セクショナリズム

セクショナリズムとは?縦割り組織の原因と6つの対策



清水直樹
今日は、セクショナリズムについてご紹介していきます。部門間の壁は「みんなで仲良くしよう」では無くなりません。なぜ起きるのか、構造から見ていきましょう。

 

セクショナリズムとは?意味と読み方

セクショナリズムとは、自分の部門の利害や都合を優先し、他の部門と協力しなくなる状態のことです。読み方は「せくしょなりずむ」で、英語の「sectionalism」から来ています。日本語では「縄張り意識」「部門主義」と訳されることもあります。

具体的には、次のような形で現れます。

  • 他部門から依頼が来ても「うちの仕事ではない」と断る
  • 自部門の数字は達成しているが、会社全体では損をしている
  • 持っている情報を他部門に渡さない
  • 問題が起きると「あちらの部署のせいだ」という話になる

共通しているのは、部門の中では正しい判断をしているという点です。営業は売上を追い、製造は品質と納期を守り、経理は支出を抑える。それぞれの立場では合理的に動いています。にもかかわらず、会社全体で見ると噛み合っていない。ここがこの問題の厄介なところです。

 

縦割り組織との違い

「縦割り組織」は、部門ごとに指揮命令が縦に通っていて、横のつながりが弱い組織のを指します。一方のセクショナリズムは、その形の中で起きる行動や意識を指します。

つまり、縦割り組織が原因で、セクショナリズムが結果という関係です。ただし縦割りの組織すべてでセクショナリズムが起きるわけではありません。形が縦割りでも、横をつなぐ仕組みがあれば起きにくくなります。

なお「縦割り行政」という言葉もありますが、こちらは官公庁について使われる言い方です。中身の構造は同じですが、本記事では会社の話として扱います。

 

サイロ化との違い

近年は「サイロ化」という言い方もよく使われます。サイロとは、農場にある穀物を貯める塔のことです。それぞれが独立して立っていて、中身が行き来しない様子から来た比喩です。

この言葉は2つの意味で使われます。

  • 組織のサイロ化……部門が孤立し、連携が取れなくなること。セクショナリズムとほぼ同じ意味です。
  • データのサイロ化……システムやデータが部門ごとに分断され、全社で使えなくなること。

この2つは別々の問題に見えて、実際にはつながっています。部門が情報を渡さない文化があるところでは、システムも部門ごとに導入されます。逆に、システムが分かれているせいで情報が共有できず、それが部門間の不信につながることもあります。

 

セクショナリズムが起きる4つの原因

ここからが本題です。セクショナリズムは、その部門の人たちが自分勝手だから起きるのではありません。原因は構造の側にあります。

 

①誰がどこまでやるのかが決まっていない

いちばん多い原因がこれです。仕事の範囲が曖昧なままだと、必ず「落ちる仕事」が出てきます。

野球にたとえると分かりやすくなります。守備位置が決まっていないチームでは、ボールが飛んでくるたびに全員で追いかけ、そのとき捕れそうな人が捕ることになります。これでは全員が疲れます。そして、誰がどの仕事をどれだけやるのかが曖昧なために、「なんで自分ばっかり」「あいつはいつも仕事していない」という不公平感が噴出します。

その不満は個人の間にとどまりません。部門の間に広がり、人間関係のトラブルが増え、組織の生産性が著しく落ちます。セクショナリズムの多くは、ここから始まっています。

 

②部門ごとの目標が競合している

営業には売上目標があり、製造には原価と納期の目標があります。この2つは、放っておくと必ずぶつかります。

急な短納期を受注すれば営業の数字は上がりますが、製造は残業と段取り替えを強いられます。製造が断れば営業は失注します。どちらも自部門の目標に忠実に動いているだけで、悪意はありません。にもかかわらず、当人たちは相手が非協力的だと感じます。

目標の設計が部門ごとに閉じていると、この衝突は構造的に起こり続けます。

 

③情報が部門の中で止まっている

他部門が何をしているのか分からない状態では、協力のしようがありません。そして人は、見えないものに対して悪い想像をします。「あの部署は暇そうだ」「うちの苦労を分かっていない」という認識は、たいてい情報が届いていないところで生まれます。

 

④他部門を責めることが習慣になっている

問題が起きたときに、原因を人や他部門に求める。この姿勢が社内に広がると、セクショナリズムは一気に強くなります。

この状態では、社員は萎縮します。重要な報告や改善の意見を発信しなくなります。そして何より問題なのは、社長自身が失敗や不振の原因を社員のせいにしている場合です。その姿勢は必ず社内に伝播します。部門間の関係が悪化する前に、まず経営者と社員の間の信頼関係が失われます。

この構造は人依存の経営7つのパターンのうち、他責型経営として整理しています。

 

交流会や研修でセクショナリズムが直らない理由

ここが、この記事でもっともお伝えしたいところです。

部門間の関係が悪くなると、多くの会社ではコミュニケーション研修や人間力向上の研修を取り入れ始めます。部門横断の懇親会を開く、シャッフルランチをやる、といった施策もよく採られます。

こうした取り組みが無意味だとは申しません。しかし、根本的な解決にはつながりません。

理由は一つです。「構造が変わらない限り、同じ問題が繰り返される」というのが原理原則だからです。中にいる人を変えても、あるいは人の意識を変えようとしても、組織の構造が同じであれば同じ問題が起こります。

懇親会の翌週に、また同じ理由で部門がぶつかる。そのとき多くの経営者は「あれだけ言ったのに」と感じます。しかし、変わっていないのは人の意識ではなく、仕事の範囲が決まっていないという構造のほうです。


 

組織図を共有していなかった会社の話

実は私自身が、これで失敗した経験があります。

以前、私が創業メンバーだったITベンチャー企業では、組織図の共有をしていませんでした。最初のうちは、みんな新しいビジネスに没頭しています。問題は起きません。

しかし、そのうち軌道に乗ってきて組織も大きくなり始めると、創業メンバーが各自、その組織を使って自分のやりたいことをやり始めてしまったのです。明確な組織図がなかったために、各自の仕事内容も定義されていませんでした。

結果として、資金の使い道がバラバラになり、本業のサービスにも力を入れなくなり、すべて崩壊しました。

誰かが悪意を持っていたわけではありません。何をどこまでやるのかが書かれていなかった。ただそれだけのことで、会社は分解していきます。

 

セクショナリズムを解消する6つの対策

構造の問題であれば、構造から直せます。順番に見ていきます。

 

1.組織図で分業を明確にする

最初にやるべきはこれです。組織図とは、どう分業するかを示したものです。誰がどの役割を持ち、何に責任を負うのか。ここが書かれていなければ、他の対策はすべて空回りします。

小さい会社に組織図は要らないと思われるかもしれません。しかし組織図こそ、他のどんな仕組みよりも会社の発展に深い影響を持ちます。権限と責任が明確になり、社内のコミュニケーションが円滑になるからです。作り方は会社の組織図の作り方で解説しています。

あわせて、一人ひとりの職務を文書に落としておくと、「その仕事は誰のものか」で揉めることがなくなります。

 

2.協業のガイドラインを作る

組織図で分業を決めたら、次に決めるのが「調整」の方法です。分けたものをどうつなぐか、というルールです。

たとえば次のような項目を決めておきます。

  • 上司と部下は仕事内容や期限を明確に合意する
  • 部下は上司の指示のみに従い、他部署からの指示は上司に確認する
  • 部下には必ず1人の上司がつき、矛盾した指示が出ないようにする
  • 経営陣も別の職務を担う際はルールを守る
  • 上司が不在のときの権限移譲ルールを決めておく
  • 部門間の連携はルールに従う
  • 仕事を委任する際は、文書化、期限設定、打合せ、合意を行う

一見すると厳しいルールに見えるかもしれません。しかし実際には、これらがあることで上司と部下、部門間の関係がスムーズになり、無用な対立や情報の行き違いを避けられます。上に挙げたものはサンプルなので、自社の文化に合う形で考えてみてください。

 

3.部門をまたぐ目標を置く

原因②への対策です。各部門の目標に加えて、複数の部門が協力しないと達成できない目標を一つ置きます。

たとえば「受注から納品までのリードタイムを20%短縮する」。これは営業だけでも製造だけでも達成できません。目標が共通になった瞬間から、相手は敵ではなく味方になります。

 

4.情報が流れる場をつくる

原因③への対策です。他部門が何をしているかが見えていれば、悪い想像は起きにくくなります。

全社会議で各部門が今月やっていることを共有する、部門長どうしが定期的に集まる場を持つ。特別なことは要りません。大事なのは、その場が定期的に開かれることです。

 

5.他部門を責める発言への対処を決める

原因④への対策です。ただし、「人を責めるのはやめよう」と呼びかけるだけでは変わりません。

やるべきことは2つです。一つは、経営者自身が問題の原因を人に求めるのをやめること。もう一つは、問題が起きたときに「誰がやったか」ではなく「どの工程で起きたか」を先に聞く習慣をつけることです。会議の場で経営者が最初に発する問いが変われば、社内の空気は少しずつ変わります。

悪い情報が上がってくる状態をどうつくるかは、心理的安全性の作り方で詳しく扱っています。

 

6.判断のよりどころを全社で一つにする

部門ごとに大事にしていることが違えば、判断も違ってきます。営業は速さを、製造は正確さを優先する。どちらも正しいからこそ、決着がつきません。

会社として何を優先するのかが言葉になっていれば、部門をまたぐ判断にも答えが出せます。これはコアバリューを決める作業そのものです。

 

セクショナリズムに関するよくある質問

セクショナリズムに良い面はありますか?

あります。部門ごとに責任範囲がはっきりしていること自体は、組織にとって必要なことです。専門性が高まり、責任の所在も明確になります。問題なのは分けたことではなく、分けたあとにつなぐ仕組みを用意していないことです。

 

何人くらいの規模から起きますか?

部門が2つに分かれた時点から起こり得ます。人数よりも、部門をまたいで仕事が流れるようになったかどうかが分かれ目です。全員が一つの部屋にいて全部の仕事が見えている段階では起きません。見えなくなった時点から始まります。

 

組織をフラットにすれば解決しますか?

形を変えるだけでは解決しません。階層を外しても、仕事の範囲とつなぎ方が決まっていなければ、同じことが起こります。むしろ、判断のよりどころがないまま階層だけ外すと、今度は誰も決められない状態になります。詳しくはフラット型組織をご覧ください。

 

特定の部門長が原因だと思うのですが。

その可能性はあります。ただ、その人を代えても同じ問題が起きるかどうかを一度考えてみてください。後任でも同じことが起きるなら、それは人ではなく、その役職に与えられている目標や権限の設計に原因があります。


 

まず何から手をつければいいですか?

直近3か月で、部門間でもめた案件を3つ書き出してください。そして、それぞれについて「誰がやるべき仕事だったのか、どこかに書かれていたか」を確認します。書かれていなかったのであれば、原因は人ではありません。そこから組織図と職務の整理を始めるのがいちばん近道です。

 

対策には時間がかかりますか?

組織図と職務の整理には数か月かかります。ただし、効果が出始めるのはもっと早い段階です。「誰がどこまでやるのか」を書き出す作業そのものが、部門間の認識のずれを表に出すからです。書いている途中で「そこはうちの仕事だと思っていた」という会話が起きます。それ自体が解決の一歩です。

 

まとめ

セクショナリズムとは、自分の部門の利害を優先して他部門と協力しなくなる状態のことです。縦割り組織という形の中で起きる行動であり、サイロ化とほぼ同じものを指します。

原因は4つ。誰がどこまでやるのかが決まっていない、部門ごとの目標が競合している、情報が部門の中で止まっている、他部門を責めることが習慣になっている。4つとも、その部門の人たちの人柄とは関係がありません。

だからこそ、懇親会や研修では直りません。構造が変わらない限り、同じ問題が繰り返されるからです。組織図で分業を明確にし、協業のガイドラインでつなぎ方を決める。この2つが土台になります。

なお、仕組み経営では、こうした組織の設計を含めた会社の仕組み化をご支援しています。詳しくは以下から仕組み化ガイドブックをダウンロードしてご覧ください。


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