カルチャーフィット採用

カルチャーフィット採用の意味と面接での質問例



清水直樹
本記事ではカルチャーフィット®採用の意味と面接での質問例などをご紹介していきます。対象読者は中小・成長企業の経営陣の方になります。ぜひご活用ください。

※今回のテーマである「カルチャーフィット採用」は、社長が現場にいなくても会社が成長し続ける「仕組み」を作る、という大きな考え方の中の、特に重要な要素の一つです。

より詳しい全体像については、私たちの考え方の中心となるこちらの記事で解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

▶︎「経営者不在でも成長するための仕組み化」の全体像はこちら

カルチャーフィットの意味とは?

カルチャーフィットとは、簡単に言えば、採用候補者個人の価値観や信念、仕事への姿勢が、その会社の企業文化(カルチャー)や大切にしている価値観(コアバリュー)と合っている状態のことです 。単に能力が高いだけでなく、会社の目指す方向や雰囲気に共感し、同じ方向を向いて進んでいける人材を採用していく考え方です。

なぜ今、カルチャーフィットが重要なのか?

現代は、転職が当たり前の時代です。多くの働く人は、かつてのように「我慢して頑張る」ことよりも、「納得して関わる」ことを仕事に求めるようになりました。このような状況で、会社の価値観と合わない環境に身を置くことは、働く人にとって大きなストレスとなり、早期離職の原因となります。会社にとっても、採用と教育にかけた時間と費用が無駄になってしまいます。だからこそ、採用の段階で価値観が合うかどうかを見極めることが、これまで以上に大切になっているのです。

「文化は戦略を食べる」と言われる理由

経営の世界には、「文化は戦略を食べる(Culture eats strategy for breakfast.)」という有名な言葉があります

カルチャーフィットは戦略実行の上でも大事

これは、どれだけ優れた事業戦略を立てても、それを実行する社員たちの間に良い文化がなければ、戦略は絵に描いた餅に終わってしまう、という意味です 。特に、ひとりの影響力が大きい中小・成長企業においては、会社の文化を守り、育てるための採用が極めて重要になります

スキルフィットとの違いと関係性

カルチャーフィットとしばしば比較されるのが「スキルフィット」です。スキルフィットとは、その仕事に必要なスキルや経験を持っている人を採用することです

これまで日本の採用では、このスキルフィットが重視される傾向にありました。もちろん、仕事を進める上でスキルは不可欠です。しかし、カルチャーフィットとスキルフィットは対立するものではなく、お互いを補い合うものと考えるべきです

下の図を見てください。採用や人事評価の際によく使われる考え方です

採用優先度はこう判断する

この図の4つの領域は、それぞれ以下のように判断します。

① (右上の領域:スキルもカルチャーもフィット) :文句なしの即採用です 。スキルと価値観の両方を兼ね備えた、理想的な人材です。

② (右下の領域:カルチャーはフィットするが、スキルが不足) :その人の将来性に注目します 。入社後にスキルを伸ばせる余地があるか、そして何より、会社にその人を育てる「仕組み」があるかが採用の判断基準になります 。価値観が合っていれば、大きな成長が期待できます。

③と④ (左側の領域:カルチャーがフィットしない) :カルチャーフィット採用を重視するなら、スキルが高くても(③)、そうでなくても(④)、採用は見送るべきという判断になります

特に注意すべきなのが、③の人材です。スキルが高く成果を出すため、採用してしまいがちですが、長期的にはその人の価値観に合わない言動が、チーム全体の士気や文化に悪影響を及ぼす可能性があります 。採用時にこの判断をすることが、将来の組織を守る上で非常に重要です。

カルチャーフィット採用のメリットと注意点

カルチャーフィット採用を導入することは、企業にとって多くの良い影響をもたらしますが、同時に知っておくべき注意点も存在します。ここでは、その両面を具体的に解説します。

導入で得られる4つのメリット

まずメリットからです。

従業員の定着率向上と離職率の低下

自分の価値観に合う会社で働くことは、社員にとって「納得して関わる」ことにつながります。仕事への満足度が高まり、会社への愛着が深まることで、早期離職を防ぎ、定着率の向上が期待できます。

組織の一体感と生産性の向上

社員が共通の価値観を持っていると、コミュニケーションが円滑になり、チーム内での協力体制が生まれやすくなります。意思決定のスピードも上がり、組織全体としての一体感と生産性の向上が見込めます。

採用ブランドイメージの向上

社員が生き生きと働く姿は、会社の魅力として外部に伝わります。「あの会社で働きたい」と考える優秀な人材が集まりやすくなり、採用活動を有利に進めることができます。

候補者自身もやりがいを感じやすい

自分の信じる価値観と会社の方向性が一致していると、社員は自らの仕事を「意味のある仕事」として捉えやすくなります。結果として、日々の業務に高いモチベーションとやりがいを感じながら取り組むことができます。

知っておくべき2つの注意点と対策

カルチャーフィット採用は私たちも推奨している考え方ですが、注意点もあります。

注意点1:多様性の喪失リスク

カルチャーフィットを重視するあまり、似たような経歴や考え方の人ばかりが集まってしまうと、組織の多様性が失われ、新しいアイデアや革新(イノベーション)が生まれにくくなるのではないか、という懸念があります。


この問題について、「ビジョナリーカンパニー」の著者ジム・コリンズ氏は、非常に的確な考え方を示しています。それは、「社員のスキルや背景には多様性があったほうが良いが、コアバリューの多様性は避けるべきである」というものです。

つまり、性別や国籍、経歴といった表面的な部分では多様性を歓迎しつつも、会社として「何を正しいと考え、何を大切にするか」という根本的な価値観は、全員が共有しているべきだということです。

▶ビジョナリーカンパニーZEROの要約はこちらで詳しく解説しています。

注意点2:「仲良し集団」になるリスク

カルチャーフィットを、「自分と気が合いそうな人、仲良くなれそうな人を採用すること」と勘違いしてしまうのは、よくある間違いです。 これは「一緒にビールを飲みに行きたい仲間かどうか」で判断する「ビール・テスト」と呼ばれるものですが、本来のカルチャーフィットとは異なります。

面接官と出身地や出身校が同じだったり、同じスポーツをしていたりすると、話が盛り上がって「この人とはうまくやっていけそうだ」と感じてしまうかもしれません。 しかし、これでは単なる「仲良し集団」ができるだけで、厳しいビジネスの場面で共に成果を出していけるチームにはなりません。

大切なのは、個人的に仲が良いかどうかではなく、その人が自社の価値観を共有できる人物かどうかです。 価値観の共有という、客観的な基準で判断することを忘れてはいけません。

【5ステップで実践】カルチャーフィット採用の導入方法

カルチャーフィット採用は、単なる思いつきや面接官の感覚に頼るものではありません。再現性のある「仕組み」として会社に導入することで、誰がやっても精度の高い採用が実現できます。ここでは、その具体的な5つのステップをご紹介します。

Step 1: 自社のカルチャー(企業文化)を定義・言語化する

全ての始まりは、自分たちの会社のカルチャーとは何かを、誰もがわかる言葉で明確にすることです。これが曖昧なままでは、採用の判断基準も曖昧になってしまいます。

カルチャーを形づくる4つの要素を理解する

そもそもカルチャー(企業文化)は、以下の4つの要素から成り立っていると言われています 。まずはこれらの要素を理解しましょう。

  1. コアバリュー その会社が大切にしている基本的な価値観です 。多くは創業メンバーの個人的な価値観から生まれ、会社の理念体系の一つとして定義されます
  2. 構造 組織図や人事制度、評価制度など、コアバリューを実現するために作られた社内の様々な仕組みや決まり事です 。この構造が社員の行動に影響を与え、文化を形づくります
  3. 人工物 オフィスのデザインやレイアウト、ロゴ、制服、商品パッケージなど、目に見えるモノのことです 。シリコンバレーの企業にあるビリヤード台などは、この典型例です
  4. 象徴的行動 その会社の文化をよく表している象徴的な行動を繰り返すことで、カルチャーはより強固なものになっていきます 。例えば、「毎週月曜の朝は全員でオフィスの周りを掃除する」といった行動です。

(コラム)自社のコアバリューを発見するための具体的なワークショップ手順

コアバリューは、社長が一人で決めるよりも、社員を巻き込んで一緒に発見していくことで、全員が納得感を持つことができます。以下に簡単なワークショップの手順を紹介します。

  1. メンバーを集める: 経営陣と、各部署から数名の社員に参加してもらいます。
  2. 最高の瞬間を語り合う: 「これまでで最高のチームだった瞬間」「お客様に心から感謝された経験」など、過去の成功体験や輝かしい瞬間を全員で共有します。
  3. 共通の価値観を探す: それらのエピソードに共通する行動や考え方、価値観をキーワードとして付箋などに書き出していきます。(例:「まずやってみる」「相手の期待を超える」「仲間を信じる」など)
  4. 絞り込み、文章化する: 集まったキーワードをグループ分けし、議論を重ねて自社が最も大切にしたい価値観を3〜5つに絞り込みます。最後に、誰もが理解できる具体的な行動指針として文章にまとめます。

▶コアバリューの策定についてはこちらで詳しく解説しています。

Step 2: 採用基準を明確にする

カルチャーを言語化できたら、それを採用における具体的な「判断のものさし」に落とし込みます。

 定義したカルチャーを、具体的な評価項目に落とし込みます。

例えば、「挑戦を尊重する」というコアバリューがあるなら、評価項目として「過去に、失敗のリスクを恐れず新しいことに挑戦した経験があるか」「現状維持ではなく、常により良い方法を考えようとする姿勢があるか」といった具体的な基準を設定します。これにより、面接官による評価のブレを防ぎます。

Step 3: 候補者に自社のカルチャーを正しく伝える

採用活動は、会社が候補者を見極める場であると同時に、候補者から「選ばれる」場でもあります。自社のカルチャーを正直に、そして魅力的に伝えることで、入社後のミスマッチを防ぎます。

採用サイトや求人情報で魅力的に伝える方法を解説します。

単に事業内容や条件を記載するだけでなく、言語化したコアバリューや、それを体現している社員の日常のエピソードを紹介しましょう。オフィスの様子がわかる写真や、社員インタビューの動画などを活用するのも効果的です。

面接の場で、候補者の疑問に誠実に答えることの重要性を説きます。

面接では、候補者からの質問時間を十分に確保しましょう。会社の良い面だけでなく、現在抱えている課題や、これから乗り越えようとしている壁についても正直に話すことで、候補者との間に信頼が生まれます。

Step 4: 面接で候補者の価値観を見極める

このステップはカルチャーフィット採用の最重要項目です。具体的な質問方法や見極めの技術については、次の章で詳しく解説します。

Step 5: 内定後のフォローと入社後の定着支援

採用は、内定を出して終わりではありません。入社後に社員が力を発揮して初めて成功と言えます。

内定から入社までの期間で、カルチャーへの理解を深めてもらう工夫を提案します。

内定者と既存社員が交流できる懇親会を開いたり、社内イベントに招待したりすることで、入社前に会社の雰囲気を肌で感じてもらい、不安を解消します。

入社後の研修(オンボーディング)で、スムーズに組織に馴染めるよう支援します。

新入社員向けの研修では、業務内容だけでなく、会社の理念やコアバリューが生まれた背景などを改めて丁寧に伝えます。また、先輩社員が新入社員をサポートするメンター制度などを導入し、新しい仲間が孤立せず、気軽に相談できる環境を作ることも有効な「仕組み」です。

▶オンボーディング(新入社員入社後研修)についてはこちらで詳しく解説しています。

 

カルチャーフィットを見極めるための面接質問

これまでカルチャーフィットの重要性をお伝えしてきましたが、では、実際にどのようにしてカルチャーフィットする人材を見極めればよいのでしょうか?

質問の質を高める「STARメソッド」

カルチャーフィットする人材≒価値観が共有できる人材

ということになりますので、何よりその人がどのような価値観を持っているのかを判断するための面接が必要になってきますね。

よく使われる面接質問としては、STARメソッドがあります。


star面接の質問

これは、Situation(状況)Task(課題)Action(行動)Result(結果)の頭文字をとった言葉です。S→T→A→Rの順番に、過去の行動について質問をすることで、その人の特性や価値観、行動の動機などを把握できます。

  • Situation(どんな状況?)
    • 状況、環境、背景、目標、きっかけ、チーム体制など
  • Task(どんな課題や役割を担ったか?)
    • 課題、職務、任務、役割、難易度など
  • Action(具体的にどんな行動を取ったか?)
    • 具体的な行動、その理由、周囲からの助言、創意工夫、軌道修正など
  • Result(どんな結果を導き出したか?)
    • 結果、成果、学んだこと、いま振り返って改善すべきことなど

この流れを使いながら、自社のコアバリューを共有できる人なのかの質問リストを作っていきましょう。

事例:ザッポス社のカルチャーフィットのための面接質問例

以下にはカルチャーフィット採用に力を入れているザッポス社の質問例を挙げさせていただきます。ザッポス社は企業文化を表すコアバリューを10個定めており、それぞれに対応する面接質問の例を用意しています。

1.サービスを通じて感動を届ける(Deliver WOW Through Service)

  • あなたが経験した中で最悪のカスタマーサービス体験は何でしたか?どのように対処しましたか?それはあなたの見解を変えましたか?
  • これまでで最高のカスタマーサービス体験を得たのは何ですか?何がそんなに特別なのですか?
  • 会社の方針で素晴らしいサービスを提供できなかった時代の例を挙げてください。ルールに従う必要がなければ、あなたは違った方法で何を行ったでしょうか?
  • あなたは現在の仕事における他の従業員とは何が違いますか?
  • あなたが今までに受け取った最高の賛辞は何ですか?賛辞についてどのように感じましたか?

2. 変化を起こし、喜んで受け入れる(Embrace and Drive Change)

  • あなたが大多数の視点に同意しなかった時について教えてください。結果はどうでしたか?
  • 職場や仕事で発生した大きな変更について説明してください。その変化にどのように適応しましたか?
  • 多くの時間とエネルギーを費やしたプロジェクトやタスクが失敗した経験について教えてください。次に何をしましたか?
  • アイデアをチームに提示した時のことを教えてください。どのような反応でしたか?
  • 自分が変化しなければいけない時を知るにはどうすればよいでしょうか。

3.楽しさと少し風変わりなものを作り出す(Create Fun and A Little Weirdness)

  • あなたは何に情熱を注いでいますか?(あなたの趣味は何ですか?)
  • 同僚とチームワークを促進するための活動やイベントを計画する場合、あなたはどこからスタートしますか?
  • 現在または以前の職場では、楽しさや改善を生み出すために何をしましたか?
  • 日々の仕事の中で一番楽しかったのは何ですか?
  • 一生懸命働き、一生懸命遊ぶ仕事環境について、その組織の長所と短所についてあなたの見解を教えてください。

4.冒険し、クリエイティブに、そして心を開く(Be Adventurous, Creative, and Open-Minded)

  • あなたが職場で障害にぶつかった時について教えてください。障害と最終的な結果は何でしたか?
  • あなたが行ったリスクが大きい決定は何ですか?状況はどうでしたか?どうされましたか。
  • あなたがこれまでやったことのない仕事、やる方法がわからない仕事に直面したときについて教えてください。その仕事をどうこなしましたか?
  • あなたが取り組んできた最も創造的なプロジェクトを説明してください。あなたの貢献は何でしたか?プロジェクトはどのように評価されましたか?

5.成長と学びを追い求める(Pursue Growth and Learning)

  • 方向性が見えないプロジェクトの例を教えてください。あなたはそれについてどのように感じましたか?
  • 前回、上司や同僚から受けたフィードバックは何でしたか?あなたはそれをどう思いましたか、そして改善するために何をしましたか?
  • この仕事はあなたの長期的なキャリアプランに影響を与えますか?
  • 自分で設定した目標について教えてください。あなたがそれに向かってしたことは何ですか?現在の会社ではトレーニングを提供していますか?あなたが受けたトレーニングはなんでしたか?あなたは何を学びましたか?

6.コミュニケーションでオープンで嘘のない関係を構築する(Build Open and Honest Relationships With Communication)

  • 同僚同士が反発しあった経験について教えてください。どのように解決しましたか?
  • 職場で、自分の行動やコミュニケーションのスタイルを変化させなければならなかった時について教えてください。
  • 仕事で助けを求めた経験について教えてください。助けを求めることについてどのように感じましたか?
  • 何かを伝えようとして職場で誤解されていると感じた時のことを教えてください。どのように処理しましたか?
  • 以前の仕事では、他の同僚との関係をどのように築きましたか?

7. 積極的なチームとファミリースピリットを作り出す(Build a Positive Team and Family Spirit)

  • それはあなたの本来の仕事ではないにもかかわらず、あなたが同僚を助けた経験について教えてください。
  • チーム/グループで作業していて、1人のメンバーが積極的に参加していなかった経験の例を挙げてください。あなたは何をしましたか。
  • チームでの作業で直面した最大の課題は何ですか?どのように処理しましたか?
  • あなたが取り組んだ最も好きなチームプロジェクトは何ですか?
  • あなたが許せない同僚の行動はどんなものですか?誰かがそれをやっているとき、あなたはそれをどのように処理しますか?

8. 少量で多くをこなす(Do More With Less)

  • 仕事を与えられたが、仕事を完了するために必要なツールを持っていなかった経験について教えてください。何をしましたか。
  • どのような条件下であれば、あなたは最高の仕事を出来ますか?
  • より効率的にしたい、または排除したい現在のタスクは何ですか? そのためにどのように取り組んでいますか?
  • この1年で自分をどのように改善しましたか?

9. 情熱的に、意志を固く(Be Passionate and Determined)

  • 不可能な仕事が割り当てられていると感じたらどうしますか。
  • 自分が信じているもののために戦わなければならなかった経験について教えてください。どうされましたか?
  • 仕事のモチベーションを「オフにする」ものは何ですか?
  • あなたは何を最も誇りに思っていますか?
  • 楽しくない、挑戦的でない仕事を完了するために、あなたはどのように自分を動機づけしますか?

10. 謙虚に(Be Humble) 

  • 他の人や地域社会を助けるために何かをした経験を教えてください。
  • あなたの最大の強みは何ですか?その強みは、このポジションでどのように役立ちますか?
  • 仕事で最も重要なことは何ですか?最も重要でないことは何ですか?
  • 誰かがあなたの伝記を書くとしたら、そのタイトルは何になりますか?また、それはなぜですか?
  • これまでに受け取った中で最も役に立ったフィードバックは何でしたか?同意しなかったフィードバックは何ですか?

▶ザッポス社のコアバリューや経営手法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

カルチャーフィット採用のよくある疑問(Q&A)

カルチャーフィット採用を導入するにあたり、多くの経営者様が抱えるであろう疑問にお答えします。

Q1. スキルは高いがカルチャーに合わない人(マトリックス③の人)はどう扱うべき?

これは非常に悩ましい問題です。元の記事でも触れた通り、採用や人事評価のマトリックスにおいて、このタイプの人が最も対応に困る存在と言えます。

採用場面の場合: 結論から言えば、採用は見送るべきです。目先の成果やスキルは魅力的かもしれませんが、長期的に見れば、その人の言動がチームの和を乱し、大切に育んできた企業文化を少しずつ壊していく可能性があります。「一人の腐ったみかんが、箱全体のみかんを腐らせる」という状況になりかねません。

既存社員の場合: すでに在籍している場合はさらに難しい問題です。しかし、成果を出しているからといってその人の価値観に合わない行動を放置してしまうと、「この会社では、理念や価値観を守らなくても成果さえ出せば許される」という誤ったメッセージを他の社員に与えることになります。これは、真面目に理念を体現しようと努力している社員の意欲を削ぎ、会社全体のモラルを低下させる深刻な事態につながります。まずは、面談などを通じて会社の価値観を丁寧に伝え、行動の改善を促すことが重要です。

Q2. リモートワーク中心の組織では、どう見極めれば良い?

対面の機会が少ないリモートワーク環境では、候補者の価値観を見極めるのが難しいと感じるかもしれません。しかし、見るべきポイントを変えれば、むしろカルチャーフィット度合いを測りやすくなる側面もあります。例えば、以下のような点を確認します。

  • タスク管理の方法: どのように仕事の進捗を自己管理し、報告・連絡・相談を行ってきたか。
  • オンラインでの振る舞い: ビデオ会議での発言の仕方や、チャットツールでの文章から、その人のコミュニケーションスタイルや他者への配慮が読み取れます。
  • 課題への向き合い方: 指示がなければ動けないか、それとも自ら課題を見つけて解決しようと動けるか。

リモートワークでは、一人ひとりが会社の理念を理解し、自律的に動くことがより一層求められます。その素養があるかどうかが、カルチャーフィットの重要な判断基準となります。

Q3. 導入に失敗してしまう企業の特徴は?

カルチャーフィット採用を導入しようとしても、うまくいかない企業にはいくつかの共通点があります。

経営層のコミットメント不足

経営者自身がカルチャーフィットの重要性を本気で信じておらず、「流行っているから」という理由で形だけ導入しようとしても、現場には浸透しません。社長や役員が、誰よりも会社の理念や価値観を体現する姿勢が不可欠です。

カルチャーの定義が曖昧

「挑戦」「誠実」といった言葉を掲げるだけで、それが具体的にどのような行動を指すのかが定義されていなければ、面接官の主観で判断するしかなくなり、評価がブレてしまいます。先述したように、自社のカルチャーを具体的な言葉で定義することが全ての始まりです。

面接官の「勘」に頼っている

明確な評価基準や質問項目(仕組み)がないままでは、結局「自分と気が合いそうな人」を選ぶ「仲良し集団採用」に逆戻りしてしまいます。客観的な基準に基づいた、再現性のある採用の仕組みを構築することが成功の鍵です。

カルチャーフィットの仕組みづくりなら仕組み経営

本記事では、カルチャーフィット採用について、その意味から具体的な導入ステップ、面接での質問例まで詳しく解説してきました。

カルチャーフィットとは、単に「仲が良く、気の合う人」を集めることではありません。会社の核となる価値観(コアバリュー)を明確に定義し、それに心から共感してくれる仲間を見つけ、共に成長していくための再現性のある「仕組み」です

なぜ、私たちがこれほどカルチャーフィットを重視するのか。 それは、会社を「特別な人が頑張る場所」ではなく、「普通の人が輝ける場所」にしたいと心から願っているからです。価値観が合う環境では、人は無理に自分を偽る必要がありません。「納得して関わる」ことができ、ごく自然に、そして前向きに自分の力を発揮してくれます。社員一人ひとりが持つ力を引き出す環境を整えることこそ、これからの経営者に最も求められる役割なのです。

今回のカルチャーフィット採用は、その環境作りのための重要な仕組みの一つに過ぎません。「仕組み経営」では、採用だけでなく、日々の業務、人材育成、評価など、会社経営のあらゆる側面を仕組み化し、経営者が現場にいなくてもビジネスが成長し続ける状態を目指します

もし、あなたも「人」に依存する経営から抜け出し、仕組みで勝手に成長する会社を創りたいとお考えなら、まずはその第一歩として、仕組み化の考え方を詰め込んだ「仕組み化ガイドブック」を手に取ってみてください。


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