お世話になります。
一般財団法人日本アントレプレナー学会の清水です。
これまでのメルマガで、拙著「仕組み化の経営術」の補足説明動画シリーズをアップしております。
今日は第十三本目、
ピカソワークに集中しよう
です。
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【動画】ピカソワークに集中しよう&書き起こし
書き起こし
マニュアル化と仕組み化は一緒に考える必要があります。
本の中でもマニュアルの作り方については詳しく解説していますが、その中で私が実際に作って活用したマニュアルの例を紹介しています。今日はその内容を補足したいと思います。
マニュアル化に取り組んでいる方も多いと思いますが、おそらく多くの方にとってマニュアル化というと、会社の中の比較的定型的な業務をまずマニュアル化しようとすることが多いでしょう。いわゆるバックオフィスや管理部門の業務、例えば総務、経理、人事の労務管理などの業務から始めることが多いと思います。
■事務作業をマニュアル化しても利益は生まれない
そしてそういった部分がマニュアル化できると、一安心して、我が社も属人化から脱却できたと感じることが多いでしょう。しかし、実はそこをマニュアル化しても、本来のマニュアル化や仕組み化の効果は得られないのです。
もちろんバックオフィス系の業務をマニュアル化することで、その部分のリスクは排除できます。例えば担当者が辞めたり交代したりした時に誰もその業務を引き継げないというリスクを回避できます。でも、それをマニュアル化しただけでは会社の利益には直結しません。
したがって、マニュアル化は現状業務の補助として捉えられることが多いのです。そのため、マニュアル化しようと思ってもリターンがあまり見えないので、マニュアル化が進まないことがよくあります。しかし本来は、マニュアル化をすることで利益を生むことができるのです。今日はその点について話していきたいと思います。
本の中で紹介しているのは、講座ファシリテーションマニュアルというものです。私たちは中小企業の仕組み化を支援していますが、以前は講座を開催していました。コロナ禍以前はオフラインで集まって講座をやっていました。現在はオンラインでのコーチング型になっているので、講座はあまり行っていませんが、当時使っていたのがこの講座のファシリテーションマニュアルです。これは私が作ったものです。
これは何かというと、仕組み化のやり方を教える講座を最初私が始めたものです。お客さんが来てくれて収益も上がっていましたが、このやり方では限界があるとすぐに気づきました。自分の体力と時間の制約が業績の限界になるので、そこから抜け出さないと成長の天井が見えてしまうのです。
■利益を生むマニュアルとは?
通常の場合、そこで講座開催に関する補助的な業務やアシスタント的な業務をマニュアル化して誰かに手伝ってもらい、自分は講座に集中しようと考えるものです。しかし、私はそのやり方にあまり興味がなく、自分がスター講師やスターセミナー講師として活躍することに全く興味がありませんでした。
そもそも講座自体を他の人にやってもらおうと最初から考えていたのです。
そのため、私が行っている講座の進め方、ファシリテーションをマニュアル化しようと考えました。それで作ったのがこのマニュアルです。これは127ページほどあります。これを作ったことで、それ以降私はおそらくこの講座を一度もやっていませんが、うまく回るようになりました。
マニュアルが127ページもあると、作るのが大変だと思うかもしれません。しかし、よく考えると、このマニュアルがなければ自分でずっとやり続けるしかないのです。それは非常に厳しく、自分の成長にもつながりません。一方、一度このマニュアルを作ってしまえば、自分でやる必要がなくなるので、そのリターンは大きいのです。そう考えれば、これくらいのものを作るのは全然大した労力ではないと言えます。
■全員がハッピーになるマニュアル
このマニュアルを作ったことで、私はこの講座を手放すことができました。他の人がこのマニュアルを使って講座を開催し収益を上げられるようになり、彼らにとってもハッピーですし、お客様もこのマニュアルに沿ってやれば成果が出るようになっています。私も、この講座をやらなくてよくなった時間で別の講座やプログラムを作れるので、みんなにとってハッピーな状況になりました。
結果的に収益も上がるようになりましたし、私の代わりに講座をやってくれる講師を育てるのも非常に楽になりました。このマニュアルがなければ、同じように講座をやってもらうために1人育てるのに数年かかったかもしれません。しかし、このマニュアルのおかげで、2日間で講座開催ができる状態まで持っていくことができたのです。
今日はマニュアルの詳しい作り方については本の中に書いてあるのでお話ししませんが、重要な考え方として、なぜマニュアルを作るのかという点についてお話ししたいと思います。
■ピカソワークに集中しよう
自分自身が、もしくはそのマニュアルを使う人が「2%のピカソワーク」に集中するためにマニュアルを作るんだということを是非皆さんにお伝えしたいと思っています。このピカソワークって何かと言いますと、本当にその人しかできない高付加価値な業務ということです。そこに集中するために他の部分はマニュアル化しましょうということです。
2%がピカソワークで、残りが98%ですね。そこはもうマニュアル化して標準化しましょうという話です。この2%ってどういう業務かというと、所要時間が少なくて生み出す価値が高い業務です。これがピカソワークということですね。ここはその人の経験や勘、センスが反映されるところです。他の部分はマニュアル化できます。
私が作ったマニュアルを使えば、100%の講座が開催できるわけではないですが、98%はできます。残りの2%の部分はそのやる人の人柄や個性が出てくる部分です。でもそこは許容しましょうということで、残りの98%は標準化して同じようにできるようにしましょう。
■マニュアルが生産性をあげる理由
こうすると何がいいかというと、98%が標準化されているので、ここについてあれやこれやと試行錯誤する必要がなくなります。例えば講座のマニュアルでは、講座で大事なのがタイムマネジメントです。例えば講座を2日間でやると考えて、どの部分にどのパートにどれくらいの時間をかけるかというのは1回やってみないとわからなかったりします。マニュアルがない状態でやると、試行錯誤しながら時間配分を考えないといけません。それは無駄な試行錯誤です。私が既に何回かやっているので、時間配分を見ればここは何分ぐらいでやればいいなというのがわかります。それもマニュアル化します。
そうすると講師は時間配分に気を取られなくて済みます。そうすると何ができるかというと、受講生の反応を見ながら、どういうふうに説明したら受講生が理解しやすいかなとか、どんな質問が来るかなとか、そちらに集中できるんですよね。
この98%の部分が標準化されていると、本来その人がやるべき2%の部分、つまりその人の個性が出る部分に集中できます。そのために他の部分はマニュアル化しましょうという話です。
このピカソワークという言葉は、実はピカソにまつわる逸話から来ています。ある女性がピカソに絵を描いてもらおうと頼んだところ、ピカソはササッと描いてあげたそうです。その女性が「いくらですか?」と聞くと、ピカソは「1億円です」と答えました。それに対して女性が「でもあなたはたった5分で描いたじゃないですか」と言ったところ、ピカソは「いや、これは一生かけて学んできた技術なんです」と答えたという話です。この話が示すのは、短時間で高い価値を生み出す仕事がピカソワークだということです。
このピカソワークに集中するために他の部分をマニュアル化して標準化しましょうということです。これが大事な考え方です。これによって自分自身やそのマニュアルを使う人が高付加価値な業務に集中できるようになります。
というわけで、今日はマニュアル化についての話をしました。具体的なマニュアルの作り方については本の中に書いてありますので、ぜひ読んでみてください。今日はこの辺で終わりにしたいと思います。ありがとうございました。