人生計画の立て方

人生計画の立て方を経営者向けに解説【マンダラチャートを活用】


清水直樹
会社の経営において、経営者自身の人生計画をしっかりと立てることが非常に重要です。経営者が自分のビジョンや優先すべきことを明確にすることで、会社の方向性が自然と決まり、社員もそのビジョンに共感して動きやすくなります。経営者が自分自身の人生をどう生きるかを考えることは、会社の仕組みづくりや成長に大きく影響を与えるのです。

本記事では、経営者が人生計画を立てる際に役立つツールとして「マンダラチャート」を紹介します。マンダラチャートを使うことで、より具体的で実行可能な人生計画を作成し、それを会社経営にも反映させる方法について解説します。

※より詳しい方法は、以下の無料ウェブセミナーで解説しています。

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経営者の人生計画が会社に与える影響

経営者が自分の人生計画を立てることは、実は会社の成功に直結します。経営の専門家であるマイケル・E・ガーバー氏の著書『はじめの一歩を踏み出そう』では、経営者自身のビジョンや人生計画が会社の成長においてどれほど重要であるかが語られています。

経営計画はあるが、人生計画がない

ガーバー氏は、世界中で中小企業支援を行う中で、重要なことに気づきました。それは、人生計画が明確でない経営者は、どんなに経営ノウハウを学んでも会社がうまくいかず、経営者自身の人生も豊かにならないということです。豊かになるというのはもちろん経済的な豊かさを指しますが、精神的・感情的な豊かさも含まれます。

考えてみれば、これは当たり前のことです。経営者であれば、経営計画を立てていると思いますが、経営計画がないと会社の方向性が定まらず、社員もどうすれば評価され、仕事がうまくいくのかがわからなくなります。

ガーバー氏が気づいたのは、多くの経営者が会社に対して計画は立てても、実は自分自身の人生計画は立てていないという問題でした。これが大きな問題であると彼は指摘しています。

そのため、ガーバー氏は、まず経営者に対して人生計画を明確にするように伝え続けました。そして、それがうまくいくと、会社も自然にうまくいくようになるということです。

会社の問題は人生の問題

おそらく、皆さんも会社でいくつかの問題を抱えていると思います。例えば、

  • 社員が思った通りに働かない
  • 社員が成長しない
  • 後継者が育たない
  • 社員の離職率が高い
  • 顧客との信頼関係が築けない

などなどさまざまな問題があるでしょう。

これらの問題を会社の問題として捉えているかもしれません。

しかし、実際にはこれらの問題の根本的な原因は、経営者自身の人生にあることが多いのです。ガーバー氏は「会社は人生の反映である」と言っています。

つまり、経営者自身がどのように生きるか、人生をどう設計するかが、会社の問題解決にも深く関わっているのです。

例:「社員が思ったように働いてくれない」

例えば、社員が思った通りに働かないという問題について考えてみましょう。この問題が起こる原因は、会社の方針や文化が不明確である場合です。経営者がどのような価値観を持っているのか、どのように生きていきたいのかが明確でないと、社員はその指針に従うことができません。経営者の価値観がしっかりと示されていない場合、社員はバラバラに働くことになります。これは、経営者自身が自分の価値観を明確にし、それに基づいた採用や指導を行うことで解決できる問題です。

例:「社員が成長しない」

また、社員が成長しないという問題もよく耳にします。経営者が自ら豊かな人生を送っていなければ、社員にとってロールモデルがいなくなります。経営者自身が生きた価値観を実践してこそ、社員もその価値観を受け継ぎ、成長する意欲が湧いてきます。経営者が自ら成長し続ける姿を見せることが、社員の成長を促すのです。

結局のところ、会社の問題の多くは経営者の人生計画に起因しており、その計画を明確にすることで、会社の問題も自然に解決へと導かれるのです。

創業者の人生計画を経営に反映させた例:パタゴニア

たとえば、アウトドアブランドのパタゴニアがあります。この会社は、環境保護を目的とした持続可能な経営を実践していることで広く知られています。

その根底には創業者であるイボン・シュナードの人生観や価値観が色濃く反映されています。

パタゴニアの製品は、正直なところ安くはありません。もちろん、品質が高いこともありますが、価格が高いにもかかわらず、世界中にファンがいます。なぜなら、パタゴニアのファンは、同社が掲げる環境保護や地球環境への思いに共感し、その理念を支持しているからです。

つまり、製品そのものに対しての価値だけでなく、企業が掲げる理念や価値観に共鳴しているため、多少高価でもその製品を手に入れたくなるのです。

パタゴニア

このような企業文化や理念が、パタゴニアが成功する一因となっています。顧客がその価値観に共感し、社員もその理念を共有しているからこそ、社員の離職率は低く、長期的な安定した成長が実現されています。私は、パタゴニアの本社(カリフォルニア州)を訪れ、そこで社員の方々とインタビューを行い、その企業文化や理念がどれほど社員に浸透しているかを実感することができました。

経営者が自らの人生計画を明確にし、それを基に会社のビジョンを設定することで、社員たちはそのビジョンに共感し、自然と方向性が一致します。社員は経営者のビジョンを理解し、共に目指すべき目標を共有することで、仕事に対する意欲が増し、チーム全体の結束力が高まります。また、経営者自身がそのビジョンを実現するために日々行動していれば、社員もそれをロールモデルとして見習うことができ、会社全体が成長しやすくなります。

このように、経営者の人生計画が明確であることが、会社の成功における重要な要素であり、社員や組織全体に良い影響を与えるのです。



人生の目的、価値観、計画

社長の人生計画、目的、価値観

図で示したように、経営者の人生とビジネスは密接に関係しています。

  • 経営者の人生の目的が会社の存在意義、いわゆるミッションやパーパスに反映されます。
  • 経営者の個人的な価値観が会社の価値観、コアバリューに反映されます。
  • 経営者の人生計画は、会社のビジョンや経営計画、承継計画に反映されます。

人生の目的

まず人生の目的について詳しく見ていきましょう。人生計画は会社のミッションやパーパスで表現される「存在意義」につながります。人生の目的と会社の存在意義に一貫性がないと、いくら素晴らしいミッションやパーパスを掲げても、薄っぺらくなり、社員や顧客に伝わらず、企業の成長には繋がりません。

これは企業経営の土台であり、一番重要な部分です。簡単に言えば、自分の人生の志を形にするためにビジネスを立ち上げ、それを仕組み化して社員に共感してもらいながら事業を進めるということです。

経営者が自身の人生の目的を明確にし、それを企業理念として繋げることができれば、その理念に共感する社員や顧客が自然と集まります。こうして、経営者の人生の目的が企業活動に注ぎ込まれ、理念として根付き、事業の仕組みとなります。その結果、企業は内外から魅力的な存在として認識されるのです。

人生の目的の発見方法

もし人生の目的についてまだ考えたことがない場合は、これから考えることが重要です。おすすめのアプローチとして、自分の才能や能力、環境を見つめ直し、それらをどう活かして社会に貢献するかを定めることです。

私自身の例を挙げると、現在私は仕組み化を支援する事業を行っています。その目的は「仕組み化によって、普通の人が普通に成果を出せる会社を増やし、普通の人々が幸せに生きられる世界を作る」ことです。これが私の人生の目的になっています。「仕組み化」という概念は、たまたまガーバー氏との出会いを通じて学んだものです。ですから、私が現在進めていることは、私に与えられたものへの恩返しとも言えます。

このように、自分の人生の目的をしっかりと定め、その目的に基づいて事業を行っていくことが、最終的には企業にとって大きな利益に繋がるのです。経営者が人生の目的を明確にして、それを企業の理念に注入することで、社員もお客様も共感し、企業はより魅力的な存在になります。そして、求人に困ることもなく、業績が自然と向上するでしょう。

一方で、経営者が人生の目的や理念を明確にしないまま、ただテクニックやノウハウだけに頼った経営をしても、根本的な部分が欠けているため、十分な成果を上げることは難しいです。

人生の価値観

次に価値観について触れます。人生の目的と並んで重要なのが価値観です。

経営者の価値観は、会社の価値観や「コアバリュー」に直結します。この「コアバリュー」は、採用や評価の基準となる非常に重要なものです。

私たちは、コアバリューが明確に定まっていない状態で採用活動を行うべきではないと考えています。なぜなら、コアバリューを基準にしない採用では、経歴や資格、年齢といった表面的な情報だけで判断してしまいがちだからです。ただ、たとえ大企業での実績があるからといって、その人が中小企業で同じように成果を上げられるとは限りません。

中小企業が成功するためには、コアバリューに共感し、その価値観を共有できる人材を採用することが不可欠です。そして、それを実現するためにまず取り組むべきことは、経営者自身の価値観を明確にすることです。

価値観は、自分が人生で何を重視しているか、どのように過ごしたいかを示すものであり、時間の使い方にも大きく関わってきます。

価値観とは人生で欠けているもの

私の価値観は「自由」「夢」「誠実」「好奇心」「智慧」の五つで定めています。これは、私が財団法人を設立した時に作ったものでもあります。これらの価値観は、私自身が大切にしていることでもあり、同時に過去に自分が欠けていたものや、もっと大切にしたいと思っているものでもあります。

例えば、「自由」という価値観についてですが、私はかつて企業に勤めていた際に、自由が束縛されていると感じていました。ですので、独立した後には自由に考え、思想を展開することを重要視してきました。

同様に、たとえば健康を重要な価値観として掲げている人は過去や現在に健康を失った経験があるからこそ、健康の大切さを改めて認識し、それを重要なこととして考えているのです。

このように、価値観は自分が人生で何を大事にしているかを示し、同時に過去に欠けていたものや、これから重要視したいものでもあります。

価値観の明確化は自律的組織につながる

さて、ここから会社の経営に話を戻します。多くの経営者が悩むのが、社員が自分の思う通りに動いてくれないという問題です。

社員が経営者の思い通りに動かない理由の一つは、「何が正しいか」という考え方が共有されていないことにあります。それぞれの社員が自分の基準で「正しい」と思うことをやっていると、会社全体としての方向性がバラバラになってしまうのです。これは社員が悪いのではなく、そもそも会社としての基準が統一されていないことが問題です。

逆に、価値観がしっかり共有されている職場では、「これが正しい」という基準を全員が同じように理解しています。そのため、社員一人ひとりが自分で考え、会社の目指す方向に沿って行動することができるようになります。これは単に上司の指示を待つのではなく、社員が自分の判断で動ける、自律的な働き方を意味します。

自律的な組織を作るためには、まず経営者自身が自分の価値観を明確にし、それを会社の理念として言葉にすることが大事です。そして、その価値観を社員全員としっかり共有することが必要です。これによって、社員が「自分はこの会社で何を目指し、どう行動すれば良いのか」をはっきりと理解できるようになります。

経営者が細かく指示を出さなくても、全員が同じ方向を向いて動けるので、会社全体がまとまり、結果的に大きな成果を上げられるようになるのです。

人生の計画

経営者の人生の計画は、会社のビジョンや経営計画、さらには承継計画とも深く関連してきます。たとえば、今から10年後に経営者を引退したいと考えているのであれば、それが実現できるように、会社の経営計画や承継計画をしっかりと策定する必要があります。

本多静六氏の人生計画

日比谷公園の設計を手掛けた造園家であり、蓄財家でもある本多静六氏は、



設計図なくしては、いかに老練な建築家も立派な家づくりができないと同様に、まず「人生計画」を立てることなくして、完全な意義ある人生を築き上げることは難しい。

と言っています。

ちなみに同氏は、以下のように自身の人生計画を立てていました。

  • 満40歳までの15年間は、馬鹿と笑われようが、ケチと罵られようが、一途に奮闘努力、勤倹貯蓄、もって一身一家の独立安定の基礎を築くこと。
  • 満40歳より満60歳までの20年間は、専門(大学教授)の職務を通じてもっぱら学問のため、国家社会のために働き抜くこと。
  • 満60歳以上の10年間は、国恩、世恩に報いるため、一切の名利を超越し、勤行布施のお礼奉公につとめること。
  • 幸いにして70歳以上に生き延びることができたら、居を山紫水明の温泉郷に卜し、晴耕雨読の晩年を楽しむこと。
  • 広く万巻の書を読み、遠く万里の道を往くこと。
人生計画に望ましい態度

また、計画実現に望ましい態度として以下の項目を挙げています。

  1. 心の快活さ
  2. 専心その業に励むこと(職業の道楽化)
  3. 功は人に譲り、責は自ら負うこと
  4. 善を称し、悪を問わないこと
  5. 本業に妨げなき好機は逸しないこと
  6. 人から受けた恩は必ず返すこと

孫正義の人生計画

実業家の例として、孫正義さんの有名な人生計画を挙げてみます。

20代で名乗りを上げ、30代で軍資金を最低でも1000億円貯め、40代でひと勝負し、50代で事業を完成させ、60代で事業を後継者に引き継ぐ。

細かい数字の誤差はあれど、確かに彼は、40代の頃にインターネット事業に参入したり、ボーダーフォンを買収したりと大きな勝負に出ていますね。

孔子の人生計画

儒教を確立したと言ってもいい孔子も明確な人生計画を持っていたことが知られています。

吾、十五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順う。七十にして心の欲する所に従えども、のりをこえず。

この言葉の詳細は以下の記事でご紹介しています。

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子曰く、吾十有五にして学に志す、三十にして立つ、四十にして惑わず、五十にして天命を知る、六十にして耳順う、七十にして心の欲する所に従えども、矩を踰えず。

このように、偉人たちの人生計画には共通する要素が見られます。彼らは意識的に人生の各ステージを計画的に過ごし、それに従って行動してきたのです。

人生計画をマンダラチャートを使って立てる

人生計画の立て方について「人生の領域」という考え方を取り入れることをお勧めします。人生には多くの領域があり、それぞれの領域に対して計画を立てることが重要です。

人生の領域

領域の例としては、「仕事」「コミュニティ」「成長」「家族」「財務」「精神」「健康」「余暇」があります。

人生の領域

幸福な人生を定義するためには、この8つの領域が均衡を保っていることが大切です。どれか一つでも崩れてしまうと、真の幸福を実感することが難しくなります。例えば、仕事がうまくいっていても、健康を損ねてしまっては意味がありません。

このように、人生を総合的に計画することで、充実した人生を築くことができるのです。

計画は目標と指標に展開できる

ではどうやって計画を立てるのが良いでしょうか。計画は「目標」と「習慣」に分解することが出来ます。

たとえば、「健康」の領域について目標を定めてみましょう。「10キロ体重を減らす」といった目標です。そして、それを実現するための習慣をさらに掘り下げていくわけです。つまり、健康に関連する目標と習慣を展開していくということです。たとえば、

  • 毎日30分のウォーキングを行う。
  • 夜9時以降の間食を控える。
  • 週に2回ジムで筋トレを行う

などです。

マンダラチャートを完成させる

このようにして人生の8つの領域について、目標と習慣を定めていくと、図のような感じになります。

マンダラチャート

これは一般的に「マンダラチャート」と呼ばれる方法論です。全体で9×9、つまり81マスに分かれています。中央には人生の目的があり、その周りに人生の各領域が広がっていきます。そして、それぞれの領域を展開させることで、例えば健康習慣や財務習慣など、具体的な行動が整理されていきます。

これが人生の計画作りの基本的なフレームワークで、非常にシンプルかつ有効だと思います。

ちなみにこのマンダラチャートの考え方は私たちが仕組み作りをご支援する際にも活用しています。実際にはこのチャートをカスタマイズして、SOマップ(目標と指標のマップ)と呼んで使っています。

考えてみれば、人生も経営と同じと言えます。個人の人生の目的とその実現に向けた活動を体系的に整理し、実行するためにマンダラチャートを活用することが出来ます。



なお、マンダラチャートは、大谷選手が実践していたことが知られ、有名になりました。大谷選手が書いたマンダラチャートは以下の記事にまとめています。

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というわけで本記事では、特に経営者に向けて人生計画の立て方をご紹介していきました。

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