ユーザーインタビューはこうやろう。新規事業を立ち上げたい社長はこのステップを欠かすな。



清水直樹
ユーザーインタビューは新規事業立ち上げ、または新商品、新サービスをリリースする際に必須の活動と言えます。ユーザーインタビューを正しく実施することで、売れない商品/サービスを開発してしまうという愚行を避けることができます。

私たちのお客様の多くは中小・成長企業の社長なのですが、皆さん、新規事業が大好きです。なので、そのプロセスや考え方、アイデアについてご相談を受けることも多いです。そこで今回は、新規事業開発において重要な位置を占めるユーザーインタビューについて解説します。

 

ユーザーインタビューとは?

ユーザーインタビューはその名の通り、(見込み)ユーザーにインタビューを行うことを指します。ユーザーインタビューは、様々な用途に活用されますが、本記事では主に、新規事業を立ち上げたい社長、または新商品、新サービスを開発したい方向けに、以下のような目的を達成するためのユーザーインタビューの実施方法をご紹介していきます。

  • 販売しようとしている商品やサービスに対する自分たちの仮説が正しいかどうかを知る。
  • 果たしてその新規事業や商品/サービスがユーザーに受け入れられるものなのか、つまり、売れる見込みがあるのかどうかを判断する。

 

なぜユーザーインタビューが必要か?

新規事業をスタートする際に、なぜユーザーインタビューが有効なのか。それは大きなリスクを取る前に、自分たちの仮説が正しいかどうかを判断するためです。一般的に、新規事業の立ち上げは次のようなステップで行われます。

  1. アイデアが思い浮かぶ
  2. 商品やサービスを開発する
  3. プロモーションする
  4. 販売する

このステップの問題は、実際に販売するまで、どれくらい売れるかわからないという点です。ここに大きなリスクがあります。商品やサービスを開発するためには多くのお金や時間がかかりますし、プロモーションするためにもお金がかかります。そのため、予定通りの販売が出来なければ、大きな損失が出てしまうわけです。新規事業が失敗する大きな原因は、売れるかどうかわからない商品を作ってしまうことなのです。

誰も売れるかどうかわからない商品は作りたくないはずですが、実際には、アイデアが思い浮かんだ段階で、そのアイデアに恋してしまい、これは絶対に売れるはずだ、と思いこんでしまうのです。そのため、売れるかどうかわからない商品の開発へと突き進んでしまいます。

では、どうしたらいいか?新規事業立ち上げのステップを以下のように変更することです。このステップに変更することで、無駄な商品開発コストやプロモーションコストを避け、売れる確実性の高い商品を完成させていくことができます。このステップは、リーンスタートアップと呼ばれ、スタートアップ界隈では良く知られた手法ですが、あらゆる新規事業で活用できる方法です。

  1. アイデアが思い浮かぶ
  2. ユーザーインタビューする
  3. MVPを作る(実用最小限の製品)
  4. MVPを売り、ユーザーの反応を確かめる
  5. 2から4を繰り返す
  6. 商品の完成度を上げていく

先述のステップとの違いは、実際に商品を作り込む前に、ユーザーインタビューを行い、果たして自分の思い付いたアイデアが本当にお客様に受け入れられるのか、つまり、お客様がお金を払ってでも欲しいと思うような商品やサービスなのかを検証することです。

そして、ユーザーインタビューで確信持てても、まだ本格的に商品開発には進みません。MVPと呼ばれる、簡易的な商品をお金と時間をかけずに作り、実際に販売します(場合によっては予約受付、先行注文してもらうなど)。

次のステップではMVPを使ってもらったユーザーにインタビューを行ったり、彼らの行動を観察することで、必要な機能の追加や改善をしていきます。

このステップを繰り返すことで、最終的な商品へと近づけていきます。

先述の方法と比べて、非常にリスクが少ない方法であることがわかると思います。

 

ユーザーインタビューのヒント

0.検証したい仮説を明確にする

まず自分たちのアイデアのベースになっている仮説を明確にしておきましょう。あなたのアイデアはどのような仮説で成り立っていますか?たとえば、価格が安ければ商品は売れるはずだ、というのは仮説です。また、近くにこういうお店があれば、お客さんは来てくれるはずだ、というのも仮説です。すべてのアイデアは今の段階では仮説にすぎないのです。その点に気が付かず、思い込みで事業を進めるのはリスクが大きいです。ユーザーインタビューでは、その仮説が本当に正しいのかを検証することが最初のステップです。

 

1.ユーザーインタビューの目的を正確に理解する

ユーザーインタビューを行う前に、その目的を正確に理解しておくことが大切です。新規事業立ち上げにおけるユーザーインタビューの目的は、

見込みユーザーが抱えている、お金を払ってでも解決したい痛みを知る

ことです。

ここで大切なのは、自社のアイデアありきのインタビューにしてはいけないということです。

たとえば、あなたが新しくスポーツ用品のECサイトをオープンさせるとしましょう。そこで、ウェブサイトのデザインやラインナップを見込みユーザーに見せて、「このようなウェブサイトをオープンしようと思うのですが、利用したいと思いますか?」というようなインタビューをしたらどうなるでしょうか。

おそらく、ほとんどのユーザーは、「とりあえず一回使ってみようかな」などと答えるでしょう。このような回答を得たあなたは、やはりこのアイデアは行けそうだ、となってウェブサイトの開発をスタートさせてしまうかも知れません。しかし、これは危険な判断です。このようなユーザーの反応は、これはあなたに対して気を使って好意的な反応をしているということもありますし、特にNOという理由も見当たらないために、好意的な反応をしてしまっているのです。

「このようなウェブサイトをオープンしようと思うのですが、利用したいと思いますか?」という質問が妥当でないのは、この質問自体がウェブサイトを利用してもらうための誘導尋問になってしまっている点です。つまり、インタビューの視点がユーザーではなく、自社に当たってしまっているのです。

本来は、たとえば、すでに他のウェブサイトでスポーツ用品を購入している人に対して「既存のウェブサイトで何か使いにくい点や困っている点はありませんか?」、またウェブサイトで買ったことのない人に対して「なぜウェブサイトで買わないのですか?」などのように、見込みユーザーが抱えている課題に焦点を当てることが大切です。

そして、見込みユーザーが抱えている、お金を払ってでも解決したい痛みを把握し、それを解決するための商品を作るのです。

 

2.人数が大事

どれくらいの人にインタビューすればいいのでしょうか。答えとしては、新規事業の理想的なユーザーが特定され、かつ、彼らがお金を払ってでも解決したいと思っている痛みを発見するまで、と言えるでしょう。ですので、必ずしも何人以上が良いとは言えないと思います。ただ、ユーザーインタビュー数がKPI(重要指標)だと言っているベンチャーキャピタリストもいるくらいですので、数は多ければ多いほど成功の確率は高くなると考えて良いでしょう。

 

3.社長自身(事業責任者自身)がユーザーインタビューを行う

ユーザーインタビューは、その事業に最終責任を持つ人物が行うべきです。多くの中小企業では社長自身ということになるでしょう。なぜ責任者が行うべきなのか。たとえば、事業に責任を持っていない社員にインタビューを任せたとしましょう。彼らは様々な情報を得てきますが、それをレポートとしてまとめ、あなたに報告することになります。

この段階で、情報にフィルターがかかってしまうのです。”この意見は社長に言うと機嫌を損ねそうだから外しておこう”という感じです。彼らは新規事業がうまく行こうが行くまいが、どっちでもいいので、都合の良い情報だけを社長に報告しようとするのです。したがって、その事業を本気で成功させなければならないと思っている本人がユーザーインタビューをし、聞きたくないような意見も集めるべきなのです。

 

4.率直な意見を求めていることを伝える

ユーザーインタビューする相手には、あなたが率直な意見を求めていることを伝えましょう。そうでなければ、あなたに気を使ってしまい、当たり障りのない意見、あなたに好印象を与えようとする意見ばかりを言わせることになってしまいます。自分のエゴを守ってポジティブなフィードバックを求めるのではなく、あなたにとって心情的痛みを伴うようなアドバイスを求めていることを伝えましょう。



 

5.オープンクエスションをする

イエスかノーかの質問では、求めているものを見つけられない可能性が高いです。そのため、自由回答式の質問をするようにしましょう。

 

6.話すより聞く

ついつい自分のアイデアや商品について語りたくなってしまう衝動を抑えましょう。目安は、会話全体の20%以上は話さないようにします。ユーザーインタビューは相手を説得するために行うものではありません。したがって、あなたが話す必要はないのです。

 

7.売ろうとしない

ユーザーインタビューでは、相手に何かを売ったり、要求したりしてはいけません。そういう姿勢を取ると、相手は防御態勢になり、インタビューどころではなくなってしまいます。したがって、最初にこのインタビューは何か売ろうとか、提案したりするものではないということを伝えておきましょう。

 

8.未来の行動について質問しない

たとえば、「これを使いますか」「これだけ払いますか」「これを友達に勧めますか」という質問は、ユーザーの未来の行動についての質問です。これらの質問に対する答えは、全く信用できません。”はい、使います”という答えがあったとしても、それは単にその時の気分で答えただけです。

 

9.現在または過去の行動についてのみ質問する

逆に、現在または過去の行動についてのみ質問するようにしましょう。つまり、ユーザーが今どのような行動をしているか、過去にどんな行動をしたかを詳しくインタビューします。

 

10.一度に一人だけ

インタビューは一度に一人だけにしましょう。フォーカスグループと呼ばれる集団インタビューもありますが、これでは他人の意見の影響を受けてしまい、意味がありません。また、アンケートを送りつける調査方法も避けたほうがいいでしょう。アンケートでは、さらに深堀りした質問をすることができないからです。

 

11.録音する

相手の同意を得て、インタビュー内容を録音しましょう。その時には気が付かなかったインサイトを後から得ることができるかもしれません。

 

12.同じことを3度聞く

重要な仮説を検証したい場合には、同じ質問を手を変え品を変え3度聞くようにしましょう。よく考えたら同じ質問であっても、表現方法を変えるだけで相手の答えは毎回少しずつ異なり、より多くの洞察を与えてくれます。

たとえば、

  1. このウェブサイトの改善点を教えてください
  2. このウェブサイトでわかりにくい点を教えてください。
  3. このウェブサイトの使い方で迷ったことを教えてください。

等です。これら3つはそれぞれ表現を変えていますが、基本的に同じことを聞いています。

 

13.次の相手を紹介してもらう

ユーザーインタビューを終えたら、周りにあなたの見込みユーザーになりそうな人がいないか聞いてみましょう。先述した通り、インタビューは数が大事です。

 

ユーザーインタビューの質問例

最後に、ユーザーインタビューの質問例を挙げておきましょう。これらは新規事業を立ち上げる時の質問例です。なので、まだ商品やサービスが出来ていない、相手が使っていない場合の質問になります。あくまで参考なので、自社独自の質問を作り上げてみてください。

  • あなたのバックグラウンドについて教えてください。
  • どのくらいの頻度で〇〇(類似商品名等)を使用していますか?
  • 〇〇(類似商品名等)のどのような点が気に入っていますか?
  • 〇〇(類似商品名等)を使用しているときに、何か困った経験がありますか?
  • 〇〇(類似商品名等)を使ってできたらいいなと思うことで、現在はできないことはありますか?
  • 〇〇(類似商品名等)があなたの現在のニーズを満たしていない点はありますか?
  • 現在、(問題/課題)に対してどのように取り組んでいますか?
  • 現在取り組んでいる(問題/課題)に関する最大の問題は何ですか?
  • そのために、どのような回避策を考えましたか?
  • 現在取り組んでいる(問題/課題)に一番大変なことは何ですか?
  • 現在取り組んでいる(問題/課題)を簡単にするために、現在何をしていますか?
  • 現在取り組んでいる(問題/課題)は、あなたの生活や仕事の他の分野にどのような影響を与えていますか?
  • 他にどのような製品やツールを試してみましたか?
  • 現在取り組んでいる(問題/課題)の解決策や代替手段を探していますか?

 

ユーザーインタビューを仕組み化しよう

以上、ユーザーインタビューのヒントをご紹介してきました。新規事業は会社を継続的に成長させていくために必須ですが、失敗しない事業立ち上げプロセスを仕組み化し、継続的に行えるようにすることが大切です。そのために、ユーザーインタビューの仕組みを社内で確立し、経験を積み重ねておくことは大切でしょう。ぜひ今回の記事をご参考にされてください。

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