従業員エンゲージメントとは?その意味から高める方法まで。



清水直樹
今日は「従業員エンゲージメントとは何か。その意味から高める方法」までを解説していきます。ちなみに 個人的には「従業員」という言葉はあまり好きではないので、本当は社員という言葉を使いたいですが、一般的に「従業員エンゲージメント」と呼ばれていますので、今日は「従業員」という言葉を使いたいと思います。

従業員エンゲージメントという言葉は、最近よく聞かれますが、今日はこれが何を意味しているのか、そして似たような言葉として使われている「従業員満足度」との違い「従業員エンゲージメント」を高めるための要素や指標、調査の方法、そしてこれをどうやって高めていくのかという仕組みづくりについて解説していきますので、ぜひ最後までお付き合いいただければと思います。

※動画でも解説しています。

目次

従業員エンゲージメントとは?

まず「従業員エンゲージメント」の定義や意味を考えたいと思います。幸い、日本語には非常にいい言葉があります。一言で言うと「会社と社員の一体感」、これが「従業員エンゲージメント」と言えると思います。

もともと「エンゲージメント」の意味はというのは、「結びつく」「つながり」という言葉です。結婚することを「エンゲージ」と言いますね。ですので、「従業員エンゲージメント」というのは「会社と社員とのつながり」と言えるのですが、もっと分かりやすく言うと「一体感」と言えるかと思います。

一体感のある会社は元気がいい会社になりますし、後述しますが、業績も伸びていきます。

ただ、学術的に言うと、もっといろんな定義の仕方があります。ここに出ているのは、いろんな人材系の調査会社やサービスを提供している定義なのです。

従業員エンゲージメントの定義

  • 従業員エンゲージメントとは、従業員が職場に対して感じる精神的・感情的なつながりの強さである。(Quantum Workplace)
  • エンゲージメントの高い従業員とは、自分の仕事や職場に関与し、熱心に取り組み、コミットしている従業員である。( Gallup)
  • エンゲージメントとは、会社の成功に貢献しようとする従業員の意欲と能力のこと。( Willis Towers Watson)
  • 従業員のエンゲージメントとは、“従業員の組織に対する心理的な投資のレベル ”である。 (Aon Hewitt)

 

従業員エンゲージメントを高める意味は?

次に、「従業員エンゲージメントを高める意味とは何なのか」を話していきます。様々な調査の結果によって「従業員エンゲージメントを高めると、組織に対して良い効果がある」と言われています。

収益性の向上

「エンゲージメント」の高い従業員は「エンゲージメント」の低い同業他社よりも業績が良い。全体として「従業員エンゲージメント」の高い企業は、収益性が21%高いと言われています。

 

欠勤率の減少

ギャラップ社の調査によると「エンゲージメント」の高い職場では欠勤率が41%減少しています。

 

より良い顧客サービス

「エンゲージメント」の高い従業員は、より良い顧客サービスを提供する。これはあとで事例を紹介しますが、その会社はまさに「エンゲージメント」を高めることで顧客サービスも上げているということです。

 

離職率低下

「従業員エンゲージメント」を高めることで、小企業にとっては一番大きな効果かと思うのが、離職率の低下です。今、中小企業は人を雇うのも大変だし、応募しても来ないということもあるでしょう。入社してもすぐに辞めてしまうということもあります。それは会社にとって大きな損失なのです。

アメリカのデータによると、一人離職するたびに5,000ドル以上の損失を被っているということです。これは給料以外の部分で、手間賃みたいなのがかかってくるということです。

「エンゲージメント」を高めることで、定着率が高まるということが中小企業のとって大きなメリットになると思います。

 

潜在的利益

ギャラップの調査では「エンゲージメント」を失っている従業員によって、アメリカの企業全体で見ると年間3,500億ドルもの損失を与えているということです。 逆に言うと「エンゲージメント」を高めれば、この分が失われずに利益になるということです。「エンゲージメント」の高い社員の人が増えれば、その分利益が上がりやすいということになると思います。

 

「エンゲージメント」を高めれば収益性も上がるし、人の定着率も上がるというので、いいこと尽くしであるということですね。

 

従業員エンゲージメントと従業員満足度の違いとは?

次に「従業員満足度」と「従業員エンゲージメント」は、どう違うのかのというお話をしたいと思います。

昔は「従業員満足度」が非常に重視されていて「これを高めることが社長の仕事だ」と言っている人もいるぐらいなのです。

「従業員満足度」は「従業員エンゲージメント」の一部

一言で言うと「従業員満足度」は「従業員エンゲージメント」の一部とみていいでしょう。「従業員エンゲージメント」の方が大きな枠組みなのです。その中の一つの要素として「従業員満足度」があると考えればいいのかと思います。

Frank L. Schmidt氏は、「従業員エンゲージメント」の定義として、仕事への関与、コミットメント、満足感、この三つの要素を挙げています。この定義によると、「満足感」が「従業員満足度」なので「従業員エンゲージメント」の中に「満足度」があるということです。

逆の言い方をすると「従業員満足度」が高ければ「エンゲージメント」が高いというわけではないというところがポイントです。そこだけをやっていても駄目で他の「仕事への関与」とか「コミットメント」をやらないといけないことになります。

(補足説明)ハーズバーグの理論

「ハーズバーグ」の「衛生要因と動機づけ要因」というのがあります。聞いたことがある方も多いと思うのですけれども、「人はどういうときに動機づけされるのか」ということです。

「衛生要因」

例えばその人の待遇であるとか、会社の方針であるとか、人間関係だとか、仕事の環境、こういったものは、これが欠如してしまうと、従業員は不満足を覚えるということです。

「動機づけ要因」

ただ、「衛生要因」をいくら改善しても、その人の動機づけにはつながらないということです。動機づけするには達成感や承認される、責任感を持つ、昇進する、そういった「動機づけ要因」を整えないと動機づけされません。



これまでの「従業員満足度」の考え方というのは、どちらかというと「衛生要因」を改善していくという意味合いが強いのかなと思うのです。こちらだけをやっていても「動機づけ」にならないという形なのです。

ハーズバーグ氏がこの理論を提唱したときには「エンゲージメント」という考え方は、あまりなかったと思います。今考えれば、「動機づけ要因」というのは、どちらかというと「エンゲージメント」を高めるための要素になると思われます。

ここでお伝えしたいのは「衛星要因」を満足させれば「エンゲージメント」を高まるということではないということなのです。「動機づけ」の方もやっていかないと「従業員エンゲージメント」は高まっていかないということなのです。

 

従業員エンゲージメントが高い企業の例

次に事例をご紹介していきます。「従業員エンゲージメント」が高い企業の例としては、「サウスウェスト航空」が代表的でしょう。

この会社は「従業員エンゲージメントを高めることで、顧客サービスを向上させている会社」の代表例なのです。創業者は、「ハーブ・ケレハー」という人です。日本には就航していないので、知らない人もいるかもしれませんが、アメリカでは非常に有名な航空会社です。非常に会社の文化が優れていて、従業員も会社に「一体感」を感じているし、それに伴って顧客サービスが向上しているので、非常にファンが多い航空会社でもあります。

サウスウェスト航空の特徴

  • 会社のビジョンや価値観に情熱を持ち、会社の成功を継続させることに意欲的な、献身的で熱心な人々でチームが構成されている
  • 従業員が自分のユニフォームをデザインできるようにしたり、普通は口出しできない仕事で自主性を持たせたりして、顧客サービスのケーススタディとなる
  • 客室乗務員が安全情報をラップしている動画は、お客様と従業員の両方に素晴らしい体験を提供する姿勢を示している

 

ラップのアナウンスで有名

サウスウェスト航空に乗ったことがない人も、YouTubeでバズった動画はご存知かもしれません。安全のアナウンスは普通退屈ですよね。この男性は客室乗務員なのですが、アナウンスの退屈な時間をラップで盛り上げるということをしています。

これを見ても「従業員エンゲージメント」を高めることが、顧客サービスにつながり、会社の継続的なファンが増えるということにもつながる、結果として業績につながるということが示されているということです。

 

従業員エンゲージメントが高い人と低い人の違い

次に「エンゲージメントが高い従業員と低い従業員」はどう違うのかという話をしていきます。これは、ぜひ皆さんの会社の社員の人に当てはめて考えてみるといいかなと思います。

「従業員エンゲージメント」を考えた時、大きく従業員を3タイプに分けることができます。

エンゲージしている

自分の役割への期待を認識しており、その期待に応え、それを超えることができる。常に高いレベルのパフォーマンスを発揮し、日々の仕事で自分の才能や強みを発揮している。

 

エンゲージしていない

達成すべき目標や結果よりも、タスクに集中する傾向。何をすべきかを教えてもらい、早く終わらせたい。自分の貢献が見落とされている、自分の可能性が活かされていないと感じる傾向。

 

積極的にエンゲージしていない

仕事に不満があるだけでなく、職場でその不満を行動に移すことに忙しく、あらゆる機会にネガティブな種をまく。

 

 

ギャラップの調査によりますと「どれくらいの割合でこれらのタイプの人がいるのか」というと、「エンゲージしている社員」は33%。大体3分の1ぐらいは積極的に会社に貢献しようと思っているということです。そして「エンゲージしていない人」が49%。仕事だからやります、という人が半分ぐらいいるということです。そして18%が「積極的にエンゲージしていない」ということで、残念ながら2割弱の人は、自分の意思で会社に悪影響を与えようとしているということなのです。

皆さんの会社でどういう割合なのか分かりませんが、今説明したものを見ていただくと、うちの会社ではどれくらいか?が判断できるだろうと思いますので、ぜひ参考にしてください。

 

従業員エンゲージメントの調査について

次に「エンゲージメントの調査について」です。「エンゲージメント」を高めていくのに、最初に、現在値はどれくらいなのかを把握したいと思うはずです。これは一般的には社員向けのサーベイで行われます。

やり方は幾つかパターンがあり、例えば四半期に一回調査するとか、もしくはもうちょっと頻繁にするものもあってパルスサーベイと言われています。「パルス」というのは人間の心電図みたいなものです。週に一回等、頻繁に簡単な項目を質問して、「エンゲージメント」を調査するという方法もあります。

従業員エンゲージメント調査の方法と項目例については別記事にまとめましたので、合わせてご覧ください。

従業員エンゲージメントの調査方法と質問集

 

 

従業員エンゲージメントを高めるドライバー(要素/指標)

「従業員エンゲージメントを高めるドライバー(要素/指標)」をご紹介します。「従業員エンゲージメント」はどういう要素で決まるのか。これもいろんな考え方があって「4項目で決まる」という人もいれば「8項目で決まる」という人もいれば「もっと多い」という人もいたりするので、一概には言えません。

ここでは、いろんなデータを調べた結果をまとめてみました。

  • 自主性/エンパワーメント
  • キャリアの成長
  • 協力関係
  • コミュニケーション
  • リーダーへの信頼
  • 公平な評価と給与
  • 商品の品質
  • 承認
  • リソースへのアクセス
  • 仕事の有意性
  • 方向性への合意
  • 上司からのサポート
  • 教育と訓練

 

ちなみに、「商品の品質」は「従業員エンゲージメント」とあまり関係がないと思われるかもしれませんが、私は結構大事だと思っています。これは「自分が本当にいいと思っている商品を扱うことができているか」です。やはり自分が「これは業界で一番いい」と本気で思っている商品、本当にお客さまの役に立つ商品を扱っているという誇りというか信念、それがある会社の方が「エンゲージメント」は高まるということなのです。

 

従業員エンゲージメントを高める仕組み

次に、では「従業員エンゲージメントを高めるにはどういう仕組みが必要なのか」をご紹介していきます。



カルチャーフィット採用の仕組み

「文化に合う人を採用していきましょう」ということです。先ほど従業員エンゲージメントの要素として、「方向性への合意」がありましたが、採用の段階で会社が目指す方向性と、応募してきた人が目指している方向性が一致しているのかどうかを確認しないといけないのです。そもそもこれが間違っていると、その後何をやっても取り返しがつかないので、「採用の仕組み」は非常に大切かなと思います。

 

オンボーディングの仕組み

これは採用してからのウエルカムの儀式みたいなものです。オンボーディングの仕組みが整っていることで、従業員エンゲージメントの要素であるコミュニケーションであったり、上司と部下の関係が整っていきます。

 

社内コミュニケーションの仕組み

従業員エンゲージメントとコミュニケーションは切っても切れないものです。経営陣と一般社員、上司部下、部門間の関係を良好にするうえでも非常に大切です。社内コミュニケーションに関しては別記事を挙げていますので参考にしてください。

社内コミュニケーションの活性化方法について解説(リモートワーク対応)

 

明確で説得力のあるビジョン

これも会社と社員の方向性が合意しているのかを考えるうえで大切です。ビジョンに関しては別記事を挙げていますので参考にしてください。

経営ビジョン策定完全ガイド

 

社員の強みと弱みを把握した役割と責任

これは配置の話、つまり「適材適所」です。いろんな適性試験がありますが、そういうのを使って、その人がやりたい仕事、その人が自分の能力を発揮できる仕事に就いているかどうかを確認していく仕組みのことです。

 

意義のある仕事

その仕事が、本当に意義があるのか、意味があるのかを社員が理解するための仕組みです。一番「エンゲージメント」を下げる仕事として、よく言われているのは、午前中にスコップで穴を掘って、午後にそれを埋めるということを毎日繰り返すという仕事です。これをやらせると人は精神的なストレスを感じると言われています。午前中に穴を掘って、午後はそれを埋めるだけなので、何の意味もないのです。仕事に意味のなさを感じてしまうと人の「動機づけ」「エンゲージメント」は非常に下がると言われています。そうならないように「各社員がしている仕事に意味があるのかと感じることができるのかどうか」ということです。

 

挑戦的かつ現実的な目標の設定

頑張れば達成できそうな目標があれば人は前向きに取り組みます。

 

キャリアの成長と進歩を育む仕組み

社員が望むキャリアを会社として把握し、それを実現させるための組織づくりや育成の仕組みです。

 

業績を評価し、報奨する仕組み

やった仕事がきちんと評価される仕組みも従業員エンゲージメントに大きく影響します。

 

従業員からのフィードバックの仕組み

会社の重要な意思決定や自分の仕事にかかわる意思決定に関与できることも従業員エンゲージメントを高めます。もちろん、自分の意見がすべてとおる、と勘違いさせてはいけませんが、意見を言える、ということが大切です。

 

従業員エンゲージメントを高める仕組みなら

というわけで今日は「従業員エンゲージメント」についてご紹介をしていきました。ぜひ今回の内容を使っていただいて、まずは「自分たちの会社のエンゲージメントはどうなっているのか」という現状把握、そして最後にご紹介したような仕組みづくりを通じて、この「エンゲージメント」を高めていくという活動をやってみてはどうかと思います。

なお、仕組み経営では、従業員エンゲージメントを高める仕組みから、それを業績につなげる仕組みまで、会社を人依存から仕組み依存へと変革するお手伝いをしています。詳しくは以下からご覧ください。

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