「ベクトルを合わせる」ことの意味から方法まで解説。



清水直樹
ベクトルを合わせるとは、組織のメンバー一人ひとりが同じ方向に向かって考え、行動できるようにすることです。ベクトルを合わせるのは組織づくりの基本中の基本と言えますが、その実現は簡単ではありません。小さな会社の社長から大企業の社長まで、全ての組織のリーダーがベクトルを合わせることに毎日苦心しています。そこで本記事ではベクトルを合わせるために考えたいことをご紹介していきます。

 

ベクトルを合わせるの意味

ベクトルを合わせるの意味は、組織のメンバー一人ひとりが同じ方向に向かって考え、行動できるようにすることです。ベクトルとはもともと、進路、軌道、方向といった意味です。そのため、組織運営において使われる際には、メンバー一人ひとりが向かう方向を合わせるということになります。

「ベクトルを合わせる」を別の言葉で言い換えると?

「ベクトルを合わせる」を別の言葉で言い換えると、以下のようになります。

理念が浸透している

会社の経営/企業理念がメンバー一人ひとりに認識され、行動の前提となっている状態を指します。そもそも経営理念が向かうべきベクトルとなりますので、経営理念が浸透していることは、ベクトルがあっているということになります。

方針が徹底されている

方針とは、理念をもう一段階、具体的に落とし込んだものになります。理念だけでは向かうべきベクトルが曖昧過ぎるため、メンバーにとってより理解しやすくなるために、方針を掲げることがあります。その方針を徹底して理解してもらうことで、結果として理念につながります。

チーム全員が一丸となっている

一丸とはひと塊のことを指します。チーム全員がひと塊になっているということは、メンバーの心が一つになっていることを指し、ベクトルがあっている状態と同じと言えます。

組織が一枚岩になっている

一枚岩とは、組織が、内部分裂や意見の違いなど無く、しっかりとまとまっていることを指します。ベクトルがあっていなければ、内部分裂や意見の違いが生まれますので、組織が一枚岩になっているのは、ベクトルがあっているのと同じ状態と言えます。

 

ベクトルを合わせるを英語で言うと?

ベクトルは英語で、vectorですが、組織づくりの文脈ではあまり見かけない言葉です。代わりに、ベクトルを合わせると同じ意味合いの英語として、「align」という言葉が良く使われます。alignとは、「方向づける」という意味で、ここでいっているベクトルを合わせると同じ意味になります。「Aligning Your Team.」などのように使われます。

 

京セラフィロソフィーにおける「ベクトルを合わせる」とは?

ベクトルを合わせることを会社の理念に入れているのが、稲盛氏の作った京セラフィロソフィーです。京セラフィロソフィーには以下のように記載されています。

人間にはそれぞれさまざまな考え方があります。もし社員一人一人がバラバラな考え方に従って行動したらどうなるでしょうか。

それぞれの人の力の方向(ベクトル)がそろわなければ力は分散してしまい、会社全体としての力とはなりません。このことは、野球やサッカーなどの団体競技を見ればよくわかります。全員が勝利に向かって心を一つにしているチームと、各人が「個人タイトル」という目標にしか向いていないチームとでは、力の差は歴然としています。

全員の力が同じ方向に結集したとき、何倍もの力となって驚くような成果を生み出します。1+1が5にも10にもなるのです。

 

そもそも京セラフィロソフィーは、全メンバーが大切にするべきことをまとめたものなので、フィロソフィーの存在自体がベクトルを合わせることに貢献していると言えるでしょう。

 

 

ベクトルを合わせるためには?

では、実際に組織のベクトルを合わせるにはどうすればいいでしょうか。

ベクトルとは”方向性”なので、軸を考える必要があります。何についての方向性なのか?ということです。

 

時間軸のベクトルを合わせる

まず時間軸です。自分たちは、どのようなタイミングでどこに行こうとしているのか?を合わせることが大切です。社長は会社を急成長させて、大きな組織にしていきたいと考えているにも関わらず、社員はのんびり構えている、というのでは社長の理想は叶えられません。

時間軸のベクトルを合わせるには、自社のビジョン(長期展望)はコレ、中長期(3~5年)目標はコレ、年間目標はコレ、などのように時間軸のイメージを共有することが大切になるでしょう。

概念のベクトルを合わせる

ベストセラーになった「サピエンス全史」では、「虚構(架空の事物)」について語る能力を身につけたことで、人間は大規模な協力体制を築き、急速に変化する環境に対応できるようになった、と解説がされています。人類全体と同じように、会社内にも様々な虚構(概念)が存在します。

その代表格が、会社の理念です。経営者ならば、理念は大事だと理解していると思いますが、社員は、理念とは何か?を理解しているでしょうか?そのほかにも、クレドや方針、ビジョン、戦略、ブランド等様々な概念が社内にあります。

それらをきちんと整理、言語化し、社内で共有することが大切です。言い換えれば、言葉の定義を明確にすることです。

私が会社員で営業をしている頃、上司から”A社向けの戦略を立てろ”と言われたことがあります。当時の私も、戦略とは戦いに勝つための道筋を示していることくらいは理解していました。しかし、A社向けの戦略とはいったい何を意味しているのかがわかりませんでした。そこで上司に戦略の意味を聞いてみたものの、実は上司も良く分かっていない様子でした。上司も、さらにその上の上司から戦略を立てろ、と言われていたのでしょう。



その後、いろいろ試行錯誤しているうちに、ここでいっている戦略とは、時間軸でA社向けにどのような活動をするのかという計画を立てよ、という意味であることがだんだん分かってきました。だったら、最初から言ってくれれば時間のロスがなかったのに、と思った記憶があります。

このように、社内で当たり前のように使われている言葉であっても、その意味が部署や人によって違っていたり、まったく具体性のない言葉だったりしますので、注意が必要です。

組織のベクトルを合わせる

組織軸のベクトルとは、たとえば、以下のようなものです。

理念⇒戦略⇒戦術⇒実行を合わせる

多くの会社では、理念や戦略と、現場での仕事に乖離があります。これは理念や戦略と現場での仕事のベクトルがあっていないことを示します。毎日の仕事が理念実現へと向かうようにしなくては意味がありません。

上司、部下のベクトルを合わせる

上司と部下は、もっとも小さい単位での協業関係にあります。したがって、上司部下のベクトルがあっていなければ、組織全体のベクトルも合いようがありません。上司部下は毎日、ベクトル合わせを行う必要があります。より具体的にいえば、今月・今週・今日の優先順位は何なのかを常に確認する場を設けることです。

部門間のベクトルを合わせる

組織が大きくなればなるほど、部門間の断裂が大きくなります。マーケティング部と開発部、営業部と経理部、などそれぞれの部門利益を第一に考えれば考えるほど、他部門とのベクトルが合わなくなってきます。

そうならないために、全社員の最優先事項は会社全体の目標達成であることを共有し、そのために各部門ごとの役割と目標を明確にし、協調関係を築く仕組みが大切になってきます。

理念と制度や仕組みのベクトルを合わせる

組織が大きくなるほど、メンバーを統制するために様々な制度や仕組みが作られていきます。ここで大切なのは、理念と各種制度や仕組みのベクトルを合わせることです。よく問題になるのが、理念では顧客第一と言っておきながら、短期的な利益だけが評価されるような制度になっていることです。これでは営業担当者が顧客の事情を無視して、本来は無用なものを販売してしまったとしても無理はありません。

また、家族主義を標榜しているのに、その家族(社員)をガチガチに縛るような制度設計をしているケースもあります。これもベクトルがあっていない例です。

会社理念と個人理念のベクトルを合わせる

先ほどの稲盛氏の言葉にも合った通り、人それぞれ考え方、人生の目的や価値観が異なります。しかし、同じ会社に勤めているからには、どこかしら共通点があるはずです。それが何なのかを常に意識させるようにし、なぜ自分はこの会社で働いているのかを明確にしてあげることが大切です。これが出来れば出来るほど、いわゆるエンゲージメントが高まります。

エンゲージメントについてはコチラの記事にて解説しています。

従業員エンゲージメントとは?その意味から高める方法まで。

 

意識(仕事の基準)のベクトルを合わせる

非常に単純な仕事をしていても、人によって成果が異なったりします。その理由は、人それぞれ、その仕事に対する基準(何をもってよしとするか?)が異なるからです。

たとえば、テーブルを拭く、という仕事を二人の人物に任せたとしましょう。一人目は、最初に水拭きをし、次にカラ拭きをし、さらに床に落ちているゴミをついでに拾うかも知れません。一方、二人目は、水拭きだけして終了、となるかもしれません。

1人目は、テーブルを拭くという仕事を高い基準で行いました。このテーブルにはお客様が座るのだから、丁寧に拭かないといけない。それだけではなく、心地よく過ごしてもらえるように、ゴミを拾うのも当たり前だ、と考えているわけです。一方、二人目は低い基準で行いました。拭けと言われたから拭いただけ、というわけです。

仕事の基準を個人任せにしない

どちらの人も自分が、”これで良し”と思える方法で仕事をしたわけですが、結果には大きな違いが生まれます。もちろん、一人目の基準で仕事をしてもらいたいというのが社長の想いでしょうが、かといって、二人目を責めるわけには行きません。どの程度の基準でテーブルを拭くかを示していないことが問題だからです。

  1. このテーブルはお客様が利用するためにある
  2. テーブルの拭くのは、お客様を迎えられる状態にするためである
  3. お客様を迎えられる状態とは、このような状態をいう

という感じで、明確な基準を示すのが上司や社長の役割なのです。

多くの会社では、仕事の基準を個人任せにしてしまっているため、基準が整わず、仕事の成果にバラつきが出ます。それが顧客が離れていってしまう理由でもあるのです。

 

ベクトルを合わせるなら仕組み経営へ

以上、ベクトルを合わせることの意味やそのために行うことをご紹介してきました。仕組み経営では、上記のようなベクトルを合わせるための仕組みづくりをご支援しています。詳しくは以下の体験ウェブセミナーからご覧ください。

 

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