ティール組織の要約と実践へのステップ完全ガイド



清水直樹
「ティール組織」を読んだけど、どこから実践したらいいのかな?という方に向けてティール組織の基礎から実践のためのヒントまでご紹介していきます。
本記事の信頼性

本記事は一般財団法人日本アントレプレナー学会の清水が執筆しております。当会では、ティール組織の本場、ヨーロッパで開発された「ティール組織診断マップ」を日本語訳にし、無料配布しています。また、このマップを使った組織診断のファシリテーターも育成しています。また、ティール組織に目指す組織のためのリーダーシップ育成を行っている英LeaderShapeGlobal社と提携し、リーダー育成を行っています。本記事では、そういった経験を踏まえて、執筆しております。

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ティール組織とは何か?【要約】

まずティール組織とは何か?を簡単に復習しておきましょう。この記事をご覧の方は既にある程度、ティール組織についてご存じでしょうし、ティール組織の要約やまとめも他のサイトにたくさんあります。

「ティール組織」では、組織は次の図のように発達すると紹介されています。

ティール組織の特徴①発達心理学を組織に適用

「ティール組織」では組織の発達は人の意識の発達に伴って起こるものとされています。したがって、この図は人の意識の発達段階を表したものでもあります。

大切なのは、5つの段階はすべて、前段階の階層を内包しているということです。つまり、アンバー組織はレッド組織の特徴も持ち合わせており、ティール組織はすべての組織の特徴を持ち合わせています。ですから、ティール組織を目指すのであれば、すべての組織段階を理解しておくことが大切です。

各段階の解説については以下に記載していますので、合わせてご参考にされてください。

レッド(衝動型)組織の解説

レッド組織は約1万年前に生まれたとされています。レッド組織の特徴を簡単に言えば、「力」が支配する組織であり、短絡的思考であることです。比喩としては、「オカミの群れ」であり、現代で見られるレッド組織としては、マフィア、ギャング、犯罪組織等が挙げられます。

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アンバー(順応型)組織の解説

アンバー組織は、上意下達で厳格な社会的な階級に基づくヒエラルキーによって成り立つ組織です。比喩としては、「軍隊」であり、現代でも多く見られる組織です。

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オレンジ(達成型)組織の解説

オレンジ組織はアンバー組織と同じく階層構造で成り立っていますが、成果を上げたメンバーが上位層に出世できる点が異なります。オレンジ組織の比喩としては、「機械」です。

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グリーン(多元型)組織の解説

グリーン組織はオレンジ組織と似たような組織構造を持ちますが、より個人個人の価値観と多様性、人間らしさが重視されています。比喩としては、「家族」です。メンバーの意見は尊重され、合意形成が重視される傾向にあります。

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ティール組織の3つのブレイクスルー【要約】

「ティール組織」の中では、ティール組織を特徴づける3つのブレイクスルーについて紹介されています。

自主経営(セルフマネジメント)

「自主経営」とは、社員が主体的、自立的、能動的に動き、働く組織のあり方です。過去何十億年もの間、地球上で生まれた生き物や生態系はセルフマネジメントで動いています。たとえば、魚の群れ、鳥の群れはリーダーがいなくてもみんな同じ方向に向かって動いていきます。人間の組織も本来はそれと同じように動けるはずなのです。

▶自主経営の詳細はこちら

 

全体性(ホールネス)

全体性(ホールネス)とは、偽りの仮面を被る必要がなく、ありのままの自分で仕事に出かけることができるようになる状態という意味です。

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存在目的(パーパス)

存在目的の意味とは、「組織が存在する深い理由であり、対象としている市場だけでなく、周りのコミュニティに対しても違いをもたらそうとするもの」です。書籍ではエボリューショナリー・パーパス(レボリューショナリー・パーパスと間違えがちですが、こちらは革新的とか革命的という意味になってしまいますので気を付けましょう)と訳されていますが、最近は単にパーパス(purpose)とだけ書くこともあるようです。

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ティール組織の実践へのヒント

フレデリックラルー氏は、ティール組織への実践を始めるためのステップバイステップの方法はない、と言っています。ティール組織というのは、”このように運営する”という決まりきった経営手法ではありません。100社あれば100通りのやり方が存在するようなものです。それに各社ごとに現在の状況なども異なります。



なので、あらゆる会社に通じるステップはないということです。一方でラルー氏は、ティール組織へ変容するためのヒントをいくつか紹介してくれています。それらについて見てみましょう。

 

個人的な話から始めよう

ラルー氏によれば、ティール組織への旅は、リーダーの個人的な旅でもある、とのことです。リーダーが変わらなければ組織も変わらない。だからまず、なぜあなたがティール組織へと変わりたいと思っているのか?その理由を個人的な面から話せるようになることが大切だとのことです。

この話をするのに、ラルー氏は大学病院のCEOの話を挙げています。

1年ほど前、彼女が午後3時45分に外での会議から戻ると、廊下でナースたちが列をなして待っていました。そして、(終業)の午後4時になると退出し始めたのです。彼女はそれを見て、病院としてナースたちにしてあげられていないことがあると思い、とても悲しくなったと言いました。

▶引用元:動画「ティール組織への旅は”個人的な”旅である」

彼女は、ティール組織へ移行したい旨をメンバーに伝えたところ、最初は多くの反抗をもらったそうです。それは彼女が上記のような個人的なストーリーを伝えていなかったからです。

また、「ティール組織」に事例として出てくるRHDの創設者であるボブ・フィッシュマンは、子供の頃、毎晩、両親が喧嘩をしていたのを記憶していました。だからコミュニケーションにはもっと上手いやり方があると信じていたのです。だから彼が自分で会社を創る立場になった時、伝統的なやり方ではなく、別のやり方でやろうと思ったのです。これも彼の個人的なストーリーになります。

あなたにはそのようなストーリーはありますか?なぜティール組織を目指したいのでしょうか?

 

どこまでティール組織にしたいのかを決めよう

「ティール組織」の中では様々な事例が紹介されています。それらを見てみると、

あ、これはうちの会社でも始められそうだな。

とか

ここまではとても無理だ。

等を感じることが出来ると思います。ラルー氏は、ティール組織を実践するにあたって、あなたがどこまで行きたいのか?を知っておくことを勧めています。

ティール組織には、自主経営、ホールネス、存在目的、という3つのブレイクスルーがあります。それぞれに対して、

一つ目は、Comfort:コンフォートゾーンにあること。
二つ目は、Edgy:ギリギリのラインにあること。
三つめは、Beyond imagination:自分の想像を超えたところにあること。

という基準を考えてみよう、ということです。たとえば、あなたが経営者だとしましょう。いまは日々のオペレーションのこまごまとしたところまで意思決定を行っています。

ティール組織を実践しようとするとき、日々のオペレーションを完全にメンバーに任せ、自分は完全に現場から離れる、というのは上記3つのうち、どこに当てはまりますか?という感じで考えてみるわけです。

ラルー氏は、次のように言っています。

いまのあなたにとって何が適しているかが大切です。ティール組織であるかどうかなんて誰も気にしません。こうすべきとか理想論に縛られないでください。

あなたにとって何が理にかなっていますか?なぜなら、もしあなたが達成できないかもしれないことを約束すれば、不必要なフラストレーションが発生します。もしかしたら、あなたがどこまで行きたいか、行きたくないかをコミュニケーションしたほうが良いかも知れません。

ティール組織が流行っているから全部ティール的にシフトしよう、というのは無茶がありますし、先に述べたあなたの個人的なストーリーがありません。あなたの本心から考えたとき、どこまで行きたいかを考えてみましょう。

 

シンプルに考えよう

「ティール組織」の本は分厚いですし、内容も濃いものです。なので、ティール組織への取り組みを始めようと思った時にも難しく考えすぎ、足踏みしてしまうこともあるでしょう。

ラルー氏は、そもそも自主経営は自然な姿だし、ティールと言われる会社で行われていることはとてもシンプルだ、と言っています。

たとえば本にも出てくるビュートゾルフ社では、CEOが午後10時頃にブログ投稿し、決定事項を組織内の14,000人に公開します。24時間以内に、ナースの50~70%はその投稿を読み、コメントを残します。

だから、CEOは翌日、すべてのコメントを読むことができます。全員が同意、またはほとんどの人が同意すれば、実行、ということになりますし、反対が多ければ別の案を翌日上げることもできます。



普通、14,000人もいる組織で何かしらの決定を行おうと思ったら、何度も会議を重ね、社員アンケートを取り、、、というような数か月に渡るプロセスにもなります。

ビュートゾルフではそんなことをする代わりに、ブログだけで数日の間に決定が出来るわけです。既存の組織慣習にとらわれると、逆に物事が複雑になってしまうのです。

 

ティール組織への移行を考える前に信頼を築こう

あなたは会社のメンバーから十分な信頼を得ていますか?経験の少ないリーダーがやりがちなのは、十分にメンバーから信頼を得ていないにも関わらず、何か新しいことを始めてしまうことです。これではメンバーが協力してくれません。

ラルー氏は、新任のCEOがセルフマネジメントへ移行した話をしてくれています。

ある会社に新任のCEOが在任したとき、彼は初めの1年、いや2年以上、何の変革も起こさなかったのです。なぜなら、周りの人がCEOの人格を知るのにそれぐらい時間が必要だと感じたからです。彼は、周りの人からの信頼を十分に得られたとの確信を持ったときに初めて舵を切り、自主経営(セルフマネジメント)に着手しました。

「信頼を得られるまで待て」というアドバイスはとても堅実です。それには2つの理由があります。1つ目は、旧態依然とした組織では、多くの人がその組織に対して長年に渡って不信感を抱いている可能性があるからです。以前とは違うということを明確に示すには、まず信頼感を取り戻すことが不可欠なのです。

▶引用元:動画「組織変革を始める前に信頼を築く」

 

痛みのある場所を探そう

ティール組織への変革にあたって、どこから手を付けるのが良いでしょうか?ラルー氏は、痛みのある場所を探そう、というヒントをくれています。

  • 「あなたのどこに痛みがあるのか?」
  • 「あなたは何を望んでいるのか?」
  • 「あなたは一体どこにいるのか、何者なのか?」
  • 「組織のどこに”痛み”があるのか?」
  • 「どこにエネルギー(成長の源泉)が留まっているのか?」
  • 「現在の組織の仕組みの限界を超えたエネルギーはどこにあるのか」

こういったことをあなた一人でもいいですし、同僚と話し合ってみてもいいでしょう。

▶より詳しくは:動画「どこから始めるべきか」

 

新しいコミュニケーションを試そう

あなたの会社ではどのようなコミュニケーションが行われていますか?ほとんどの日本企業では、コミュニケーションは組織の上層部からの一方通行ではないでしょうか?

ティール組織では、コミュニケーションが双方向に活発に行われています。たとえば、先ほど例に出したビュートゾルフ社では、CEOのブログに対してみんな躊躇なく意見をいえる仕組みになっています。

また、情報の伝え方も体裁を整えた理論的なやり方だけではなく、心や感情から来るメッセージを伝えるということも大切です。

▶参考:動画「新しいコミュニケーションの方法」

 

ティール組織3つのブレイクスルーのいずれかから始める

ティール組織には自主経営、ホールネス、存在目的、という3つのブレイクスルーがあります。ティール組織への取り組み方として、これらの3つのいずれかから取り組み始める、ということも良いでしょう。各社ごとにどこからが始めやすいかがあると思います。

3つのブレイクスルーについては上記の復習のところから詳細記事へのリンクを貼っていますので、そちらをご参照願えればと思います。

 

ティール組織マップを使って対話を始めましょう

さて、以上ティール組織実践のためのヒントをいくつかご紹介してきました。ぜひ参考にしていただければと思います。

また、このサイトで無料配布している「ティール組織マップ」は会社内でティールに向けた対話をスタートさせるのに最適なものになっています。このマップを使って、自分たちの現在地はどこか?また先ほどラルー氏の引用文にもあったように自分たちがどこまで行きたいか?を対話出来るようになっています。

マップを使った研修や認定ファシリテーター制度もありますので、ぜひ以下から見てみてください。

▶ティール組織マップのダウンロードはこちら

 

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