心理的安全性の作り方7ステップ|ぬるま湯にしない研修と評価方法



清水直樹
今日は心理的安全性の作り方をご紹介しています。自分の組織の心理的安全性が今どの程度かを測る評価シートと、自社でそのまま実施できる研修プログラムも載せていますので、ぜひご活用ください。
動画でも解説しています。

心理的安全性の作り方:結論と全体像

心理的安全性の作り方を一言でまとめると、「リーダーが先に弱さを見せ、発言や失敗が損をしない仕組みを整え、その状態を定期的に測って改善する」という三点に尽きます。

多くの会社が失敗するのは、この順番を飛ばして「もっと自由に発言していいよ」と呼びかけるところから始めてしまうからです。呼びかけだけでは何も変わりません。社員から見れば、発言して損をするかどうかは、社長や上司の一言、評価制度、会議の進め方といった目に見える仕組みで判断されるからです。

そこで本記事では、以下の流れで心理的安全性の作り方を解説していきます。

  1. 心理的安全性とは何か(そして「ぬるま湯」との決定的な違い)
  2. 心理的安全性が低い職場で起きること
  3. 心理的安全性が高い職場で得られる効果
  4. 土台となる4つの因子と、積み上げるべき4段階
  5. 心理的安全性の作り方7ステップ(本記事の中心)
  6. 自社の心理的安全性を測る評価シート(10項目)
  7. 自社でそのまま実施できる研修プログラム2種
  8. よくある失敗と、リモート環境での作り方

「まず何から手をつければいいか知りたい」という方は、「心理的安全性の作り方7ステップ」から読み進めていただいてかまいません。

心理的安全性とは?

心理的安全性とは、「チームや組織の中で、自分の意見やアイデアを安心して共有できる環境」を指します。人々がリスクを恐れずに率直な意見を言える状態をつくること。これが組織やチームの生産性、創造性、持続可能性を高める鍵だと分かっています。

エイミー・C・エドモンドソン教授の著書『恐れのない組織』では、心理的安全性が「みんなが気兼ねなく意見を述べ、自分らしくいられる文化」として定義されています。この文化の下では、メンバーがミスを恐れず、新しいアイデアや視点を提案しやすくなり、結果としてチームのパフォーマンスが向上するのです。

心理的安全性は「ぬるま湯」ではない

作り方の話に入る前に、必ず押さえておきたい誤解があります。それは「心理的安全性が高い職場=居心地のいいぬるま湯」ではないということです。

心理的安全性とチームのパフォーマンス意欲を二軸で整理すると、職場は次の4つに分かれます。

心理的安全性とチームパフォーマンスの4象限

  • 無関心(Apathy):心理的安全性もパフォーマンス向上の意欲も低いチーム。仕事に対して消極的で、不満だけが募ります。
  • コンフォートゾーン(Comfort Zone):心理的安全性は高いが、パフォーマンスへの意欲が低いチーム。安全は確保されていますが、成長や挑戦が不足します。これがいわゆるぬるま湯です。
  • 不安(Anxiety):心理的安全性が低く、パフォーマンスへの意欲だけが高いチーム。数字は追うが本音は言えない、緊張感だけが高い状態です。
  • 高いパフォーマンス(High Performance):心理的安全性とパフォーマンスへの意欲がともに高いチーム。ここでは、メンバーが挑戦し、失敗から学びながら成長します。

心理的安全性の作り方でめざすべきなのは、右上の「高いパフォーマンス」ゾーンです。「心理的安全性を高めると社員が甘えるのではないか」と心配される経営者は多いのですが、それはコンフォートゾーンを目標にしてしまった場合の話です。高い基準を掲げたうえで、その基準に届かなかったときに人を責めない。この組み合わせが、本来の心理的安全性です。

「心理的安定性」との違い

検索されるときに「心理的安定性」と表記されることがありますが、組織づくりの文脈で使われる正式な用語は「心理的安全性」です。英語では「psychological safety」で、安全のほうにあたります。

まぎらわしいのは、心理学に「情緒安定性」という別の概念があることです。こちらは個人の性格の特性を指すもので、組織の状態を指す心理的安全性とは別物です。社内で議論するときは「心理的安全性」に統一しておくと、話がかみ合いやすくなります。

 

製造業における心理的安全性

製造業や現場を持つ会社では、心理的安全性が品質と安全に直結します。「これは不良かもしれない」「この手順、おかしくないですか」と言えるかどうかが、そのまま不良の流出や事故の有無に表れるためです。

現場で起きやすいのは、次のような状態です。

  • 気づいた人が言い出せず、次の工程に流してしまう
  • ラインを止める判断を誰もしたがらない
  • 「前任者のやり方」に疑問があっても口にしない

いずれも作業者の性格の問題ではありません。止めた人が責められた経験、あるいは言っても何も変わらなかった経験が積み重なった結果です。裏を返せば、止めた判断が正しく評価される形をつくれば変わります。品質を工程の中で作り込む考え方は自工程完結で扱っていますが、そこで前提になるのが、この「言える状態」です。

 

歴史的背景と研究の発展

心理的安全性の研究の背景は、時代ごとに重要な発展を遂げてきました。作り方を考えるうえでも、なぜこの概念が生まれたのかを知っておくと判断がぶれにくくなります。

1960年代 – シャインとベニス:心理的安全性の概念の提唱

心理的安全性という概念が初めて議論されたのは、1960年代のシャイン(Edgar H. Schein)とベニス(Warren G. Bennis)の研究においてです。彼らはこれを「他人との関わりにおけるリスクを減らす集団現象」と定義しました。特に、他者との関係において「自分が受け入れられている」「自分には価値がある」と感じることが重要であり、そうした安心感が不安を軽減すると考えられました。この初期の研究は、心理的安全性が個人の行動や意見表明に与える影響を集団の文脈で捉えたものです。

1980年代 – デミングと「恐怖の排除」

1980年代には、品質管理の大家であるエドワーズ・デミング(W. Edwards Deming)が「経営の14ポイント」の中で「恐怖を取り除くこと」の重要性を強調しました。デミングは、労働者が効果的に働くためには、職場環境から恐怖を取り除き、意見や問題点を自由に述べられる状況を作るべきだと主張しました。彼の考えは製造業における品質改善運動に大きな影響を与え、心理的安全性の基盤となる「恐怖のない環境」の概念を普及させました。

1986年 – チェルノブイリ原発事故と心理的安全性の欠如

チェルノブイリ原発事故は、心理的安全性の欠如がいかに重大な結果を引き起こすかを示す典型例です。この事故では、恐怖や権威への従属が原因で、現場での問題やリスクが指摘されない環境が形成されていました。その結果、小さな問題がエスカレートし、最終的に制御不能な大惨事に至りました。この事例は、心理的安全性が欠如する組織における情報の封鎖やコミュニケーションの断絶がもたらすリスクを浮き彫りにしました。

1990年 – ウィリアム・カーンの新たな定義

1990年代には、心理学者ウィリアム・カーン(William Kahn)が心理的安全性を「身体的、認知的、感情的に自分を表現する能力」として再定義しました。カーンの研究では、心理的安全性が人々にとってどのように働く意欲や創造性、自己表現を促進するかが強調されました。また、この時期にはトヨタ生産方式(TPS)に代表されるように、安全文化が組織運営に取り入れられ、従業員が問題を自由に声に出しやすい環境を整備する動きが注目されました。

トヨタの「アンドンコード」に見る心理的安全性の作り方

心理的安全性の高い環境では、たとえばトヨタの「アンドンコード」のように、誰もが作業の中断を提案できる仕組みが導入されています。これにより、従業員は問題が発生した際に即座に報告し、改善策を共有する文化が促進されます。

ここで注目していただきたいのは、トヨタが心理的安全性を「気配り」や「優しさ」ではなく、ラインを止めるひもという物理的な仕組みで実現している点です。誰でも押せる。押しても叱られない。押したら上司が飛んでくる。この三つがセットになっているからこそ、現場は安心して問題を表に出せます。心理的安全性の作り方の本質は、まさにここにあります。

1999年 – エイミー・エドモンドソンの発見

1999年には、エイミー・エドモンドソン(Amy Edmondson)が臨床チームを対象にした研究を通じて、心理的安全性の具体的な効果を明らかにしました。彼女は、「ミスを認めても罰せられない信念」が高いチームほど、結果的にパフォーマンスが向上することを発見しました。彼女は心理的安全性を「ミスを認め、学び合える環境」と定義し、これがチームの創造性や成果に直結することを示しました。この研究は、心理的安全性の重要性を理論から実践に結びつける重要な転換点となりました。

2013年 – Googleのプロジェクト・アリストテレス

2013年、Googleは「プロジェクト・アリストテレス」と呼ばれる大規模な研究プロジェクトを通じて、心理的安全性が高パフォーマンスチームの中心的要素であることを確認しました。この研究では、以下の要素がチームのパフォーマンス向上に重要であると特定されました。

  1. 信頼性 – メンバーが約束を守り、責任を果たす能力。
  2. 構造と明確性 – 役割や目標、プロセスが明確であること。
  3. 意味 – 仕事が個々人にとって価値があり、意義深いこと。
  4. 影響 – 自分の仕事が組織や社会に貢献しているという実感。

この中で、心理的安全性は特に重要な要因として浮上しました。心理的安全性が欠如すると、チームメンバーが自分の能力を発揮できず、結果としてチーム全体のパフォーマンスが低下することが明らかにされました。いかに優秀な個人を集めても、心理的安全性のない環境では最大限のパフォーマンスを発揮できないということです。


心理的安全性が低いとどうなるか?

心理的安全性が低いチームは、さまざまな問題に直面します。従業員が自分の意見を自由に言えない環境は、仕事の質やチーム全体の成長を妨げてしまいます。ここでは、心理的安全性が低いときに起こる不安や影響について、実際の例も交えながら詳しく見ていきましょう。

1. 「4つの不安」を感じる

エイミー・エドモンドソン教授は、心理的安全性が欠けている環境で働く従業員が感じる不安を「4つの不安」として紹介しています。これらの不安は、従業員が自分の意見を言いにくくする原因になります。それぞれの不安を具体的に見ていきましょう。

① 無知だと思われる不安

例えば、新しいシステムの使い方がわからないときに、「こんなこともわからないのか」と思われるのが怖くなり、質問を避けることがあります。質問をしないままだと、わからないことがそのままになり、仕事のミスやエラーが発生する原因となります。

:新しいソフトウェアを使う業務で、最初に使い方がわからなかったが、質問せずに進めてしまった結果、大事なデータを消してしまった。質問をすれば防げたミスだったのに、恐れて聞けなかった。

② 無能だと思われる不安

自分が仕事ができないと思われたくないあまり、ミスを隠してしまうことがあります。これが続くと、問題が解決されず、後で大きなトラブルに発展することがあります。

:会議でミスを隠してしまい、問題が発覚したときにはすでに大きな問題に発展していた。最初に言っていれば、早期に解決できたかもしれないのに、恐れて黙っていた。

③ 邪魔をしていると思われる不安

会議やディスカッションで、自分の意見が長くなりすぎたり、他の人の話を遮ってしまうのではないかと不安になることがあります。この不安から、意見を言わず、他の人に合わせることが多くなります。

:会議で自分の意見を言うと、会議が長引いてしまうのではないかと心配になり、結局何も言わずに黙っていることが増えた。結果的に、意見を共有するチャンスを逃してしまった。

④ ネガティブだと思われる不安

懸念点や問題を指摘すると、「いつも否定的な意見ばかり言うな」と思われるのではないかと心配になることがあります。そのため、本音を言わず、表面的に賛成するだけになってしまうことが多いです。

:問題が発生したときに、「ちょっとした問題だろう」と思い込んで指摘しなかったが、そのまま放置した結果、大きなトラブルに発展した。本当は早く言うべきだったのに、否定的に思われるのが怖かった。

2. 自己防衛による発言の抑制

これらの「4つの不安」に共通しているのは、従業員が自分を守るために発言を抑制してしまうことです。自分の意見を言わないことで、他人に迷惑をかけず、トラブルを避けるように振る舞うのです。しかし、この自己防衛的な行動が続くと、チーム全体でのコミュニケーションが不足し、問題を共有できなくなります。

例えば、ミーティングで意見を言いたいと思っても、「自分の意見が長引いて迷惑をかけるかもしれない」と感じて黙ってしまうことが増えます。結果的に、意見を出さないことが習慣になり、チームの中で情報が伝わりにくくなります。

3. 成長できない職場

もしチームメンバーが自由に意見を言えない状況が続くと、次第に特定の人物の意見だけが反映されるようになります。これでは、組織の問題点や改善点を見逃してしまうことが多く、結果として企業の成長が止まってしまいます。

:会社の進行方向について、上司の意見だけが強く反映されてしまい、部下の意見はほとんど無視されてしまう。これではイノベーションが起こらず、企業の競争力が落ちてしまう。

また、意見を言わないことで、従業員同士のコミュニケーションが減り、孤立感を感じるようになります。その結果、仕事に対するモチベーションが下がり、やる気を失うことになります。このような環境では、離職率が高くなりやすく、長期的に見ても組織にとって大きな問題です。

とりわけ中小企業では、この状態が「社長の頭の中だけで会社が回る」構造を固定化させます。誰も本当のことを言わなくなると、社長のもとに上がってくる情報は「うまくいっています」だけになり、判断の精度が落ちていきます。心理的安全性は、人にやさしくするための概念である以前に、経営判断の精度を守るための情報インフラなのです。

心理的安全性の効果やメリット

逆に、心理的安全性が高いチームには大きな効果やメリットがあります。

1. 失敗を恐れず挑戦できる環境

心理的安全性が高い職場では、従業員が失敗を恐れずに新しいことに挑戦できる環境が整います。これは、失敗をただの「失敗」として捉えるのではなく、「学びの機会」として受け入れる文化が根付いているからです。従業員が自分の意見や新しい提案を恐れずに出せるため、創造的な発想が生まれやすくなります。また、失敗してもその結果をチームで共有し、次に生かす方法を考えることができます。結果的に個人だけでなく、チーム全体の成長にも繋がります。

2. オープンなコミュニケーションで信頼を築く

心理的安全性が確保されていると、従業員は自由に自分の意見を言えるようになります。自分の意見を発言しても否定されることなく、逆に尊重されると感じることで、職場の信頼感が高まります。情報を隠すことなく共有できるため、問題が早期に明らかになり、解決策を見つけやすくなります。このようなオープンなコミュニケーション環境は、従業員同士の関係を強化し、チームワークの向上にも繋がります。

3. 意見の違いを建設的に活かす

職場における意見の違いは、必ずしも対立や不和を生むわけではありません。心理的安全性が確保されている場合、意見の違いがあっても、それを建設的に活かすことができます。異なる意見や視点を持つことが評価され、それを議論の材料にしてさらに良いアイデアを生み出す土壌が作られるからです。

4. 自分の成長を支援してもらえる

心理的安全性が高い職場では、従業員は自分の成長に対して支援を感じやすくなります。フィードバックが積極的に行われるため、どの部分を改善すればよいのかが明確になり、自己成長が促されます。批判的な意見でも、それが建設的な意図を持って伝えられるため、ネガティブに感じることなく、自分のスキルを向上させる材料として活用することができます。

5. モチベーションを保ちやすくする

心理的安全性のある職場では、従業員は自分の意見や考えを気軽に発信でき、認められる環境が整っているため、モチベーションを維持しやすくなります。仕事の中で困ったことや悩みを共有できると、孤立することなく問題解決に取り組むことができ、精神的な負担も軽減されます。

6. より良い意思決定ができる

心理的安全性のある職場では、意見が自由に交わされるため、意思決定の質が向上します。多くの視点が集まり、事実に基づいた情報がきちんと整理されて提供されるので、感情や先入観に左右されることなく、冷静かつ理性的に判断ができるようになります。これにより、リスクを最小限に抑え、最適な解決策を見つけることが可能になります。

7. 会社の文化が強くなる

心理的安全性を重視した職場では、従業員同士が互いに意見を交換し合い、協力し合う文化が育まれます。従業員が自分の意見を自由に言える環境が整うと、社員同士の絆が強くなり、協力的な姿勢が育まれます。その結果、チーム全体が目標に向かって一丸となり、困難な状況でも団結して問題を解決することができます。

8. 感情的な負担が減る

心理的安全性が高いと、従業員は感情的な負担を感じにくくなります。自分の意見が尊重され、批判的なフィードバックも建設的に受け入れられるため、ストレスが少なくなります。感情的な負担が減ることで、心身の健康も守られ、仕事のクオリティが向上します。


9. 問題に素早く対応できる

心理的安全性があると、問題が発生した場合に早期にそれを認識し、解決策を見つけることができます。問題を隠すことなく報告することが奨励されるため、問題が小さいうちに対処できます。迅速な問題解決は、業務の進行を妨げることなく、スムーズに仕事を進めるために不可欠です。

心理的安全性を構成する4つの因子

では、具体的に何を作れば心理的安全性が高まるのでしょうか。日本の組織における研究では、心理的安全性は次の4つの因子で構成されると整理されています(『心理的安全性のつくりかた』石井遼介氏による)。作り方を考えるときの設計図として使えます。

① 話しやすさ

思ったことを、思ったタイミングで言える状態です。報告・連絡・相談が滞りなく回り、悪い情報ほど早く上がってきます。「何かあったら言って」ではなく、言う場と順番があらかじめ決まっているかどうかがポイントになります。

② 助け合い

困ったときに「助けてほしい」と言える状態です。ここが弱い組織では、抱え込みが常態化し、問題が表に出たときにはすでに手遅れになっています。助けを求めることが減点ではなく、むしろ早い段階で相談した人が評価されることが必要です。

③ 挑戦

前例のないことをやってみられる状態です。挑戦は必ず一定の割合で失敗を生みますから、失敗した人が損をする評価制度のままでは、いくら「挑戦しよう」と言っても誰も動きません。

④ 新奇歓迎

一人ひとりの違い(強み・個性・視点)が歓迎される状態です。「変わったことを言う人」が浮かないこと、役割が画一的でないことが条件になります。

この4つのうち、自社でいま最も弱いのはどれかを見極めることが、心理的安全性の作り方の出発点です。すべてを同時に改善しようとすると、たいてい何も変わらずに終わります。

心理的安全性の4段階

もうひとつ、作り方の順番を示してくれる枠組みが、ティモシー・クラークによる「4段階の安全性」です。心理的安全性は一足飛びには高まらず、下から一段ずつ積み上げていくものだと分解してくれています。

心理的安全性の4段階

インクルージョン・セーフティ(所属感)

最初のステージは「所属感」です。この段階では、個人がグループの一員として認められていることを感じることが重要です。自分がそのチームに存在してもよいと感じ、排除されないという安心感が得られます。この感覚がないと、メンバーは自分の意見を言うことに対して不安を感じ、グループの一員として活動できなくなります。

ラーナー・セーフティ(学習)

次に「学習の安全性」が重要です。このステージでは、失敗を恐れずに新しいことを学んだり挑戦したりできる環境が提供されていると感じることが求められます。自分がミスをしたり知らないことがあっても、それが評価されないこと、むしろ学びの一環として受け入れられることが心理的な安全を生み出します。

コントリビューター・セーフティ(貢献)

第三のステージは「貢献の安全性」です。この段階では、メンバーが自分の知識やスキルを発揮して、チームに対して積極的に貢献できる安心感が必要です。自分の意見やアイデアが価値あるものとして尊重され、フィードバックが建設的であると感じることで、貢献意欲が高まります。

チャレンジャー・セーフティ(挑戦)

最後のステージは「挑戦の安全性」です。このステージでは、メンバーが現状を疑問視し、新たな方法やアイデアを提案したり、改善を試みたりすることに対して心理的に安全であると感じることが大切です。恐れずに問題点を指摘したり、現状を変えるための挑戦的な行動を起こすことができる環境が作られると、組織全体が革新し成長する土台となります。

順番を飛ばさないことが肝心です。所属感すら怪しい組織で「もっと現状に異議を唱えてほしい」と求めても、社員からすれば無理な相談です。まずは1段目から確認していきましょう。

心理的安全性の作り方7ステップ

ここからが本題です。心理的安全性を実際に高めていくための手順を、7つのステップに分けて解説します。

ステップ1:まず現状を測る

測り方そのものは社員アンケートの設計も参考になります。

心理的安全性は、感覚で語ると必ず食い違います。社長は「うちは風通しがいい」と思っていて、現場は「言えるわけがない」と思っている。これが最も多いパターンです。

ですから、作り方の第一歩は測ることです。本記事の後半に10項目の評価シートを載せていますので、まずは匿名でアンケートを取り、どの項目のスコアが低いか、どの項目で回答のばらつきが大きいかを確認してください。ばらつきが大きい項目は、上司によって当たり外れがあることを示しています。

ステップ2:リーダーが先に自分の弱さを開示する

社長が弱さを見せられない背景については経営者は孤独?4つの理由でも扱っています。

心理的安全性は、立場が上の人から順に開示していかない限り生まれません。部下に「本音を言ってほしい」と求める前に、リーダー自身が「この判断は自分の失敗だった」「実はこの分野は自分もよく分かっていない」と口に出すことです。

順序が逆になっている組織は非常に多く、社長が完璧なリーダーを演じ続けている限り、社員は永遠に弱みを見せられません。リーダーの自己開示が、そのチームの安全性の上限を決めます。

ステップ3:「話しやすさ」を仕組みにする

会議で意見が出ない状態の直し方は会議で発言しない人の心理と対策、個別の場のつくり方は1on1ミーティングのやり方をご覧ください。

「何でも言っていいよ」という言葉は、仕組みではありません。発言が起きるように場を設計します。

  • 会議の冒頭でチェックインを入れる:全員が一言ずつ話してから議題に入る。最初に一度も声を出していない人は、その会議で最後まで発言しません。
  • 発言順を「下から」にする:役職が上の人が先に意見を言うと、その時点で議論は終わります。若手・現場から順に意見を出し、社長は最後に話す。
  • 悪い報告の専用ルートを作る:良い報告と同じ場に混ぜると、悪い報告は出てきません。「うまくいっていないこと」だけを扱う定例枠を設けます。

ステップ4:「助け合い」を評価対象にする

評価項目への落とし方は人事評価制度で解説しています。

助けを求めることが「能力不足の告白」になっている限り、誰も助けを求めません。ここは仕組みで変えられます。


たとえば、期限の直前ではなく早い段階で相談してきた人を明確にほめる。1on1の定例枠を設け、「困っていることはないか」ではなく「いま一番進みが悪いのはどの仕事か」と具体的に聞く。他者を助けた行動を評価項目に入れる。トヨタのアンドンコードと同じで、手を挙げる行為そのものを正しい行動として定義することが要点です。

ステップ5:「挑戦」が損をしない評価基準を作る

判断のよりどころを言葉にする作業はコアバリューが土台になります。

心理的安全性の作り方において、最後まで残る壁がここです。いくら会議の空気を良くしても、挑戦して失敗した人の評価が下がる制度が残っていれば、社員は合理的に挑戦をやめます。

具体的には、結果だけでなくプロセスを評価対象に入れる、失敗した挑戦から得た学びを共有した人を評価する、といった形で評価基準を書き換えます。制度に手を入れずに文化だけを変えようとするのは、蛇口を締めたまま水を出そうとするようなものです。

ステップ6:「新奇歓迎」のために役割と強みを明確にする

役割を書き出す具体的な方法は職務記述書の書き方で扱っています。

一人ひとりの違いが歓迎されるためには、そもそも誰がどんな強みを持っているかが可視化されている必要があります。ここが曖昧なままだと、「みんな同じように働くべき」という同調圧力に戻ってしまいます。

各メンバーの担当領域と期待役割を明文化し、「この件はあなたの領域だから、あなたの判断で決めてほしい」と言える状態を作ります。役割が明確な組織のほうが、意外にも発言は活発になります。自分の守備範囲が分かっているから、安心して意見が言えるのです。

ステップ7:定期的に測り直し、改善を回す

心理的安全性は、一度高まっても放っておけば下がります。人が入れ替わり、忙しさが増し、業績が悪化すれば、真っ先に削られるのが「話し合う時間」だからです。

最低でも半年に一度は評価シートを取り直し、スコアの変化をチームに共有してください。測っていること自体が「この会社は本気だ」というメッセージになります。

【仕組み経営の視点】心理的安全性は「人柄」ではなく「仕組み」で作る

仕組み化の全体像もあわせてご覧ください。

私たちが多くの中小企業を支援してきて痛感するのは、心理的安全性を個人の資質の問題にしてしまうと、絶対に再現しないということです。

「あの部長のもとは風通しがいいが、隣の部署は最悪だ」という状態は、心理的安全性がその人の人柄に依存している証拠です。その部長が異動すれば、安全性も一緒に消えていきます。属人的な経営のもとでは、心理的安全性もまた属人化するのです。

だからこそ、会議の進め方、評価の基準、報告のルート、1on1の設問といった仕組みに落とし込む必要があります。誰が上司になっても一定の水準が保たれる状態、これが心理的安全性の作り方のゴールです。

心理的安全性の評価方法

高いパフォーマンスを発揮するチームを作るためには、まずそのチームの心理的安全性がどの程度あるのかを理解することが大切です。チームメンバーが感じている心理的安全性の度合いを測ることで、改善に向けた行動や実践をより効果的に取り入れることができます。

この調査は、チームの状況に応じて匿名で行うことが理想的です。チームが心理的に安全でない場合、メンバーは本音を伝えやすくなるからです。逆に、チームが非常に心理的安全性が高ければ、匿名でなくても問題ないかもしれません。

心理的安全性を評価する項目

調査では、以下の質問を使って心理的安全性を測ります。必要に応じて質問内容をチームや組織の文化に合わせて修正してもかまいません。評価は5段階(1: 強く反対、5: 強く賛成)で答えてもらいます。

エドモンドソン教授が提案している7つの質問項目

まず、先述したエドモンドソン教授が提案している7つの質問項目があります。

  1. チーム内でミスを起こすと、よく批判をされる
  2. チームのメンバー内で、課題やネガティブなことを言い合うことができる
  3. チーム内のメンバーは、異質なものを受け入れない傾向にある
  4. チームに対して、リスクが考えられるアクションを取っても安心感がある
  5. チーム内のメンバーにヘルプを出しづらい
  6. チーム内で自分を騙すようなメンバーはいない
  7. 現在のチームで業務を進める際、自分のスキルが発揮されていると感じる

これらの質問をメンバーに投げかけ、ポジティブな反応が多ければ、心理的安全性が高いと言えます。

拡張した10個の評価項目

エドモンドソン教授の7つの質問を拡張し、10個にしたバージョンもあります。あなたの会社の状況に合わせて活用してみましょう。

  1. このチームでは、自分に何が期待されているかがわかっている。
  2. 成果を重視しており、誰も「忙しく見せる」必要はない。
  3. このチームで間違いを犯しても、それが責められることはない。
  4. 問題が起きたとき、私たちはチームとしてその原因を探る。
  5. このチームのメンバーは、問題や難しい課題を気軽に提起できる。
  6. このチームでは、異なる意見や個性が排除されることはなく、誰もが疎外されない。
  7. このチームでは、リスクを取ることが安全である。
  8. 他のメンバーに助けを求めることが容易である。
  9. このチームで誰も私の努力を意図的に妨害することはない。
  10. 私のユニークなスキルや才能は、このチームの仕事で大切にされ、活用されている。

評価結果の分析

調査結果から、最も低い平均スコアが出た質問に注目しましょう。また、スコアに幅がある質問も重要です。これは、メンバー間で感じ方に大きな違いがあることを示しており、どこに不均衡があるのかを把握する手がかりになります。

全てのチームが異なるため、スコアが「悪い」と感じる必要はありません。この調査は、改善の出発点に過ぎません。チームの心理的安全性を高めるための具体的なアクションを起こすためのガイドラインを見つけることが重要です。

スコアが低い項目に対するアクション

改善が必要な分野(例えば、スコアが低かった質問)を特定したら、以下の提案を参考にしてチームの前進をサポートしてください。最も関連性の高い提案を優先し、評価結果をもとにこれらの取り組みを行っていることをチームに伝えることが大切です。透明性を持つことで信頼が築けます。

No. 評価項目 スコアが低い場合の打ち手
1 自分に何が期待されているのかがわかる タスクを明確に定義し、完了基準を共有。行動期待を示し、ネガティブ行動には迅速に対応。
2 成果を重視する ビジネスの重要事項を共有し、目標を強調。優先事項を視覚化し、成果ベースのレポートを求め、物理的出席を重視しない。
3 ミスを犯しても非難されない ミスを学びの機会と捉え、リーダーが率先して共有。責める行為には迅速に対応。
4 問題が起きた時、原因をチーム全体で探る 振り返りを定期実施。「誰が悪かったか」ではなく「何が悪かったか」を重視し、システム思考を活用して改善策を考える。
5 問題や課題を話しやすい環境がある 安全な場を提供し、リーダーも率直に話す。ミーティングで勝利と困難の共有を奨励。
6 誰もが排除されず、全員が参加できる 全員を会議や議論に参加させ、声を聞く機会を確保。チーム慣習を見直し、寛容性を確認。
7 リスクを取ることが安全だと感じる リスクテイクを奨励し、結果が失敗しても感謝。リスクの評価基準を共有し、学びを生かす文化を構築。
8 助けを求めるのが簡単だと感じる 助けを求めた行動を褒め、感謝。リーダーが模範を示し、質問しやすい環境を提供。
9 努力を損なう行動がない 他者を助ける行動を賞賛。成功や感謝を共有する文化を奨励。他人の成果を横取りする行為を厳しく対応。
10 独自のスキルや才能が評価され、活かされていると感じる 各メンバーが価値を発揮できる役割を確認。強みを見つけ出し、チーム内で共有。

心理的安全性を高めるリーダーシップの行動

心理的安全性を作るために最も大切なのは、リーダーが示す模範的な行動です。リーダーが自分の失敗を率直に認め、他者の意見を尊重し、オープンなコミュニケーションを促す姿勢を見せることで、チーム内に安全で信頼できる環境が自然に形成されます。このようなリーダーの行動が、チームメンバーにとって「ここでは自分の意見を言っても大丈夫だ」と感じさせ、心理的安全性を実現する鍵となります。

リーダーが行動で示すべき3つの重要なポイントを紹介します。

1. 仕事を「実行問題」ではなく「学習問題」として捉える

リーダーが問題を「実行問題」として扱うのではなく、「学習問題」として捉える姿勢を持つことが、心理的安全性の確立に繋がります。仕事の成果や結果だけを追求するのではなく、失敗や課題を次回の改善のための学びとして捉えます。このように、問題に対して学びの姿勢を持つことで、メンバーも失敗を恐れずに挑戦できる環境が作られます。


:プロジェクトが予定通りに進まなかったとき、「どうしてこうなったのか?」と振り返り、「次回はこうしよう」といった改善策を皆で考える場を作ることで、チーム全体が成長する機会を得ます。

2. 自分自身の過ちを認める

リーダーが自分の過ちを素直に認めることは、チーム全体の心理的安全性を高めるために欠かせません。リーダーが自分の誤りを認めることで、メンバーは自分もミスをしても大丈夫だと感じるようになります。これによって、ミスを隠したり、他人を責めるのではなく、問題を解決するために意見を交換し合う文化が生まれます。

:会議で間違った判断をしたとき、リーダーが「私の決定が間違っていた。次はどう改善するか考えよう」と認めることで、メンバーも自分のミスをオープンに共有しやすくなります。

3. 好奇心を持ち、質問をする

リーダーが積極的に質問し、メンバーの意見や考えを聞く姿勢を示すことで、意見交換が活発になり、心理的安全性が高まります。リーダーが自分の答えがすべてだと考えず、メンバーに考えを尋ねることで、チーム内で自由に意見が交わされ、意欲的な議論が生まれます。

:リーダーが「この問題についてどう思う?」とメンバーに質問し、意見を引き出すことで、メンバーは自分の考えを表現しやすくなります。質問を通じて、新しいアイデアが生まれ、チームが一丸となって問題を解決することができます。

心理的安全性を作るために自社で出来る研修

研修を単発で終わらせず、教育の体系として組み立てたい場合は企業内大学の考え方が参考になります。

先述した通り、心理的安全性は何よりリーダー自身が模範となることが重要です。そのうえで、自社で取り組める研修(ワークショップ)をご紹介していきましょう。どちらも外部講師なしで、社内のメンバーだけで実施できます。

研修① チームパフォーマンスワークショップ:心理的安全性は「ぬるま湯」ではない

このワークショップでは、チームのパフォーマンス向上に向けて、心理的安全性の重要性を理解し、実際にどのように高めるかを学びます。心理的安全性が高い環境では、メンバーは自由に意見を言い、失敗を恐れずにチャレンジできるため、チーム全体のパフォーマンスが向上します。以下では、このワークショップを自社で実施するための具体的な進め方を解説します。

1. 四象限図を使ったチーム文化の理解

まずは、記事の前半で紹介した四象限図を用いて、チームの文化や心理的安全性の状態を可視化します。無関心、コンフォートゾーン(ぬるま湯)、不安、高いパフォーマンス。この4象限のうち、自分たちがどこにいるのかを全員で認識するところから始めます。心理的安全性の高さと、仕事に求める基準の高さ。この2つの軸で分けたのが、この4象限です。

2. ワークショップの進行方法

このワークショップは、チームが自分たちの現状を認識し、改善に向けての具体的なアクションを決定するプロセスです。以下のステップで進めます。

ステップ 1: 四象限図の準備

ホワイトボードに四象限図を描くか、「心理的安全性とパフォーマンス四象限」のプリントを用意します。

ステップ 2: 四象限の説明

チーム全員に四象限の意味を説明します。それぞれの象限にどのような状態が含まれるのか、過去に自分たちのチームがどの象限にあったかを例に挙げて具体的に話すと理解が深まります。

ステップ 3: 過去の経験を共有

チームメンバーに、過去に自分たちがどの象限にいたかを振り返り、その経験を共有してもらいます。このステップでは、全員が少なくとも一度は発言できるようにし、チーム内でオープンなコミュニケーションを促進します。

ステップ 4: 自己評価

各メンバーに四象限図を配布し、自分たちのチームが現在どの象限に位置しているかを青いドットで示し、目指すべき象限を緑のドットで示してもらいます。最初は匿名で行うことで、正直な意見が得やすくなります。

ステップ 5: 結果のシェア

集めたプリントをシャッフルして配布するか、ホワイトボードに貼り出して、全員で結果を確認します。予想通りだったか、予想外だったかを話し合います。

ステップ 6: 結果を議論

チーム全員で、結果が整合しているかどうかを議論します。異なる意見を共有し合い、個々のメンバーがどのように感じているかを理解します。

ステップ 7: 改善策を出し合う

チーム全体が前進するために、どんな小さなステップが必要かを議論します。メンバーに口頭で提案を出させたり、ポストイットに書いて貼らせることで、改善案を具体化します。別のメンバーの提案には賛成の印としてシールを貼るなど、積極的な参加を促します。

ステップ 8: アクションを決定

改善策が決まったら、それを実行に移すための具体的なアクションを決定します。誰が、何を、いつまでに行うのかを明確にし、高いパフォーマンスゾーンに進むための行動を文書化して全員で共有します。

ステップ 9: フォローアップセッションの予定

進捗を確認するために、少なくとも2ヶ月後にフォローアップセッションを予定します。定期的に振り返りを行い、継続的な改善を促進します。

3. ワークショップの成果とフィードバック

最後に、このワークショップを通じてチームがどのように感じたか、どんな価値を得たかをフィードバックとして集めます。また、次回のワークショップに向けて改善すべき点があれば、それを反映させるようにします。

研修② 恐怖対話ワークショップ:懸念や不安を声にする

心理的安全性を高めるためには、メンバーが恐怖を感じた時にその気持ちを声に出して表現できる環境を作ることが大切です。恐怖を表現することで、その恐れを理性的に整理し、必要な対策を講じることができます。このワークショップの主な目的は、チームメンバーが自分の恐怖についてオープンに話すことを練習し、その恐怖を軽減する方法を見つけることです。

1. 恐怖チャートを準備する

まず、チーム全員が恐怖を共有できるよう、恐怖チャートを用意します。このチャートには、恐怖を記入するスペースがあり、チームメンバーがどんな恐怖を感じているのかを視覚的に整理します。ホワイトボードに描くか、大きく印刷したチャートを使うと便利です。

心理的安全性を作る研修に使える恐怖チャート

2. ディスカッションの開始

各メンバーに自分が感じている恐怖について一つシェアしてもらいます。例えば、「目標を達成できないこと」や「チームメンバーが去ること」などが考えられます。恐怖をシェアする際、他のメンバーは感謝の意を示し、理解を深めることが重要です。全員が少なくとも一度は話すことができたら、次のステップに進みます。

3. 恐怖ごとの軽減策を考える

恐怖を表現した後、その恐怖をどう軽減するかをみんなで考えます。例えば、「締め切りに間に合わないことへの恐れ」に対しては、「週次でステークホルダーと進捗確認を行う」という軽減策が考えられます。メンバー全員が自由にアイデアを出し合い、それを恐怖チャートに記入します。


4. ターゲットノルムを話し合う

次に、理想的な状態(ターゲットノルム)について話し合います。チームが目指すべき「ハッピープレイス」を定義し、その状態を目指していきます。例えば、「プロジェクトが順調に進んでいるかどうかを早期に把握でき、リスクに対応できる状態」といった具体的な目標を掲げることが重要です。

5. エクササイズの振り返り

ワークショップ終了後、メンバーにどのように感じたかを反映させます。この振り返りを通じて、恐怖を軽減するための具体的な行動がどう変化するのかを確認し、実行に移すための意識を高めます。

6. チャートを掲示して実施を奨励する

完成した恐怖チャートは、チーム全員が見える場所に掲示します。定期的にこのチャートを確認し、軽減策が実行されているかどうかをチェックします。また、新しいメンバーが加入した場合や、チームが再編成された際に再度行うことも効果的です。

心理的安全性の作り方でよくある3つの失敗

最後に、実際に取り組む際につまずきやすいポイントもお伝えしておきます。

失敗1:「仲良し組織」を目指してしまう

最も多い失敗です。飲み会を増やし、批判を避け、誰も傷つかない会議にした結果、生ぬるいだけの組織になってしまうケースです。心理的安全性は、対立をなくすことではなく、対立を安全に扱えるようにすることです。目標水準は下げてはいけません。

失敗2:制度を変えずに空気だけ変えようとする

「もっと自由に発言してほしい」と言いながら、失敗した人の評価は下がり、上司に反対した人が異動になる。この状態では、社員は言葉ではなく制度のほうを信じます。評価・人事・会議体といった仕組みに手を入れないリニューアルは、必ず数ヶ月で元に戻ります。

失敗3:一度やって終わりにする

研修を一度実施して満足してしまうパターンです。心理的安全性はチームの状態であって、研修の修了証ではありません。測る、直す、また測るというサイクルを最低でも1年は回してください。

リモート・ハイブリッド環境での心理的安全性の作り方

あわせて社内コミュニケーションの活性化もご覧ください。

在宅勤務やハイブリッド勤務が入ると、心理的安全性は下がりやすくなります。雑談が消え、表情が見えず、「今聞いていいことなのか」が判断しづらくなるためです。

対策としては、まずオンライン会議でのチェックイン(一人一言)を必ず入れること。次に、テキストコミュニケーションのルールを決めること。たとえば「質問には既読ではなくリアクションで返す」「わからないと書き込むことを歓迎する」といった小さな取り決めが効きます。そして、1on1の頻度を対面時代より上げることです。オンライン中心の組織ほど、意識的に接点の回数を設計する必要があります。

心理的安全性の作り方に関するよくある質問

Q. 心理的安全性を高めると、社員が甘えてしまいませんか?

その心配は、目標水準を同時に下げてしまった場合に現実になります。心理的安全性と高い基準はセットで運用するものです。基準は高いまま、失敗の扱い方だけを変えると考えてください。

Q. 効果が出るまでどれくらいかかりますか?

会議の進め方など運用面の変化は数週間で体感できますが、組織全体のスコアが動くには半年から1年程度を見ておくのが現実的です。特に、過去に発言して嫌な思いをした経験があるメンバーほど、変化を信じるのに時間がかかります。

Q. 社長や上司が変わらない場合、現場からでも作れますか?

自分のチーム内であれば可能です。会議のチェックイン、失敗の共有、助けを求めた人への感謝といった行動は、権限がなくても始められます。ただし、組織全体に広げるにはどこかで経営トップの関与が必要になります。

Q. 少人数の会社でも必要ですか?

むしろ少人数の会社ほど重要です。人数が少ないほど社長との距離が近く、社長の一言が空気を決めてしまうためです。10人以下の会社でも、悪い情報が上がってこない組織は必ず停滞します。

Q. 心理的安全性と信頼関係は同じものですか?

異なります。信頼が「私があの人をどう見ているか」という一対一の感覚であるのに対し、心理的安全性は「このチームでは発言しても大丈夫だ」というチーム全体で共有された認識です。だからこそ、個人の相性ではなく仕組みで作ることができます。

心理的安全性を高める仕組みづくりなら

以上、心理的安全性の作り方を解説してきました。4つの因子と4段階、実践の7ステップ、評価方法、自社でできる研修までを扱っています。

繰り返しになりますが、心理的安全性は特定のリーダーの人柄に頼っている限り、その人がいなくなった瞬間に消えてしまいます。会議の設計、評価の基準、報告のルート、採用と育成の流れ。そうした仕組みに落とし込んで初めて、誰がやっても再現できる文化になります。

仕組み経営では、会社の様々な仕組みづくりを通じて、心理的安全性が高い会社の文化形成をご支援しています。詳しくは以下のガイドブックからご覧ください。


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