ジョブ理論の事例2選。実例から学ぶ市場を制覇する鉄則

ジョブ理論の事例2選。実例から学ぶ市場を制覇する鉄則



今回は、ジョブ理論の事例を2つ紹介します。

顧客ニーズを正しく抑え、満たされていないニーズをあぶり出すためのジョブ理論について、
下記2つにの記事で解説してきましたが、本記事では実際の事例からより理解を深めていきます。

参考記事:

ジョブ理論とは?フレームワークや実用方法をまとめて解説

売上を爆発的に伸ばす!ジョブ理論の実践10ステップを解説

今回取り上げる事例は、マイクロソフトとBOSCHの2つです。

ぜひ最後までご覧ください!

ジョブ理論とは

ジョブ理論とは、企業のイノベーションをより予測しやすいものにするために、顧客ニーズを適切に特定する理論です。

ジョブ理論において、顧客は”ジョブ”を完了するために製品/サービスを購入し、ジョブをより効率的に・安く・早く完了できるプロダクトを求めると言われています。

つまり、顧客が達成しなくてはならないジョブを把握すること=顧客ニーズの特定となるわけです。

詳しくは、以下の記事にて解説しています。

ジョブ理論とは?フレームワークや実用方法をまとめて解説

ジョブ理論の事例を読む前に

ジョブ理論の事例を次に紹介しますが、事例を見る前に以下の記事で、
ジョブ理論を実際のビジネスに活かすプロセスについて理解していた方が内容がわかりやすいです。

参考:「売上を爆発的に伸ばす!ジョブ理論の実践10ステップを解説

ジョブ理論の事例:マイクロソフト

課題

マイクロソフトは自社のソフトウェアの保証サービスに関し、ジョブ理論を適応しました。

マイクロソフトはかつて、一時金で保証サービスを提供するのではなく、複数年契約によってオペレーティングシステムをアップグレードする権限を企業向けに与えるプランを提供していました。

しかし、顧客企業にとってこのプランは費用対効果が見合わず、ソフトウェア保証サービスの更新を断る企業が続出したのです。

マイクロソフトにとっては、この保証サービスは、ソフトウェアのアップグレード版を購入するコストを削減できる効率的なプランという認識でしたが、顧客にとってはそうではなかったのです。

ジョブ理論で顧客ニーズを特定

そこで、マイクロソフトはジョブ理論の観点から、顧客を2種類に分け、それぞれのジョブを定義しました。

顧客⑴:企業の調達マネージャー

ジョブ→ソフトウェアライセンス契約に関し、理解・選択・交渉を行う。

 

顧客⑵:企業の情報システム部門

ジョブ→契約を確認し、ソフトウェアの更新を実行し、運用を行う。

マイクロソフトは、上記の2つの顧客タイプにインタビューを実施し、顧客がジョブ完了の先に期待する理想の結果をそれぞれ75個と100個ほど洗い出しました。

次に、定量的調査(アンケート)を100人の顧客⑴と300人の顧客⑵に実施し、洗い出した理想の結果に対する優先度と現状の満足度を調査しました。



この調査によって、多くのニーズが満たされていないことが明らかとなったのです。つまり、この時点のマイクロソフトのサービスは、顧客のジョブ達成に対し、ほんの一部しか貢献できていなかったのです。

更に、マイクロソフトは顧客視点からプロダクトのライフサイクルを考察し、各時点において発生する関連ジョブも特定しました。

イノベーション

マイクロソフトは、調査で特定したニーズに対し、既にソリューションを持っていました。ただ、各ソリューションは一つのパッケージで販売されていた訳ではなく、個々で散らばった状態で販売されていたのです。

そこで、各ソリューションをソフトウェア保証サービスとして1つのパッケージに集約し、サービスを顧客のジョブを1つのツールで解決できるプロダクトに一新しました。

例えば、社内セキュリティに関して満たされていないニーズが発見されたため、保証パッケージにはPCアクセス制限のルールテンプレートを新たに加えました。

この改定の結果、ソフトウェア保証サービスの売上は目標の110%を達成、しかもこの時点で保証サービスのパッケージは一部機能の追加のみで、フルバージョンはリリースされていない状態でした。

  • ジョブ理論を活用して的確に顧客のジョブを把握したこと
  • ジョブに対して期待される結果を調査から洗い出し、精査して満たされていないニーズを把握したこと
  • 既存のソリューションや技術を集約し、一つのパッケージとしたことで顧客のジョブ完了を最も効率化できたこと

上記3点が本事例のポイントです。

ジョブ理論の基本に則って、結果を出した好事例になります。

ジョブ理論の事例:BOSCH

ジョブ理論の事例2つ目はドイツ発のの電気機器メーカーBOSCHです。

課題

2001年にBOSCHは北米の丸ノコ(丸型のノコギリ)市場に進出することとなりました。

多くの課題がある中で、商品開発部のDirectorには4つの目標がありました。

  1. BOSCHのブランドイメージである品質を反映したノコギリで市場に進出する
  2. 北米での競合商品を上回る
  3. Home Depotなど大手の小売店を販売チャネルとする
  4. 高利益を保ちつつも競争力のある価格で販売する

産業用ノコギリの市場はそれまでほとんどイノベーションがなく、成熟し、コモディティ化が進んだ市場でした。そのため、Boschは市場の既存プレイヤーが見逃している機会を訴求することが重要だと考えていました。

ここで、Boschは見逃されているニーズを見つけるためにジョブ理論を活用しました。

ジョブ理論で顧客ニーズを特定

まず、ノコギリのユーザー30人に1:1orグループインタビューを実施し、コア機能的ジョブである「木材をまっすぐ切る」ことと、このジョブ完了に期待する85の理想の結果を明らかにしました。

この時、消費チェーンジョブのフレームワークを活用し、購入・メンテナンス・破棄に渡る一連の商品のライフサイクルに着目して関連ジョブの洗い出も行なっています。

次に、270人のユーザーの定性的調査を実施し、85の期待する理想の結果の中で現状の製品で満たされていないものを特定しました。

調査とOpportunityアルゴリズムによる計算の結果、多くのニーズが適切に満たされていることがわかったのです。しかし、市場に対する”平均的な”意見のみで判断を下すのはミスリーディングであることがほとんどです。

というのも、ほとんど全てのマーケットで人々は、単純にニーズが満たされていないことに気づきません。ニーズが満たされていないと感じているのは、特定の顧客のセグメントであり、単純に全員のアンケート結果の平均を見るだけでは重要なポイントを見逃してしまう可能性があります。

ここで、アウトカムベースセグメンテーションの手法を用いて、ニーズが満たされていないと回答したユーザーの属性を調べ、どんな特徴を持ったユーザーがどんなニーズを満たされていないと感じているのか、ユーザーをカテゴライズします。

この手法によってこのケースでは4つの顧客セグメントを明確にし、そのうち一つはBoschにとって完璧なターゲットでした。このターゲットセグメントはユーザーの約33%を占め、14の満たされていないニーズを抱えていました。

イノベーション

その後、14のニーズを満たすアイデア出しを行い、実際の商品改良/開発に取り組んでいきます。

例えば、コードに関するニーズに対し、ダイレクトコネクトコードシステムを開発し、これによって延長コードが作動中のノコギリに絡むのを防ぐことを可能にしました。

最終的に、BoschはCS20という新型の丸ノコを開発し、顧客満足度を38%も向上させ、当初の目的通り、Home Depotなどの大手小売店をチャネルとして販売開始することに成功しました。

更に、CS20は2004年には北米で最も売れている丸ノコとなり、Popular Scienceというアワードでイノベーティブな製品100に選ばれています。

このように、ジョブ理論を使って解決すべき課題が明確にわかっていたことがBoschの1番の勝因と言えるでしょう。



この事例のポイントは、ジョブ理論において満たされていないニーズを顧客セグメントからじっくりと調査した部分です。平均的な調査回答ではなく、その奥にある顧客属性からニーズを見極めるのが重要です。

 

いかがだったでしょうか?

ジョブ理論の事例を2つ紹介しました。

ジョブ理論活用の具体的なステップについてはこちらをご覧ください。

今回は以上となります。

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