コロナ禍/アフターコロナを乗り切るビジネスはリーダーシップが違う



清水直樹
今日現在、まだコロナ禍にあり、中小企業は余談を許さない状況です。そんな中、本日はコロナ禍/アフターコロナを生き抜くためのリーダーシップというテーマで海外事例をご紹介します。

 

危機の時こそ、リーダーの真価が問われると言いますね。意識しているしていないにしろ、中小企業の社長はリーダーであり、この危機を乗り切るために重要な役割を担っていると言えます。

本記事では、この危機にリーダーシップを発揮し、組織やビジネスを変革させているリーダーたちの海外事例をご紹介します。

 

エッセンシャルワーカー(キーワーカー)のリーダーは現場に入る

1人目は、Zolman社の副社長、ミッシェル・ローワーズ。Zolman社は台風やハリケーンなどで破壊された建物の修復を得意としている建設関連の会社です。その中のミッシェルは財務部門担当の副社長。

彼女たちはいわゆるエッセンシャルワーカー(キーワーカー)と呼ばれる職種であり、こういったパンデミック時でも現場で働き続けることが求められます。

コロナ禍によって彼らの仕事は、災害復旧ではなく、建物の除菌作業がメインになってきました。当然、感染リスクがある仕事です。

最初、ミッシェルは、「確かにリスクのある仕事だが、自分が率先して働けば、みんなもそれに従って働いてくれるだろう」と想定していました。しかし、オフィスの中は普段よりも静かでみんなが不安を感じている様子が見て取れました。

そこで彼女は、メンバーの個別の事情を考慮するようにしました。

彼女は仕事のリスクを説明し、自ら手を挙げた人だけが現場に行くようにしました。誰も現場に行きたくない場合は、自分と他のリーダーが代わりに行くことを決めました。

ある消毒の仕事の依頼がきたとき、ミシェルは行ってくれるメンバーを募りました。しかし、誰も手を挙げませんでした。次の日、彼女は再び尋ねましたが、また誰も手を上げませんでした。しかし、3日目には1人の人が参加してくれました。そしてその日のうちに、必要な人数が集まりました。

本来、リーダーであるミッシェルの仕事は自宅でできますが、彼女は毎日オフィスに行くだけではなく、他のメンバーと一緒に現場での消毒作業を行いました。

ミッシェルはメンバーの感情を理解することに焦点を当て、かつ自ら率先して働くことで責任感ある姿勢を示しました。

 

傷つきやすいリーダーが組織を変える

2人目は、Geil Enterprise社の社長、ロイ・ヘルナンデス。

同社は、セキュリティ、アラーム、清掃サービス、衛生用品の分野でビジネスをしている社員数約500人の会社です。この会社もコロナ禍においても働き続けることが求められるエッセンシャルワーカー(キーワーカー)です。

ロイは20代前半に入社し、警備員から最高執行責任者(COO)へとランクを上げ、最終的にはオーナー家以外のメンバーとして初めて社長に就任しました。しかし彼は元々寡黙な人物であり、自分のリーダーシップに不安を感じていました。こういったリーダーは、Vulnerable(傷つきやすい)リーダーといわれています。

ロイは、このコロナ禍においてリーダーシップを発揮しないといけないことについて次のように語っています。

“私は寡黙な人間で、自分がリーダーであると自覚することにいつも苦労してきました。しかし、今回、私はステップアップして、より多くのことをしなければならないと感じました”

3月17日の夜、ロイは2日目のリモートワークを終え、自宅でくつろいでいました。ただ、「この時期にどうやって組織をリードできるのだろうか」という不安がずっと頭の中にありました。

そこで彼は、自分の考えをパソコンで打ち始めました。ロイは、みんなにポジティブなメッセージを送りたかったし、チームに感謝の気持ちを伝えたかったのです。普段はそんなことはしないロイでしたが、翌朝、書き終えたメッセージを皆に送信しました。

皆からの反響はとても大きく、ロイのメッセージは共感を呼びました。ロイはこの時、メンバーは自分からのメッセージを求めていたことに気が付きました。その瞬間から、ロイは本当の意味で、組織のリーダーになったのです。

それ以来、ロイは毎朝、みんなにメールを送り続けています。メールの内容は非常にオープンな内容であり、彼の感情や家族生活、パンデミックに対する自分の考察などをメンバーに共有しました。

結果として、ロイの正直なメッセージがチームをバラバラにするのではなく、団結することを促しました。

ロイは、この行動のおかげで、”自分のコンフォートゾーンから抜け出した”、と言います。

ロイは、傷つきやすいリーダーでありましたが、逆にそれがメンバーを気遣ったり、自分のことをオープンにさらけ出すということにつながり、組織の団結を強めることにつながったのです。

 

自律チームを促したリーダー

3人目はSmiley Technorogies社のCEO、エリザベス。

同社は銀行向けのシステムを販売している会社で、社員数は約40人。パンデミックの中でもビジネスは安定していますが、メンバーは自宅で仕事をしています。また出産したばかりの人がいたり、配偶者が仕事を失った人がいたりと個人個人の状況は様々です。



そのため、エリザベスは毎週、1人1人連絡を取りあり、彼らの状況を理解するように努めています。

また、在宅勤務を始めて間もない頃、エリザベスはチームとその家族に、好きな地元のレストランから1週間分のランチを会社から提供するというアイデアを思いつきました。これは、チームメンバーをサポートしながら、地元のレストランをサポートするための良いアイデアとなりました。

これはリーダーとしては小さな決断でしたが、メンバーが自主的に行動するきっかけになりました。チームメンバーはSlackの#GoodNewsチャンネルを立ち上げ、チームメンバーが他の人のために行っている善行を共有できるようにしました。世の中がネガティブなニュースであふれている中、チームの中では良いニュースを共有する環境を作ったのです。

こういったことにより、同社の社員は、物理的には離れているものの、これまで以上に心理的距離は縮まったと言います。

こういったことが出来たのは、同社の文化、価値観、ミッションを定義することに数年間をかけてきたエリザベスの成果でした。

 

売上70%ダウンの危機から脱出

最後の4人目は、imageOne社の共同代表であるロブとジョエル、ジョシュです。

同社は企業向けの印刷サービスを提供しています。3月中旬、ロックダウンに突入する頃、大口顧客からの連絡があり、自宅勤務へと移行した、と連絡が来ました。

ロブは、ジョエルに電話しました。もし他の企業も自宅勤務に移行したら、自社のビジネスに大きな打撃が生じることが考えられたからです。

その週末、経営陣が集まり、最悪のシナリオと財務への影響をシミュレーションしました。彼らは会社の財務を守るとともに、チームメンバーの生活を守ることが目標であることを確認しあいました。

同社は11 の州でビジネスを展開しており、収益の大部分をオフィスでの印刷ニーズに依存していました。そのため、顧客企業が自宅勤務に移行した時の影響は甚大で、最悪の場合、収益が70%低下すると予測しました。

彼らは、この状況をどうやって無事に乗り切るかについて、アイデアをチームで共有することにしました。

経営陣は、チームメンバーに情報を共有し、最悪のシナリオに対処する計画に参加させました。翌週からは、各部門が集まり、組織の財務健全性を守るための案を考えるように協力を求めました。

ここで助かったのは、彼らは元々、オープンブックマネジメント(財務情報を共有するマネジメント)を実践していたため、メンバーが自社の財務状況を正しく理解しており、キャッシュの重要性も理解していたことでした。

しかし、財務の透明性が高いからといって、悪いニュースを伝えるのは簡単ではありません。経営陣はメンバーに最悪なシナリオになった場合の給与の削減案などを伝えなくてはいけませんでした。

社長のジョシュは、その時の会議は、”これまで私が率いてきた会議の中で最も困難なものだった”と言います。

しかしチームは、互いに励まし合い、感謝の気持ちを伝え始めました。ある人は、”私たちは家族だ、一緒に頑張ろう “と言いました。もちろん、誰もがこの現実を好ましく思っていませんでしたが、チームのエネルギーはポジティブなものになりました。

それからの数日間、チームメンバーは新しいアイデアを出し合いました。各チームが会議を行う際には、リーダーシップチームが最初に定義した2つの優先事項、すなわち、1.会社の財務的健全性を守ることと、2.チームメンバーの財務的・精神的な幸福を守ること、に重点を置いていました。1週間で、100近くのコスト削減と収益を生み出すアイデアが集まりました。

チームメンバーの中には、時間に余裕が出来た人もいて、それが創造的になれる機会にもなったとのことです。ロブは、「この期間は、贈り物をもらったようなものです。時間を賢く使っています」と言います。

競合他社の多くは、スタッフの3分の1以上を解雇していますが、市場がもとに戻ったときには、また人を雇用して再度、組織化しなければなりません。しかし、同社はそうすることなく、いまいるメンバーで危機を乗り切ることを決めました。

結果として、現在のところ、最悪のシナリオには至っておらず、収益の減少は予測していたほど深刻ではありません。予定していた給与の全額減額も実施していません。

また、同社はチームメンバーの健康状態をチェックするため、「瞑想」「睡眠」「栄養」「運動」「つながり」「感謝」に関するアンケートを調査を実施しています。

ロブ曰く「情報は最優先事項です。情報がないと、ネガティブな話になってしまい、人々は思い込みをしてパニックに陥ってしまいます。私たちは定期的に会合を開き、オープンで正直、透明性を保っています」とのことです。

 

まとめ:コロナ禍/アフターコロナを乗り切るリーダーシップ

以上、4人の事例をご紹介しました。いずれもタイプは違いましたが、共通点としては以下のようなものが挙げられると思います。

  • 危機に陥る前から自社の価値観や文化をはぐくんできたこと
  • 情報をオープンにすること
  • 飾らず、本音でコミュニケーションをすること
  • 各メンバーと個別にコミュニケーションをすること

ぜひご参考にされてください。

なお、リーダーシップについてはこちらも参考になります。



リーダーシップスタイルの種類とは?6つの種類と7つの必須要素

 

※本記事の参照元:http://blog.smallgiants.org/stepping-up

 

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