成長の壁(30人の壁、50人の壁、100人の壁)には予め対処できる。グレイナーの成長モデル。



清水直樹
会社が成長していくにあたって、30人の壁、50人の壁、100人の壁という成長の壁があるとされています。会社が売上が上がっていって、人数が増えてくると、それに伴ってだいたいどこの会社でも同じような課題が起きますよという話です。その話の原点となっているのが今回ご紹介するグレイナーの5段階企業成長モデルです。このモデルを使うと成長につれて、こういう問題が起こるというのが予測できます。予測できるという事はそれに対して、対処する方法を考えておくことができるというわけなんです。なので、これから成長していこうという社長はぜひ参考にしていただくといいと思います。
※以下、書き起こし

30人の壁、50人の壁、100人の壁の原点、グレイナーの成長モデルとは?

グレイナーのモデルというのが、こちらの図にしてあるやつです。元々は英語の論文で書いてあるやつなんですけれども、これを図にしたものになっています。

もう1個、この図を表にしたものがこちらのスライドになっています。今日は図と表を行ったり来たりしながらご紹介していきたいなと思います。

 

成長の壁は売上か?人数か?

1段階から5段階までは組織の成長を表しています。組織の成長を表す時に、売上で成長を判断するのか、もしくは組織の人数で判断するのかがあります。成長の壁を、売上1億円の壁とか、売上10億円の壁と、売り上げで判断する場合もあれば、組織人数が30人になったらこういう問題が起こるとか、人数で課題を見ていくパターンがあるんですけれども、私としてはどちらかというと、組織の人数が問題が起こる原因かなと思っています。

なぜ、売上ではなく組織人数かというと、売上というのは業種とか業態によって大幅に変わってくるからです。扱っているものの値段も違ってくるので、売り上げの幅になってくるわけなんですけれども、例えばある業界では10人いたら最低売上10憶はあげるのは当たり前だよねという業界もあれば、10人だったら3億ぐらいでふつうだよねという業態もあるわけです。このように、売上というのは業態によって幅があるので、それで成長の壁を見ていくというのはちょっと無理があるので、組織人数で考えた方が分かりやすいのかなと思うわけです。

 

グレイナーの一段階目(~10人くらい)

まず、第1段階目。こちらも創業当時だと思っていただければいいかなと思います。創業当時は、創造性による成長です。社長がアイデアを思い浮かべ、こういうビジネス行けそうだなとか、独立してこういう商売をやったら良さそうだなっていうことで、自分の創造性で独立して、それをベースに成長していくっていうのが最初の段階になっています。

一段階目における危機

この第1段階目から次の段階に進む時の危機というのは、リーダーシップの危機です。これはどういうことかというと、創造性による成長をしていくと売上も上がっていって、社員を雇い始めるわけです。そうすると、社長の限界が会社の限界になってくるということです。社長が働いた分だけは売り上げが上がるけれども、自分が働かなくなると売り上げが止まってしまう。

社長がキャパシティーをオーバーしてしまうという危機が訪れるわけです。そうすると、社長のキャパシティーイコール会社のキャパシティーなので、それ以上は成長できなくなるというのが、この1番目のリーダーシップの危機ということです。

第1段階目では焦点を当てるべきところは、製造と販売です。ものを造って売るということをとにかくやり続けるというのがこの第1段階目です。

そして組織は、決まりきった組織図とか役割分担ってあまりない状況になっていると。経営のスタイルとしては、ワンマン型で創業者が俺のやり方でやるぞということで組織を引っ張っているのがこの時になります。

課題としては、さっき申し上げた通り、リーダーシップの限界が来るという事です。

 

1段階目(~10人くらい)の壁を乗り越えるには?

このリーダーシップの危機を乗り越えるにはどうすればいいかというと、指揮による成長が必要だという事です。社長がやっていることの業務を他の人に任せていかないといけないわけですけれども、任せるために例えば会社のルールを決めたりとか、役割分担を決めたりとか、あとマニュアル化して誰かに仕事を任せたりとか、そんな感じで社長の指揮による成長をしていくと。社員たちが社長の手足となって動くという、そういうモデルを作ると2段階目に移行できるということです。

 

グレイナーの二段階目(~30人くらい)

2段階目は焦点としては生産性向上。人を雇いますので、その分生産性を高めないと人件費がカバーできないという話になってくるわけです。

そして組織は中央集権と職能別ということです。基本、社長は中央集権型で指揮命令を下すわけなんですけれども、その他のスタッフの人達は、あなた営業やってねとか、あなた技術やってね、あなたサポートやってねという感じで、職能別に分かれていく基本的な組織です。そして経営スタイルは指揮型であるということです。

二段階目(~30人くらい)における危機

そしてこの2段階目から3段階目に至るまでにどういう壁があるかというと、自立の危機ということです。これは何かというと、1段階目から2段階目に成長する時には、指揮による成長があったんです。社長が陣頭指揮をとって、あなたこれやって、あなたこれやって、という感じで、指揮をして社員を動かして、会社を成長させていくっていうのが2段階目までに有効だったモデルなんですけれども、そうするとだんだんと社員はいわゆる指示待ち人間になってくるということです。

社長から指示が出ないので、何もやらないということで、会社にはいるんだけれども、社長が何も指示してこないので、何もやりませんというような人が増えてくるという事です。なので、いかに社員を生産性高く働かせるかっていうところがポイントになってくるんですけれども、一方でこのタイミングは社長も忙しいので、社員にそれぞれ細かいことまで指示している時間もなかったりするわけです。

そして社員は社長から指示されていることに慣れているので、社員も自主的に働こうという人がいないということで、自立の危機が生まれてくるという事です。

二段階目(~30人くらい)の壁を乗り越えるには?

ここで、どういう成長のモデルが必要かというと、権限移譲による成長です。これができると3段階目にいきます。今までは社長の手足として動いていた社員に、より大きな責任と権限を渡して彼らに責任感を持って自主的に働いてもらおうということです。

 

グレイナーの三段階目(~50人くらい)

権限移譲がうまくできると3段階目に移行します。組織としては分権性と地域別、誰々がここまでの権限を持って運営していいよ、ということであったりとか、あなたはこのエリアを担当してねという感じで、大きな権限を部下に渡していくというモデルになるのかなと思います。これをやらないと3段階目には行けませんよということです。

 

三段階目(~50人くらい)における危機

ここでさらに次の4段階目に行くには、どういう危機があるかというと、統制の危機というのがあります。これは何かというと、私も非常によく聞く話なんですけれども、社員に権限移譲をして仕事を任せると、彼らは彼らのやり方で仕事をやりだすんです。特に、中途の人が入ってくると、中途で即戦力の人が入ってきて、その人たちに権限を任せてやらせると、彼らのこれまでのやり方で仕事をやり出すという事になります。

そうすると社長は今までずっと自分の価値観とか自分のやり方、自分の基準で仕事を進めていて、自分のやり方でお客様に接していたんだけれども、今度はそれができなくなってくるというところにジレンマを感じるようになるわけです。これが統制の危機ということです。組織全体として同じような基準、同じような価値観で運営していくことが難しくなってくるということになります。

三段階目(~50人くらい)の壁を乗り越えるには?

この辺で皆さん、理念の大切さっていうのを痛感させられて、理念を見直すというフェーズに入るのかなと思います。これを突破するには何かというと、調整による成長ということです。調整による成長はイメージ湧きづらいと思うんですけれども、組織がある程度大きくなっていろんな事業部ができたりとか、部門ができたりするわけです。

そこで、各々が勝手に部門長のやり方でやり始めるのが、この3段階目なんですけれども、そこを調整する役割っを設けて、各部門で同じような基準、同じような価値観でやっていきましょうと調整するというのがこの4段階目のところなのかなと思います。

 

グレイナーの四段階目(~100人くらい)

四段階目の焦点としては組織統合です。いろんな部署に権限移譲するんだけれども、とはいえ、それを統合する役割というのが必要になってくるので、その機能をどうやって持たせるかというのがここで焦点になってくるということです。



組織としてはライン、スタッフに分けるパターンとか、製品グループ別に分けるとかいろんなパターンがあると思います。経営スタイルは番犬型ということで、誰かが変なことをしないか見守るみたいな感じです。

 

四段階目(~100人くらい)における危機

4段階目から5段階目、最終的な成長ステージに至るための壁というのは何かというと、官僚化です。組織が大きくなると必ず出てくるのが官僚化なんですけれども、これの危機が出てくるという事です。権限委譲してやりたい放題やっているところをちゃんと調整機能を設けて統一されたやり方でやっていきましょうという話なんだけれども、そうすると今度は官僚化していくという、なんともジレンマが生じるというわけです。

四段階目(~100人くらい)の壁を乗り越えるには?

では、4段階目の官僚化の危機を乗り越えて5段階目に成長するにはどうすればいいかというと、今度は協調による成長ということです。これは言い方を変えると、文化による成長といえます。要は官僚化した組織をどうやってさらに成長させていくかがテーマになるわけですが、もう1回社員の自主性だったりとか、チームを小さくして、そのチームが自動的に動いていくような仕組みが必要になってくるということです。稲盛さんが提唱しているアメーバ経営はまさにそれです。少人数のチームで会社を回していくことによって、官僚主義にならずに済むということです。なので4段階目はどちらかというと、公式的な手続きが会社の中では重視されていたんだけれども、5段階目に成長するにあたって、それよりも自主性、セルフコントロールっていうのが大事になってくるといっているわけです。

 

グレイナー五段階目(100人~)

5段階目は焦点は革新であるということです。組織が大きくなってくると、今までの決まりきったやり方でやっていますので、要は官僚主義になってくるんですけれども、そこからさらに革新していくっていう文化に変えていく必要があります。そして組織は、これはあくまで例なんですけれども、マトリックス型の組織になっていくことが多いと書いてます。

経営スタイルは参加型。チームで決断するみたいなイメージです。なので、5段階目はさっき言った通り、各々のチームとか自分のセルフコントロールでマネジメントしていくっていうことになるんですけれども、そうするとみんなで経営に参加していくっていうモデルが望ましいということです。

五段階目(100人~)の危機

そして、ここで5段階目で終わっているんですけれども、ここからさらに成長していくためにも、課題があります。実は、それが何なのかっていうのは、そこまで名言されていないんです。ただ1つのこういうことがあるんじゃないかっていうので、心理的満足という言葉が使われています。

5段階目ぐらいの会社になってくると、ある程度給料もいいし、待遇もいい組織になってくると思うんです。そうすると、待遇に対する不満っていうよりも、その会社で働くことの心理的満足、感情的なものとか、人間関係的な満足度、そういうものが大切になってくると。それを提供できないと危機が訪れるわけです。

私が最初に入った会社は結構、大きい会社だったんですけれども、たぶんこの段階で言うと、5段階目ぐらいの会社だったんですけれども、給料とかはもちろんいいし、待遇に対する不満は一切なかったんですけど、その分やっぱり気にしがちになるのが、人間関係であるとか、将来の自分のキャリアだったりとか、そういう心理的、感情的な面がやっぱり気になってくるんです。それを会社側が提供できないと、危機が訪れるということになるのかなと思います。

 

30人の壁、50人の壁、100人の壁を突破するための仕組みづくりとは?

そんな感じで、1段階目から5段階目までを解説しました。

私達は日頃、会社の仕組みづくりをお手伝いしているんですけれども、その知見を踏まえて、それぞれのステージごとに必要な仕組みをご紹介します。5段階に分けても良かったんですけど、もうちょっと簡単にしようということで、大きく3つのフェースに分けています。

10人~30人くらいまでの仕組み

まず、1段階目と2段階目の中盤ぐらいまで。要は創業したてから、ある程度人数が増えてくるところまでは、どんな仕組みが必要かというと商売の基本サイクルです。ものをつくって売ってお客様に納品すると。この3つのサイクルを商売の基本サイクルと呼んでいるんですけれども、これをいかに効率的に回すかっていうところが、一番大事かなと思います。

ここができてないと、他にどんないい仕組みがあっても、他にどんないい社員がいても、この3つの仕組みがちゃんとできてないと売り上げが上がらないということになりますので、それ以上は成長できないわけです。なので、このグレイナーさんのモデルでも1段階目と2段階目は、まず製造と販売が必要だと同じ事を言っていますね。そして生産性向上。いかにみんなに働いてもらうかというのが大切だという風に書いてあります。これが2段階目の中盤ぐらいまで必要かなという事です。

30人~50人くらいまでの仕組み

次のフェーズ。2段階目の途中から3段階目を越えて4段階目の最初ぐらいまでは、組織戦略ですね。これは非常に大雑把に書いてますけれども、例えば採用であったりとか、理念の見直しであったりとか、人の育成だったりとか、評価だったりとか、いろいろあると思います。この2段階目ぐらいになってくると、そこそこ人数が増えてきたりするわけですよね。そうなってくると組織をいかに回すかっていうところが大切になってくるということです。この組織戦略は、商売の基本サイクルをさらにうまく回すための戦略を立てていくということです。ものをつくって販売してお客様に納品する。このモデルをさらに効率的に回すために組織戦略というのが必要になってくるということです。世の中に組織論とか、組織戦略はいろいろありますけれども、要はこの商売の基本サイクルをいかに回すかという事が一番大切なわけです。これがないと売り上げが上がらないわけなので、商売の基本サイクルがなければ、どんな組織論を入れても無駄であるという事です。

50人~100人の仕組み

そして4段階目の途中から5段階目までは経営チームです。もちろん他にもいろんな仕組みが必要だと思うんですけれども、やっぱり一番大事なのは経営チームの運営をうまくやっていくということです。この経営チームにいかにいい人を入れていくか、いかにチームで経営していくかと。それによって、いろいろ発生する問題に対処していく仕組みをどうやって作っていくかということです。4段階目、5段階目になってくると、社長1人で全てを意思決定するのは当然無理なので、そうじゃなくて、いかにチーム戦でやっていくかというところの仕組みづくりが大切かなと思います。

という感じで、今回は組織の成長にあたって必ず発生するという成長の壁。そしてそれを突破する方法として、グレイナーのモデルというのをご紹介しました。ぜひ、みなさんの会社でも参考にしてみてください。

なお、「仕組み経営」では、それぞれの成長の壁を突破するための仕組みづくりを個別にご支援しています。詳しくは以下からご覧ください。

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