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仕組み化の計画をどう社員に説明するか?
仕組み化を検討される経営者の方は、会社を仕組み化し、より効率的に組織運営をしたり、自分の働く時間を減らしたり、社長が交代してもうまく回る会社作りに興味があると思います。
一方、会社を仕組み化していくことは社長一人ではできません。社員全員の関わりが必要になります。そのため、社員全員にとって仕組み化がどのようにメリットをもたらすのかを説明する必要があります。社長にとってメリットがあるから、というだけでは仕組み化を進めていくことができないわけです。
人依存から仕組み依存への変革は文化の変革
まず社長が知っておかなければいけないのは、会社を人に依存する経営から仕組み依存へ変革させていくことは、会社の文化の変革でもあるということです。たとえば、過去、良品計画は西武時代の文化を引きずり、人依存で経営をされていました。”俺についてこい”的なリーダーが多く、店舗ごとに運営方法がまちまちで、人の育成もうまく行っていませんでした。そこで仕組み依存へと文化を変革させることで、V字回復を実現しました。その象徴として出来上がったのが、有名なMUJIGRAMです。
MUJIGRAMの詳細はこちら:
よく言われているように、この文化の変革は簡単ではありません。特に会社が大きくなればなるほど難しくなります。私たちはいつも、仕組み化に取り組むのは早ければ早いほど良い、とお伝えしていますが、その理由がコレです。社員数が増えれば増えるほど、文化変革は難しくなるのです。
仕組み化の計画や必要性を社員に説明するポイント
ビジョンと現実のGAPを示し、仕組み化の必要性を説明する
まず何より大切なのが、会社のビジョンを改めて説明することです。あなたの会社は将来どうなりたいのか?どのような価値を社会に提供したいのか?という青写真です。これを改めて社員に説明します。
そのうえで、現状はどうなっているのか?を理解してもらい、ビジョンと現実のGAPを埋めるために仕組み化が必要であることを理解してもらいます。
たとえば、将来のビジョンとして、日本全国に拠点や店舗を展開し、より多くのお客様に自社の商品やサービスを提供していきたいというビジョンがあったとします。一方で現実はどうなっているのか。今ある店舗は店舗ごとに運営方法がバラバラであったり、人が育つのに時間がかかりすぎていたり、、、というような課題があるはずです。それらの課題を解決し、GAPを埋めるには仕組み化を進め、店舗の運営方法を統一し、マニュアルを整備し、人の育成の仕組みを整える必要があります。そのようなストーリーを語るわけです。
また、別の例としては、永続する会社を創りたいというビジョンでも良いでしょう。100年後も200年後も存続し、社会に価値を提供し続ける永続する会社を創りたいというのがビジョンです。では現実はどうか?業務や意思決定の多くが創業者の勘と経験に依存しています。これでは社長の働ける寿命=会社の寿命となってしまい、永続する会社ができません。その課題を解決するためには、社長の仕事をメンバーに委任していき、チームで経営していく組織にしていかなければいけません。また、単一の商品やサービスに依存するのではなく、時流に合わせた商品をサービスを開発し続ける仕組みが必要だということを組織全体に共有するわけです。
個人的なストーリーを語る
さらに、社長の個人的なストーリーを語ることが大切です。先述したように、ビジョンと現実のGAPを埋めるために仕組み化が必要であることを伝えるわけですが、これはどちらかというと理論的な話です。これだけでは社員の感情に訴えることができません。そこで、社長が体験した個人的なストーリーを語ることで、より感情に訴える説明が出来ます。
たとえば、属人的な経営をしてきたことで顧客や社員が不利益を被った体験や創業時の想いなどがそれにあたります。
一例として、人依存から仕組み依存への変革を実現したリフォーム会社のストーリーを以下に紹介させていただきます。
顧客、社員、会社にとっての仕組み化するメリットを説明する
仕組み化によって、顧客、社員、経営陣、(株主)にとってメリットがあることを説明します。
仕組み化による顧客のメリット
仕組み化されているビジネスでは、いつでも誰が対応しても同じような顧客体験を届けることができます。たとえば、スターバックスは世界各国にありますが、どこのお店に行っても、”スタバ体験”を感じることができます。これはスターバックスが自社のブランドをきちんと定義し、それを実現するための一貫した仕組みづくりをしているからなのです。日頃顧客と接している社員にとってみれば、自社が一貫性のあるサービスを提供できることは非常に大切であると感じるでしょう。
仕組み化による社員のメリット
仕組み化は会社にとってのメリットしかないと思われがちですが、そんなことはありません。
人を責めない職場
まず、人依存から仕組み依存へと文化を変革することで、社内から人を責める文化が亡くなります。人依存の会社は、何かミスや不備が起こると、その原因を人に求めます。つまり、”あの人がミスした”とか、”あの人のせいで”というようなコミュニケーションが社内ではびこります。これは良好な職場環境を作るうえでよろしくありません。一方、仕組み依存の会社では、ミスや不備を仕組みを改善することで無くしていきます。”このミスが起こった原因はどの仕組みにあるのだろうか?”、”どの仕組みを変えれば、二度と不備が起こらないだろうか?”このようなコミュニケーションが行われるのが仕組み依存の会社です。
より高度な仕事にチャンレジ
仕組み化の本質的な目的は、人の育成です。仕組みがあることで人が育ちます。たとえば、私たちは仕組み化をアドバイスできるコーチを育成するトレーニングの仕組みを用意しています。この仕組みがあることで、これまでに経営者向けにコーチングしたことのない人でも出来るようになるのです。(もちろん、トレーニングを受けたからといっていきなり独り立ちするわけではありません。最初はサポート付きで、訓練を繰り返しながら自立していきます)
業務を仕組み化することで、簡単な仕事はまだスキルや経験の少ない人に任せ、自分はより高度な仕事に時間を使うことができるようになるのです。これは社員にとってキャリアを成長させるチャンスとなります。
休暇がとれる
人依存の会社では、”その人がいなくなったらできない仕事”がたくさんあります。このような職場では社員は休暇を取ることもままなりません。しかし、仕組み化している会社では、ほかの人が代わりに仕事を担当することができます。これによって、休暇を取れる余裕が出来ます。
会社が成長し、待遇が良くなったり、キャリア形成に役立つ
会社をある程度の規模を超えて成長させようと思ったら、仕組み化は必須事項になります。仕組み化しないと成長できない、逆に言えば、仕組み化すれば会社は成長していきます。自分の所属している会社が成長していくことは、ほとんどの人にとって望ましいことであるはずです。なぜならば、会社が大きくなり、強固な体質になれば待遇も良くなりますし、自分のキャリアにもプラスになるからです。
仕組み化による経営陣のメリット
経営陣にとって仕組み化によるメリットは計り知れません。ここで改めて解説するまでもないですが、人の育成が早まる。経営の安定性が高まる。重要な仕事に集中できる等、多くのメリットがあります。
経営陣やリーダーの仕事を説明する
仕組み化の計画を共有していくと同時に、経営陣やリーダークラスの本来の仕事とは何か?を組織内で共有する必要があります。そして、その本来の仕事に集中するためには仕組み化が必要であることを伝えます。経営陣やリーダークラスの仕事は、会社のビジョンに向けて戦略や計画を立案し、それが実行されるようにサポートすることです。日々の営業や事務処理、顧客対応に忙しくしていては、そのような仕事に集中することができません。現場仕事を仕組み化し、ほかのメンバーが責任感を持って担当できるようにする必要があります。
また、ある程度仕組み化できると、ほぼ間違いなく、経営者やリーダークラスの仕事は楽になり、現場で仕事をする時間が減ります。そうなった際、ほかの社員から、”社長やあの上司は何も仕事していないのに高い給与をもらってズルい”というような悪評が立つことがあります。戦略や計画の立案は会社にいなくてもできます。だから、社長が会社に来ていないからと言って、仕事をしていないわけではないのです。しかし、社員にはそれがわかりません。”現場で仕事をしていない=仕事をしていない”と認識してしまうのです。
このような悪評が立ってしまわないように、組織全体で経営者やリーダーの仕事とは何なのか?が共有することが大切です。
仕組み化の意味を説明する
仕組み化という言葉の意味を社内で統一し、共有することは、仕組み化を進めていくにあたって決定的に大切です。ここがずれると、”仕組み化をしていこう”という号令をかけても、みんながバラバラに行動しだします。ですので、仕組み化の計画づくりの前に、仕組み化という言葉の意味の統一をしておきましょう。
「仕組み経営」では、仕組み化の意味を以下の3つで説明していますので、ご参考にされてください。
- 仕組み化=属人性の排除
- 仕組み化=成功の複製
- 仕組み化=良い習慣作り
より詳しい解説は以下の記事にまとめています。
仕組み化の計画を説明する
ビジョンを掲げ、仕組み化を進めていくことを告げたら、より具体的に、何をどう仕組み化していくかの計画も伝えます。計画がなく、単に仕事を仕組みにしていけ、と掛け声をかけても何も始まりません。
仕組み化の計画づくりについては以下をご参照ください。
仕組み化に貢献することが評価されることを伝える
最後に、仕組み化に取り組むことが人事上の評価につながる仕組みにしていくことが大切です。これがなければ、仕組み化やマニュアル化というのは、社員にとって余分な仕事でしかありません。仕組み化に関連する項目、たとえば、業務の標準化やマニュアル化に取り組むことを評価項目や個人目標に入れることです。
仕組み化なら仕組み経営
以上、「仕組み化の計画や必要性をどう社員に説明するか?」への回答をご紹介させていただきました。具体的に経営の仕組み化をしていきたいという方は、以下から詳細をご覧ください。