値決めは経営。価格設定のパターンと高い値付けでも売れる商品の特徴を完全解説。



清水直樹
「値決めは経営」と言ったのは稲盛和夫さんです。値決めは経営者の仕事であり、お客様も喜び、自分も儲かるポイントは一点であるとのことです。そこで本記事では、主に中小企業経営者のために、値決め、つまり価格設定をするための基本的な考えかた、そして高い値付けでも売れる商品の特徴についてご紹介していきます。

 

この記事の信頼性

この記事は世界No.1の中小企業アドバイザー(米INC誌による)、マイケルE.ガーバー氏著「はじめの一歩を踏み出そう」の内容をベースにしています。世界700万部のベストセラーの内容を日本の会社に当てはめてご紹介していきます。執筆者である私はマイケルE.ガーバー氏のメッセージをおそらく日本で最も多く翻訳したり、代理となって発信してきましたので、本記事の内容も信頼いただける内容かと思います。

 

値決め(価格設定)についての基本知識

まず、値決め(価格設定)についての基本的な知識を理解しておきましょう。

値決めは経営の意味とは?

本記事のタイトルにある「値決めは経営」とは、稲盛和夫さんの言葉です。この言葉の意味を、ご本人のHPより引用させていただきます。

値決めは、製品の価値を正確に判断した上で、製品一個当たりの利幅と、販売数量の積が極大値になる一点を求めることで行います。またその一点は、お客様が喜んで買ってくださる最高の値段にしなければなりません。

こうして熟慮を重ねて決めた価格の中で、最大の利益を生み出す経営努力が必要となります。その際には、材料費や人件費などの諸経費がいくらかかるといった、固定概念や常識は一切捨て去るべきです。仕様や品質など、与えられた要件をすべて満たす範囲で、製品を最も低いコストで製造する努力を、徹底して行うことが不可欠です。

値決めは、経営者の仕事であり、経営者の人格がそのまま現れるのです。

このとおり、値決めについての重要さが語られています。値決めをするには、まずお客様が喜んでくれる値段を知らなくてはいけません。そのためには当然、お客様が何を考えているのかをじっくり知る必要があります。そして、さらに、その値段で実際に商品やサービスを提供できるように経営努力をしなくてはいけない。そこには経営者の人格すべてが現れる、というわけです。

 

値決めはなぜ重要か?価格が経営に与える影響

稲盛さんの言葉でも十分値付けの重要性はわかりますが、より具体的に見てみましょう。たとえばあなたの会社の商品の値段を10%上げたら、利益はどれくらい増えるでしょうか?答えは当然10%ではありません。

非常に単純化しましたが、以下の例を見てみましょう。いま100円で売っている商品で、原価が30円、変動コストが40円、手元に残る利益が30円だとします。この時、価格を10%上げたとしてシミュレーションしてみましょう。価格を上げても原価は変わらないので30円です。変動コストは価格に比例して10%上がるとすると44円。すると利益は36円になり、20%アップとなります。

つまり、価格を10%上げたら、利益は20%アップするのです。これは非常に大きな差ですね。

この例からも値決めの重要性がわかりますね。ただもちろん、価格を上げれば上げるほど、通常は販売量が減るので、トータルでの利益は20%もアップしないと考えられます。なので、先ほどの稲盛さんの話にもあるように、価格と販売量を両方考慮して値決めをする必要があるのです。これは以下に紹介する価格弾力性という概念で説明できます。

価格弾力性

価格弾力性とは、価格をいくら下げたら(上げたら)、どれくらい販売量が増える(減る)のか?を判断するための指標です。詳しい計算式はここでは省きますが、

価格弾力性が高い・・・価格の変動が、販売量に大きな影響を与える。

価格弾力性が低い・・・価格の変動が、販売量にあまり影響を与えない。

ということになります。

大企業における値決めの場合、おそらく上記の価格弾力性などを考慮し、戦略的に値決めをすることが多いでしょう。

一方、中小企業の場合、そういった細かいアプローチをとることはほとんどなく、もっと大雑把に決めるのが普通でしょう。

中小企業経営における値決め(価格設定)の3つのアプローチ

同じ業界で同じような商品を販売しているにも関わらず、各社ごとに全く価格が異なるケースもあります。アパレル業界や飲食、宿泊、または私たちのような講座、コーチングビジネスなどもそうです。たとえば、講座ビジネスの場合、2時間で5000円の講座もあれば、同じ時間で2万、3万の講座もザラにあります。

なぜそこまで差が出るのかというと、各社ごとに値決めに対するアプローチが異なるからなのです。そこでここでは、中小企業における値決め(価格設定)の3つのアプローチをご紹介します。

コスト積み上げ式

一つ目のアプローチは、コスト積み上げ式です。これはその名の通り、その商品を販売するために必要なコストを積み上げ、そこに一定の利益を載せて値決めする方法です。どちらかというと、売り手主導の価格決定方法と言えるため、あまり推奨はしない方法です。ただ、業界によってはこのやり方で値決めをせざるを得ない場合もあるでしょう。

 

市場平均式

これもその名の通り、業界の平均的な値段を調べ、それに近い値段を設定する方法です。そのため利益や販売量も市場平均を目指すことになります。これもあまりお勧めできる方法ではありませんが、商品やサービスにそれほど差別化要因がない場合、このアプローチをとらざるを得なくなります。

 

プレミアム式

プレミアム式とは、商品やサービスを差別化し、他社より大きな利益を取れるように高値の価格設定を行う方法です。中小企業の場合、このプレミアム式を目指すことをお勧めします。どうやって高値の価格設定をするのか?についてのヒントは次の章でご紹介いたします。



 

高い価格設定でも売れるのはなぜか?

中小企業にお勧めなのがプレミアム式と述べましたが、では、どのようにして高値の価格設定をすればいいのか?という話になってきます。

高価格商品の代表格と言えば、アパレルや自動車などのブランド品ですね。これらの企業は非常に大きな利幅を取り、大きく儲けています。でもそれは彼らにこれまでの歴史を武器にしたブランド力があるからであり、中小企業が真似できるものではありません。

そこでここでは、高い価格でも売れるためのヒントをご紹介します。

良い顧客を対象にする

良い顧客を対象にするのは商売の基本と言えます。ここでいう良い顧客とは、言い方が悪いかもしれませんが、”お金を持っている顧客”のことです。良い顧客を対象にすることで、クレームが減る、手間がかからない、社員のストレスが減るなどのメリットがあります。なにより大きいメリットが、高い値段でも売れやすいということです。

一般的に言って、お金を持っている人たちは、”良い商品は高い”ということを知っている人たちと言えます。なので自社の商品やサービスにこだわりがあり、質が高いということに自信があるのであれば、彼らはちゃんとそれに対する対価を認めてくれ、高い値段でも買ってくれるのです。

たとえば、飲食店を出す場合を考えてみましょう。繁華街に出せば人通りも多いし、来客数も増えるだろうと思いますね。ただ、この場合、来店客を絞り込むことが難しく、ここでいう良い顧客も来るかもしれませんが、その逆の悪い顧客も来ます。そのため、良い顧客だけを対象にすることが難しいのです。

一方、住宅街に出せばどうでしょうか。住宅街に出す場合には、来店客数は限られますが、その分、来店する顧客層を絞り込むことができます。平均所得の高い住宅街に出せば、良い顧客しか来なくなります。私たちのお客様の中にも、良い顧客が多い住宅街に店舗を設け、非常に安定したビジネスをしている経営者も多くいらっしゃいます。

 

価値の変換(何に対してお金を払うか?)

もうひとつの方法は、価値の変換です。これはちょっと理解が難しいかもしれませんが、お客様が何に対してお金を払うか?を変換してあげるということです。

これに関しては、私たち自身の例を挙げましょう。私たちのメイン商品は、中小企業経営者を対象にした会社を仕組み化するためのコーチングサービス「仕組み経営導入パッケージ」です。このサービスはめちゃくちゃ高いわけでもありませんが、コーチング業界の平均よりかは高価なサービスになります。ただ、それでもこれまでに多くの方が受けていただいています。

なぜそれができるのかというと価値の変換をしているからなのです。たとえば、このサービスを、”御社の会社を仕組み化するノウハウ”です、と言って売っていたら、なかなか売りにくいでしょう。ノウハウであれば講座や教材でも手に入る、と思ってしまうからです。(実際のところ私たちが提供しているノウハウを得られる講座や教材はありませんが)

一方で、私たちがこのサービスを販売するときにお伝えしている価値は次のようなものになっています。

  • 会社の仕組みを作れる経営人材を育てることができる。
  • 会社を仕組み化することで高値で売れる会社ができる。
  • 会社を仕組み化することで経営者の自由時間が増え、新規事業に取り組める。

私たちが提示している価格は、ノウハウを手にする対価としては高いかもしれませんが、上記のようなことが実現できる対価としては安いのです。

このように、お客様が何に対してお金を払うか?を他社と変えることによって、高い値段でも売れるようになる可能性があります。

 

合理性を説明する

次に価格の合理性をきっちりと説明することです。これは企業向け商品の場合やりやすくなります。企業向け商品の場合、その購入判断になるのは、売上が上がるか、コストが下がるか、です。そのため自社商品を導入した場合としなかった場合に、売上やコストがどう変わるのかを説明できればいいのです。

これに関しては、以下の動画でも説明していますので、合わせてご参照ください。

 

ストーリーを説明する

最後にストーリーを説明することです。これは合理性を説明するのとは逆で、顧客の感情に訴える方法です。たとえば、その商品がどのような経緯で作られたのか、どんな素材や材料が使われているのか、などのストーリーを伝えることで、”これだけ手間がかかっているなら、そりゃこの値段になるよね”となります。

ストーリーによって、顧客から見た時の価値を上げることができ、高値でも売りやすくなります。

 

値決め(価格設定)はテストしよう

最後に大切なこと。値決め(価格設定)はテストしよう、ということです。これまで見たとおり、価格の設定方法にはいくつかのアプローチがあります。そのため、どの価格が自社にとって最適なのかを判断するためにはテストが必要なのです。どこまで価格を下げたらトータルの利益が上がるのか、どこまで価格を上げたら売れなくなるのか、等々。あまりに頻繁に価格を変えると顧客の混乱を招きますが、最適な値決めを探すべく継続的な改善をしていきましょう。

 

正しい値決めの仕組みで会社を成長させるなら

以上、値決めの重要性や方法についてご紹介してきました。何か参考になる点を発見していただければ幸いです。私どもでは、こういった値決めの方法も含め、中小スモールビジネスを成長させる仕組みづくりをご支援しています。詳しくは以下からぜひご覧ください。

 

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