古参社員とは?
「古参(こさん)」とは、その会社や集団に古くからいる人のことです。対義語は「新参」になります。会社で使うときは、勤続年数が長い社員を指して「古参社員」と呼びます。
まず、「古参社員」というのは、どういう人かという定義をしておきます。これには大きく2つのパターンがあって、1つ目が創業メンバーです。そしてもう1つが、先代から働き続けている「番頭さん」や、勤続年数の長いベテラン社員です。
古参社員のパターン①創業メンバー
創業して10年くらい経てば、新しい人が入ってくる中で、創業メンバーは古参社員扱いされることになります。創業メンバーは会社の成長とともに昇進していき、幹部になるケースが多いです。しかし中には、会社の成長についていけない人も出てきます。後から入ってきた社員に追い越され、社歴だけ長い古参社員という扱いを受けることがあります。
古参社員のパターン②先代からの番頭さん、ベテラン社員
「番頭さん」というのは、要するに社長のサポート役を担っている人のことです。例えば皆さんが2代目社長だとして、創業者が頑張って会社を大きくしていった時代に貢献してくれていた人がいるわけです。その人が、社長の代が変わってもずっと居続けるというケースがあります。
日本では解雇がやりにくい環境です。本人が先代社長と一緒に辞めない限り、先代から頑張ってきた社員は社内に残ります。番頭レベルまでいかなくても、先代から働き続けてきたベテラン社員もいて、そういう人たちも古参社員ということになります。
古参・古株・ベテランの違いと言い換え
似た言葉がいくつかあります。使い分けを整理しておきます。
- 古参社員:在籍期間の長さを指します。やや客観的な言い方です
- 古株:ほぼ同じ意味ですが、口語的で、少し揶揄する響きを含むことがあります
- ベテラン社員:在籍期間ではなく、経験と技能の高さを指します。前向きな言い方です(技能の引き継ぎはベテラン社員のノウハウ伝承を参照)
- 功労者:過去の貢献に焦点を当てた言い方です。社内文書や表彰の場面で使います
社内文書や本人に伝える場面では「ベテラン社員」を使ってください。「古参」「古株」は、当人が耳にすると評価が固定された印象を受ける言葉です。社歴の長さそのものを問題にしているように聞こえるためです。
この記事では、検索されている言葉に合わせて「古参社員」と書きますが、実際の会話ではこの言い換えを意識してください。
古参社員についてよくある悩みと根本原因
では古参社員について社長からよく相談を受ける悩みを挙げてみましょう。
①会社は成長したが、創業メンバーが成長しない
例えば、3人のメンバーで創業し、ご自身が社長という場合、創業メンバーとして他の2人がいます。だんだん会社が成長して、社員数が30人〜50人ぐらいの規模になってきたとします。すると、創業メンバーの誰かが会社の成長についていけなくなるということが起こります。
創業時には営業ができて非常に活躍してきた人であっても、立場が変わります。自分自身が直接営業する側から離れ、他のメンバーをマネジメントして営業部隊を作っていく側に回るわけです。ところが、こういったキャリアの変更についていけなくなるというケースがしばしばあるのです。
これは、創業時に必要とされる能力と、社員数が30人〜50人になった時に必要とされる能力が変化するために起こる問題です。
②創業メンバーの方向性の違いが明らかになる
創業メンバーである古参社員に関する悩みのもう1つが、方向性が合わなくなってきたというものです。これは正確に言うと、そもそも方向性が合っていなかったことが露見するということで、これもよくある悩みです。
創業時には少人数なので頻繁に顔を合わせて「将来こうしていこう」とコミュニケーションを密に取ることができます。さらに仕事自体も忙しいので、とにかく目の前のことを一生懸命こなすということになります。
ところが社員数が30人〜50人になってくると、組織づくりが必要になってきます。その前提として、会社の理念をつくろうという話になります。ミッションやビジョン、バリューと呼ばれるものです。その時に、かつては寝食を共にしていた創業メンバーが、実は自分と考えが違っていたということが分かるということが結構あるのです。
つまり、理念を明確にすればするほど、そこで合わない人があぶり出されるということがあるのです。そして、残念なことにそれが創業メンバーであるというケースを頻繁に耳にします。
③番頭さん、ベテラン社員が改革に抵抗する
多くの会社では、社長が代替わりすると何かしらの改革を行います。例えば、新しい組織をつくる、新しい事業を始める、新商品の開発に取り組む、業務のプロセスを変えるというものがあります。社長の交代というのは、そのように会社を変えるためには良いタイミングでもあるわけです。
ところが、その時にほぼ確実と言っていいほど、古参社員から反対意見が挙がるのです。やはり、人というのは慣れ親しんだ環境が変わっていくことに抵抗しがちなのです。人間の本能からいっても、こういう人はどうしても出てくるわけです。
④番頭さん、ベテラン社員の生産性が上がらない
地位と給与だけが高く、あまり仕事をしないベテラン社員が存在するというケースもあります。先代社長の時には頑張って働き、地位も給料も高くなっていきました。ただ、年を重ねるにつれて仕事のパフォーマンスが落ちてくるわけです。最近であれば、IT化の波についていけなくなって、生産性が上がらないという人も出てきています。
根本的な原因は仕組みの欠如
社長がこのような古参社員の対応に悩む根本的な原因は何かというと、人を評価する仕組みが欠けているからです。ここで言う仕組みというのは、基準と手順のことです。要するに、人を評価する時の基準がないということ、そして人を評価するための手順がないということです。基準を形にする方法は等級制度の記事で解説しています。この仕組みが欠けているために、こういった社員に対応することができないのです。
古参社員対策の原則
この仕組みをつくるために必要なものが評価の原則です。人に対して評価をして、その人の貢献に報いる方法には、地位とお金の2つの方法があります。どういう場合に地位で報いるのか、あるいはお金で報いるのかという原則を社長の頭の中、もしくは会社の仕組みとしてつくっておくことが非常に大切になります。

①人徳がある古参社員には地位で報いる
人間味があって、非常に人ができている人には地位で報います。「頑張ってくれたので、ポジションを上げましょう」ということです。課長から部長に、部長から事業部長にするという形で上げていきます。当事者は自尊心が高まります。
人徳があっても能力がない場合には、その人の周りに優れた若手や次世代のリーダークラスを置いてあげれば仕事は回るので、特に問題はありません。むしろ、人徳がある人であれば、若手の活用などには長けているので、いいチームをつくってくれるわけです。
②実績を出した古参社員にはお金で報いる
売上を上げた人やプロジェクトを成功させた人には、お金で報います。「頑張ってくれたので給与を上げましょう」「ボーナスを出しましょう」ということです。実績を上げたからといって、人徳のない人に地位を上げてしまうと組織が崩壊してしまうため、地位で報いるということはしません。
よく言われるように、実績がある、要するに能力があって、かつ会社の方向性と合わない人や人徳がない人が組織の中で一番困るのです。なぜかというと、そういう人は会社の悪口を言ったり、社員に当たり散らしたり、自分の権力を使ってコントロールしようとしたりすることが多いからです。そういう意味で、実績があるからといって、人徳がない人に地位を与えるのは非常に危険なのです。
クビや退職を迫るだけではない、古参社員への具体策
社長としては、問題のある古参社員にはできれば辞めてほしいと思うかもしれません。ただ日本では、それほど簡単に首を切ることはできません。これまでの貢献には感謝はするけれども、将来を見据えた場合、このままでは困るのです。その時にどうするか、具体例を挙げて説明していきます。
ケース①会社の成長についていけなくなった創業メンバー
これは先ほども言った通り、その人に人徳があるかどうかがポイントになります。
人徳がない場合
人徳がない、つまり社員からの尊敬がない人の地位を上げるわけにはいきません。これから会社が成長していこうという時に、そういう人の地位を上げてしまうと、非常にリスクが大きいのです。
ですから、これはお金で報いるしかありません。例えばボーナスを出す、退職金を上積みして辞職を促す、あるいは上場を目指している会社であればストックオプションを渡すということも考えられます。
成果を出せなくなり、人徳もない古参社員
また、成果を出していないうえに人徳もないという人がいます。給料も地位も上がらないまま会社に居続けると、非常に悪影響が出てしまいます。こういう場合には、本人と交渉し業務委託契約にするというやりかたが考えられます。こうして他の社員の報酬体系とは切り離してお金を提供するというやり方です。
ほとんど会社の社員と同じように働いているけれども、業務委託ですから、その人の報酬は会社の評価制度に則らせる必要がありません。そういうやり方が成功している会社もあります。
人徳がある場合
一方、人徳はあるけれども能力がついていかない人はどうするかというと、こういう人を辞めさせるのはもったいないですし、社長としても言いづらいわけです。そういう場合には、その人がきちんと活躍できるような、優れたチームを周りにつくってあげるということが考えられます。このようにして、組織としてパフォーマンスを保つことができるのです。
会社の成長についていけなくなった創業メンバーに対して、お金でも地位でも報いないということになると、会社の雰囲気的にあまり良い結果にならないことが多いのです。「あの人って前からいるけど、全然報われてないよね」と他の社員も感じてしまいます。ですから、このような方法で報いてあげるということが大切になるわけです。
ケース②方向性が合わなくなった創業メンバー
これは正対して話すしかありません。合わなければ辞めてもらうし、場合によっては勝手に辞めていくということもあります。正対して話すというのはどういうことかというと、まず社長自ら「うちの会社はこのようにこれからしていきたい」ということを改めて伝えるということです。
「創業メンバーだから、お互い分かっているだろう」と思うのですが、これが伝わっていないからこういう問題が出てきているわけです。ですから、そこを解決するために本人と正対して話す必要があるのです。それでお互い合意できれば何も問題がありません。しかし、そこに相違があるのであれば、自主的に辞めてもらう、もしくは勝手に辞めていくという形で解決してくのが最善だと考えられます。
ケース③改革に反対する番頭やベテラン社員
これも、社長が覚悟を決め、正対して話すしかありません。それで「分かりました。協力します」ということであれば問題はありませんが、合意できなかった場合、創業メンバーとは違って辞めるということはなかなか難しくなります。年齢も相当高くなっているわけですし、転職市場において不利になってしまうからです。
改革の震源地にあえて入れる
辞めるという選択肢がないということであれば、改革の震源地に入れる、つまり改革のプロジェクトメンバーに入れて、強制的に活躍してもらうというパターンを取ります。
こういう人は非常に声が大きくて、仕事もできるので、他のメンバーからの信頼も厚いわけです。ですから、改革の震源地に入れて協力を仰ぐことで、何だかんだと文句は言うけれども活躍してもらえる状態にするのです。
ケース④地位と給与だけが高い番頭やベテラン社員
2代目、3代目社長の悩みとして、これが結構多いと思います。先ほどの原則に則って考えると、地位と給与が高くて仕事ができない、さらに人徳がないという場合に困るわけです。これは、基本的にお金で報いるという方向性になります。
ボーナスや退職金などを多くしたうえで、次世代メンバーを彼らの上位へと昇格させるということになります。こういった人たちは、残念ながらこれまでの経験や実績によって、地位が高いわけです。しかも先代社長が決めたことですから、2代目、3代目社長にとっては降格させるという選択肢はなかなか難しいのです。
ですから、降格させるのではなく、他のメンバーを彼らのより上位、もしくは同じぐらいのランクに昇格させるという方向で組織づくりをしていくわけです。この点については同意をしてもらわないといけないので、やはり社長が正対して話す必要があります。
人徳がある古参社員にはチームを任せる
一方の、地位と給与が高くて能力はないけれども、人徳があるという人の場合、この人はチームや組織をまとめるために非常に貢献してくれるケースがあります。あるいは社長に対して良いアドバイスを提供してくれることもあります。ですから、先ほどの創業メンバーの場合と同じで、優れたチームを作ってあげて、彼らがパフォーマンスを出せるようにしてあげるということになります。
事業承継で古参社員が反発する理由
2代目、3代目の社長からもっとも多く相談を受けるのがこの場面です。代替わりを機に改革を始めると、古参社員から反対が出ます。ここで「あの人が抵抗勢力だ」と個人の問題にすると、話が動かなくなります。2代目社長が無能と呼ばれる理由も、多くは承継の設計に原因があります。
反発が起きる理由は、たいてい次の3つです。
理由1:先代との約束が引き継がれていない
先代社長と古参社員のあいだには、書面になっていない約束があることが多くあります。「この部署は任せる」「定年まで面倒を見る」といったものです。
新しい社長はその約束を知りません。知らないまま組織を変えると、本人にとっては約束を破られたことになります。反発しているのは変化そのものではなく、話が違うという点です。
理由2:これまでの貢献が評価に残っていない
古参社員の貢献は、たいてい先代社長の記憶の中にありました。文書になっていないので、代が替わると消えます。
本人からすれば、20年かけて築いたものが 白紙に戻る感覚です。だから、実務の話をしているつもりでも、感情の話として返ってきます。
理由3:新しい基準で測られると、自分が下がると分かっている
改革の中身が正しくても、その基準で測られたときに自分の評価が下がると予想できれば、人は反対します。これは性格ではなく、置かれた立場から見た合理的な反応です。
3つとも、本人の頑固さではなく、引き継ぎの設計が抜けていることから来ています。
代替わりの前後にやっておくこと
順番があります。改革の説明から入らないでください。
- 先代から、書面になっていない約束を聞き出す。これを代替わり前にやるのが理想です。先代が引退したあとでは確認できません(社長の引継ぎで失敗する会社の共通点もあわせてどうぞ)
- これまでの貢献を、文書と場で残す。社史でも表彰でも構いません。過去を否定していないと示すことが、次の話の前提になります
- 新しい評価の基準を先に示す。改革の中身より先です。どう測られるかが分かれば、反対は具体的な交渉に変わります
- 変えないものを明言する。全部変わると受け取られると、抵抗は最大になります
古株が辞めていく会社に共通すること
逆の悩みもあります。古参社員が次々に辞めていくというものです。相談を受けて話を聞くと、共通しているのは次の点です。
- 評価の基準が変わったのに、変わったと説明していない。本人は「急に自分の仕事が評価されなくなった」と受け取ります
- 新しく入った人だけが目立つ場に出ている。会議での発表も表彰も新しい人ばかりだと、古参社員は自分の役目が終わったと解釈します
- 過去の貢献に触れる場が年に一度もない。感謝は伝えているつもりでも、場として存在しなければ伝わりません
ここでも問題は個人ではなく、評価と承認の設計にあります。古株を大事にしないつもりの会社はほとんどありません。大事にしていることが本人に届く形になっていないだけです。
古参社員についてよくある質問
古参とはどういう意味ですか
その会社や集団に古くからいる人のことです。読み方は「こさん」で、対義語は「新参」です。会社では勤続年数の長い社員を指して「古参社員」と呼びます。
古参社員をクビにすることはできますか
日本では簡単ではありません。だからこそ、この記事では地位とお金で報いる原則を先に示しています。人徳がある人には地位で、実績を出した人にはお金で報いる。この基準を決めておくと、辞めてもらう以外の選択肢が見えてきます。
改革に反対する古参社員にはどう対応すればよいですか
まず社長が正対して話します。それでも合意できない場合、辞めることが現実的でないなら、改革のプロジェクトメンバーに入れてください。声が大きく仕事もできる人なので、震源地に入れると協力を引き出せます。本記事の「改革の震源地にあえて入れる」で解説しています。
2代目社長です。先代からの番頭にどう接すればよいですか
改革の説明より先に、先代との約束を確認してください。書面になっていない約束が残っていることが多く、それを知らないまま組織を変えると、本人には約束を破られたことになります。可能なら先代が引退する前に聞いておいてください。
社歴が長いだけで仕事をしない社員がいます
本人を責める前に、評価の基準と手順が文書になっているかを確認してください。基準がない状態では、その人を動かす根拠も、報いる根拠も社内にありません。原則を決めることが先です。
古参社員の言い換え表現を教えてください
社内で使うなら「ベテラン社員」がもっとも無難です。過去の貢献を強調したい場面では「功労者」が使えます。「古株」は口語的で揶揄する響きを含むため、本人に向けては避けてください。
大切なのは原則に基づく仕組み
重要なのは、個別の悩みへの対応ではなく原則を定めることです。その原則に基づいて仕組みをつくっていくことが大切なのです。
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