- 今回のテーマは、アマゾンの経営戦略です。
コロナでEC業界が大きな伸びを見せる中、トップを走るアマゾンはどのような経営戦略を取っているのでしょうか?
実はアマゾンには顧客を定着させ、事業を成長させる好循環モデルという戦略があるのです。
本記事では、最初にSWOT分析※1でアマゾンの市場での立ち位置を明らかにした後、アマゾンの成長の源泉である好循環戦略をわかりやすく説明していきます。
ぜひ最後までご覧ください!
※1SWOT分析:企業分析の一つのフレームワーク。Strength(強み), Weakness(弱み), Opportunity(機会), Threat(脅威)。
アマゾンの経営戦略概要
SWOT分析の前に、アマゾンの経営戦略の概要を簡単に説明します。
アマゾンは、事業成長の基盤として好循環戦略を取っています。
後ほど詳しく説明しますが、簡単に言うとアマゾンの好循環戦略とは、最高の顧客体験の実現によってプラットフォームであるオンラインストアにユーザーを誘導する戦略のことです。
この好循環モデルでは顧客体験が高まるにつれて、より多くのユーザーが集まり、集客力アップの副次効果によって更に顧客体験が高まる、というポジティブなサイクルが出来上がっています。
アマゾンのSWOT分析
では、アマゾンのSWOT分析で同社の全体像を見ていきましょう。
アマゾンはテクノロジー業界の中でもかなり多面的なビジネスモデルを持っています。
EC市場では圧倒的なシェアを誇っていますが、一方ではオンラインストア事業の利益率は実はかなり低いのです。
それでも尚アマゾンは積極投資を行い、その他の事業であるクラウドサービスやAIスピーカーといった新領域での地位を強固なものにしています。
強み
アマゾンには以下の3つの強みが挙げられます。
①強いブランド力
アマゾンは現在地球上で最も価値のあるブランドといっても過言ではありません。
書店として始まり、最終的には”何でも屋”に転身し、複数の業界を席巻しています。
今日のアマゾンはオンラインストアを拡大し続けるための、驚くほどいいポジションにあります。
②多角化したビジネスモデル
アマゾンは巨大テック企業の中でも最も多角化したビジネスモデルを持っていると言えるでしょう。
ECから広まり、クラウドや広告分野までビジネスの範囲を広げ続けています。
③巨大成長のポテンシャル
アマゾンは自社の時価総額で1兆ドルを超えていますが、さらに1兆ドルの市場規模になる可能性のある複数の産業に進出しているため、今後も伸びる可能性はかなりあるのです。
弱み
オンラインストアの利益率の低さ。
アマゾンの売上のほとんどはEC事業が占めていますが、実は利益率で見ると他の事業に比べてEC事業は利益が高くありません。
しかし、このECサイトはアマゾンの事業全体のプラットフォームであり、ECで生み出されたキャッシュがアマゾンの他事業への投資に使われているのです。
実はアマゾンには、ECの利益率は低いにも関わらず投資に使えるキャッシュが生まれる仕組み、キャッシュマシンモデルがあります。
機会
アマゾンには2つの機会があります。
①グローバルな拡大
アマゾンは既に多くの国に進出していますが、今後踏み込めるグローバル市場はまだまだあるでしょう。
②新しい産業での成長
アマゾンは新たな市場にどんどん進出しています。
AWSを軸としたクラウド事業やアマゾンエコーといったAIを使った音声認識事業など、そういった新しい産業で今後更に事業を拡大できる可能性は十分にあります。
脅威
最後に脅威としては以下の2つが考えられるでしょう。
①グローバル競争とテクノロジー戦争
GAFAを始めとするテックジャイアントと呼ばれる企業がどんどん競争力を高め、市場を席巻していく中、彼らは近接している市場に足を伸ばしてくる可能性があります。
そうなると、これまで直接的な競合ではなかったテックジャイアントが顧客を奪いにきて、アマゾンがグローバルなテクノロジー戦争で負ける可能性も十分にあります。
②規制
アマゾンは複数の市場を支配する巨大な企業です。
しかしその影響力が強くなるにつれて、アマゾンが市場を独占し、支配的地位を乱用するのではないか、と言う意見が生まれてくるかもしれません。
そうするとアマゾンの市場独占を防ぐために規制がかかる可能性も0ではないでしょう。
アマゾンの経営戦略:好循環戦略
では、冒頭で紹介したアマゾンの経営戦略である好循環戦略について詳しく説明していきます。
本好循環戦略は、”顧客体験”を基盤にオンラインストアに集客する戦略です。
顧客体験を最高のものにすることで、ユーザーにアマゾンのファンになってもらい、オンラインストアに人を集めることができるのです。
そんなアマゾンの顧客体験は、
・豊富な商品ラインナップ
・低価格
・最高の配送システム
の3つが支えています。
豊富な商品ラインナップ
素晴らしい顧客体験によってより多くのユーザーが集まると、その分多くの外部店舗がアマゾンに出店するようになり、商品ラインナップが向上します。
こうして商品の種類が増えると、顧客体験はより良いものになるのです。
アマゾンは、戦略的に自社商品を売って稼ぐよりも、外部店舗にアマゾンで商品を販売させることに焦点を当てています。
これは、商品の種類を増やすことによって顧客体験を向上させ、より良い顧客体験によって更にアマゾンファンを増やすことを目的としています。
ちなみに、現在ではこのように第三者に販売チャネルを提供するプラットフォーマーはメジャーですが、CEOジェフ・ベゾスがこの戦略を考案した2001年頃にはとてもユニークなアイデアでした。
低価格
低価格であれば、当然顧客としては嬉しいですよね。
アマゾンは、驚きの低価格を実現するために、キャッシュを株主に配当せずに顧客であるユーザーへ還元しています。
つまり、株主の配当金の分をオンラインストアの低価格化に費やしているということです。
また、利益率の低いオンラインストアで短期的にキャッシュを生み出し、オペレーションを維持をするためのキャッシュマシンシステムも、この低価格化構造に寄与しています。
※キャッシュマシンシステムについてはこちらの記事を参照
最高の配送システム
アマゾンで商品を頼むとすぐに届いて本当に便利ですよね。
そんな素早い配送を実現するために、アマゾンはオンラインストアに出店している外部店舗の在庫もアマゾンの配送センターで管理・発送しています。
実はアマゾンに出店している何万もの外部店舗は従業員数10人以下の中小企業がほとんどであり、通常であれば強固な物流網を持ち合わせていないため、注文の次に配達するのは難しいでしょう。
しかし、アマゾンの在庫管理を利用することによって即時配達が可能になり、顧客体験が更に向上します。
まとめ
最後にアマゾンの好循環戦略をまとめると、2つの鍵となる要素に分けることができます:
①オンラインストアで生み出されたキャッシュが低価格化実現に再投資される低価格構造、豊富な商品ラインナップ、効率的な配送センターでの在庫管理。
②価格が下がり、商品の種類が増えることによって顧客体験が向上し、それによって本サイクルにより拍車がかかる。
いかがだったでしょうか?
アマゾンのSWOT分析、そして好循環モデルを紹介してきました。
世界一の”何でも屋”であるアマゾンの止めどない成長、その裏には顧客体験を基盤とする巧妙な経営戦略があったんですね。
それでは今回は以上になります。
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