LTV(ライフタイムバリュー)を完全解説。

LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)の意味や計算方法、向上のための方法を解説。



清水直樹
LTV : ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)とは、顧客1人あるいは1社の顧客ライフサイクル全期間で、その顧客が企業にもたらした価値の総計のことを指します。Customer Lifetime Valueを略してCLVとも呼ばれることもあります。今日はLTVの詳しい意味から計算方法、向上施策まで見てみましょう。

 

LTVはもともとマーケティング業界で使われていた指標でしたが、最近ではビジネス全般で重視されるようになりました。その背景には、市場の飽和によって新規顧客の獲得が難しくなってきた現状が挙げられます。
成長が見込まれる市場であれば、魅力的な商品と効果的なプロモーションで新規顧客の獲得を実現することができます。しかし、新規需要を開拓することが難しい成熟市場、あるいは競争相手の多い市場においては、顧客の定着化を図ることが必須となります。LTVはいかに顧客が定着しているかを把握できる指標であり、重要度が高まりつつあります。
動画でも解説しています。

LTV(顧客生涯価値)とは?

LTVとは、「Life Time Value(ライフタイムバリュー)」の頭文字を使って表現したもので、一般的には「顧客生涯価値」と訳されます。「Customer Lifetime Value(カスタマーライフタイムバリュー)」を略したCLVと表現されることもありますが、意味合いとしては同じものです。

生涯とはいつからいつまで?

「生涯」という言葉が入っていますが、もちろんこれは「顧客が生まれてから亡くなるまでの間」という意味ではなく、その企業との取引が行われている期間のことを指すものです。

価値とは?

「価値」という言葉も曖昧でイメージしにくいものですが、端的に言うと、「その企業にどれだけの利益をもたらしてくれるのかを算出した数値」ということです。

LTVが増加傾向にあることは顧客満足度が高い証拠

よく、「価値=お客様の満足度」と勘違いして、お客様アンケートを取っている会社もあるのですが、それはあくまでも感情に由来するもので、必ずしも経営にプラスになるわけではありませんから、注意が必要です。この場合の「価値」とは具体的な数字(金額)として導き出されるものとなります。
つまり、LTVというのは「ある顧客が企業と取引を開始してから、取引が終了するまでの期間に、どれだけの利益をもたらしてくれるのかを表す指標」と言うことができます。ですから、LTVが高い、あるいは増加傾向にあるということは、お客様が自社のサービスや商品に満足をしてくれているという、具体的な証拠になるわけです。

LTVの計算方法

LTV計算式
LTVにはさまざまな計算方法が存在しますが、最もシンプルで分かりやすいのが
LTV = 平均取引単価 × 粗利率 × 平均購入頻度 × 平均取引期間
というものです。

LTVの計算例

例えば、皆さんが粗利率70%の商品を10万円で売っているとします。粗利率70%ということは、その商品が1回売れると7万円が粗利として残るということになります。そして顧客全体の購入頻度が年平均3回、取引期間が平均2年であるとすると、この会社のビジネスのLTVは
100,000(円)×0.7×3(回)×2(年)=420,000(円)
ということになります。
ほかにも、この数値から新規顧客獲得コストや既存顧客維持コストを引くやり方もあります。

LTVを向上させるメリット

では、計算式で導き出されたLTVが高いとどうなるのか?

経営が安定する

まず安定した経営ができるようになります。1人のお客様がより多くの利益を自社にもたらしてくれているということは、それだけ経営基盤が安定しやすくなるのです。

新規顧客の獲得に走り回らなくていい

そして、新規顧客の獲得に集中する必要がなくなります。極端な言い方になりますが、売上を上げる方法は2つしかありません。1つがお客様の数を増やしていくこと、そしてもう1つが、1人のお客様がもたらす利益を増やす、これがまさにLTVを高めるということです。この2つ、どちらが簡単かというと、LTVを高める方が簡単なのです。

売上を上げるには顧客数を増やすより、LTVを向上させた方が簡単

なぜなら、新規顧客を獲得するためにかかるコストは、既存顧客を維持するために必要なコストの何倍もかかるからです。多くの会社は新規顧客の獲得に時間や労力、お金を費やしていますが、本当に賢い経営をしている会社というのは、このLTVを高めることに時間や労力を使っているというわけです。LTVが高い会社の場合、新規のお客様を獲得しなくても、既存のお客様から十分な利益が上がっていくという経営体質になっていきますので、結果的に新規顧客の獲得に必死にならなくてもいいわけです。

新規顧客獲得のための投資が出来る

さらに、これはやや逆説的なのですが、新規顧客を獲得するための投資ができるようになります。LTVが低いと、新規顧客を獲得するための利益が出ません。一方、LTVが高い会社では、1人のお客様を獲得すれば十分な利益が生まれますので、その利益を新規顧客を獲得するために使えるわけです。この差が将来的には大きな差となって、大きく成長できる会社と小さいままでとどまる会社の違いになっていくのです。
このように、LTVを高める努力をすることで、一人ひとりのお客様から得られる利益も増え、さらにその利益を使って新しいお客様を開拓できるわけですから、非常に重要な経営指標であるということが言えるのです。

LTV向上のための施策

では、LTVを高めていくためにはどうすればいいかというと、先ほどの計算式の平均取引単価、粗利率、平均購入頻度、平均取引期間、それぞれの要素を高めていけばいいわけです。
粗利率に関して言うと、仕入れ先の見直しや価格交渉、経費削減などが挙げられます。情報サービスの場合は、サービス運用のためのコストも原価に含まれるため、業務効率化も検討する必要があります。ただし、現在のように原料コストや製造コストが上昇している中でこれらを行うことは難しい会社がほとんどではないかと思われます。ですから、以下の3つの方法でLTV向上に取り組むことになります。

LTV向上施策①取引単価を向上させる

そこで、まず平均取引単価を上げる施策を考えていきます。
簡単に言うと、価値の高い商品、つまり、より価格が高い商品をお客様に購入していただくということになります。

顧客から見た時に価値が高い商品に変化させる

ただし、単純に商品単価をアップするだけでは、顧客離れのリスクにつながる恐れもあります。特に商品やサービスのアピールポイントが、価格面にしかない場合は注意が必要です。価格に頼らない商品づくりによって唯一無二の価値をお客様に提供し、常にそれを伝えて理解していただけるような取り組みをしていかなくてはいけません。

アップセル、クロスセル

ほかにも、1つの商品を買ってくれたお客様に対して、別の商品も一緒に買ってもらうというやり方もあります。より高額の商品やサービスへの移行を促すことを「アップセル」と言い、関連する商品やサービスの購入、セット商品の購入を促すことを「クロスセル」と言います。このような施策を打つことで1回当たりの取引単価を高めていく方法も考えられます。

LTV向上施策②購買頻度を向上させる

次に、お客様とより頻繁に付き合う仕組みを作っていくことによって、平均購入頻度を高めることができます。

コミュニケーション頻度を上げる

例えば、新規のお客様に対して、メールマガジンやダイレクトメールによって継続的にフォローし、接触頻度を増やすことによって購入頻度を増やすということが考えられます。なぜお客様が継続的に来店されない、あるいは購入していただけないのかというと、それは単純に皆さんの会社の存在を忘れているからという部分もあるからです。
いわゆる休眠顧客に対して、新しいキャンペーンや商品をアナウンスするだけでも、皆さんのことを思い出してくれて、リピートしてくれるキッカケになる可能性があるわけです。

企業と顧客とのコミュニケーションには3種類存在します。

1.事務手続き型コミュニケーション

取引を行うために不可欠なもので、請求書、明細書、住所変更などの各種手続きなどが挙げられます。この種のコミュニケーションは、顧客もその重要性を認識しています。

2.サービス型コミュニケーション

たとえば、会報、案内、より良い製品を開発するための情報を集めるアンケートなどがあげられる。サービス型のコミュニケーションも、ある程度の重要性を認識されています。

3.売り込み型コミュニケーション

代表例はダイレクトメールです。どれほど優れたコミュニケーションであっても、売込みを目的としたコミュニケーションはこの分野に含まれます。顧客はこの種の情報には懐疑的な気持ちで接します。ただし、製品カタログについては例外的な結果が得られており、目的が売り込みであるにもかかわらず、顧客からはサービス型のコミュニケーションとして認識されています。

コミュニケーションが事務手続き型、サービス型であると認識されれば、多少の売り込みのメッセージが含まれているとしても、顧客の利益のためだと認識され、より有効なコミュニケーションとなります。

購入頻度を提案する

もう1つは、そもそもどれくらいの購入頻度、来店頻度にすればいいのかを皆さんの側から提案するという方法です。これは例えば、美容室や接骨院、整骨院、あるいは歯科医などに代表される専門サービス業の場合に有効なやり方です。
こういったビジネスの場合、基本的にはそのサービスに対する知識はお客様よりも皆さんの方が持っているわけです。そうすると、どれくらいの来店頻度であれば美しい状態が保たれるか(美容院など)、身体のコンディションが保たれるか(接骨院など)というのは、サービスを提供する側が把握しているはずなのです。
購入頻度を顧客任せにしない
ところが、ほとんどの場合、来店頻度をお客様任せにしてしまっているわけです。そうではなく、専門知識を持っている側からお客様に来店頻度をアドバイスしてあげるべきなのです。
購入頻度や来店頻度をこちら側から提案することに対して、抵抗感を持たれる経営者の方も多くいらっしゃいます。そのために来店頻度をお客様任せにしてるパターンが多くなるのですが、実は、来店頻度をこちら側から提案することには、お客様にとってもメリットがあるわけです。
顧客にも自社にも最適な購入頻度は?
例えば治療院などでは、本来は2週間に1回来院しないと改善しないような痛みなのにもかかわらず、こちら側が来院頻度を提案しないためにそれが2ヶ月に1回ということになると、本当は治るはずのものが治らないといったことが起こるわけです。これはお客様にとっても、皆さんにとっても不幸な結果になります。ですから、購入頻度や来店頻度を提案するということは、決して無理な売り込みではないわけです。
このように、顧客とより頻繁に付き合う仕組みとして、コミュニケーションの頻度を上げるということ、購入頻度や来店頻度をこちらから提案するという方法が考えられますで、ぜひ取り入れてみてください。

LTV向上施策②購買期間を伸ばす

3つ目が、顧客とより長く付き合う仕組みを作っていくということです。これはつまり平均取引期間が高まるということになりますので、LTVの向上につながっていきます。

新商品の継続的な開発

これもいくつかパターンがあるのですが、先ほどの継続的にコミュニケーションを行うということのほかに、常に新商品を開発していくということも、これにつながっていきます。
新商品をリリースすることができれば、お客様の新たなニーズに応えられるということになりますので、1年後、あるいは2年後にも継続して購入していただける可能性が高まるわけなのです。
また、より魅力的で価値の高い新商品を出すことは、既存商品からの買い換えを促すことにもつながります(これを「計画的陳腐化」と呼ぶこともあります)。ただし現在は、ご存知の通り世界的にSDGsの意識が高まりを見せていますので、特に有形商材の場合は配慮が必要な場合もあります。

顧客とともに成長していく

顧客とより長く付き合うには、”顧客とともに成長していく”という考えが大切です。

​顧客が商品やサービスを買ってくれたということは、それによって顧客は何かしらの課題を解決し、次のステージに向かったことを意味します。​

たとえば、私が腰痛で鍼治療に行ったとしましょう。私は腰痛という課題を解決したかったわけです。もしそれが上手く解決できれば、腰痛を気にすることなく、次のステージに行くことが出来ます。​ここで治療院側が何も成長の努力をしなければ、課題が解決された私は、二度と通院することが無くなります。取引期間はせいぜい数か月で終わるでしょう。​

しかし、腰痛という課題が無くなったからと言って、私の人生における課題が全てなくなったわけではありません。

​他にも身体に関する課題はたくさん発生するわけです。それらを解決するための方法を治療院側が次々に提供できるようになれば、また通院したい、と思うはずです。そうなれば、まさに生涯にわたる取引をしていくことも可能かも知れません。

​このように、顧客のステージを引き上げるために、自社が努力をし、顧客とともに成長していくことが大切だと思います。

 

​まとめ:LTV最大化の秘訣

米国の大手広告代理店の創業者が、”大手のクライアントを獲得する秘訣は?”と聞かれたときの回答が秀逸でした。

​彼らも最初から大手だったわけではない。取引を始めた時にはまだ小さかった彼らを、広告の力で大きくしたのだ。

​この広告代理店は、まさに顧客とともに成長し、自分も顧客も大手になっていったのです。

この言葉はLTVを最大化するにあたって覚えておきたい名言です。お客様に価値ある商品を提供することによって、お客様は成長し、それと同時に自社も努力を重ね、さらにお客様の役に立てる商品を開発する。そのサイクルを繰り返すことで、お客様も自社もともに成長していくことが出来るのです。
何の努力もせずに1つの商品やサービスしか扱わないということになると、それを買ってしまったお客様はニーズが満たされて、そこで付き合いが終わってしまいます。ですから、お客様が感じる次のニーズに応えるために、新しい商品を開発してそれを提案していくということを継続していく必要があるわけです。
そういう意味では、LTVを向上させていくということは、事業活動の究極的な目標とも言えるかもしれません。
本日は、LTVを最大化する3つの視点をご紹介しました。これに単独で取り組むのではなく、皆さんのビジネスが置かれている状況、取り巻く環境に合わせて組み合わせていくことで、さまざまなアイデアが見えてくるはずです。ぜひ参考にしてみてください。

 



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