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「働き甲斐のある会社連続受賞、V字回復を実現」ゾーホージャパン株式会社 代表取締役 迫 洋一郎様インタビューレポート

今回のレポートは、働き甲斐のある会社連続受賞し、V字回復を実現させたゾーホージャパン株式会社 代表取締役 迫 洋一郎様のインタビューです。

ゾーホージャパンは、営業管理や業務管理などのツールを提供するIT企業です。

インド本社からの指名により2011年に迫社長が代表取締役に就任。当時、赤字だった本業をわずか1年でV字回復させました。

また、2017年度「日本における働きがいのある会社」従業員25 – 99人部門第25位、第7回「日本で一番大切にしたい会社大賞」では審査委員会特別賞を受賞されています。

このインタビューでは、V字回復のために、どんな手をどんな順番で打ったのか?働き甲斐のある職場環境や自律的な組織を創るためにどんな仕組みを作ったのか?を詳しくお伺いしています。

以下からご覧ください。

 

(インタビュワー:清水直樹)

 

まず、ゾーホージャパンの社長になった経緯を教えてください。

2011年1月にインド本社のCEOからメールが入りました。それがPresident(プレデント)というタイトルのメールでした。

実は当時、会社は過去3期に渡って本業が赤字でした。当時の経営がアパート経営、株をやっていて、川崎や藤沢のアパートから家賃収入があり、そういった営業外収益のために経常利益は黒字に見えるのですが、本業は赤字でした。それが3期続いていたのです。普通の中小企業であれば倒産レベルでした。

そのタイミングで本社CEOから社長やってほしいというメールがきました。

 

当時、社長になってからの社内の組織状態はどんなでしたか?

儲かってない会社は一歩入ると独特の空気感がありますけど、当時はそういう感じでした。挨拶がない、ネガティブ思考、チャレンジする人が少ない、チャレンジして失敗したひとに対して裏で悪口をいう、という状態でした。

 

ではそこからV字回復に向かうために何をどんな順番で行ったのでしょうか?

まず会社の風土を変えないといけないと思いました。そのために社員の意識改革が必要と思いました。2011年2月から社長になったのですが、全体会議で現状を理解してもらいました。

そこで会社の財務データを公開し、本業で赤字、営業外収益で黒字に見えますが、皆さんの実力はこんなもんですか?という問いかけをしました。我々は同じ船に乗ってるのに、同じ方向を向いていませんよね。真剣にやってないよね。裏で悪口言ってる人いますよね。船が浸水している状況なのに、真剣に対処していないですよね。という話をしました。

私は過去の会社でも事業再生や新規事業をやってきたので、必ず成功させる、今日がスタートラインだと言いました。そして、過去の話はしないで前を向いてやっていこうと言いました。さらに、再生を信じて一緒に頑張れない人は自ら身を引いてほしいと話しました。

普段はそういう話はしないので、みんなはびっくりしたと思います。

前の経営者は財務データを公開していなかったので社員は会社の経営状況を知りませんでした。部長でも一部を知っていた程度です。ですから私が社長になってはじめてわかったことも結構ありました。

次に、意識改革のために、企業理念を創らないとダメだと思いました。簡単に作れないので、時間をかけることにしました。私はこの先、10年20年と会社にいるわけではないので、全社員の中から理念を創るプロジェクトのメンバーを募りました。その結果、ボードメンバー、中途採用、新卒採用、これら3世代の中から、10人が集まりスタートしました。

理念は簡単にはできませんので理念を創るプロジェクトの前に、SPA(スピーディー、ポジティブ、アクティブ)という経営方針を出しました。そして、主体的に動き実績に貢献した人を表彰するMVP賞、SPAの精神で行動し成果に貢献した人を表彰するSPA賞、挨拶、会社の雰囲気に貢献した人を表彰するさわやか賞をセットで導入しました。これは上司ではなく、メンバーが選ぶことが特徴です。社員が1票ずつ理由付きで投票します。そして、理由も一緒にみんなの前で公開します。そうすると良いコメントをシャワーのように浴びるので会社の雰囲気が少しずつ柔らかくなってきました。

その後、3.11がやってきました。今思うと、それは試練でもありチャンスでもありました。

3.11が起きてから、3つのことをやりました。

一つ目は、社員の安全を考え自宅勤務を始めて実施しました。これは、現在の働き方のベースになっているスーパーフレックスに繋がっています。自宅で仕事ができるように仕組みを変更するために、ソフトウェアをダウンロードできるようにしたり、注文書や請求書などの紙をPDF化したり、出荷がどこまで進んでいるか見える化するためにデータベースを2-3日で作成し、自宅で業務ができる環境を作り上げ運用をスタートしました。

2つ目は、ManageEngine事業を会社の柱に育て上げるというチャレンジを行いました。当時、WebNMSという基幹事業のお客様である通信事業者の局舎や電柱、電線などが津波で流されました。該当のお客様は、システム開発をすべて凍結し、その予算をインフラの再構築に回しました。その結果、基幹事業の売上が大きく落ち込み、会社全体で売り上げが2011年4月から11月まで前年度対比で40%ダウンしました。その時に、次の事業の柱を育て上げようと決断しました。人を移動させて組織改革し、みんなで業務時間中は必死でビジネスに立ち向かいました。

でも4月から11月までは全然ダメで倒産の危機を肌で感じました。

ですから、経費削減としてクーラーの温度を上げたり、照明を間引いたり、水、コーヒーを有料にしたりと考えられる経費削減を行いましたが、10万円程度の削減効果しか出ませんでした。でも、この会社を何とか再建したいという思いでみんなで取り組んだことでしたから、これはこれで一体感の醸成に繋がり良かったと思います。

これらの前向きな業務への取り組みの結果、2011年12月からは劇的に業績を改善することが出来ました。結果として2011年度は2010年度に比べ1000万円だけですが伸ばすことができました。それに本社の役員が感動し、賞賛のメールがどんどんきたのです。なぜなら、未曽有の震災の後、瀕死の業績を劇的に盛り返し2010年度より成長させたからです。このメールを社員へ公開したところ、これが彼らの自信につながったのです。その勢いで2012年度はさらに37%成長しました。

3つ目は、先ほど言った通り、2011年5月-12月の8か月かけて、企業理念を作成しました。

勤務時間の9時~18時まで必死で次の事業の柱を育てようと業務をおこなっていましたので、企業理念は7時~9時、お昼休みの1時間、18時以降、メンバー10人が手弁当で集まり理念づくりを行いました。

実は以前もボードメンバーで理念を創ろうという話はありました。しかし、本社に理念がなく、日本で作っても仕方ないよね、ということで終わってしまいました。私が社長になってから、日本独自でもいいじゃないか、会社を再建し、いい会社を永続させるために理念を作ろうということで賛同したメンバーと一緒に始めたのです。

最初は、理念ってなんだっけという勉強からでした。その次に、メンバー一人一人が1社、理念経営している会社を探してきてみんなの前で発表するということをしました。ディズニーやスターバックスなど。この発表を通じて理念経営の素晴らしさをメンバー同士が実感したのです。次に現状認識をしようということで、社員から、パートナーから、お客様から、社会から、当社はどう思われてるか?というブレストを行いました。

次に、同じく4つの軸で、10年後、30年後、100年後もいい会社として繁栄するためには当社はどうなっていたいのか?をブレストしました。そして、理想とする会社を出し合って、理念へとつなげていきました。そのプロジェクトのファシリテーションも社員がやりました。

このような活動を通じて、前向きさや主体性が育まれ、会社再建に向けての一体感が醸成されていったと思います。

このように、3.11というピンチはありましたが、3つのことを行いました。

社長に就任した時、再生を信じて一緒に頑張れない人は自ら身を引いとほしいと宣言しましたが、結果として誰も辞めませんでした。

みな、どこかしらでいい会社にしたいという気持ちはあったのだと思います。

 

では、理念が出来て、それをどのようにして社内に発表したのでしょうか?

まず2012年1月の全体会議でみんなの前で発表しました。これはプロジェクトメンバーに発表してもらいました。当時、社員数が28人でしたが、私が発表してしまっては、1対28になってしまいます。しかし、10人のメンバーが発表することで、11対18になり、みんなで作ったという雰囲気が出来ました。

ただ、まだ18人が参加していないので、浸透させるにはどうするかということで、組織のグループリーダー以上を集めて行動規範をより具現化する作業を始めました。たとえば、感謝をするという行動規範の場合、なぜそれが大事なのか、その意図は?良い行動例は何なのか?ということを詰めていきました。

これも私がたたき台を作りましたが、その後、みんなに考えてもらいました。これも4か月かけて洗練させていきました。月に2回ほどミーティングをしていましたが、出来たものから社内に公開して、会社が理念に基づいて動いていることを伝えていきました。

そして、理念を会社に浸透させていくために、各会議の前に理念トークすることにしました。なんでもいいですが、理念に出てくる言葉に関連してこんなことを経験した、この経験は理念のここに通じると思います、というように話してもらうということをやってもらいました。

最近は理念トークに加えてコーポレートメッセージトークというのも始めました。

 

迫社長にとっての働き甲斐のある会社とはどんな会社でしょうか?

いろんな立場や事情を抱えている人が世の中にいるので、そういった人たちが住みやすい、と感じるのが大事だと思っています。会社の中で住みやすい、働きやすいと感じるのが一番いい状況かなと思います。

「日本で一番大切にしたい会社」では、社会的な課題とか意義に向き合い、弱者に寄り添うのを評価しています。そちらのほうがどちらかというと、私の想いに近いですね。

 

そういった環境を作るために、何か独自の制度はありますか?

まだ実際には使っている方はいないですが、ジョブリターン制度があります。

これからの時代、介護が増えます。親の介護の必要性が出てくると、自分がつきっきりにならざるを得なくなり、会社も辞めざるを得ません。

この制度は、会社を辞めるときに、普通に退職するか、ジョブリターンでやめるか?を選択できるものです。

ジョブリターン制度では、辞めるときに一時的に退職金を支払います。辞めてから5年以内であれば、辞めた時と同じ待遇(職位、給与、退職金カーブ)で復帰でき、正規の定年退職時に退職金の総額からジョブリターン時に支払った一時的な退職金を差し引き支払われます。つまり、社員にとっての不利益が無い制度にしているのです。

いま、平均的な介護期間は5年くらいですが、もっと会社の財務基盤がしっかりしてくればジョブリターンの期間も6年、7年と増やしていけると思います。

 

では次に、御社の採用基準や採用された後に、どういった教育をされているのかを教えてください。

これまでは大卒しか採用していませんでしたが、今年から高卒採用も始めます。募集の仕方は、去年まではエージェント経由でした。そして、採用面接は、1次面接、2次面接、3次面接、大学先輩との面談で採用判断しています。

私が社長になった後からは、採用の判断で、一番大事にしているの人格です。

人格を判断するために、まずホームページに採用ページを作り、私たちが大事にしていること、経営理念、良い行動例、人事理念、社風がわかる各種動画、50程度の制度や福利厚生、私のインタビュー記事などをすべて公開しています。

まずそこを見てもらって、自分の考えと一致しているかを確認してくださいと伝えています。

ですので、当社の考えに共感し一致している人だけが応募してきます。

そのうえで、1次面接を突破した方には、理念作文をA4一枚で書いてもらいます。理念作文では、大学時代、こういうことに取り組んできた。こういう想いがあって、こういう行動をした。それが企業理念と共通するところがあります、というようなことを書いてもらっています。

あとは面接の中で、人格や考え方がわかってきますので、それで判断します。

教育に関しては、内定後、入社者の実力に合った本を3-4冊プレゼントし自主学習していただいています。
入社後は、まずビジネスマナーを外部研修で学んでもらいます。理念とかセキュリティ教育などは自社で講師を立ててやります。技術教育は入社者のレベルに合わせてOJTと外部研修を組み合わせて行っています。

 

本社のZOHOユニバーシティという施設がありますが、こちらはどういう考え方で運営されているのでしょうか?

ゾーホーユニバーシティは、2004年に作られました。当時、本社もそこまで有名ではなかったので、理系の優秀な学生が取れていませんでした。一方で、高卒の中にも優秀な人がいるので、彼らに教育の場を与えIT技術者に育て上げることで、その彼らの活躍の場が提供でき、彼らが作ったクラフトで多くのスタートアップ企業や中小企業の成長に貢献できるだろうということで、作られたのです。

いまでは毎年1万人くらいが応募してきます。そこから120人だけ採用します。基準は情熱です。筆記試験をやらず、面接しかしません。あなたはなぜ応募してきたのか?何をしたいのか?高みを目指す情熱、何かを変えたいという情熱があるかをみます。それで絞り込みます。

入学しても、まだ社員にはなりません。ただし、給与に相当するものを払っています。

卒業の時期になると、会社のチームの中に仮配属になります。そこでリーダーから認められないとはじき出されます。ここでまず、普通に卒業するか、入社かに分けられます。

さらに、入社になった人も、他のチームでインターンします。そこで残らなければ卒業になります。

 

以前伺ったときに、社内報を出されていると聞きましたが、それについて教えてください。

社内報は新卒の人達と1年先輩の方1人がチームになって作っています。この中にインターン生も入っています。社内報は3か月に一回発行されますが、編集や内容はチームで決めます。

この仕組みの良い点は、若手に編集員をやってもらうと、会社の良いところを探ろうとすることです。あとは先輩社員にインタビューしに行くので、先輩の顔を覚え、先輩も丁寧に答えてくれるので良い関係づくりになることです。

 

最後に、今後取り組んでいきたいことを教えてください。

私は、企業は成長するのが当たり前だと思っています。そこで私たちは、「正しい成長」を目指しています。

正しいとは、社会的な意義、課題に向き合い、弱者に寄り添い、そのうえで成長させるということです。

そういった正しい成長をしている会社は社会から必要とされ、愛され、しいては「ありがとう」をいっぱい頂けます。

それから、現在、地方創生にも取り組んでおり、川根本町で働く本社のインド社員が増えてくると日本にも開発拠点を創ろうという話になると思います。そうなると、そこに働く場が出来ます。そこに、川根高校を卒業しゾーホーユニバーシティで学んだ社員が帰郷し働くと地方創生になります。こういうことを実現していきたいと考えています。

こういった取り組みは、社員にとっても決して無駄ではなく、この経験が全て将来に活かせます。最終的には大きな絵に繋がっていくと考えています。

(インタビュー終わり)

 

まとめ

 

以上、いかがでしたでしょうか。

全員で想いを共有し、全員経営をしていくためのヒントが多数あったのではないかと思います。

個人的には、

・経営理念を社員全員巻き込んでつくる。

・会社の現状を決意をもって正しく伝える。

・3.11のピンチをチャンスに変える。

・良い会社とは何か?という自分独自の確固たる定義。

この辺りが特に大切かと思います。

 

2 Comments

清水直樹

①大事だと思ったこと
・経営理念を社員全員巻き込んでつくる。
・会社の現状を決意をもって正しく伝える。
・3.11のピンチをチャンスに変える。
・良い会社とは何か?という自分独自の確固たる定義。

②自社でもやろうと思ったこと
採用時に理念を共有できるかを判断する仕組みづくり。

Kenichi Yuzuriha

①大事だとおもったこと
・財務データを公開して、社員の収支構造や経営状況把握
・企業理念に共感をした人の採用
・覚悟を持ったリーダーシップの浸透

②自社でもやろうと思ったこと
経営参加出来るような仕組みづくり