積小為大の意味とビジネスでの活用を解説。



清水直樹
積小為大の意味とビジネスでの活用について解説していきます。

 

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積小為大(せきしょういだい)の意味とは?

積小為大(せきしょういだい)とは、「小さい事が積み重なって大きな事になる。だから、大きな事を成し遂げようと思うなら、小さい事をおろそかにしてはいけない」という意味です。

積小為大は二宮尊徳の言葉

積小為大は、二宮尊徳(二宮金次郎として有名)の言葉です。日本人なら二宮尊徳は知っていると思いますが、彼が何をした人物なのかはあまり知られていないかも知れません。勉強しながら薪を担いでいる姿から、二宮尊徳=勤勉な学問の人と思われています。それは正しいのですが、彼は現代でいえば経営者と言ったほうが良いかも知れません。

なぜならば、彼は、農村復興を指導したことで名をあげた人物だからです。その際の考え方や手法は斬新であり、現代の多くの経営者にも影響を与えています。

積小為大の原文(出典)

積小為大の原文は、以下の通りです。

大事をなさんと欲せば、小さなる事を、怠らず勤むべし。小積りて大となればなり。凡小人の常、大なる事を欲して、小さなる事を怠り、出来難き事を憂ひて、 出来易き事を勤めず。夫故、 終に大なる事をなす事あたはず。夫、大は小の積んで大となる事を知らぬ故なり。千里の道も一歩づゝ歩みて至る。山を作るも一簣 の土よりなる事を明かに弁へて、励精小さなる事を勤めば、大なる事 必 なるべし、 小さなる事を 忽 にする者、大なる事は 必 出来ぬものなり。

これは、二宮尊徳の教えを後世に伝えようと門人「富田高慶」が著した、「報徳記」に書かれている言葉になります。

 

積小為大に似た言葉

参考までにご紹介しておきますと、積小為大によく似た言葉は以下のようなものがあります。

塵も積もれば山となる

塵も積もれば山となるので、小事をおろそかにしてはならない。

雨垂れ石を穿つ(あまだれいしをうがつ)

どんなに小さな力でも、根気よく続けていればいつか成果が得られる。

点滴石を穿つ(てんてきいしをうがつ)

小さな努力でも、根気良く続けていれば成果が得られる。

砂長じて巌となる(いさごちょうじていわおとなる)

小石でも長い年月を経てば大きな石に成長する。

 

積小為大の具体例

積小為大の考え方の具体例を見てみましょう。

1%の積み重ねが37倍になる

毎日、1%の改善を続けていけば、1年で37倍になります。これは複利効果としても知られていることです。

たとえば、100円に対して、毎日1%の利息が付くと、以下のグラフのような増え方をします。

このグラフを見ると、半年経ったころ、180日時点では、100円はまだ500円程度に増えたにすぎません。しかしそこから急速に増えていき、1年後には3,700円以上になっているのです。

これはお金を増やすことだけではなく、日々の仕事や人生にも応用できます。毎日、昨日よりも1%ずつでも改善しようと行動することで、1年後には大きな成長につながっていくのです。

 

偉大なビジネスは革命ではなく、進化によってつくられる。

多くの人は、すごいビジネスは一夜にして作られると思っています。大ヒットした商品、ブームに乗った商品、マスコミで取り上げられた商品などが急激に売上を伸ばすことで、成功したビジネスとみなされるのです。しかしこれは間違いです。

私が個人的にメンターとしている、ロビン・シャーマ氏は、偉大なビジネスは革命ではなく、進化によってつくられる(Greatness by Evolution Versus Revolution)と言っています。

アップルは30年下積み時代を過ごした

たとえば、以下のグラフを見てみましょう。アップルの企業価値の推移です。

ニューヨークタイムズより

アップルと言えば、私たちの生活にも深く影響を与えている、現代における文句なしの偉大な会社です。しかし、このグラフを見ると、創業の1976年から2005年くらいまでは大した価値が無い会社であるとみなされていたことがわかります。

つまり、アップルは、30年もの間、下積みと言ってもいい時代があったのです。彼らはその間、会社の改善を続け、その成果が臨界点を超えたところでブレイクし、偉大な会社になったのです。

これと同じように、成果が出ないときであっても、進化することを止めてはいけません。だれしも一夜にして成功したわけではないのです。

 

積小為大をビジネスに活かすには?

では、積小為大をビジネスに活かすための考え方を見ていきましょう。

習慣作り

伸びる会社は、会社の中に良い習慣(≒仕組み)がたくさんあります。小さいけれども、良い習慣を積み上げることで、結果的に業績につながっていくのです。



社内における習慣とはどんなものがあるでしょうか。たとえば、

  • 挨拶
  • 5Sに代表される職場環境の整備
  • 会議の方法
  • 計画立案
  • 重要指標の設定やチェック

等々、基本的なものから経営の根幹にかかわるものまでたくさんあります。会社とは、こういった習慣で成り立っているのです。それぞれの習慣は些細なものに過ぎないかも知れませんが、それらが集積されることで、大きな業績につながるのです。

 

細部へのこだわり

会社は様々な業務で成り立っていますが、それぞれの業務へのこだわりが大切です。マイケルE.ガーバー氏は世界的ベストセラー「はじめの一歩を踏み出そう」の中で以下のように書いています。

高みを目指す経営者とは、きわめて現実的な性格の持ち主であり、日常生活にありふれた細やかなことにまでこだわりを持っていた。

たとえば、飲食店に食事に行くことを想定してみましょう。食事に行くわけですから、料理がおいしいというのは絶対条件です。でも、顧客が全体的な満足感を得るためには、それだけでは不十分です。お店の清潔さやスタッフの対応、値段、食器の質、提供スピード、椅子の座りやすさ、等々、様々な要素が顧客の満足度に影響を与えます。料理が100点であっても、他の要素のどれかがゼロ点であれば、リピートしてくれることはないでしょう。

 

改善

小さな積み重ねが大きな違いを生み出す積小為大は、改善の基本的思想と言えます。これに関して、面白い事例をご紹介しましょう。

自転車レースを細部まで分解し、改善

自転車レースの国際大会で100年負け続けていたイギリスは、ブレイルズフォード氏を新しいコーチにつけました。彼は、「マイクロエクセレンス」という戦略を実行し、自転車レース最高峰のツールドフランスで5度の優勝を果たすチームへと成長させました。

彼がやったことは、自転車競技に関することを数限りない要素に分解し、それぞれを1%ずつ改善したことです。たとえば、

  • わずかな埃でも自転車のメンテナンスに支障をきたす可能性があるため、チームトラックの床を真っ白に塗装し、埃を発見させた。
  • 各選手用にカスタムデザインしたマットレスと枕を運ばせ、身体の回復をコントロールした。
  • シートの座り心地を良くし、タイヤにアルコールを塗ってグリップ力を高めた。
  • 走行中の筋肉の温度を理想的に保つために、センサーで各選手の反応をモニターした。
  • 外科医を雇い、風邪を引く確率を下げるために、ライダー一人ひとりに最適な手の洗い方を指導してもらった。
  • 風洞実験でさまざまな素材をテストし、より軽量で空気力学的に優れているスーツを使った。
等です。
もちろん、これだけでは100年負け続けたチームを優勝に導くことはできません。彼は他にもレースに関係するあらゆる細かいことを1%ずつ改善したのです。
ブレイルスフォード氏は、このやり方をチームメンバー全員に共有し、みんなで追及する文化を創りました。チームメンバー全員が、小さな改善点がないか、あらゆる分野を探し続けました。トレーニングや環境のあらゆる面で、1%の改善をすることことがゲームになったのです。

事業も数限りない要素に分解できる

自転車レースと同様に、事業も様々な要素に分解できます。それぞれの要素は大したことが無いように思えるかもしれません。しかし、それぞれの要素を1%だけ改善するだけでも、全体としては大きな改善につながるのです。

 

より長期的なビジョンと計画

先ほどご紹介した毎日1%の利息を付けた場合のグラフと、アップルの時価総額のグラフを振り返ってみましょう。

このグラフから得られる大きな示唆は、物事をより長期的な視点で見ることの大切さです。どちらのグラフも半分より前半では、大した進化をしていないように思えます。しかし、後半になるほどに大きな成長を遂げるのです。

実は前半部分は進化をしていないわけではありません。外からははっきり見えなくても、内部的には着実に進化を続けているのです。蛹が蝶になるように、また、竹が地上に出てから急速に成長するように、内部的に力を蓄えているのです。だからこそ、ある臨界点を超えると、急速に成長し始めるのです。

そう考えると、短期的な利益やメリットに目を向けるのではなく、より長期的なビジョンや計画をもとに経営することの大切さがわかります。

300年先を見て経営する

ソフトバンクグループの孫正義氏は、創業当時に資金繰りに苦労したことがありました。自分のアイデアが世の中に受け入れらず、資金調達が出来なかったのです。しかし彼は、当時から300年先を見ていました。300年先には必ず自分の考えているような世の中になる、と考え、諦めずに経営してきたのです。

もし彼が、手っ取り早くお金を稼ぎたい、と考えていたら、「この事業はダメそうだな、次のアイデアを試そう」と早々に諦めてしまったに違いありません。

もし今、5年の計画を立てているなら、50年の計画を、10年後のビジョンを描いているなら、100年後のビジョンを、というように、時間軸を長くし、毎日着実に進化をしていきましょう。

 

積小為大でビジネスを成長させる仕組みを創りましょう。

以上、積小為大について解説してきました。私たち、仕組み経営では、積小為大の考え方を参考にしながら、会社のビジョン、仕組みづくり、そして、その仕組みの改善のご支援をしています。詳しくは以下から仕組み化ガイドブックをダウンロードされてください。

 

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