本日より、マイケル・ガーバー氏の語録を紹介する動画を始めることといたしました。
マイケル・ガーバー氏は、私の師でもあり、著書『はじめの一歩を踏み出そう』は、世界で700万部も売れている中小企業経営の教科書として広く知られております。
ガーバー氏の著書には、『起業家精神に火をつけろ』など、翻訳されたもの、未翻訳のものを含め、数冊あります。
本動画では、私が特に重要だと考える言葉を選び、解説を加えていきたいと思っております。
第1回目のテーマは、「事業は経営者の人柄を映す鏡である」という言葉です。
この言葉は、『はじめの一歩を踏み出そう』の最初のパート、私が所持している15刷(2016年版)では21ページに記されております。
この言葉には続きがあり、
「もしあなたがずる賢い考え方の持ち主なら、あなたの会社もずる賢くなってしまう。そして、あなたが欲張りな人だったら、従業員も欲張りになり、仕事もろくにせず権利ばかりを主張する会社になってしまう」
とあります。
経営者とお付き合いしていると、社員に対する不満や不平を漏らす方が多いものです。社員の能力が低い、ミスが多いなど、様々な不平不満が出てくるわけですが、それらの不平不満は、実は経営者の人柄から生まれてきているのだと言います。
続けて、
「自分の会社を変えたいと思うなら、まずはあなた自身が変わらなければならない。あなたが変化を望まない限りは、会社も十分な収益を上げることはできないのである」
とあります。
日本企業では古くから「会社は経営者の器以上には大きくならない」と言われておりますが、この言葉を別の言葉で言い換えると、まさに「事業は経営者の人柄を映す鏡だ」となるのではないでしょうか。
ガーバー氏は別の場所で、「魚は頭から腐る」という言い伝えを引用し、「会社も社長から腐っていく」という厳しい言葉を残しています。
これに関連して重要なのは、社長の素質は良い影響と悪い影響を会社に与えるということです。
例えば、社長が細部にまでこだわる素質を持っていたとします。その素質は、会社に対して良い影響と悪い影響を同時に与えるのです。
良い影響としては、資料のデザインや商品の品質、性能、デザインなど、細部へのこだわりが顧客体験に良い影響を与えます。
一方で、細部へのこだわりは、マイクロマネジメントに陥りやすいという悪い影響も会社に与えます。
マイクロマネジメントとは、社長が会社の隅々まで自分でコントロールしようとするマネジメント方法であり、社員の自主性を奪い、成長を阻害してしまいます。また、社長が常に目を光らせている必要があるため、本来集中すべき業務に集中できず、会社の停滞を招くこともあります。
スティーブ・ジョブズは、細部へのこだわりを持つ人物の典型的な例でしょう。
彼のこだわりは、Apple製品のデザインや使いやすさに現れ、多くのファンを生み出しました。しかし一方で、彼のやり方についていけずにAppleを去った人々も多くいたはずです。
彼の素質は、あれほど大きな会社になっても、良い影響と悪い影響を会社に与えていたのです。
ましてや中小企業であれば、社長の素質がダイレクトに会社に影響を与えます。
では、何が大切かというと、まず自分がどういう素質を持っているか、どういう人柄なのかを自己認識することが重要です。
そして、それが会社に与えている影響を、良くも悪くも把握することが大切だと考えます。
私達は仕組み化のコーチングを行っておりますが、その教科書となっているのがこの『はじめの一歩を踏み出そう』です。
コーチングの最初のステップでは、経営者自身の自己認識を高めることから始めます。具体的には、経営者がどういう価値観で仕事をしているか、どういう価値観で生きてきたのか、そしてどういう素質を持っているかを診断します。
その診断結果から、経営者が会社に与えている悪影響を認識してもらうことから始めるのです。
例えば、細部へのこだわりが激しい社長であれば、社員に細かい部分を指示しようとする瞬間に、「今自分は社員に対してマイクロマネジメントをしようとしているな」と気付けるようになります。
そして、それが本当に必要なことなのか、そうでないのかを判断できるようになるのです。
会社を変えたいと思う経営者は多いですが、自分を変えようと思う経営者は少ないものです。
多くの社長は「会社が良くなれば自分の人生も良くなる」「社員がもっと働いてくれれば、頑張ってくれれば自分の人生も良くなる」と考えています。
しかし、実際は逆なのです。
まず自分がどう生きていくのか、自分にはどういう素質があって、どういう傾向があるのかを自己認識し、自分を変えようとする努力をしなければ、社員も会社も変わることはありません。
これが『はじめの一歩を踏み出そう』の最初に書かれている、非常に大切なメッセージなのです。
この考え方は、会社の経営だけでなく、様々な場面で応用できます。例えば、日常生活で人に対してイライラすることがありますよね。家族関係や友人関係、職場の同僚など、誰にでも経験があると思います。
そんな時に思い出していただきたいのが、「事業というのは経営者の人柄を反映したものだ」ということです。相手がなぜそのような行動や言葉を自分にぶつけてくるのか、その原因を考えてみると、意外と自分に原因があったりするものです。
特に子育て経験のある方は、このことを深く理解できるのではないでしょうか。子供は成長するにつれて自我が出てきて、親に反抗したり、良くないことを言ったりします。
しかし、よく考えてみると、それは自分の性格がそのまま子供に写っていたり、自分の嫌な部分が子供を通して表現されているだけだったりするのです。まさに子供は親の鏡なのです。そして、会社も同じだと言います。
この考え方を身につけると、非常に生きやすくなりますし、経営も楽になります。なぜなら、人のせいにしなくて済むからです。自分を改善すれば、目の前の状況を変えることができるので、イライラすることが減ってくるのです。
厳しい現実のようですが、この習慣、考え方の習慣を身につけていただくと、経営も人生も楽になるのではないでしょうか。
というわけで、今日は語録の1つ目を紹介しました。こんな感じで動画を撮っていきたいと思います。ガーバー氏の語録はたくさんありますので、何回になるか分かりませんが、少しずつお伝えできればと思っております。
それでは、今日は以上となります。