稲盛和夫氏の成功方程式「考え方」×「熱意」×「能力」
稲盛和夫氏は、京セラを一代で世界クラスの会社にした人物であり、その後、第二電電(現KDDI)も創設し成功させました。近年では、JALの再興にも尽力され、見事成功させました。松下幸之助氏亡き後、日本を代表する経営者と言ってもいいでしょう。
その稲盛氏が人生と仕事で成功するために何が必要かを考えて導き出したのが、次の方程式です。
「人生と仕事の結果」=「考え方」×「熱意」×「能力」
この方程式を見てみると、私たちの人生と仕事の結果は、先天的なものよりも、むしろ私たちの日頃の考え方や行動によって決まるものだとわかります。
能力とは?
能力は知性や身体的強さなどのことを指します。能力はどちらかというと、先天的なものであり、本人の努力では変えにくいものと言えます。能力は、0から100点満点の間になります。
熱意とは?
熱意は、こうありたい、という強い想いのことを指します。熱意は本人の心持次第でどうにでもなるものです。熱意も、0から100点満点の間になります。
考え方とは?
考え方は、人生や仕事に取り組む際の心構えのことです。考え方だけは、-100点から+100点の間になります。たとえば、妬みや嫉妬、怒りなどを原動力にしている場合には、マイナス点になります。逆に、貢献や素直さ、前向きの心構えで取り組んでいる人は、プラス点になります。
成功の方程式の計算例
次にこの成功方程式を用いて、実際に計算をしてみましょう。
天才が成功できるか?
生まれながらにして知性が高い人の場合を考えてみましょう。
能力は100点
生まれながらにして知性が高いので、能力は100点にしておきます。あなたの周りのも、子供のころから頭が良い人がいたと思います。彼らはIQが高く、勉強の要領がいいので、あまり勉強しなくても、テストでいい点数が取れるのです。
熱意は20点
稲盛氏いわく、もともと能力の高い人というのは、自分の能力が高いあまり、何が何でも成し遂げたい、という熱意に欠けることが多いとのことです。あまり勉強しなくてもテストでいい点数が取れる子は、「自分は他の子とは違う。勉強しなくてもいいんだ」と考えがちです。もちろん、熱意はその人次第ですが、ここでは仮に20点としておきましょう。
考え方は50点
考え方もその人次第ですので、ここでは仮に50点としておきましょう。
天才の成功方程式の点数は?
さて、上記のことを方程式に当てはめてみましょう。
(能力:100点) × (熱意:20点) × (考え方:50点) = 10万点
となりました。
ごく普通の人が成功できるか?
次に、天才と比較してごく普通の人が成功できるかどうかを見てみましょう。
能力は50点
まず能力ですが、ごく普通の人なので、50点にしておきましょう。学校の勉強でいえば、偏差値50くらいのイメージです。
熱意は50点
ごく普通の人なので、熱意もそこそこあります。こちらも平均点として50点にしておきましょう。
考え方は50点
考え方も同じく平均で50点としておきましょう。
ごく普通の人の成功方程式の点数は?
上記のことを方程式に当てはめてみましょう。
(能力:50点) × (熱意:50点) × (考え方:50点) = 12万5千点
となりました。
普通の人でも天才を超えることが出来る
以上、比較してみると、天才は10万点、普通の人は12万5千点となりました。この結果を見てみると、ごく普通の人であっても、熱意があれば、天才を上回る結果を出すこともできるのです。もちろん、上記の試算は恣意的です。天才であり、かつ熱意も考え方も優れている人もいます。そういう人は、すべて100点満点で、合計100万点になります。
しかし、この方程式で稲盛氏が伝えたいのは、特に何の能力もなく、先天的に優れている点が無い人であっても、熱意と考え方さえ正しければ、熱意を持たない天才をも上回る結果を出すことが出来る可能性がある、ということなのです。
イチロー選手は天才だったか?
たとえば、誰もが認める野球選手だったイチロー選手を考えてみましょう。イチロー選手は、いまでこそ天才と言われたりしていますが、身長は180センチと、ごく平均的であると言えます。(実際、日本人野球選手の平均身長は180センチ程度、メジャーリーグだとそれより7,8センチ高い)
つまり、能力的には100点満点だとは言えません。しかし、彼は並々ならぬ熱意と正しい考え方を持っていたため、圧倒的な結果を生み出したのです。
天才詐欺師の場合は?
次に、天才詐欺師の例を考えてみましょう。
能力は100点
天才詐欺師は、賢い頭を使って、相手をだます様々な手法を考えます。これは元々頭が良くなければ出来るものではありません。そこで、能力を100点としておきましょう。
熱意は100点
さらに熱意も100点です。必ず騙してお金を取ってやる、という熱意があります。
考え方は-50点
考え方はどうでしょう?人をだましてお金を稼ぐ、というのは考え方としてはどう見てもマイナスです。とはいえ、人殺しをしたりすることはないので、-50点くらいと設定してみましょう。
天才詐欺師の結果は?
上記のことを方程式に当てはめてみましょう。
(能力:100点) × (熱意:100点) × (考え方:-50点) = -50万点
となりました。
天才詐欺師の人生の結果は-50万点です。いくら能力があって、熱意があっても、その能力と熱意をどこに使うか?という考え方が間違っていれば、マイナスになってしますのです。たとえば、逮捕される、人から蔑まれる、いつもおびえながら生きていく、など、とても成功した人生とは言えなくなります。
成功の方程式はどのようにして生まれたか?
ところで、稲盛氏は、どのようにして成功方程式を生み出したのでしょうか?
実は、この方程式は、彼の長年の経営経験から生まれた、というものではなさそうです。稲盛氏著の「成功への情熱」によると、京セラを創業した際、なんの才能もない自分たちがどのようにしたら成功できるのか?ということを自分自身に、そして社員にも説明するために、この成功方程式を生み出したそうです。
その後、当時生み出した成功方程式のとおりに、考え方と熱意を大切して仕事をしてきた結果、いまの京セラやKDDIがあるわけですから、稲盛氏は、この成功方程式の正しさを自ら証明したと言えるでしょう。
「考え方」「能力」「熱意」は、なぜ掛け算なのか?
成功方程式は、「考え方」「能力」「熱意」の掛け算です。なぜこれが足し算ではなく、掛け算なのでしょうか?実はここに肝があります。
足し算の場合、能力に恵まれなかった人は、何をやっても天才には勝てない、ということになります。たとえば、先ほどの例で考えてみましょう。
掛け算では普通の人が天才に勝つ
先ほどの例では、
天才は、
(能力:100点) × (熱意:20点) × (考え方:50点) = 10万点
でした。
一方の普通の人は、
(能力:50点) × (熱意:50点) × (考え方:50点) = 12万5千点
となり、熱意さえあれば普通の人が天才を上回ることが出来ます。
足し算では普通の人は天才に勝てない
これを足し算にしたらどうでしょうか?
天才は、
(能力:100点) + (熱意:20点) + (考え方:50点) = 170点
です。
一方の普通の人は、
(能力:50点) + (熱意:50点) + (考え方:50点) = 150点
となります
このように結果が逆転してしまいました。もちろんこれもあくまでシミュレーションですが、方程式が掛け算であることにより、普通の人が天才を上回る可能性が高まるわけです。
「考え方」×「熱意」×「能力」に関する私の感想
「仕事の結果」=「考え方」×「熱意」×「能力」ということに関して、私の個人的な感想や体験を述べておきたいと思います。結論から言うと、この方程式は私の仕事人生にも当てはまっています。
「能力」に欠ける営業の仕事を選んだ
私は会社員時代、営業をしていました。実は学生時代からインターンとして簡単な営業っぽい仕事をしていました。でも実は、能力面で言うと、まったく営業には向いていなかったと思います。というのも、人と話すのが苦手であまり好きではなかったからです。しかし、将来、経営者になりたいという熱意だけはありました。何かの本に経営者になるためには、営業の経験を積んだほうが良いと書かれていたので、苦手な営業の仕事を選ぶことにしたのです。
同期の連中の中には、私と違って、話すのが上手く立て板に水のように言葉が出てくる人や、堂々とプレゼンをできる人がたくさんいました。彼らにはもともと「能力」があったのだと思います。
「能力」が無い分、「熱意」をもって努力をした
一方、私は「能力」が無い、と自覚をしていたので、その分、努力をしました。営業やコミュニケーション方法に関する書籍を読み漁り、学んだ内容を実践の場で練習する、ということを繰り返していきました。そうすると、どうしたことか、売上があがるのはもちろん、お客さんからも、「まさに営業っぽい性格だね~」などと言われたり、営業に行った会社の役員から「いまの給与の倍を払うのでうちに来ない?」と誘われることもありました。
「能力」があるほどに油断をし、時間とともに「結果」の差が開いていく
逆に、入社時点で「能力」があった人たちは、そんな努力をしなくても、そこそこの仕事が出来ていました。しかし、最初はそれで良くても、だんだんと私のように努力をしてきた人たちに成績を追い抜かれていきました。「能力」があったからこそ、「熱意」を持つことが出来ず、「結果」が出なくなっていったのです。
若いころには「能力」で差が付くが、歳を重ねるごとに「熱意」で差が付く
別の例もあります。20代前半のころ、すでに起業していて、同じ年齢とは思えないほど稼いでいた人物がいました。彼は学生時代から起業しており、天才と言われていました。私が毎日、朝から晩まで忙しく働いている頃、彼は勝手に入ってくる収益で、悠々自適の生活を送っていました。
しかし、30歳くらいにもなると、様相が変わってきます。彼はお金があるあまり、自分のスキルを磨いたり、何かチャレンジしたりすることをせず、中身が20代前半の状態のまま30歳になっていました。一方、私を含め、彼を天才だと思っていた連中は、毎日努力して働き、能力を身に付け、起業したり、出世したりしていきました。
すると、いつのまにか、天才と言われていた彼の周りにいた連中のほうが、よっぽど良い仕事や収入を得ることが出来るようになったのです。
これも、「能力」の差を「熱意」で埋め、結果が逆転してしまった例だと思います。
成功の方程式を会社に当てはめると?
というわけで、稲盛氏の成功方程式を解説してきました。最後に、私なりにこの方程式を拡張させた考え方をご紹介したいと思います。
実は、私は会社経営に必要な要素として、「理念」「事業モデル」「組織」があると考えていました。これらは三位一体であり、どれが欠けても継続的な繁栄は難しいのです。
稲盛氏の成功方程式は個人の人生や仕事で結果を出すための方程式ですが、
- 「考え方」=「理念」
- 「能力」=「事業モデル」
- 「熱意」=「組織」
と当てはめれば、会社の成功方程式としても活用できます。
「考え方」=「理念」
「考え方」は会社でいうところの「理念」に相当します。会社の理念は、その会社の存在意義であったり、目指す姿であったり、価値観であったりします。
「能力」=「事業モデル」
「能力」は会社でいうところの「事業モデル」に相当します。事業モデルは、会社として利益を生み出す力のことです。利益を生み出せなければ、どんなに崇高な理念を掲げていても、存続できません。
「熱意」=「組織」
「熱意」は会社でいうところの「組織」に相当します。熱意とは、物事をやり遂げる力と考えることが出来ますので、会社の場合には、事業モデルを実行する「組織」と考えることが出来るわけです。
全てが連動しないと継続的な繁栄はあり得ない
理念がない会社は、短期的に成長をしたとしても長続きしません。
良い事業モデルがない会社は、「良い会社」で終わってしまい、「
組織が弱い会社は、内側から崩壊します。
このように、3つの要素を掛け算と捉え、それぞれを強化していくことで繁栄する会社が出来ていきます。
以上、「人生と仕事の結果」=「考え方」×「熱意」×「能力」という成功の方程式をご紹介しました。
ぜひあなたの人生や仕事、会社に当てはめて活用してみてください。