なぜ優秀な人ほど突然辞めるのか?定着率を上げる仕組みの法則



優秀な人が突然辞める理由5選

「高いスキルを見込んで採用したのに辞めてしまった」「チームリーダーに就けると辞めてしまう」「せっかく新人から育て上げて良い仕事ができるようになったのに退職した」…こんな悩みをお持ちの経営者の方は多いのではないでしょうか。

今回は、なぜ優秀な人ほど突然辞めるのか、その理由を探り、早期離職を防いで定着率を上げる仕組みづくりについて解説していきます。

まずは退職理由として挙げられることの多い5つをご紹介していきます。皆さんの会社でも、このような理由で突然退職された方はいないでしょうか?

 

①やりがい・達成感を感じない

これは主に評価などの人事制度に対する不満です。どんなに頑張って成果を残しても、正当に評価されないのでは仕事を続ける意欲は低下してしまいます。特に昇進や昇給に絡むことはその人のライフステージにも大きな影響があるため、離職へとつながってしまいます。

②給料が低い

特に20代~40代の多くが給料の低さを理由に挙げています。会社の理念への共感だけではなく、やはり現実的には給料やボーナスなどの報酬は仕事に対するモチベーションの源になります。その他、給与明細が不明瞭、残業代や休日出勤手当がないという、そもそも法令違反と言えるケースも見られます。

③企業の将来性に疑問を感じた

これにはもちろん業界全体の将来性に対する不安も含まれます。会社の業績が悪い、成長が見込めないビジネスモデルである、あるいはモラル上問題のある業務をしているなど、従業員が安心感を持って働けないと離職率は上がります。特に優秀な社員であるほど会社や業界の実情に触れる機会も多いので、離職理由につながりやすくなります。

④職場の人間関係

上司や同僚との関係性が築けずに退職を決意するパターンです。①に挙げたように、上司からの評価に納得できずに人間関係が悪化することもあります。また、パワハラやセクハラといったトラブルもここに含まれます。

⑤残業や休日出勤など拘束時間が長い

いくらやりがいのある仕事であっても、残業や休日出勤が多ければ満足度が下がってしまいます。そればかりか、睡眠不足とうつの発症の関連性も多く指摘されているなど、健康面へも悪影響を及ぼしてしまうことになります。

 

優秀な人が辞める会社の問題点

ここまで、優秀な人が突然辞める理由を5つ取り上げましたが、それぞれを会社の問題点に置き換え、問題解決のための仕組みについてご説明していきます。

①人事制度がうまくできていない

評価制度が不透明で、社員に対する説明が不足していたり、上司に対する人当たりが良く、要領の良い人間だけが昇進できると思われてはいないでしょうか?人事制度がうまくつくられていない会社では、優秀な人ほど理不尽な思いを抱えるようになってしまいます。

人事制度は社員の評価や給与を決める根本的な基準となるので、社員の仕事へのやりがい・達成感はもちろん、事業の成長全体に大きな影響を与えます。人事制度は、会社内における人事的な決まりごとであり、社内公募制度や産休・育児休暇制度、留学制度などもこれに含まれます。

人事制度は「等級・職位制度」「評価制度」「給与制度」の3つの要素で構成され、各要素が互いにリンクし合って成立します。「社員に求めるもの」と「何を持って社員の給与を決めるのか」の2つの軸を明確にすることで人事制度が透明化でき、社員のモチベーションアップによる定着率の改善と業績向上につながるわけです。

人事制度の仕組みづくりについて、下記リンクではもっと詳しくご説明しています。

人事制度とは?トレンド、設計方法と改革のヒントまとめ

②給与制度が不適切

社員が日々の生活を送るのがギリギリの収入しか得られず、貯金もできないような状態ではありませんか?お金が全てではありませんが、給与制度が不適切な状態では、将来に対する展望を持つことができず、仕事へのモチベーションも高まりません。

給与制度には月例給(基本給・各種固定的に支給される手当・残業代などの変動手当)、賞与、報酬金のほか、退職金・ストックオプションなどの後払い的に支給されるもの、福利厚生に関するものも含まれます。

給与制度とは、等級や評価に基づいて給与や賞与を決定する制度のことです。社員の何を評価するのかによって給与が上下するため、その仕組みから会社全体の方針や人事戦略が明確になります。給与制度を策定する際には、水準をどうするか、体系と等級の関係、昇格や降格時の給与のルールを考慮し、さらに①で述べた人事制度とも連動させる必要があります。

給与制度の仕組みづくりについて、下記リンクではもっと詳しくご説明しています。

給与制度とは?見直しのポイントや種類、設計方法まとめ

③業績が悪い、戦略がない

会社の業績や事業戦略、業界全体の展望に対して不安を抱く社員に向かって、自社の将来性について根拠を伴った説明をすることはできるでしょうか?このような場合にエビデンスとなるのが「事業性評価」です。

事業性評価とは、本来、金融機関が融資を決定する際に、その会社の財務諸表(定量情報)のみならず、今後の戦略や強み、知的資産などの定性情報も考慮に入れて評価するというものです。これは金融機関が行うことですが、会社側が事業性評価を受ける準備をする過程で、自社の戦略や強みを明確化、文書化する仕組みをつくることができます。

創業のきっかけや沿革、ミッション・ビジョン・バリュー、後継者の育成計画、市場環境、成長戦略、財務指標などを振り返り、またあらためて洗い出すことで、社員に対して自社の将来像や可能性について根拠を持った説明ができるようになります。

事業性評価の仕組みづくりについて、下記リンクではもっと詳しくご説明しています。

事業性評価とは何か?融資を引き出すためのフレームワークや評価シートを解説

④組織文化に合った採用ができていない

職場の人間関係に悩む社員が生まれる背景には、組織文化に合った採用活動ができていないという問題が潜んでいます。そもそも自社の組織文化がどういったものであるのか、経営者自身が把握することができているでしょうか?



組織文化とは、組織の構成員が共通して持つ信念や価値観の集合体であり、組織と構成員の活動を特徴づけるものであると定義されています。創業者の価値観や組織リーダーの言動、創業時からの成功体験・失敗体験が醸成されて、その会社の持つ文化となっていきます。

この組織文化を採用活動に反映させたものがカルチャーフィット採用です。個人の態度、価値観、信念が組織のコアバリューや企業文化に沿っている人を積極的に採用していくという意味です。特に中小企業や成長企業の場合、1人の採用が会社全体に与える影響が大きくなりますから、カルチャーフィットしない人を入れてしまうと、文化の維持が難しくなってしまいます。

組織文化を構築する仕組みづくりについては

組織文化とは?事例やタイプについて解説

カルチャーフィット採用に向けた仕組みづくりについては

カルチャーフィット採用の意味と面接での質問例

で詳しくご説明しています。

⑤業務の仕組み化ができておらず属人的

残業や休日出勤などで拘束時間が長くなってしまう原因として、業務の仕組み化が未完成で属人的な組織になっていることが考えられます。限られた社員に業務が集中してしまったり、リーダーに依存するようなチームの在り方になってはいないでしょうか?

もちろん、極めて専門的な仕事を担うスペシャリストや、クリエイティブ系の職種の場合、属人化を否定することはできませんし、彼らの自由な発想に任せたいという考え方もあると思います。ただし、極端に属人的な仕組みになってしまうと自社ブランドの一貫性を維持することが困難になります。

このため、特に高度な判断や思考が必要とされない定型業務のマニュアル化(手順書化)や標準化が求められます。また、スペシャリストやクリエイティブ系など非定型業務においても、仕事を分解して、定型業務と非定型業務に分けたり、複数人を業務に関わらせるなどの工夫が必要となります。

属人性を解消する仕組みづくりについて、下記リンクではもっと詳しくご説明しています。

属人化の意味とは?仕事の属人性の解消&排除方法を解説

優秀な人の定着率を上げる従業員エンゲージメント

社内制度や組織文化の構築、業務の仕組み化ができていない会社の離職率が高い理由がお分かりいただけたでしょうか?ここからは、優秀な人の定着率を高めるために重要な「エンゲージメント」についてご説明しています。

「従業員エンゲージメント」には様々な定義付けがされています。例えば…

①従業員エンゲージメントとは、従業員が職場に対して感じる精神的・感情的なつながりの強さである。

②エンゲージメントの高い従業員とは、自分の仕事や職場に関与し、熱心に取り組み、コミットしている従業員である。

③エンゲージメントとは、会社の成功に貢献しようとする従業員の意欲と能力のことである。

④従業員のエンゲージメントとは、従業員の組織に対する心理的な投資のレベル”である。

これらを一言で言うなら、「会社と社員の一体感」ということになります。一体感のある会社は活気に満ちた組織になります。従業員エンゲージメントの高い企業は、エンゲージメントの低い同業他社よりも収益性が21%高いと言われていますし、欠勤率の減少や離職率低下にもつながることは言うまでもありません。

従業員エンゲージメントを高めることによって、優秀な人の離職を防ぎ、定着率が上がると同時に、業績も伸びていくというわけです。

従業員エンゲージメントを高める指標

従業員エンゲージメントを高める指標には、以下のようなものが挙げられます。

・自主性/エンパワーメント

・キャリアの成長

・協力関係

・コミュニケーション



・リーダーへの信頼

・公平な評価と給与

・商品の品質

・承認

・リソースへのアクセス

・仕事の有意性

・方向性への合意

・上司からのサポート

・教育と訓練

この中で「商品の品質」は「従業員エンゲージメント」と直接的な関係がないと思われがちですが、「自分が本当にいいと思っている商品を扱うことができているか」ということなのです。社員自身が「これは業界で一番いい」と本気で思っている商品、本当にお客さまの役に立つ商品を扱っているという誇りによって、エンゲージメントは高まるのです。

従業員エンゲージメントを高める仕組み

では、従業員エンゲージメントを高めるにはどういう仕組みが必要なのかをご説明します。

①カルチャーフィット採用の仕組み

従業員エンゲージメントの要素として、先ほど「方向性への合意」を挙げましたが、採用の段階で会社が目指す方向性と一致しているのかを確認しなくてはいけません。

②オンボーディングの仕組み

採用後のウエルカムの儀式であるオンボーディングの仕組みが整っていることが、「コミュニケーション」や「上司からのサポート」に反映されます。

③社内コミュニケーションの仕組み

従業員エンゲージメントとコミュニケーションは切っても切れないものです。経営陣と一般社員、上司部下、部門間の関係を良好にするうえでも非常に大切です。

④明確で説得力のあるビジョン

会社と社員の方向性が合意しているのか、その大切な基準となります。

⑤社員の強みと弱みを把握した役割と責任

要するに「適材適所」ということです。社員がやりたい仕事、能力を発揮できる仕事に就いているかどうかを確認していく仕組みのことになります。

⑥意義のある仕事

仕事に意味のなさを感じてしまうと、エンゲージメントは非常に下がると言われています。

⑦挑戦的かつ現実的な目標の設定

頑張れば達成可能だと思える目標があれば、社員は前向きに取り組めるようになります。

⑧キャリアの成長と進歩を育む仕組み

社員が望むキャリアを把握し、それを実現させるための組織や育成の仕組みをつくります。

⑨業績を評価し、報奨する仕組み

仕事がきちんと評価される仕組みも、従業員エンゲージメントに大きく影響します。

⑩従業員からのフィードバックの仕組み

会社の重要な意思決定に関与できることも従業員エンゲージメントを高めます。社員が意見を言える仕組みがあるということが大切です。

 

早期離職を防ぎ、一体感のある組織に育てましょう

「なぜ優秀な人ほど突然辞めるのか?」という疑問を紐解くことで、会社が持つ制度や仕組みの様々な問題点が見えてきます。5つの退職理由にあてはまる問題点はないかを振り返り、社員の定着率はもちろん、業績も上がる仕組みを整えていきましょう。

仕組み経営では、定着率を上げる仕組みによって、優秀な社員が皆さんの会社に長く貢献し、業績の成長に結び付くお手伝いをしています。詳しくは以下からご覧ください。

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