動画でも解説しています。
顧客努力指標(CES:カスタマーエフォートスコア)とは、お客様が自分の目的を達成するのに、どれだけ手間がかからなかったかを測る指標です。満足度が高いかではなく、簡単だったかを聞きます。
この記事では、この指標が生まれた背景にある調査結果と、測り方、NPSや顧客満足度との違い、そして中小企業が実際に何を減らせばいいのかを解説します。
おもてなしは幻想。顧客努力指標を注視しよう
今日の話は『おもてなし幻想』という本がベースになっています。もしよろしければ手に取っていただくと良いと思います。
神田昌典さんが監修された本ですけれども、元々は「The Effortless Experience」という洋書がベースになっています。この邦題が『おもてなし幻想』です。
この本の内容を一言で言うと、
お客様を感動させようとして過度なサービスをすることは結果としてお客様の維持につながらない。それよりも、顧客努力指標の向上を目指そう。
ということです。
維持につながらないというのはどういうことかというと、1回来てくれてもリピートしなかったり、誰か紹介してくれることはないので業績につながらないということです。
感動するサービスをしようとか、お客様に対して精一杯のおもてなしをしようとする提供者側の思いは実は消費者は求めていなくて、それをやっても会社の業績にはつながりませんという話です。
これが大きな発見となり、この本は有名になりました。
顧客努力指標(カスタマーエフォートスコア)の発見につながったリサーチ
この本の著者が会社と消費者に対していろんなリサーチをしたわけです。その結果発見されたことがありますので、最初にそれを四つほどご紹介したいと思います。
予想外の発見①お客様を喜ばせてもペイしない
まず一つ目です。お客様を喜ばせてもペイしない。
これはさっき申し上げた通りですけど、著者が97,000人のお客様の回答を分析した結果、期待以上のサービスを受けたお客様の売上と期待通りのサービスを受けたお客様の売上にほとんど差がない。
会社の思いとしては、お客様が期待している以上のサービスを提供して、それによってお客様が喜んでくれればまた来てくれるだろうと思って多くのサービスを提供するわけです。
でも実は期待以上のサービスを受けた場合と、お客様が思っているくらいのサービスを受けた場合では、リピートをする確率は変わりませんよという話です。これは結構衝撃的なデータかなと思います。
お客様や組織は単に問題を解決することを望んでいるのであり、喜びを求めているわけではありませんということです。
期待以上のサービスを提供しようと思うと、当然ながら通常よりも多くの労働であるとか、仕組みが必要になるんですけども、それをやっても会社としてペイしませんよ、ということです。
これが一つ目の発見です。
予想外の発見②満足したからといって、リピートしない
二つ目、満足したからといって、リピートしない。顧客満足度が高いからといって買い続けるとは限らないということです。
サービスに満足したと回答したお客様のうち、20%はその会社を辞めて他の会社から買うつもりであると回答したということです。
皆さんはお客様の満足度を高めようと思って、様々な施策をやっていると思うんですけれど、それを頑張ったところでお客様が買い続けるということにはなりませんよという話をしているわけです。これも結構衝撃的なデータかなと思います。
例えば、地元のステーキハウスのお客様がステーキディナーを気に入ってるが、新しいステーキレストランがオープンしたら必ず試してみるようなもの、ということです。
これはご自身の行動を振り返ってみると分かると思います。例えば地元に行きつけのレストランがあって、週に1回くらい行っているとします。ところが近くに新しい飲食店ができたとします。とりあえず試してみようと、いつものお気に入りを飛ばして新しいほうに行ってしまう。そういうことです。
いくら満足していてもお客様というのは浮気をしがちなので、満足度が高いからといってリピートはしないということです。
予想外の発見③顧客はネガティブな体験について話す頻度が高い
三つ目の発見です。顧客はネガティブな体験について話す頻度が高いということです。これは納得できる話かなと思います。
企業について肯定的な意見を持っている人45%が他の3人以下にしか伝えていないことがわかりました。
しかしネガティブな体験をした人の48%は10人以上に伝えているということです。
これは感覚でわかりますよね、良い商品があったなとか良いお店があったなという時には、せいぜい3人くらいにしか伝えないということです。
ただ「あのお店に行ってこんな嫌な体験をした」とか「この商品を買ってこんな嫌な思いした」ということは0人以上に伝えるということです。今のネット社会を見てもそんな感じになっているのはわかるかなと思います。
予想外の発見④鍵は顧客の努力を減らすこと
四つ目、鍵は顧客の努力を減らすこと
ここが今回の話の大きなテーマであり、さっきの本の大きなテーマでもあります。
顧客が離脱するのはお客様が問題を解決するために努力を要するからといえるということです。
お客様はとにかくその商品とかそのお店に行って得られる結果をすぐ得たいだけであるということです。それ以外に過剰なサービスとか過剰なおもてなしはいりませんよというのが結論です。
書籍の著者曰く、
- 焼きたてのクッキーで「ワオ!」という喜びはお客様の心を温めるかもしれませんが、それだけではお客様があなたのホテルにもう一泊したいと思うかどうかはわかりません。
- お客様のロイヤリティはお客様がいかに簡単に取引できるかにかかっています。
とのことです。
言い方を変えると、いかにお客様が皆さんの会社から結果を簡単に得ることができるか、努力せずに結果を得ることができるかどうかでそのお客様がまた来てくれるかどうかが決まるということです。
顧客努力指標(カスタマーエフォートスコア)とは?
そこで登場するのがこの「顧客努力指標(CES:カスタマーエフォートスコア)」になります。
この指標を高めていくと、お客様というのは努力せずに皆さんの会社と取引ができるようになるということです。そうするとロイヤリティにつながる、リピートにつながるということです。
具体的な行動としては、まず顧客努力指標を測りましょう。そしてこれを改善させるための努力をしていきましょう。それが今回の話の結論です。
この顧客努力指標、英語でいうと「Customer Effort Score」(カスタマーエフォートスコア)ですけれども、これを略してCESと呼んでいます。
これは、お客様が会社とやり取りするときの簡単さを測る調査です。カスタマーサポートでの問題解決、購入、トライアルへの登録などが対象になります。
お客様がいかに努力せずに問題を解決できたか、結果を得ることができたかというのを測る指標であるということです。
例えば、お客様に対して「問題を解決するのは簡単でしたか?」と聞く、それによってこの指標を導き出すということです。
顧客努力指標の測定方法
より具体的に測定方法を見ていきます。これはいろんなやり方がありますが、一つはリッカート尺度で測ることです。これは“強く同意する”から“全く同意しない”の5択で選んでもらいます。
または1~10のスケールで選んでもらう。または1~5のスケールでもらう方法もあります。
顧客努力指標はいつ測るか?
そして顧客努力指標をいつ測るかというと、購入などのやり取りの直後、もしくはお客様がカスタマーサービスを利用した直後です。
お客様が例えば何かトライアルで買ってくれたとか、もしくはお客様が何か電話サポートに電話をかけてくれてその電話を切った後です。そういう時にさっきの質問をしてスコアを測りましょう。
これから顧客アンケートを取ろうとか、顧客満足度を測りたいなと思っている方はこの顧客努力指標を一つ項目として付け加えてみるといいのではないかなと思います。
NPSと顧客努力指標(カスタマーエフォートスコア)の関係性
よく顧客満足度調査に使われている別の指標でNPSというものがあります。「Net Promoter Score」(ネットプロモータースコア)の略です。
これはお客様がどれくらい皆さんの会社とか商品を他の人に紹介したいと思っているかという指標です。
NPSは、世界中で使われている指標で、顧客満足度の調査では多分一番有名なのがNPSです。このNPSとCES(顧客努力指標)の関係性はどうなっているかというと、CES(顧客努力指標)が高い会社はNPSも高い傾向にあるというデータが出ています。
「おもてなし幻想」の著者によると、「NPSとCESの両方を使用するとより正確にお客様の満足度であったり、お客様がこれから来てくれるかどうかが測れる」ということです。ですので、両方使ってみるといいのではないかと思います。
CES・NPS・顧客満足度(CSAT)の違い
顧客調査でよく使われる3つの指標を並べて整理しておきます。
- CES(顧客努力指標)……「簡単でしたか?」を聞く。取引のたびに測る。次も使ってもらえるかに直結する
- NPS……「人に勧めたいと思いますか?」を聞く。会社やブランド全体に対する評価を測る
- CSAT(顧客満足度)……「満足しましたか?」を聞く。その場の印象を測る
3つのうち、いちばん打ち手に結びつきやすいのはCESです。「満足しましたか」で低い点がついても、何を直せばいいのかは分かりません。一方「簡単でしたか」で低い点がついたときは、どこで手間がかかったのかを聞けば、直す場所がその場で特定できます。指標は測ること自体が目的ではなく、次に何を変えるかを決めるためのものです。この考え方は数値化の記事でも扱っています。
顧客の努力を減らすために、実際に何をするか
「努力を減らす」と言われても抽象的なので、具体に降ろします。お客様の手間は、だいたい次の4か所で発生します。
- たらい回し……担当が変わるたびに同じ説明をさせられる。誰が窓口かが決まっていないと必ず起きます
- もう一度の連絡……1回で解決せず、こちらから折り返す。1回で終わらせるための情報が担当者の手元にない状態です
- 探させる……料金や手順が書かれておらず、問い合わせないと分からない
- やり方が人によって違う……前回と今回で対応が違う。お客様は毎回、当たり外れを引くことになります
4つとも、担当者の努力や気配りでは解決しません。むしろ、感動サービスを目指すほど対応は担当者の力量に左右され、当たり外れが大きくなります。手間を減らすのは仕組みの仕事です。誰がやっても同じ結果になる形にして、初めて安定します。
具体的には、対応の手順をマニュアルにする、部門をまたぐ流れを業務プロセスとして整理する、よくある問い合わせはクレーム対応の型として用意しておく。この3つが基本になります。
「お客様は神様です」との関係
おもてなしを厚くするほど良い、という考え方の背景には「お客様は神様です」という言葉があります。ただしこの言葉は、もともと商店や飲食店の顧客に向けて言われたものではありません。詳しくは「お客様は神様です」の記事で扱っていますが、どこまで対応してどこから断るのかを会社が決めていない状態で現場に立たせると、現場はその場の力関係で判断するしかなくなります。顧客努力指標は、その線引きを感覚ではなく数字で持つための道具でもあります。
顧客努力指標(カスタマーエフォートスコア)を活用した業績アップの仕組みづくりなら
よくある質問
Q. 小さな会社でも測れますか。
測れます。専用のツールは要りません。対応が終わった直後に「今回のお手続きは簡単でしたか」と5段階で聞くだけです。大事なのは点数を集めることではなく、低い点をつけた人にその場で理由を聞くことです。件数が少ない会社ほど、一件ずつ理由を聞けるという強みがあります。
Q. おもてなしはしなくていいのですか。
やめる必要はありません。ただし手間を減らすことが先で、おもてなしは後です。順番を逆にすると、手続きは面倒なままなのに笑顔で対応する、という形になります。お客様の記憶に残るのは面倒だったことのほうです。
Q. どのくらいの頻度で測ればいいですか。
やり取りが発生するたびが基本です。年に1回まとめて聞く形にすると、どの場面で手間がかかったのかが特定できなくなります。
Q. 点数が低い項目が多すぎて手がつけられません。
件数の多い順に1つだけ選んでください。全部を同時に直そうとすると、たいてい何も変わりません。
まとめ
感動させるサービスを目指すほど、対応は担当者の力量に左右されます。お客様が実際に評価しているのは、感動よりも「面倒でなかったこと」です。そしてこちらは、仕組みで揃えることができます。
顧客努力指標は、その手間を数字で捉えるための道具です。まずは対応の直後に一問だけ聞くところから始めてみてください。
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