフラット型組織が何を意味しているのかというと実は2つあると思います。1つ目が組織構造がフラットであるということです。組織の形自体、要は組織図がフラットな状態であるということです。そして2つ目は組織文化がフラットであるということです。組織図自体はピラミッド構造とか、ヒエラルキー構造でも、文化としてフラットであるということです。ですのでフラット組織という場合には、この2つの点から見ていかないといけないということです。

もちろんこれは全く別の話ではなくて密接に結びついている話でもあります。組織文化がフラットな会社は組織構造もフラットな傾向にありますし、組織構造がフラットであれば組織文化もフラットになるので、非常に密接に繋がっています。

 

組織構造がフラットな会社

まず組織構造がフラットな状態を見ていきたいと思います。

鍋蓋式組織

組織図がこのようにフラットな状態、言い方を変えると鍋蓋式になってるということなんですね。小さい会社であれば、社長がいて、その下に社員が全員ぶら下がっています。要は中間管理職がいないということですね。この状態がフラットであるということです。このパターンの組織は比較的スタートしたばかりの会社に多いと思います。なので、少人数の会社が多いと思います。

 

サークル型(ホラクラシー型)組織

一方、サークル状になっていて、サークル同士が結びついているという組織構造もあります。これもフラットな組織構造と言えます。代表例がホラクラシーといわれる組織です。ザッポスが導入して非常に有名になった組織構造です。最近ティール組織流行っていますが、その一形態がホラクラシー組織です。ホラクラシー組織ではこのように組織を運営しなさいというのが決まっているので、ホラクラシーを導入しているところは、サークル状の組織構造になっています。

ホラクラシーはフラットな組織図にはなっていますが、導入している会社の人に聞くと、実際のところ上下関係はある程度あると言っていました。なので、完全なフラットではないですが、中間管理職がいっぱいいる組織と比べるとフラットであるということですね。

 

フラット型組織構造のメリット

組織構造がフラットであると、どういうメリットがあるのでしょうか。

社員の責任感が増す

1つは社員の責任感が増すということです。フラット型組織の場合には中間管理職が少ない、またはいないことになりますので、1人1人の社員の人の責任が大きくなります。逆に言うと1人1人が責任感を持って仕事を行うことができるということです。

 

オープンなコミュニケーション

よりオープンなコミュニケーションが可能になります。報告をしたり、もしくは社長が社員に話すときに、普通は中間管理職を通して話すことになりますが、それをやると中間管理職のバイアスがかかった話し方になるのでコミュニケーションがオープンならないという問題があるわけです。一方で組織構造がフラットであれば、そのようなことはなくて、一般の社員の声も社長に届けやすくなるし、社長のメッセージも社員にすぐ届き、オープンなコミュニケーションが可能になります。

組織スピードの向上

そして新しいアイデアを実行する際のスピードが向上します。大きい会社で中間管理職がいっぱいいると、決済する人が何段階もいますので、その分スピードも遅くなります。

 

人件費の削減

今、日本の中堅企業、大企業の問題になっていますが、中間管理職は年齢が高い人が多いので人件費が高いわけです。そうする大して仕事してないのに給料だけは高い人が出てくるというのが問題になっています。フラット型組織の場合には中間管理職が少ないので、その分人件費が低いということになります。

 

経営陣の負担軽減

そして経営陣の負担が軽減されるということですね。これは逆のパターンもあったりしますが、一般的なフラット型組織だとみんなが責任感持って働きますので、経営陣の負担が軽減されます。

 

フラット型組織構造のデメリット

一方、フラット型組織のデメリットを見ていきたいと思います。これもどの程度フラットにするかによってだいぶ変わってくるので一概には言えないんですが、こういうことがありますよという話をしたいと思います。

報告系統の混乱

まず報告すべき明確な上司がいないため、混乱を招く可能性があるということです。最近だとマネージャーがいない組織を作ろうみたいな話もあったりもするんですが、それだと誰に仕事の報告をするんだという話になるわけです。業務の流れが混乱しますということですね。

 

ジェネラリストが生まれにくい

そして汎用的なスキルを持った社員が生まれない可能性が高いということです。フラット組織の場合には1人1人が自分の専門的な知識とかスキルを持って、仕事に専念するのが基本な考え方なので、いわゆるジェネラリストが生まれにくくなるということですね。

人数が増えると維持が困難

そしてスタートアップの状態を超えて成長した場合、維持が困難になる可能性があるということです。先ほどの鍋蓋型の組織構造は、この状態のままどんどん横に社員が増えていくと、大変なことになります。私たちはいつもハブ型組織と呼んでいますが、全ての意思決定が社長を通じてしか行われないという組織になるので社長の負担が多くなり、実質運営が不可能になります。なので鍋蓋式の状態のまま成長しようとすると難しいことがあるというです。

 

部門間調整が困難

そして部門間の調整をすることが困難になる可能性がある。普通の会社であれば、例えば営業部があって、開発部があると営業と開発の間で調整することが必要な時には、部長同士で話し合うことがあったりするわけです。フラット組織の場合にはそういうことやる人がいないので混乱する可能性があるということです。ただこれもケースバイケースで、先ほどのホラクラシーの組織の場合は各サークルの中に他のサークルの人たちとやり取りをするコミュニケーション役の人がいるんです。リードリンクという役割の人ですが、その人が調整役をするので、うまくいってるということなんですね。

 

組織スピードの低下

そして合理性によるスピードダウンの可能性がある。フラット型組織を作ろうという社長は、トップダウンであれこれ決めるんじゃなくてみんなの意見を募って決めていきたいという思考の社長が多いわけです。そうすると民主主義になりますので、意思決定が遅れる可能性があるということです。

 

(注意)デメリットが発生するかどうかは組織の創り方次第

冒頭に言った通り、あくまでこういうケースがあるというだけなので、うまく作ればこういうことは発生しないこともあります。

 

フラット型組織構造の事例:ザ・モーニングスターカンパニー

フラットな組織構造の事例で1番有名なのがザ・モーニングスターカンパニーという海外の会社になります。この会社は、トマト加工食品を作っている会社です。アメリカの会社で、1970年創業、社員600人、売り上げ1000億。1人当たり1億以上あげているので結構な中堅企業ですね。この会社がなぜ、フラット型組織で有名かというと、例えば数十人くらいのスタートアップの会社とか、まだ小さい会社だったらフラット組織で運営はしやすいわけです。社長が全員の顔を見れるからです。

一方、600人という規模でフラット型の組織を運営しているのは非常に稀なんですよね。なのでザ・モーニングスターカンパニーが非常に有名になっているわけです。



ザ・モーニングスターカンパニーの組織図はこんな感じで、組織図ともいえないですね。この1つ1つの点が社員の人たちで、社員同士がどう繋がっているかを図にしたものです

ザ・モーニングスターカンパニーは管理職がいないということで有名です。それによって、彼ら曰く、多くのメリットが発生しています。

事例から見るフラット型組織のメリット①:人件費削減

まずコストの削減です。これは先ほどフラット組織のメリットのところで同じ話をしました。

 

事例から見るフラット型組織のメリット②:足の引っ張り合いが無い

そして足の引っ張り合いや社内政治がない。この会社は管理職がいないので、昇進という概念がないんですね。そうすると昇進したいからあいつよりもっとうまくやろうとか、あいつを蹴落としてやろうみたいな社内政治がないということです。これで会社の文化よくなるということですね。

 

事例から見るフラット型組織のメリット③:主体性が生まれる

全社員が自分の専門性を持って、専門的な知識を持って役割を担っているので、自ら主体的に働く人が多いということです。

 

事例から見るフラット型組織のメリット④:専門性が高まる

フラット型組織だと専門性が高まる、逆に言うとちょっとジェネラリストが増えづらいのかもしれないです。

 

事例から見るフラット型組織のメリット⑤:柔軟性がある

案件の変化とか、市場環境の変化に対して柔軟性を持って対応できるということです。組織図が固まっていないので、それぞれ現場で起こったいろんなことに対して自分の判断で対応できるので柔軟性が高いということですね。

 

事例から見るフラット型組織のメリット⑥:リーダーが自然発生

この会社は管理職がいないんですが、リーダーらしき人が自然発生していくことで回ってるということです。子供の頃を思い出していただければ分かると思うんですが、例えばクラスの中にリーダー的な人っていましたね。リーダーという明確な肩書はないけれども、みんなと遊んでるとその人がリーダーみたいになっている。そのようなことが起こるのが人間のコミュニティなわけです。同社の場合には、あえて管理職を任命しなくても、リーダー格の人が勝手に現れてきて、その人が仕切ってやってくれるという話です。

 

事例から学ぶ管理職不在のフラット型組織の作り方

ザ・モーニングスターカンパニーの話をもとにすると、管理職が不要(または少ない)な会社を作るためには、この3つがポイントかと思います。

ミッションを上司にすること

まず1つがミッションを上司にするということです。フラット型の組織を作るときに問題になるのが社員の人が意思決定する際、何を基準にすればいいのかということです。この決定がいいのか悪いか、AをとるのかBをとるのか、どうやって判断するのか。普通は上司がいるので上司に聞いて判断仰げばいいわけですが、ザ・モーニングスターカンパニーには、上司がいないのでどうやって判断するのか。同社の場合には、会社のミッションに照らし合わせて各自で判断するということなんです。これがフラット型組織を作るには欠かせない特徴です。ミッションを定義して、それをみんなで共有して、みんなでそれを上司にしていきましょうということです。

 

個人ミッションと会社のミッションを整合させる

そして個人個人のミッションと会社のミッションを整合させるということです。これは自主性の話と繋がってきますが、フラット型組織にしたからといって、自動的に自主性が発揮されるかといったらそうではなくて、会社が目指してる方向性とその人の持ってる個人的な方向性とか人生の目的が一致していないと、いくらフラット型組織にしても、主体性は生まれません。なので、個人個人のミッションと会社のミッションの整合性は非常に大切と思います。

 

個人個人が自分の業務計画を立てる

そして個人個人が自分の業務計画を立てるということです。モーニングスターでは、専用の社内文書があります。その文書に自分のやってる業務と、これからこうしていきますということを書くらしいです。これを社内でみんなが見えるように公開してあるということです。

このような透明性があることで、管理職がいなくても、あの人はこういう仕事やっているんんだなとか、この人はこういうことやってるんだったら、私はこういうことに貢献できるなと判断できる仕組みになっています。

 

組織文化がフラットな会社

次に、フラット型組織の中でも、組織文化がフラットであるということはどういうことかを話していきます。

星野リゾートのフラットな組織文化

組織文化がフラットであるという会社の代表例は星野リゾートです。星野社長が組織文化をフラットにすると常々おっしゃっていて、それが同社が繁盛してる、うまくいってる理由かと思います。

ユニット単位の組織

まず星野リゾートはユニット単位の自立したチームであるということです。これは同社の特徴ですが、1人の人がいろんな役割を担うマルチタスクの組織になっています。料理をしたり、受付をしたり、お客様の案内をしたりと1人の人がいろんなことできるようになっています。それがユニットという単位で固まっていて動いてるということです。

社長もみんなと同じ机

星野社長は確か、社長専用のデスクってないって言っていました。出社して空いてるところに座るのが星野さんのスタイルです。社長が偉そうにしないっていうことですね。

 

正しい価値観が上司である

これはさきほどのミッションを上司にするという考え方と同じです。これによって、上司が言ってるからこうするんじゃなくて、自分たちの価値観はこうだからこうするという文化にしていくということです。

 

「偉い人信号」を全てなくす

例えば役職で呼ばないということもそうです。アメリカでは役員専用の駐車場があり、一般社員はそこに停めちゃだめというのもあったりするらしいんです。そういう、“この人は偉い人だ”とわかる信号をなくせということです。社長室、役職、役員専用フロアなども無くすということですね。

 

情報の公開

そして財務諸表や顧客満足度調査を全社に公開する。自分がどれだけ会社に貢献しているのかとか、今会社がどういう状況なのかを全部オープンに見えるような状態になっているということです。それによって自分自身の判断で行動できるようになってるということです。

 

価値観を基にした採用

そしてカルチャーフィット®採用。スキルや能力も大事ですが、自分たちの価値観に合うかどうかで判断して、採用するというです。これは企業文化に大きく影響するところです。

 

フラット型組織の作り方まとめ

というわけでラット組織の作り方、組織構造の話と文化の話をしてきました。最後に、フラット型組織を作りたい方に向けたヒントをまとめました。

社長がエゴを超えて成長する

まず社長自身がエゴを超えて成長するということです。やはり社長が1番大事です。社長の考え方、信念が1番大事。いくらフラット型組織を作りたいと思っていても、自分が全てコントロールしたいとか、自分がマイクロマネジメントしたいと心の底で思ってる社長はフラット組織作れないと思います。社長がエゴじゃなくて、組織をどうしていくかという自分の欲求を超えたところに目標を持っていないと難しいと思います。

 

価値観の明確化と共有

先述しましたが、価値観が上司になりますので、それが明文化されていて社内で共有されていないとフラット組織はできないということです。



 

理想の組織状態を描く

フラット組織といっても、いろんなパターンがあります。ホラクラシーも1つの型だし、星野リゾートみたいな型、鍋蓋型の型もあります。なので自社にどれが合うかは、社長が決めないといけないわけです。自分たちがどういうビジネスを作っていきたいかによって組織は変わります。

 

役割と責任を明確にする

意外と勘違いされがちなことは、フラット組織はみんなが自由にやってるということです。実は正反対です。フラット型組織ほど、個人個人の役割と責任が非常に明確になってます。ホラクラシーは最たるもので、組織を運営する非常に明確な憲法が決まっています。それに沿ってやってるから、上司があれこれ言わなくても組織が動いていくということなんです。なのでフラット組織にしたのであれば、個人の役割と責任を明確にしないといけないということです。

 

議論が活発化される環境

これも社長の成長と非常に密接に繋がっています。会議で社長がいきなり話すとか、社長しか話さないとかだと議論が生まれません。会議の仕組みを変えることで、議論が活発化される環境を作ることができます。

 

カルチャーフィット®採用

先ほどの星野リゾートの件で出てきた通り、自分の価値観に合う人を採用していくということです。ここを間違うと後から修正効きません。フラット組織を創るためには、採用の仕組みは非常に大事になってくると思います。

 

フラット型組織を創るなら仕組み経営へ

以上、フラット組織を作るにはという話をさせていただきました。完全にフラットな組織図にしないまでも、生産性が高く、柔軟性が高い組織を創りたい方は、是非参考にされてください。仕組み経営では、自社に合う組織づくり、また、組織を運営する仕組みづくりをご支援しています。詳しくは以下からご覧ください。

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