サブスクリプションビジネスとは?収益法や成功法まとめ



現在、デジタル領域で多くの企業がサブスクリプションビジネスを採用しているのはご存知の通りです。この流れは非デジタル領域にも波及し、大手企業はもちろん、スモールビジネスの分野でも続々とサブスクリプション型の業態への転換が図られています。

今回は、サブスクリプションビジネスについて詳しく解説し、その収益法や成功へ導く仕組みをご説明していきます。

 

サブスクリプションビジネスとは

サブスクリプションビジネスとは、商品やサービスを売り切るのではなく、「月額○○円で使い放題」といった形で、お客様が利用した期間や利用量に応じて対価を支払う、いわゆる課金提供型のビジネスのことです。

これまでの商品やサービスを1回ごとに売り切るビジネスでは、単発の売上は発生するのですが、これを継続的・安定的な売上に繋げることが多くの企業にとって課題となってきました。その中でシェアを広げ続けているのが、サブスクリプション型のビジネスモデルなのです。

すぐに思い浮かぶのはNetflixやHulu、Spotifyなどのエンターテインメント系のサービスですが、そのほかにもMicrosoftはExcelやWordなどのofficeシリーズをサブスクリプション型で提供していますし、Adobeもこれまでの売り切り型からサブスクリプション型ビジネスへと移行しています。

また最近ではデジタル領域だけではなく、カーシェアやファッション、さらにはラーメン食べ放題、コーヒー飲み放題など、非デジタルサービスの領域にもサブスクリプションビジネスが広がってきています。

サブスクリプションビジネスが拡大している背景として、消費者が所有や購入することよりも、初期費用が抑えられ、モノやサービスを共有することにメリットを感じるようになってきたことが考えられます。

このような消費者の消費行動の変化、スマートフォンに代表されるデジタルデバイスの加速度的な普及や進歩、そして企業にとっては顧客との継続的な関係構築が期待できることが重なり、あらゆる業態においてサブスクリプションビジネスが一気に加速しているわけです。

 

サブスクリプションビジネスの市場規模

サブスクリプションビジネスが普及していることは実感いただけていると思いますが、では実際にどの程度の市場規模となっていて、今後の展望はどう見込まれているのかをご説明していきます。【出典:矢野経済研究所「2022 サブスクリプション・定額サービス市場の実態と展望」(2022年6月8日)】

市場概況

2021年度のサブスクリプションサービスの国内市場規模は、エンドユーザー(消費者)支払額ベースで、前年度比10.6%増の9,615億5,000万円でした。「衣料品・ファッションレンタル」「外食サービス」「生活関連サービス」「多拠点居住サービス」「デジタルコンテンツ」「定期宅配サービス(食品・化粧品類)」の6市場において、前年度と比較して成長が見られています。

注目トピック

今回の調査で注目されたのが、交通事業者によるサブスクリプションサービスの試みです。

コロナ禍をきっかけとするライフスタイルの多様化、リモートワーク化の進展などの多様化をチャンスと捉え、新たな需要創出に向けて各社でサービス開発を進める中、サブスクリプションビジネスが脚光を浴びました。

これまで物理的な移動を伴うサービスのインフラを提供してきた交通事業者がサブスクリプションサービスを導入することで、新たにソフト面でのサービスを強化することにつながりました。サブスクリプションサービスの導入は、交通サービスのさらなる成長のきっかけになると捉えられています。

将来展望

2022年度のサブスクリプションサービスの国内市場規模は、前年度比9.5%増の1兆524億7,500万円、2024年度には1兆2,422億4,000万円になると予測されています。また前述の6市場すべてにおいて、2022年度も成長が見込まれています。

 

サブスクリプションビジネスの種類

ビジネスには大きく分けて「BtoBビジネス」「BtoCビジネス」の2種類がありますが、それぞれのビジネスに応じたサブスクリプションビジネスの具体的な例をご説明していきます。

BtoBビジネス

BtoBとは「Business to Business」の略称で、企業と企業の間でサービスや商材の提供を行う企業間取引のことです。

先ほどご紹介した、Microsoftが提供する「Office365」はサブスクリプションビジネスとして登場したパッケージの代表例で、月額、または年額料金を支払うことにより、常に最新バージョンのアプリケーションを利用できます。企業にとってはコストダウンにつながることが見込まれ、多くの導入事例があります。

また複合機・コピー機の大手であるリコーは、クラウド型のアプリをインストールすることにより、いつでもどこでもスキャンした文書を確認できるサブスクリプションビジネスを展開しています。特別な設備投資が必要とされないこともあって、リモートワークの普及に伴い需要が高まっています。

 

BtoCビジネス

BtoCとは「Business to Consumer」の略称で、企業が一般の消費者に対してサービスや商品の提供を行う取引のことです。

音楽配信大手サービスのApple Musicはいち早くサブスクリプションビジネスを開始し、2018年7月には業界シェア1位となりました。アーティストの最新作を紹介することに力を入れた結果、多くの有料会員を獲得できたと言われています。最新楽曲が配信開始と同時に大きな話題となることが多く、シェアの拡大につながっています。

またメチャカリ(MECHAKARI)は、1万種類以上のファッションアイテムを月に何度でも借りられる洋服のサブスクリプションサービスです。商品はすべて新品、返却期限なし、気に入った商品はそのまま購入できるという利便性によって、若い女性を中心に利用者を伸ばしています。

サブスクリプションビジネスのメリットとデメリット

サブスクリプションビジネスには数多くのメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。企業側と利用者側、双方の視点からそれぞれをご紹介していきます。

サブスクリプションビジネスのメリット

事業者側

サブスクリプションビジネスにおいては、利用者が解約しない限り売上が継続するので、売上の予測がしやすくなります。また、利用状況を細かく把握・分析できるので、利用者がどんなサービスや商品を求めているのか、何を利用しているのかをつぶさに知ることが可能になります。この情報は新たなユーザー獲得の戦略策定にも利用することができます。

利用者側

一定の金額を支払えば自由にサービスを利用できるので、コストパフォーマンスの高さを実感できます。普段は見ない映画、興味のなかったジャンルの本にも気軽に手を伸ばすことができ、興味の幅が広がります。また、物を所有することが少なくなるため、置き場所の確保や管理の煩わしさから解放されます。

 

サブスクリプションビジネスのデメリット

事業者側

まず挙げられるデメリットが、利用者を集めることが困難であることです。また、使い勝手が悪い場合にはすぐに解約されてしまう恐れがあるので、常に新鮮なコンテンツや商品を提供する必要があります。さらに、利用料金の入金確認をリアルタイムに行うシステムの構築が必要となった場合、初期段階において手間や投資、労力がかかります。



利用者側

パッケージとして提供されるものが多いため、本来興味のないものや利用しないものも含まれてしまいます。便利で手軽なコンテンツに釣られて次々にサービスの契約をしてしまうことで、結果的に単体購入よりも費用がかさんでしまう可能性もあります。

 

サブスクリプションビジネスのビジネスモデル

サブスクリプションビジネスのビジネスモデルは、企業と顧客の間の契約という側面も持っています。顧客は一定期間、商品やサービスの代金を支払うことに同意し、定期的な支払いを完了する限り、企業は商品やサービスの提供を続けます。契約が満了すると、顧客はサブスクリプションを更新するかキャンセルするかを選択することができます。

分かりやすい例が新聞の購入です。コンビニや駅などで新聞を個別に購入することもできますが、新聞を読んでいるほとんどの人は定期購読しているはずです。そうすれば、新聞を購入するためにお店に行くのではなく、定額料金を払うことで玄関先に新聞が届けられるわけです。

サブスクリプションビジネスの事例

ここでは、サブスクリプションビジネスを導入して成功した2つの事例を取り上げ、そのビジネスモデルや収益構造を見ていきます。

Netflix

Netflixのビジネスモデルは非常にシンプルなサブスクリプションベースで構成され、TVドラマ・映画・バラエティ番組のストリーミングサービスを見放題で提供しています。

サブスクプランはベーシック、スタンダード、プレミアムの3つで構成されています。Netflixは、このシンプルなモデルでディズニーを上回る時価総額2000億ドル(21兆円)まで成長を果たしました(2020年時点)。

Netflixの収益構造

Netflixは収益性の高いビジネスです。2018年の当期純利益は12億ドル、2019年は18.7億ドル、そして2020年には約27.6億ドルの利益を計上し、前年より47.91%増加しています。コロナ禍の影響もあり、登録者数、利益ともに毎年向上しています。

高い利益水準を持つNetflixですが、キャッシュフローを見てみると、実はマイナスとなっています。これは、オリジナルコンテンツの制作とコンテンツのライセンシングにコストを費やしているためです。

将来を見据えて継続的にに顧客を獲得・維持するために、特にオリジナルコンテンツの制作にはここ数年間大規模な投資を行っています。市場の競争が激しくなるにつれて、Netflixでないと見れないコンテンツを用意して差別化することが大きなカギとなるためです。

Netflixのビジネスモデルから学ぶこと

Netflixのサブスクリプションビジネスは、非常に大きなスケールで展開しています。しかし、現在の会員数獲得までにはかなりの投資をしているわけです。

一般的にサブスクリプションモデルは、単純な売り切りビジネスよりもセールスが難しく、長期化すると言われています。登録は簡単でも、常に良いコンテンツを配信し、システムメンテナンスを行い、顧客サポートを充実させないと、すぐに解約されてしまうためです。

サブスクリプションビジネスであれば安定的に楽に稼げる、というわけではないということです。サブスクリプションだからこそ、会員登録後のカスタマーサクセスやサポート、顧客を継続的に満足させる仕組みづくりに大きな労力やコストが必要となるわけです。

 

Google Cloud

Googleは企業向けのクラウドサービスであるGoogle Cloud Platform(GCP)とGoogle Workspaceを提供しています。

GCPは、デベロッパー向けのPaaS・IaaSで、アプリケーションを開発する基盤を提供しています。Google Workspaceは企業の生産性を向上させるSaaSで、企業向けGmail、Document、Drive、Hangoutなど、リアルタイムのコラボレーションとコミュニケーションを円滑にする働き方改革ツールです。

両者ともサブスクリプション型で月額料金を支払って利用します。

Google Cloudの収益構造

持ち株会社であるAlphabetが発表した2022年4~6月期決算によると、クラウド事業の売上高は前年同期比35%増の62億7600万ドルとなりました。Google Workspaceも好調で、ユーザー数と1ユーザーあたりの平均売上高がいずれも伸びています。

Google自体のビジネスモデルはGoogle AdsやYouTubeの広告がメインの収益源となっており、収益の83%が広告事業で成り立っています。しかし、Googleのビジネスモデルの多様化をGoogle Cloudが支えていることもまた事実なのです。

Google Cloudのビジネスモデルから学ぶこと

Googleは圧倒的収益基盤である広告事業で知られていますが、クラウドやGoogle Play store、ハードウェアという安定した収益、さらに新規事業への投資で成り立っています。

世界一の検索エンジンというプラットフォームを持つGoogleは、既に非常に安定した収益基盤を誇っていますが、Google Cloudという安定的な売上を期待できるサブスクリプションビジネスの仕組みを持つことで、さらなる収益基盤を元に新たな基幹作りに投資をすることができ、新たなチャンスを生み出す要となるというわけです。

 

サブスクリプションビジネスを成功させるには

それでは、サブスクリプションビジネスを成功させるためにはどのような仕組みが必要になるのでしょうか?ここではその手順をご説明していきます。

①顧客があらゆるチャネルで購入できるようにする

マッキンゼー・アンド・カンパニーの調べによると、パンデミック後、買い手と売り手の4 分の3以上が「対面でのやり取りよりも、デジタルサービスを経由した人との関わりを好む」と答えているそうです。

顧客が望むような体験を提供するには、顧客が好みのチャネルで即座にサブスクリプションの購入や更新、支払いをできなくてはいけません。そのためのウェブサイトやモバイルアプリを準備する必要があるわけです。

例えば、オンラインでサブスクリプションの購入を開始したものの、精算を躊躇して担当者に転送された場合でも、顧客にはスムーズで一貫性があると感じてもらわなくてはいけません。すべてのチームが同じ顧客データにアクセスできる仕組みがあればそれが実現できます。

 

②顧客価値に焦点を当てる

サブスクリプションビジネスでは、顧客に定期的な支払いと更新を求めます。顧客が商品やサービスを使用するとそこに価値が生まれますが、期待した価値を感じることができなければ顧客は去ってしまいます。つまり、事業の継続が難しくなるわけです。

例えばNetflixはDVDを出荷せずに、サービスとしてのエンターテインメントを提供します。Amazonの価値は商品の配送ではなく、優れた購入体験をサービスとして提供することにあります。われわれはそこに価値を見いだしているから、それらのサービスを利用しているのです。



顧客に価値を継続的に提供するためには、顧客の購入と利用の実態を把握して、顧客が不満を抱く前に問題を早期に解決できるような仕組みが必要となるわけです。

 

③新しい指標で収益を追跡する

収益につながる顧客維持と顧客価値を測定する方法がなければ、顧客維持率を高めることはできません。顧客がサブスクリプションで商品やサービスをどれだけ利用しているかを分析することで顧客価値を測定できるようになります。

追跡する重要な指標は、ユーザー1人あたりの平均収益です。ビジネスが成熟し、適切なサービスを提供きるようになると平均収益は向上するはずです。これによって収益が予測可能になれば長期的な計画を立てることができるようになりますので、収益を追跡する仕組みを持つようにしましょう。

 

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