ポッドキャストでも社内コミュニケーション活性化をテーマにしています。
社内コミュニケーションが不足するとどうなるか?
最初に、社内コミュニケーションが不足すると具体的にどうなるのかを見てみましょう。
人間関係の摩擦が増え、余計な仕事やストレスの増大
社内コミュニケーションが円滑な会社ほど、社員の働きやすさは増すと言えます。組織で仕事をしていれば、社内の誰かに仕事をお願いするという場面が必ずあるわけなのですが、その際、依頼する相手と普段からコミュニケーションが取れていて、依頼しやすい関係性になっていれば、多少無理な依頼でも頼みやすいはずです。
個人的な話をしますと、私が新卒で会社に入ったとき、他部門の人に仕事を依頼するのが非常にやりにくかった記憶があります。これは中途採用ばかりの会社に新卒で入ったから、ということもありますが、普段、他部門の人たちとは接する機会がなかったからです。なので、社内の人なのに、お客さんに頼むかそれ以上の気を使っていた記憶があります。
社内全体がこんな状態であれば当然ながら仕事の生産性は劇的に下がってしまいますし、社員のストレスも増大しますね。
理念の共有不足から来るサービスや商品の質の低下
社内コミュニケーションが不足すると、社員は自分の考えで勝手に判断し、行動するようになります。こうなると組織の力はなくなり、個人事業主の集まりのような集団になってしまいます。社員ごとに顧客への対応が変わったり、商品やサービスの品質が人によってバラバラ、ということになります。結果、どうなるかというと、クレームが増えたり、顧客の離反が増えることになり、業績の悪化につながります。
社内コミュニケーションの大きな目的は、理念の共有だと言えます。日々、なんのために仕事をするのか?どこを目指すのか?顧客にどのような価値を届けるのか?これらを社内で共有することで、組織力が活かされ、業績につながります。
小さな火種が大きな火種に
会社を経営していれば、クレームやミスなどのトラブルのひとつやふたつは発生するものです。それらを防ぐ仕組みも必要ですが、同時に、トラブルが起こった後にいち早く対処することも大切です。社内コミュニケーションがうまく取れている会社では、トラブルの火種が小さいうちに社内で共有され、対策が打たれます。
一方、社内コミュニケーションが円滑でない会社の場合、小さな火種が放っておかれたり、担当者が自分だけで解決しようとしてしまったりすることで、そのうち大きな火種へと燃え盛ってしまいます。こうなると対処するのも大変です。トラブルを未然に防いだり、ちょっとしたことで解決できるうちに対処するためにも、社内コミュニケーションが必要なのです。
エンゲージメントの低下
エンゲージメントとは、簡単にいえば会社と社員との一体感です。会社の目的と社員個人の目的が一致しており、会社と社員が相互依存の関係になります。エンゲージメントが高い会社は社員1人あたりの収益が26%高くなるというデータがあります(Taleo Research、2009年)。また、Towers Perrin(2003)の調査によると、エンゲージメントが高い社員が多いほど、1年間の収益成長率で業界平均を超える可能性が高くなることがわかっています。
一方、社内コミュニケーションが不足すると、エンゲージメントが低くなりがちと言えます。なぜならば、会社の目的やビジョン、計画などを社員と共有する機会が減るからです。また、会社側も社員の個人的な目的や計画を知る機会が減ります。そうなると会社と社員の共通項を見つけることが難しくなり、エンゲージメントが下がってしまうのです。
社内コミュニケーションを活性化するメリット
一方、社内コミュニケーションが活発であることのメリットは、上記の逆になります。
- 社員同士の人間関係が円滑になり、働きやすさが増える
- 理念共有により商品、サービスの質向上、均一化
- トラブルへの早期対処、または未然対応
- エンゲージメントの向上=業績への貢献
社内コミュニケーションの活性化に必要な3つの要素
次に、社内コミュニケーションを活性化に必要な3つの要素について見てみましょう。
それは、
- 社内コミュニケーションの内容
- 社内コミュニケーションのリズム(頻度)
- 社内コミュニケーションの方法(伝え方=メディア)
です。
社内コミュニケーションの課題は社内SNSなどのツールを導入すれば解決するだろう、と考える方もいるかもしれませんが、それだけでは十分ではありません。上記3つの要素で考えると、ツールはあくまで、コミュニケーションのひとつの方法(メディア)でしかありません。そのほかに、何をコミュニケーションするのか?(内容)、いつコミュニケーションするのか(リズム・頻度)が大切です。
次からより詳しく見ていきましょう。
社内コミュニケーションの内容
社内コミュニケーションの内容は更に、公式的なものと非公式的なものの2つに分けられるでしょう。
公式的な社内コミュニケーションの内容
公式的なコミュニケーションには、以下のようなものが含まれます。
- ミッション、ビジョン、バリューなどの理念
- 各種戦略や計画
- 顧客情報の共有
- 上司部下間の仕事の報告やフィードバック
- 部門間の情報共有
- 社内ルールや規則、規定等
これら公式的なコミュニケーションについては正しくミーティングや教育の場を設定し、全社員が正しく情報を受け取ったり、または発信したりできるようにすることが大切です。
非公式的な社内コミュニケーションの内容
非公式的なコミュニケーションの内容は様々です。社内での噂話から、各社員の個人的な話、上司に報告するほどでもない(または言えない)情報、等々、多岐にわたります。
(注意)公式的コミュニケーションだけでは不十分な理由
ビジネスライクに考える組織では、公式的なコミュニケーションさえしていればいい、と考える人もいるでしょう。また、リモートワークが普及している組織では、最低限必要なときに必要な人とだけ話す、ということになるため、強制的に公式的なコミュニケーションだけに終始してしまうこともあります。
一見、公式的なコミュニケーションだけしていれば効率的に思えるかもしれませんが、組織の力を十分に活かすためには、それだけでは不十分と言えます。
現在のビジネスで最も重要な資産は、社員がそれぞれ持っている知識と言えます。社員が持っている技術的、専門的な知識はもちろん、ほかの社員や顧客に関する知識です。
良く知られているように、この知識には、暗黙知と形式知があります。
暗黙知とは、言葉にしづらい、または、まだされていない知識です。反対語は、形式知で、これは言葉や図で説明できる、または、すでにされている知識のことを指します。
社員の知識を最大限に活用するには、野中郁次郎氏がSECIプロセスで明らかにしたように、以下のサイクルを回すことが大切なのです。
- 共同化(Socialization)
- 表出化(Externalization)
- 連結化(Combination)
- 内面化(Internalization)
公式的な社内コミュニケーションに終始する最大の問題点は、SECIプロセスの出発点である共同化、つまり、暗黙知の共有がされにくいことにあります。
公式的な社内コミュニケーションは多くの場合、メールやチャット、またはレポートや報告書など、すでに形式化されている知識しかやり取りがされません。そのため、共同化が起こらないのです。
本来、共同化を行うためには、社内で雑談が生まれる場(ランチや飲み会)を作ったり、歩きまわるマネジメント(Management By Walking Around:経営陣が社内を歩き回って社員と雑談を交わしたり、雰囲気を感じたりすること)が必要になります。
リモートワークが普及している会社において共同化を促進するためには、
- ミーティングの途中などに雑談を出来る時間を意図的に取ったり、
- 雑談専用のチャットルームを作ったり、
- リモートでランチを一緒に食べたり、
- 一定時間、ウェブ会議システムを繋ぎっぱなしで仕事したり、
などの工夫が必要になるでしょう。
社内コミュニケーションのリズム(頻度)
次に社内コミュニケーションのリズム(頻度)についてです。これは社内コミュニケーションに限らず、人間関係はコミュニケーションの頻度が高いほど親密になると言えます。私たちが講座を開催するときの経験則でいうと、
- 1日8時間×2日間=計16時間の講座
よりも、
- 1日2時間×8週間=計16時間の講座
のほうが受講生同士のその後の関係性は長続きするようです。
つまり、一時的に集中してコミュニケーションするよりも、1回1回は短くても長い期間にわたってコミュニケーションするほうが関係性構築には有効のようだ、ということです。これを組織内に応用すると、社内コミュニケーションをする頻度を仕事の邪魔にならない程度に頻繁にしたほうが良い、ということになります。
私たちが推奨する方法は、
- 1on1ミーティング:週一回
- 月次ミーティング
- 四半期ミーティング
- 年次ミーティング
を設定することです。
これらのミーティングを行うことで、
- 考える
- 計画する
- 実行する
という経営のリズムを作ります。
多すぎるミーティングは嫌われがちですが、正しくミーティングの頻度と内容を設定すれば、ミーティングを行うことでかえって無駄なやり取りや仕事を減らすことができるのです。
(参考)1on1ミーティングのやり方についてはこちら:
1on1ミーティング完全ガイド。話すことがなくて困ったら読む記事。
(参考)定例会議のやり方についてはこちら:
定例会議って意味あるの?進め方やアジェンダ(議題)について解説
社内コミュニケーションの方法(伝え方=メディア)
社内コミュニケーションの最後の要素、方法(伝え方=メディア)についてです。コミュニケーションの方法についての原則は、
メディア(伝え方)もメッセージと同様に重要である
ということです。
言い方を変えれば、
大事なメッセージは、それが大事であるかのように伝えなくてはいけない
ということです。
たとえば、会社の理念を共有するのに社員と飲みに行ったときによく話している、という社長もいたりするのですが、これだけではダメなのです。
会社の理念という大事なメッセージを伝える、さらにわかってもらうためには、大事なメッセージを伝えるメディアを選ばなくてはいけません。たとえば、ホテルの会議室を使って正式なプレゼンテーションをする、1日時間を取って理念共有の場を創る、等々、伝え方に気を配る必要があります。
先ほど言った通り、飲み会の場も暗黙知を共有するという意味では大切なのですが、会社の理念を正式に伝えるための場とは言えません。
普段の業務連絡程度のコミュニケーションであれば、メールやチャットでもいいでしょう。しかし、大切なことを伝えるためには、それなりの場を演出することが大切と言えるでしょう。
社内コミュニケーションにおける社長の役割と能力
では最後に、社内コミュニケーションにおける社長の役割と能力についていくつかポイントをご紹介しておきたいと思います。
社長の役割は場づくり
社内コミュニケーションを活性化させようと思って、社長が一方的に話す回数や量を増やすのは逆効果です。大半の会社においては、社長の演説量はもう十分なのです。
社内コミュニケーションは、社員間でのコミュニケーションを増やすこと、または社員から社長へのコミュニケーションを増やすことに大きな目的があります。ここでの社長の役割は、そのような場づくりをすることです。具体的には、
- ミーティングの仕組み
- 全員が発言する仕組み
- 発言しやすい文化
などを設計することです。
難しいことを簡単に、大切なことは何遍も
社内コミュニケーションする場合には、なるべく難しい内容が流通しないようにすることが大切です。今日はいったばかりの新人も、学校を出たばかりの新卒でもわかるような言葉を使うように促します。
また、大切な内容に関しては皆が何回も目にするように、繰り返しコミュニケーションすることが大切です。
タフなことを伝えるコミュニケーションを学ぶ
社長をしていれば時に社員に対してタフな内容を伝えないといけないこともあります。たとえば、業績の悪化について伝えないといけないとき、社員の怠惰やミスを治してもらいたいとき、主要なメンバーが辞めてしまい、みんなの不安があるとき、などです。
このような時に社長は逃げるわけにはいけません。伝えるのが難しいテーマであっても、明確にコミュニケーションをする方法を学ばなくてはいけません。
ロジカルに伝えるコミュニケーションを学ぶ
会社の計画や戦略、または業務連絡などをコミュニケーションする場合には、それらをロジカルに伝えることが大切です。
- このような理由でこうなる
- 〇〇だから、こうする
というように、聞く人が納得できる形で説明できることが求められるわけです。
インスピレーションを与えるコミュニケーションを学ぶ
一方、会社のビジョンや価値観については、より感情に訴え、聞く人にインスピレーションを与えるコミュニケーションをすることが必要です。
ビジョンや価値観などは、社長の個人的な想いから生まれるものであり、”分析した結果、このビジョンで行こうと思う”、とか、”計画達成のためにはこの価値観が必要だ”というようなものでも無いからです。
といっても、どこかのカリスマ社長に倣って流暢に話す必要はありません。自分の内面や経験から出てくるストーリーを大切にし、それを繰り返し伝えることで、この能力は高まっていきます。
社内コミュニケーションの仕組みを作るなら
以上、社内コミュニケーションについて、内容、頻度、伝え方などをご紹介してきました。なお、仕組み経営では、社内コミュニケーションを上手く設計するための仕組みづくりをご支援し、理念共有度が高く、エンゲージメントが高い会社作りをご支援しています。詳しくは以下からご覧ください。