事業のパッケージ化とは、収益を生み出す事業を定型化してパッケージにするという考え方です。これはガーバーの代表的な著書『The E-Myth』において最も重要なコンセプトの一つとして位置づけられています。
経営者にとって、事業そのものが商品であるという視点が重要です。つまり、単に商品やサービスを販売するだけでなく、事業全体を魅力的な商品として作り上げていく必要があるのです。この考え方は、事業を三層構造で捉えることで理解しやすくなります。
最も内側の層は商品・サービスです。これは顧客に直接提供される物理的な商品やサービスを指します。多くの経営者、特に職人型の経営者は、この層だけに注目しがちです。しかし、それだけでは不十分なのです。
二番目の層は、顧客とのすべてのやり取りです。電話やメールでのコミュニケーション、店舗での接客、店舗の清潔さや雰囲気など、顧客との接点すべてが含まれます。現代では、優れた商品があっても、この層でつまずけば顧客を失うことになりかねません。
最も外側の層は事業の運営方法です。意思決定の方法、社員の採用方法、バックオフィスの事務処理など、事業運営に必要なすべての要素が含まれます。これらは直接目に見えにくいものの、他の二つの層に大きな影響を与えます。
この三層すべてを最適化し、魅力的なものにすることで、事業は様々な形で「売却」可能となります。外部への売却(M&A)、内部への売却(社員や家族への承継)、株式市場への上場、フランチャイジーへの展開、さらには自身での継続的な経営など、多様な選択肢が生まれます。
最も重要なのは、社長が交代しても収益を生み出し続けられる仕組みを作ることです。この考え方は、英語では”Turn-Key Revolution”(ターンキー・レボリューション)と呼ばれ、誰でも鍵を回せばすぐに事業を始められるような状態を目指すものです。マクドナルドの成功は、まさにこの考え方を実践した好例といえるでしょう。
この概念は、2003年に日本で紹介された当時、特に中小企業の経営者の間では抵抗感もあったようです。しかし現在では、M&Aの一般化とともに広く受け入れられるようになっています。経営者が自身の資産を形成する有力な方法として、また、持続可能な事業を確立するための重要な考え方として認識されているのです。
事業のパッケージ化において重要なのは、誰に売却するにしても事業全体が魅力的であることです。第三者や外部企業に売却する場合はもちろん、社員や家族に事業を承継する場合でも、「継ぎたい」と思えるような魅力的な会社でなければなりません。私はファミリービジネスの経営者に対して、息子さんや娘さんが継ぎたいと思えるような魅力的な会社作りの重要性を常に伝えています。
株式市場への上場を考える場合も同様です。投資家から見て魅力的な会社でなければ株式を購入してもらえず、株価が低迷して上場した意味がなくなってしまいます。フランチャイズの場合も、加盟を検討する人々にとって魅力的なビジネスモデルでなければ加盟店を集めることはできません。
では、「魅力的な事業」とは具体的にどのようなものでしょうか。最も重要なポイントは、「社長が交代しても収益を生み出し続けられるかどうか」です。例えば、M&Aの場合、買手側は自社のスタッフを送り込んで経営できるかという視点で判断します。現社長がいないと回らない会社は、高い評価を得ることは難しいでしょう。
家族への事業承継においても、「親がいないと回らない」という会社では、子どもたちも継ぐことを躊躇するでしょう。自分が継いだ後に収益が落ち、社員からの反発を招くことが目に見えているからです。株式市場においても、特定の経営者に依存する会社は投資家からリスクが高いと判断されます。投資家は長期的に安定した収益を求めており、誰が経営しても収益を生み出せる仕組みを持っているかどうかを重視します。
このように、事業のパッケージ化とは、会社全体を仕組み化し、誰が運営しても事業が回るようにすることと言えます。マイケル・E・ガーバーの著書『The E-Myth』では、これを「Turn-Key Revolution(ターンキー・レボリューション)」と呼んでいます。「ターンキー」とは鍵を回すという意味で、「レボリューション」は革命を意味します。
例えば、フランチャイズ店舗を始める際、本部から鍵が送られてきて「今日からこのお店はあなたのお店です」と言われ、その日から営業できる状態―これがターンキー・レボリューションの理想とする姿です。もちろん、これは比喩的な表現であり、実際にそこまで簡単にはいきませんが、誰でも運営できる仕組みを作り上げることの重要性を表現した言葉です。
マクドナルドはこの考え方を実践し、世界中に何万店舗も展開することができました。現在ではフランチャイズビジネスにおいて当たり前となっているこの考え方も、30〜40年前にこの本が書かれた当時は一般的ではなく、読者に大きなインパクトを与え、本のヒットにつながった要因の一つとなったのです。