OJTとは?社員を確実に成長させるポイントと計画策定法


OJTとは

新人が職場に配属される準備として、ほとんどの企業では新入社員研修を行います。ところが、せっかく研修で学んだ知識を実務で活かすことができず、本人はもちろん、配属先部署のリーダーやメンバーにとっても悩みの種になってしまうことがあります。

新入社員が身につけた知識を実務で活かし、現場で活躍できるようになるために必要な教育手法が「OJT」です。今回は、OJTの効果を高めるためのポイントを取り上げ、組織でのよりよい活用の仕組みをご紹介していきます。

OJTの意味

OJTとは「On the Job Training」の頭文字を取った略語です。これは社員、アルバイトなど雇用形態にかかわらず、新人や業務未経験者に対して行われる教育手法です。上司や先輩などがトレーナー(OJT担当者)となり、業務に必要なスキルや知識を実務を通じて指導していきます。

今では広く知られているOJTですが、その始まりは第一次世界大戦勃発当時のアメリカでした。当時、アメリカの造船所では軍需に対応するために10倍の数に及ぶ作業員の補充が必要となりました。当然、新人を訓練することになるわけですが、当時の職業訓練施設の能力では間に合わなかったわけです。

そこで、緊急要員訓練プログラム作成の責任者に任命されたチャールズ・R・アレンが、教育学者ヨハン・ヘルバルトの教授法をもとに開発した職業指導法がOJTです。中世以来の伝統であった徒弟制度ではない、効率的な職場指導として多くの企業に導入され、日本には戦後の高度経済成長期に入ってきました。

OJTの目的

企業が積極的にOJTを導入する目的として、つぎの3つが挙げられます。

①業務効率の向上

OJTは実際の業務を通した教育手法ですから、経験に裏付けられたノウハウや知識を学べます。また、OJTを担当する上司や先輩社員にとっても、業務の目的や部署間の流れなどを再確認する機会となります。業務や組織運営に関する理解を深めることで、時間管理や効率化、人材育成方法やマネジメントなど、組織全体の生産性の向上に貢献できるようになります。

②不安や疑問の解消

OJTは社員相互のコミュニケーションを活性化させ、未知の職場環境での不安解消にもつながります。新人や業務未経験者にとって、新しい職場は仕事内容だけではなく、人間関係など、さまざまな不安要素があります。OJTでは上司や先輩社員と一緒に実務を学ぶため、仕事に関する不安や疑問を解消しながら、スムーズに新しい環境に溶け込むことができます。

③職場への定着率アップ

OJTによって新人には即戦力が身につきます。活躍のチャンスが広がり、モチベーションの維持につながります。結果的に定着率のアップが期待できます。また、上司や先輩社員にとっては、個人の強みや弱みを把握しやすくなります。新人の燃え尽きやエンゲージメントの低下も事前に察知することができ、いち早く対処できるようになります。

OFF-JTとSDとOJT

社員のスキルアップやモチベーション維持に役立つ教育手法として、OJTのほかにもOFF-JT、SDがあります。ここではそれぞれの特長を見ていきます。

OFF-JT

配属先で上司や先輩社員から実践的なスキルの習得を目指すOJTとは異なり、業務から完全に切り離し、職場とは異なる場において行う研修がOFF-JTです。これは「Off-The-Job Training」を略した呼称です。外部指導者を招いた研修を設け、授業形式の座学研修を行なうケースが大半となります。

OFF-JTは研修専任のスタッフが指導者となるため、理論的で体系的な知識の習得がしやすいというメリットがあります。また、グループワークも多く行われ、参加者同士の交流が盛んになります。

ただし、外部講師や研修などの費用が発生するのがデメリットだと言えます。また、研修内容や講師の選択が難しいといった点もあります。

SD

自己啓発=Self Developmentの頭文字を取ってSDと呼びます。社内外のセミナーや書籍を通じて学ぶなど、その方法は多岐にわたります。業務に関連する資格取得やスキル習得もこれに含まれます。セミナーの受講や資格取得にかかる費用の負担、通信教育の情報提供、外部セミナーのあっせんなどを行う企業も多く見られます。

SDのメリットは、社員の選択の幅が広く自由度が高いことです。研修内容や予算、受講方法を自由に設定することができ、eラーニングなども利用すれば、社員は時間を有効活用することができます。

逆に、その自由度の高さがデメリットにつながる可能性もあります。SDには強制力はないことが多いため、社員自身が学習意欲を維持させなくてはならず、他者とのかかわりがない環境のために、真剣さが生まれにくいといったことも考えられます

OJT

OJTはOFF-JTやSDとは異なり、実際の現場で知識の習得ができます。新人個々の成長度に応じて柔軟に教育計画を変更することができることも、あらかじめカリキュラムが組まれた外部研修との大きな違いです。専任講師や研修を外注する費用が不要だという点も、教育コストを抑えたい企業にとっては魅力的です。また、トレーナーとなる社員は現場を離れる必要がないため、業務への影響が比較的少なく実施することができます。

OJTのメリット・デメリット

OJTは人材育成において重要な手法の1つですが、「OJT=目の前の仕事を教えること」と誤解されているケースも多く見られます。OJTは「目先の仕事のやり方を教える」のではなく、「意図的・計画的・継続的」に行うことが前提であり、場当たり的な教育をしても望んだ成果を得ることはできません。

ここまでに述べてきたOJTのメリットをまとめ、さらに考え得るデメリットを合わせてご紹介します。メリット・デメリットをきちんと理解して、正しい取り組みにつなげていきましょう。

OJTのメリット

教えられる側のメリット

  • 実際の業務を通して実践的なスキルを身につけることができ、即戦力として活躍できる
  • フィードバックをすぐに受けられるので、不安や疑問をその場で解消することができる

教える側のメリット

  • 業務の流れや組織運営を再確認することで、指導者として成長できる

会社としてのメリット

  • 新人とトレーナーとの人間関係が密接になり、社内コミュニケーションが活性化する
  • 講師や教育プログラムを外注する必要がなく、教育コストを抑えることができる

OJTのデメリット

教えられる側のデメリット

  • 指導者個々の能力にバラつきがある場合、成果に幅が生まれる可能性がある
  • 担当する業務について学ぶことが中心になり、全社的な動きについて体系的に学びにくい

教える側のデメリット

  • 通常の業務以外に、教育計画の作成などに時間をとられる可能性がある

会社としてのデメリット

  • トレーナー担当の社員が、直接的な成果を生み出す業務に従事することができなくなる可能性がある

効果的なOJTのポイント

OJTを成功に導くために、トレーニングのポイントとなる3つの仕組みをご紹介します。

①計画的なトレーニング

場当たり的なトレーニングを行うと、トレーニングの目的が曖昧になってしまいます。結果として効果的な学習効果が得られず非効率です。ですから、熟考された計画にもとづいたトレーニングの実行が必要になるわけです。計画を立てる際には、新人個々の強みや弱みを明確化することや、目標から逆算した育成計画を検討しましょう。

②反復的・段階的なトレーニング

学んだスキルが実務で発揮できるまでには、ある程度の時間が必要です。ですから、単発のトレーニングではなく、反復的・段階的なトレーニングの実施が重要になります。新人が試行錯誤をしながら着実に実力をつけることができる仕組みをつくりましょう。また、継続してトレーニングできているか、第三者によるチェックできるようにしておくと万全です。

③目的や目標の明確化

トレーニングの目的や目標が曖昧なままでは効果的なトレーニングはできません。トレーナー(OJT担当者)と新人が、事前にトレーニングの目的や目標を共有できる仕組みを用意しておきましょう。

 

OJT計画の作成方法

新人教育を成功させるには、OJT計画書が不可欠です。OJT計画書を作成していないと、場当たり的に発生した業務のみをOJTすることになり、業務全体を網羅することができません。OJT計画書は、業務を漏れなくレクチャーするために作成していきます。

OJT計画書がなければ、覚えてほしい業務の説明が漏れる危険性は格段に高まります。説明しておかなければいけない事項について、ミスや漏れの防止につなげるためにも、OJT計画書の作成は重要なのです。



OJT計画書の作成ポイント

OJT計画書を作成する際のポイントを3つご紹介します。

①目的と実施計画の明確化

最も重要なものが「OJT実施の目的」、そして目的を達成するための「実施計画」の作成です。目的の設定は育成を行う上で最も大切な事項です。研修の最終目的を決定するとともに、研修期間中の各段階で到達すべきゴールも明確にしておきます。実施プログラムの内容はOJTを受ける新人にも共有します。それによって、自分自身がどの研修を行っているかを把握でき、研修の全体像を理解することが可能になります。

②教育内容の最適化

OJT計画書を作成することで、教育テーマを整理できます。計画書を作成する際には関連部署での検討を行い、テーマに漏れがないようにしていきます。トレーナーが異なっても、教育テーマが共有できていれば教育内容を最適化することができます。OJT計画書に従うことで、目先の業務を優先して説明するのではなく、内容に漏れがないように必要な教育を対象者全員に行うことが可能になります。

③フィードバックの実施

OJT計画書には、必ずOJT実施後のフィードバックの実施を盛り込んでください。サイクルを決め、複数回のフィードバックを行います。フィードバックの場は、個別に行うものと集団で行うものを設定します。業務における指導やメンタル面でのフォローアップなどは個別で、全体的なフォローアップは集団で行うなど、用途に応じての設定します。

OJT計画書はブラッシュアップする

OJT計画書は定期的な見直しが必要です。OJTの最中にトラブルがあった場合はもちろん、OJT期間が終了した段階で関係者による見直しを行います。記載項目、指導方法、評価方法を中心に繰り返しブラッシュアップすることで、自社にあったOJT計画書を作り上げることができます。

OJTには評価も必要

トレーナーと受講者がOJTの目標や進捗状況を可視化して共有し、客観的に振り返えるためにはOJT評価シートが必要になります。ここではその重要性や具体的な利用法をご説明していきます。

OJT評価シートの重要性

OJT評価シートを活用することで、OJTを進める中での課題が可視化され、効果的で効率的な教育研修が行いやすくなります。

企業がOJTを行う目的は「付加価値の高い人材を育成したい」「効率的に育成して即戦力になってほしい」なのですが、OJTを行う現場では「育成方針が統一されていない」「通常業務の忙しくOJTを優先できない」などの問題を抱えていることがあります。

OJT評価シートを活用すれば、人事部と現場、トレーナーと受講者の間で意思統一や現状把握がしやすくなります。OJT評価シートを導入するメリットは非常に大きなものだと考えられます。

OJT評価シートの書き方

OJT評価シートには、トレーナー用の「育成計画シート」と、受講者とトレーナーとの間で用いる「コミュニケーションシート」があります。今回は育成計画シートに焦点を当ててご説明します。

自社が求める人物像を定める

まず自社が求める人物像を可視化します。どんな人材を育成したいかが明確でなければ、OJTの内容を決めることはできません。自社の業務に必要な能力を細分化し、何ができる必要があるかを整理します。求める人物像が定まったら、そこから逆算して必要な知識や技術を細分化していきます。これによって、OJTの内容や目的についての認識が現場とズレる危険を軽減できるわけです。

長期的なスケジュールを明確にする

OJTを実施する際に、小さな目標にかける期間を場当たり的に決めてしまうと、OJTがいつ終わるのかが分からなくなります。各段階の期間を定めることで、長期的なスケジュールが組みやすくなり、目標がより明確になってトレーナーと受講者のモチベーション向上が期待できるようになります。

振り返りの評価・反省を行う

OJTの実施に当たり、振り返りの評価を行うことは非常に重要です。評価を行う際には、主観的になるのを避けるために、当事者だけでなく同じ部署のメンバーの協力も仰ぎます。評価は「できた・できなかった」の2択ではなく、「他者に指導できるレベル」「1人で実施可能」「まれにサポートが必要」「半分くらいサポートが必要」「常にサポートが必要」と、習得レベルが判断できる項目を設定します。

OJTを正しく用いて社員を確実に成長させましょう

OJTを正しく導入して、新人社員を企業が求める人材に成長させるためには、OJTの計画策定をはじめ、さまざまな仕組みづくりが必要になります。

「仕組み経営」では、事業をさらに成長させるための、OJTの計画から実施、評価までの仕組みづくりをご支援しています。詳しくは以下からガイドブックをダウンロードしてご覧ください。

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