KPTとは?
KPT(法)とは仕事の改善や、これまでの活動の振り返りに適したフレームワークです。改善したい対象に対して、Keep(続けること)、Problem(不満点)、Try(試すこと)と順に考えを進めることで、改善を続けることが出来ます。
KPTは以下の活用法があります。
個人でKPTを活用する
自分だけで仕事を振り返るときに活用します。毎週や毎月など定期的にKPTを行うことで、より効果の高い仕事のやり方を見つけることが出来ます。
上司部下でKPTを活用する
上司部下のミーティング(1on1)などでKPTを活用することが出来ます。
チームでKPTを活用する
プロジェクトチームでKPTを繰り返すことで、目標の統一やチームワークの強化を行うことが出来ます。
KPTのフォーマット
図 のように模造紙やホワイトボードを三つの欄に仕切り、左上に Keep、左下に Problem、右にTry と書きます。さらに、上部に Theme(テーマ)を書いてからはじめると、何のためにKPTを行うのかが明確になるため、参加者の意識が揃いやすくなり、生産的な振り返りができるようになります。
KPTの進め方
では、KPTを進める方法を見ていきましょう。
1.進行役(ファシリテーター)を決める
KPTを進めるにあたり、ファシリテーターを指定しておきましょう。ファシリテーターの役割は主に以下の通りです。
- 会の準備をする
- 時間を守る
- ルールを周知する(後述)
- 行動の合意をする
2.KPTのテーマを決める
KPTは改善や振り返りのフレームワークですが、何のためにやるのかを明確にします。基本的にチームで集まる前に決めておくのが良いでしょう。目的を決めておくことで、話が脱線するのを防ぐことが出来ます。
3.用紙と付箋を準備する
KPTを進めるにあたり、TrelloなどのITツールを活用する方法もあります。ただし、より議論を深めたり、場の力を活用してアイデアを出すには、大きめのKPTのフォーマット(上記参照)と付箋を使ってアナログで行うのがお勧めです。
4.個人でKPTを行う
まず個人個人で振り返りを行い、付箋にKPTを出していきます。
Keep:今やっていて、これからも続けたいこと
Keepには、「今やっていて、これからも続けたいこと」を「~する」という動詞形式で具体的に書きます。
些細なことでも書き出す
Keepは些細なことでも構いません。たとえば、チーム内で挨拶をするとか、朝礼をするとか、ランチを一緒に取る、などでもいいでしょう。
チームとしてのKeep、個人としてのKeep
Keepを書き出す際には、チームとして続けたいことだけではなく、個人的に続けたいことでも構いません。Keepはその人個人の仕事のコツやノウハウが現れることもあります。「顧客訪問の前には、必ず先方の会社概要や社長のプロフィールを確認する」とか、「ミーティングの前には、自分の意見をまとめておく」などです。こういった暗黙知を表層化できるのもKPTのメリットになります。
Problem:問題と認識していること
Problemには、「問題と認識していること」を書きます。現在発生している問題だけではなく、将来的に発生しそうだと感じている問題)についても書くと良いです。
解決策は書かない
Problemを書くときには、「解決策まで書かない」ようにします。解決策はTryで考えるからです。例えば「機能が不十分で顧客満足度が低い」という問題を書いたとします。この場合、問題は「顧客満足度」が低いことですが、「機能が不十分」という言葉を付けることで、顧客満足度を上げるために機能を追加すればいい、という解決策まで暗示してしまっています。しかし、顧客満足度が低いのは他にも要因があるかもしれないのです。ですから、その要因分析や解決策については、Tryのところで考えるようにします。
不満や不安に置き換えてみる
問題と言うと、クリティカルな問題じゃないと挙げてはいけないのでは?と思ってしまう可能性もあるので、ファシリテーターの人は、問題を不満や不安に置き換えて、ちょっとしたことでもいいので挙げてもらうようにすると良いでしょう。
Try:試したいこと
Tryには「試したいこと」を書きます。行動に結び付けられるように、具体的に「〇〇する」という形で書きます。また、新たに始めることだけはなく、これまでやってきたことをやめることもありです。
Keepの強化案 or Problemの改善案
Tryの内容は基本以下の二つです。
- Keepの強化案・・・いまやっていることで、もっとこうしたら良くなる、というアイデア。
- Problemの解決案・・・こうしたら問題が解決するのでは?というアイデア。
いずれもまだアイデア段階で構いません。書いたらやらないといけない、となってしまうとアイデアに広がりが出ないので気を付けましょう。
行動を書く
Try は行動に焦点を当てた書き方だと実行力が高まります。たとえば、〇〇を意識する、〇〇を心がける、積極的に〇〇する、などの抽象的なTryでは、これまでと変わらない行動に陥りがちです。他人から見ても、たしかにやっているな、と認識できるTryにすることです。
5.チームで共有する
個人でKPTをやったら、フォーマットに付箋を貼り、チームで共有しましょう。Keep、Problem、Tryを一通り個人で全部行ってから共有するケースもあるようですが、それよりも各人Keepが終わったらいったんストップして、付箋を共有し、Problemに進むのがお勧めです。こうすることでその場にメリハリが起き、集中力が高まります。
6.KPT項目を整理する
各メンバーのKPTを共有したら、それぞれの項目から優先順位が高いアイデアをピックアップしていきましょう。
7.行動を決める
最終的に、Tryの中から行動に移すべき項目を特定し、やる人と期限を決めて会を終了します。次回集まる日程を決めておくと良いでしょう。
8.行動する
各メンバーが自分が行うべきことを行います
9.1に戻る
このプロセスを繰り返します。KPTは仕事を改善していくプロセスなので、何回やったら終わり、ということはありません。継続的に取り組む仕組みにしましょう。
KPTがうまく行かない?このポイントをチェック
KPTをやっているものの、どうもうまく成果が出ないのでやめてしまったというチームも良くあります。そこで、KPTがうまく行かないときのチェックポイントをご紹介していきます。
グラウンドルールを決める
これは振り返り会やKPTに限りませんが、会議にはグラウンドルールが必要です。たとえば、
- 開始時間、終了時間は厳守
- 人の話を遮らない
- 会議室を出るときには誰が何をやるかを明確にする
等です。基本的なことですが、こういったルールを会議室に貼りだしておくなどして徹底しましょう。
悪者探しをしない
KPTでは、Problemを出すというステップがあるので、どうしてもこんな問題がある、こんな問題もある、とネガティブな方向へ議論が行きがちです。同時に、その問題を個人のせいにしてしまうのも良くあることです。これは良くありません。仕事は仕組みで動いており、問題は人が起こしているのではなく、仕組みが起こしているのです。
テーマを具体的にする
テーマが抽象的だと、書き出す項目も曖昧になります。顧客満足度を上げるには?商品Aの成約率を高めるには?等具体的に設定しましょう。
思い付きで開催しない
そろそろKPTをやってみような、等と思い付きで開催しないことです。改善のリズムを作るためにも、振り返りのための時間をスケジュールに入れ込み、定期的に開催するようにしましょう。
安心安全な場を確保する
新人だからあまり意見を出せない、前回意見を否定されたから今回は遠慮する、というのではKPTを行う意味がありません。誰の意見でもいったん受け止める姿勢がチーム全体に求められます。これもグラウンドルールに入れておくと良いでしょう。
付箋に書き出す数を設定する
個人個人でKeep、Problem、Tryを書き出す際、「一人10個」というように指定するのも手です。個人任せにしてしまうと、ある人は一個しか出てこない、別の人は非常に些細なことまで15個書き出した、というようなことが起こります。これだとその後の流れに偏りが出来てしまう可能性があります。書き出す数を指定することで、各メンバーがその後の議論に平等に参加できるようになります。
分析中毒にならない
`Problemを共有すると、自然と問題の分析に議論が移ることがあります。ここで時間をかけてしまうと、チーム全体が分析中毒に陥ってしまい、時間が終わってしまう可能性があります。
言ったもの負けにしない
Tryから生み出した行動は、しかるべき人が担当するようにします。そのTryを出した人が担当する、ということにしてしまうと、みんな責任を負いたくなかったり、仕事を増やしたくないので、アイデアが出てきません。言ったもの負けにしないように、Tryと担当者は別で考えるようにしましょう。
ファシリテーターが前に出すぎない
ファシリテーターはあくまで進行役です。タイムキーパーや議論のまとめ、具体化が役割であることを認識しましょう。
KPTとPDCAの関係
KPTは仕事を改善していく仕組みですが、似た概念にPDCAがあります。言うまでもなく、Plan、Do、Check、Actionの略ですが、これとKPTはどういう関係性にあるのでしょうか。
これまでの流れを見ていただければわかりますが、KPTは振り返りを中心にしたフレームワークになります。したがって、PDCAの中では、主にCheckに当たる活動と考えてよいでしょう。もちろんTryでは改善案を出しますので、Actionも少し含まれる感じです。
PDCAを上手く回すためのツールとしてKPTを捉えると良いでしょう。
KPTとYWTの関係
同じく、KPTと似た概念に、YWTがあります。YWTは、日本能率協会コンサルティングが開発した振り返りの手法です。
- Y:やったこと
- W:わかったこと
- T:次にやること
の頭文字をとったもので、KPTと似ていますね。違いは、「Keep:続けること」が「やったこと」になっている点、「Problem:問題と認識していること」が「わかったこと」になっている点です。
KPTは問題にフォーカスが当たりがちなので、分析中毒になってしまうという指摘もあり、振り返りとしてYWTのほうが優れているという意見もあります。ただ、先ほどのチェックポイントでも挙げた通り、問題を不安不満に置き換えることで、「問題」という重みは軽減されることもあります。
あとはチームの好みでKPTとYWTのどちらを使うかを選べばよいでしょう。
KPTは会社の仕組みを改善していく仕組み
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