帝王学とは、君主や指導者が統治や指導を行う際に必要な原則や方法を研究する学問です。古代から連綿と受け継がれてきた、人の上に立つ者のための学問だと言えます。
ひとことで言えば、人の上に立つ人が、判断を誤らないための学びです。
その帝王学に「三原則」と呼ばれる法則があります。
- 原理原則を教えてくれる師を持つこと
- 直言してくれる部下を持つこと
- 良き「幕賓(ばくひん)」を持つこと
この三つを持つ者が良い統治を行える、という教えです。
ただ、ここには落とし穴があります。三原則はどれも「良い人に恵まれること」を求めているように読めます。そう読むと、手に入るかどうかは運と人徳次第、という話になってしまいます。
そうではありません。 三つとも、会社の仕組みとして設計できます。この記事ではまず三原則そのものを解説し、後半でその設計方法までご紹介します。
この記事でわかることは次の通りです。
- 帝王学の意味と、学ぶための古典
- 帝王学の三原則それぞれの意味と役割
- 三原則が「運任せ」で終わってしまう理由
- 三原則を会社の仕組みとして持つ方法
- 経営承継における三原則の役割
帝王学とは?意味をわかりやすく解説
帝王学は、君主や指導者が統治や指導を行う際に必要な原則や方法を研究する学問です。その目的は、政治的な力や権威を持つ者が有効な統治を行い、国家や社会の繁栄を促進することにあります。歴史的にさまざまな文化や時代で研究されてきましたが、古代東洋や古代ローマの統治者の行動や思想に基づくことが多く、その理論や原則は広く普遍的な価値を持っています。
帝王学の重要な要素の一つが、指導者の資質や能力に関する研究です。指導者は知識、洞察力、判断力を備えるだけでなく、倫理的な徳を持つことも求められます。指導者の倫理的な徳には、公正さ、賢明さ、寛容さ、信頼性などが含まれます。また、指導者は人間関係やコミュニケーションのスキルを持ち、リーダーシップを発揮することも重要とされます。
現代の会社経営に置き換えれば、これは社長という立場に固有の難しさを扱った学問だと言えます。決裁権を持つ立場になると、周囲から入ってくる情報が変わります。そこで判断を誤らないためにどうするか。帝王学が何千年も論じてきたのは、その一点です。
帝王学を簡単に言うと
難しく聞こえますが、扱っている問いは単純です。
- 上に立つと、なぜ判断を誤りやすくなるのか
- 誤らないために、誰の話を聞けばよいのか
- 自分の後を継ぐ人を、どう育てるのか
この三つです。王様のための学問に見えますが、社員を抱える社長がそのまま直面する問いでもあります。読み方は「ていおうがく」です。
なお、帝王学という名前の決まった教科書や、体系立った一つの学問があるわけではありません。統治者の言行や心得を記した古典を読み継ぐことを、まとめて帝王学と呼んできました。
帝王学の代表的な古典『貞観政要』
日本で「帝王学の教科書」と呼ばれることが多いのが、『貞観政要(じょうがんせいよう)』です。唐の第2代皇帝・太宗と、家臣たちとの問答を、歴史家の呉兢がまとめた書物です。日本でも源頼朝や徳川家康などが統治を学んだ書として知られています。
この本の読みどころは、皇帝が家臣の反対意見をどう受け止めたかにあります。太宗には魏徴という家臣がいて、皇帝に向かって何度も厳しい意見を述べました。太宗はそれを退けずに聞いたことで、名君と呼ばれるようになります。
これは後で解説する三原則の二つ目、「直言してくれる部下を持つこと」そのものです。帝王学の中心にあるのは、指導者本人の才覚よりも、周りの声が届く形を持てるかどうかだと言えます。
帝王学と帝王教育の違い
よく似た言葉に「帝王教育」があります。違いは次の通りです。
- 帝王学……人の上に立つ者が学ぶ中身。原則や心得そのもの
- 帝王教育……跡継ぎを、上に立てる人に育てる営み。誰が、何を、どの順番で教えるかという育て方
会社に置き換えると、帝王学は社長が身につける判断の原則です。帝王教育は後継者の育成にあたります。後継者に何を学ばせるかと同じくらい、誰のそばで、どんな場で学ばせるかが問われます。この点は記事の後半「経営承継と帝王学の三原則」で扱います。
帝王学を学ぶには?おすすめの本と学び方
帝王学を学ぶためには、さまざまな書籍や古典書が参考になります。以下の古典書が代表的なものです。
- 『貞観政要』……上で紹介した、唐の太宗と家臣の問答集です。帝王学の入り口として最初の一冊に向いています。現代語訳や抄訳から読むと入りやすくなります。
- 『孫子』(Sun Tzu)……古代中国の軍事戦略家である孫子の著書であり、戦略やリーダーシップに関する教えが記されています。
- 『君主論』(Niccolò Machiavelli)……16世紀のイタリアの政治思想家マキャヴェリによる著作で、政治指導者がどのように統治すべきかについて探求しています。
- 『韓非子』(Han Feizi)……古代中国の政治家である韓非の著書であり、法家の思想を展開しています。
いずれも数千年から数百年を生き延びてきた本です。時代や国が変わっても人の上に立つ者の悩みは変わらない、ということでもあります。
学び方の順番は、次のように考えると進めやすくなります。
- 古典を一冊読む。まずは『貞観政要』の現代語訳でかまいません。気になった問答に印をつけておきます
- 読んだことを、先に経験した人と話す。先輩経営者や先代社長に「この場面ならどうしたか」を聞きます。本だけでは自社に当てはまるかが分かりません
- 自社の会議で試す。部下の反対意見を先に聞く順番にするなど、一つだけ変えてみます
三つ目が抜けると、帝王学は教養で終わります。読んだ原則を会社の中で働かせる方法は、記事の後半で具体的に紹介します。
「帝王学の三原則」とは?

帝王学の三原則とは、次の三つを指します。
- 原理原則を教えてくれる師を持つこと
- 直言してくれる部下を持つこと
- 良き「幕賓」を持つこと
三つに共通しているのは、いずれも「自分以外の誰か」だという点です。指導者自身の能力や努力ではありません。人の上に立つ者は、自分の判断だけでは必ず誤る。だから外から情報と意見が入る経路を持て、というのが三原則の本質です。
一つずつ見ていきます。
①原理原則を教えてくれる師を持つこと
原理原則は、あらゆる分野や状況において適用できる普遍的な法則や原則を指します。これを理解し習得することは、リーダーシップや意思決定において不可欠な能力です。
私たちは日常の中で多くの経験を積み重ねます。しかし、それだけでは限界があります。一つ一つのケースや状況を個別に学ぶことは重要ですが、それだけでは全体像を捉えられません。原理原則を学ぶことで、広範な知識や経験から得られる洞察力を養うことができます。
原理原則を教えてくれる師は、その道をすでに歩んできた経験豊富な人物です。彼らは自身の経験から得た知識や教訓を共有し、後進の成長をサポートしてくれます。一つ一つの事例やケースだけでなく、その背後にある原理原則を教えてくれる存在です。
さまざまな古典書によると、公子(君主の跡継ぎ)や若くして即位した王様には、経験を重ねた国の幹部が教育係として付くことが多かったようです。
経営者に原理原則を教えてくれる師とは?
経営者の場合、ここでいう原理原則とは経営の原理原則を教えてくれる人にほかなりません。
- 熟練の経営者
- 先代社長
などがその師に当てはまります。一方で、なかなか近くに頼れる師がいないという人も多いでしょう。その場合には、原理原則が書いてある書籍を頼るのも良いでしょう。風雪に耐えたビジネスの古典書や、古代の帝王を描いた古典などです。
ちなみに私自身の話をしますと、マイケルE.ガーバー氏が原理原則を教えてくれる師に当たります。マイケルE.ガーバー氏は世界700万部のベストセラー「はじめの一歩を踏み出そう」の著者であり、「仕組み経営」のベースになっている経営理論を教えてくれた人物です。
②直言してくれる部下を持つこと
自分の立場が上がれば上がるほど、いわゆるゴマすりをしてくる人たちが増えます。最終的には”裸の王様”状態になってしまい、世の中の動きや市場の状態、自社の状態を正しく把握できなくなります。そのため判断を間違い、経営不振に陥るケースは少なくありません。
ここで押さえておきたいことがあります。裸の王様になるのは、その人の性格が悪いからではありません。決裁権を持つ立場そのものが、周囲の発言を変えてしまうからです。人事権と評価権を握っている相手に、部下が耳の痛いことを言うのは相応のリスクを伴います。誰が社長になっても同じことが起こります。
直言してくれる部下の役割
直言してくれる部下は、組織の成長と成功において貴重な存在です。リーダーが的確な判断を下し、組織をより良い方向に導くことを支援してくれます。以下では、その役割と重要性について見ていきます。
自分の欠点や盲点を指摘してくれる
まず、直言してくれる部下はリーダーの盲点や欠点を指摘する役割を果たします。リーダーは組織のトップとして多くの責任を負っていますが、常にすべてを把握し完璧な判断を下すことは困難です。直言してくれる部下は、リーダーが気づいていない問題や改善すべき点を率直に指摘してくれます。彼らの意見やフィードバックを通じて、リーダーは自己成長し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。
多様な情報や意見を提供してくれる
また、直言してくれる部下は組織の意思決定においても重要な役割を果たします。リーダーが決定を下す際には、情報や視点の偏りが生じることがあります。直言してくれる部下は自己の意見や情報を提供し、多角的な視点をもたらしてくれます。彼らの率直な意見を受け取ることで、リーダーはより正確でバランスの取れた判断を下せるようになります。
透明性のある組織文化を作れる
さらに、直言してくれる部下は組織内のコミュニケーションと信頼の構築にも貢献します。部下が率直な意見を述べる文化がある場合、他のメンバーも自由に意見を出し合うことができます。これにより、組織内のアイデアの共有や問題の解決が促進されます。またリーダーが直言してくれる部下に対して開かれた態度を示すことで、組織内の信頼関係も強化されます。部下はリーダーが自分たちの意見を重視し、真剣に受け止めてくれると感じることができます。
直言してくれる部下を得るには?
では、直言してくれる部下をどう得ればいいでしょうか。会議で発言が出ないという悩みは、多くの会社で共通しています。
まずリーダーが心を開く
直言してくれる部下を育てるためには、リーダーのオープンマインドが重要です。リーダーは自分の意見に固執せず、異なる意見や考え方を柔軟に受け入れることが必要です。また、部下に積極的に意見を求め、自由に発言できる環境を整えることも大切です。
信頼関係ありき
さらに、信頼関係の構築が欠かせません。部下が素直に意見を述べるためには、リーダーがその意見を尊重し適切に対応することが必要です。リーダーは部下の意見を真剣に聴き、建設的なフィードバックを提供することで成長を促すことができます。
モノが言いやすい文化を作る
また、オープンなコミュニケーションの文化を築くことも重要です。組織内で意見や情報を自由に共有することで、部下は積極的に自分の考えを表明し、リーダーとの対話を通じて相互理解を深められます。リーダーは部下とのコミュニケーションを積極的に行い、部下が直言しやすい環境を整えることで、彼らの意見を引き出しやすくなります。
③良き「幕賓」を持つこと
幕賓とは、帝王の側近や顧問であり、高い知識や経験を持つ人物を指します。彼らは帝王に対して助言や指導を行い、その統治や意思決定をサポートする役割を果たします。かつての有力者は「食客」と呼ばれる学者や見識者をお金で雇い、自分の周りに置いておくことがありました。そして、さまざまな意見を募ったり、争乱のときには戦略立案のアドバイスを受けたりと、幕賓を活用していました。
幕賓の役割と効果
幕賓を周りに置くことで、以下のような効果があります。
知識の提供
まず第一に、幕賓は帝王に対して豊富な知識と専門性をもたらします。統治者はさまざまな分野において意思決定を行う必要がありますが、すべての分野において専門的な知識を持つことは困難です。幕賓は経済、外交、法律、軍事などの分野において豊富な経験と知識を持っており、帝王に対して的確な助言を提供できます。彼らは専門的な視点から問題を分析し、最良の解決策を示すことができます。
客観的な意見の提供
第二に、幕賓は帝王に対して客観的な意見を提供します。帝王は一人で多くの決定をしなければならず、その中には重大な政治的判断も含まれます。しかし孤立して意思決定を行うと、主観的な視点や個人的な感情が判断に影響を及ぼす可能性があります。幕賓は帝王に対して客観的な視点を持ち込み、利益やリスクを分析し、合理的な判断を行えるようにします。彼らは感情にとらわれず、帝王に真実を伝えることができる重要な存在です。
帝王を成長させる
さらに、幕賓は帝王の学習と成長を促進します。統治者は常に学び続ける必要があり、新たな知識や洞察を得ることが重要です。幕賓は帝王に対して最新の情報やトレンドを提供し、新たな視点やアイデアを示すことができます。彼らは帝王の知識や視野を広げ、リーダーシップの能力を向上させます。
会社における幕賓とは?
現代の会社においては、社外取締役や外部コンサルタントなどが幕賓として挙げられるでしょう。日本の商家で言えば番頭が近い役割を担ってきました。ただ、そういった人物を囲うには当然ながらお金がかかります。同じ経営者仲間でコミュニティを作り、幕賓の役割を担い合うのも手でしょう。
三原則を「運任せ」にしていないか
ここまで三原則を見てきました。ここで一度、立ち止まって考えてみてください。
良い師に出会えるかどうか。部下が直言してくれるかどうか。良き幕賓を得られるかどうか。これらは、あなたの人徳や運の問題でしょうか。
多くの解説はそう読める形で終わります。心を開きましょう、信頼関係を築きましょう、良い人と付き合いましょう、と。しかし、それでは打ち手になりません。心の開き方には手順がないからです。うまくいかなかったときに「自分の器が足りない」という結論しか残りません。
私は長年、中小企業の社長の相談を受けてきました。そこで繰り返し聞いてきたのが、次のような言葉です。
「いい人材さえいれば」
「彼らがもっと成長してくれさえすれば」
「自分の右腕さえいれば」
拙著『仕組み化の経営術』では、これについてはっきり書きました。
これはまさに妄想です。良い人材、悪い人材というのは、社長の相対的な価値観でしかなく、八百万の特性があるだけです。会社に良い仕組みがあることで、人はうまく働くことが出来ます。逆に言えば、たとえ経営リーダーが考える良い人がやってきたとしても、仕組みが悪ければ活躍することが出来ません。
三原則も同じです。良い人が現れるのを待つのではありません。良い人が機能する場所を先に作るのです。
古代の帝王は、そこを分かっていました。公子に教育係を付けたのは偶然ではなく制度です。食客を抱えたのも人望ではなく仕組みです。三原則はもともと、個人の徳ではなく制度の話でした。
三原則を仕組みに変える──経営チームという答え
では、会社において何を作ればいいのか。答えは経営チームです。
経営チームとは、経営の仕事を社長個人からチームへ移していくための仕組みです。あなたの会社では、戦略的な仕事を自分だけで行っていないでしょうか。それによって社長に依存する経営から抜け出せなくなっているかもしれません。
驚くことに、経営チームの構成は帝王学の三原則とほぼ一致します。
誰を入れるか
経営チームは、社長と、鍵となる管理職数人、場合によって外部の1人か2人のアドバイザーで成り立ちます。理想的なのは社長に加えて2〜4人、多くても6〜7人です。
具体的には、社長、CFO(最高財務責任者)、マーケティング・セールス部門のマネージャー、製造部門のマネージャー(製造部門が重要な業種の場合)、そして時に税理士や弁護士、経営コンサルタントなどの外部メンバーが含まれます。
三原則と重ねてみてください。
- ①師と③幕賓……外部の1〜2人のアドバイザーが、この役割を担います。経営者仲間や先輩経営者を入れる形でも構いません
- ②直言してくれる部下……鍵となる管理職2〜4人が、この役割を担います
つまり経営チームを作ることは、三原則を組織図の上に置くことにほかなりません。誰かが現れるのを待つ必要はありません。席を先に作り、そこに座ってもらうのです。
なお、これはあくまで一般論です。自社の経営チームをうまく機能させるために誰を入れるかを考えてみてください。メンバー選定の考え方は経営チームの作り方で詳しく解説しています。
何を話し合うかを決める
メンバーを決めただけでは機能しません。何をこのチームで扱うのかを決めます。
- 会社の理念
- 戦略
- 高度な意思決定
- 全社的、長期的な計画
- 主な財務的決断
- KSIの計測
- 会社のポリシーやルール
- 価格戦略
- 大きなプロジェクト
- 影響力が大きい人材の採用や解雇
ここに載っている議題は、社長が一人で抱え込みがちなものばかりです。それを「チームで扱うもの」と先に決めておきます。決めておけば、部下が意見を言うのは越権ではなく職務になります。直言が勇気の問題から、役割の問題に変わります。
どう運営するかを決める
最後に運営方法を決めます。
- いつやるのか(頻度、時間帯など)
- どこでやるのか(オンラインかオフラインかなど)
- 誰がやるのか(司会役、議事録役など)
- どのようにやるのか(ルール)
特に司会役を社長以外にすることをお勧めします。社長が仕切る会議では、社長の発言が最初に出ます。そうなると場の空気が決まってしまいます。司会を他のメンバーに任せるだけで、部下が先に話す構造が生まれます。会議そのものの設計については会議体の設計も参考にしてください。
心を開くという話ではありません。議事の順番を変えるという、手順の話です。
経営承継と帝王学の三原則
帝王学がもともと扱っていたのは、跡継ぎの育成でした。この点でも、三原則を仕組みにしておく意味は大きくなります。
人依存の会社では、承継後に会社がうまくいくかどうかが「後継者の資質次第」とされています。一方の仕組み依存の会社では、経営の仕組みの完成度と、承継の仕組みがカギを握ると認識されています。事業承継が失敗する構造を見ても、原因は個人の能力ではなく設計の側にあります。
承継の仕組みの中で重要な位置を占めるのが、やはり経営チームです。経営チームが機能し出すと、経営承継もスムーズに進みやすくなります。流れは次のようになります。
- まず社長が経営チームを作る。社長が主軸となって運営していく
- 承継の準備段階において、経営チームの中から新社長候補を選出する(後継者の選び方)。その人を主軸に経営チームを運営するようにし、社長は一員として活動する
- 場合によって、新社長候補の肩書をCOOにするなど、対外的にも次期社長であることを認識させる
- 新社長を正式に任命する。前社長は経営チームにとどまるが、メンター役に徹する
- 最終的に前社長は経営チームから抜け、承継が完了する
このように段階的にすることで、新社長候補の能力を確かめながら、かつ信頼関係を維持しながら経営承継ができます。
古代において公子に教育係が付いたのと、構造はまったく同じです。前社長がメンター役に回る段階は、そのまま「師を持つこと」の実装になっています。
帝王学に関するよくある質問
帝王学を簡単に言うと何ですか?
人の上に立つ人が、判断を誤らないための学びです。上に立つと周りの声が届きにくくなるため、誰から学び、誰の意見を聞くかを扱います。
帝王学の読み方は?
「ていおうがく」と読みます。三原則に出てくる「幕賓」は「ばくひん」と読みます。
帝王学と帝王教育はどう違いますか?
帝王学は、上に立つ者が学ぶ原則や心得の中身です。帝王教育は、跡継ぎを上に立てる人に育てる営みを指します。会社で言えば、後継者の育成にあたります。
幕賓とは何ですか?
帝王のそばで助言する、知識と経験を持った側近や顧問のことです。現代の会社では、社外取締役や外部の専門家、経営者仲間がこれにあたります。
帝王学は役に立たないと言われるのはなぜですか?
君主のための学問なので、現代の会社とは関係がないと受け取られやすいからです。また、「人徳を磨け」という心構えの話として読むと、明日からの打ち手になりません。ただ、三原則が扱っているのは「上に立つと判断を誤りやすくなる」という、社長なら誰もが直面する構造の問題です。会議の進め方や経営チームという形に落とせば、実務で使えます。
帝王学はどの本から読めばいいですか?
最初の一冊なら『貞観政要』の現代語訳か抄訳がおすすめです。皇帝と家臣の問答形式なので、場面を思い浮かべながら読めます。
社長でなくても帝王学を学ぶ意味はありますか?
あります。部下を持つ管理職や、将来会社を継ぐ後継者にも同じ問題が起こるからです。立場が上がるほど耳の痛い話が届きにくくなる点は、社長でも課長でも変わりません。
まとめ:「帝王学の三原則」を経営に活かす
以上、帝王学の三原則について見てきました。振り返ります。
帝王学とは、指導者が統治や指導を行う際に必要な原則や方法を研究する学問です。その三原則は次の三つでした。
- 原理原則を教えてくれる師を持つこと
- 直言してくれる部下を持つこと
- 良き「幕賓」を持つこと
三つとも「良い人に恵まれること」に見えます。しかし待っていても現れません。人徳を磨いて引き寄せるものでもありません。席を先に作れば、埋まります。
自社で始めるなら、順番は次の通りです。
- 経営チームのメンバーを決める(社長+鍵となる管理職2〜4人+外部アドバイザー1〜2人)
- そのチームで扱う議題の範囲を決める
- 開催の頻度と運営ルールを決める。司会は社長以外にする
- 運営方法を文書にまとめる
最後の一つが成果物です。経営チームの運営方法を記載したマニュアルができれば、それは会社に残ります。社長が交代しても、三原則は組織の中で働き続けます。
もちろん、リーダーがオープンな心で人の話を聞くこと、そして最終的に自分で意思決定して行動に移す胆力を持つことは大切です。ただ、それは仕組みができたあとに問われるものです。先に問われるべきは、席を作ったかどうかです。


