販促とは?販売促進の意味
販促とは「販売促進」の略で、商品やサービスの購入を後押しするために行う活動全般のことです。値引き、キャンペーン、クーポン、試供品の配布、店頭の掲示物、展示会への出展などが該当します。
もう少し実務的に言い直すと、販促とは「買うかどうか迷っている人の背中を押す活動」です。まだ自社を知らない人に知ってもらう活動とは、目的が違います。ここを混ぜたまま施策を選ぶと、効果が出ない理由が分からなくなります。
読み方と英語表記
読み方は「はんそく」です。販売促進は「はんばいそくしん」と読みます。英語では「sales promotion」と表記します。
社内では「販促」という短い言い方が定着していることが多いのですが、会議で使うときは一度だけ範囲を確認しておくことをおすすめします。ある人は広告全般を、ある人は値引きだけを指して「販促」と言っている、ということが実際によく起きるからです。
販促と集客・広告・宣伝・営業の違い
似た言葉が並ぶので、それぞれが指す範囲を整理しておきます。
- 集客……自社の商品を買う可能性のある人を見つけ出し、自社の目の前まで連れてくること
- 販売(営業)……目の前に来た人の意思決定を支援し、成約まで導くこと
- 広告……費用を払って媒体に情報を載せること。集客の手段のひとつ
- 宣伝……自社や商品を広く知らせること。広告より広い意味で使われる
- 販促……集客と販売の両方にまたがって、行動を後押しする活動
つまり販促は、集客や営業と並ぶものではありません。その流れの中で背中を押す役割を担っています。だから販促だけを強化しても、そもそも知ってもらえていなければ効きません。逆に、集客はできているのに成約しないなら、原因は販促ではなく営業の進め方にあります。
集客の流れ全体をどう組み立てるかについては、集客の仕組み化とは?全体像と8ステップの作り方で解説しています。
プッシュ販促とプル販促
販促の方法は、大きく2つに分けられます。
プッシュ販促は、こちらから働きかけるものです。営業訪問、ダイレクトメール、電話、展示会での声かけなどが当てはまります。相手が動くのを待たずに接点をつくれるかわりに、人の手間がかかります。
プル販促は、相手から来てもらうものです。ウェブサイト、検索、口コミ、紹介、店頭の掲示物などです。手間は少ないかわりに、効果が出るまで時間がかかります。
中小企業がよくつまずくのは、この2つを同じ物差しで測ってしまうときです。プッシュ販促は今月の数字に出ますが、プル販促は半年後に出ます。同じ会議で「今月の反応が悪いからやめよう」と判断すると、プル販促だけが毎回打ち切られます。
販促方法の一覧|9つの手法
実際に使われる販促の方法を、目的別に並べます。
- 値引き・割引……もっとも即効性がある。ただし後述の理由から扱いに注意が要る
- クーポン・回数券……次回の来店理由をつくる。リピートを増やしたいときに向く
- 試供品・お試し価格……買う前の不安を下げる。単価が高い商品ほど効く
- 増量・おまけ……価格を下げずに得を感じてもらえる
- 店頭の掲示物やチラシ……すでに目の前にいる人に、選ぶ理由を伝える
- ダイレクトメール・メールマガジン……一度接点のあった人を呼び戻す
- 展示会・イベント……まとまった数の見込み客と一度に接点をつくる
- 紹介キャンペーン……既存顧客から次の顧客につなげる
- ポイント制度・会員制度……続けて買う理由を制度にする
一覧にすると分かりますが、9つのうち即効性があるのは上の3つほどで、残りは効果が出るまでに時間がかかります。そして即効性のあるものほど、繰り返すと効かなくなります。
値引きから始めない
迷ったときにいちばん選ばれやすいのが値引きです。決めるのが簡単で、反応もすぐ出るからです。
ただし値引きには2つの副作用があります。ひとつは、一度下げた価格は戻しにくいこと。もうひとつは、値引きで来た顧客は次も値引きを待つようになることです。
安さで選ばれている状態が続くと、より安い競合が現れた瞬間に顧客は移ります。この構造から抜ける方法は価格競争とは?価格競争に巻き込まれないための対策にまとめています。
販促が打ち上げ花火で終わる3つの理由
ここからが本題です。多くの会社で販促が根づかない理由は、次の3つに集約されます。
理由1 やった施策と結果が、どこにも残っていない
いちばん多いのがこれです。去年の夏に何をやって、いくらかかって、どうだったのか。これを一枚にまとめている会社は多くありません。
記録が残っていないと、毎年ゼロから考え直すことになります。だから毎回「今年は何をやろうか」という会議から始まり、結局その場で出たアイデアの中から勘で選ぶことになります。
これは担当者のアイデア不足ではありません。選ぶための材料が会社の中に用意されていないだけです。実施した施策を、費用と結果を添えて一行ずつ残していく。これだけで、翌年の会議の質が変わります。
理由2 何をもって成功とするかを、先に決めていない
販促を始める前に「どうなったら成功か」を決めていないケースも多く見られます。
この状態だと、終わったあとに評価ができません。売上が伸びていれば成功だと言えそうですが、季節要因かもしれませんし、別の施策の効果かもしれません。判断がつかないので、次に活かせません。
決めるのは難しくありません。「新規の問い合わせを月20件にする」「既存顧客の再購入率を5ポイント上げる」といった形で構いません。数字を当てることが目的ではなく、終わったあとに振り返れる状態をつくることが目的です。
理由3 担当者が変わると、やり方が消える
3つ目は、販促のやり方が特定の人の頭の中にしかない状態です。
チラシの入稿先、印刷の締切、去年使った原稿、反応が良かった見出し。こうしたものが個人のパソコンや記憶の中にあると、その人が異動した時点で会社から消えます。次の担当者は、またゼロから調べ直すことになります。
販促を仕組みにするというのは、大がかりなシステムを入れることではありません。やり方と結果を、次の人が読める形で残すことです。手順の残し方はマニュアルの作り方と同じ考え方で足ります。
販促を選ぶ前に、確認しておきたいこと
どの施策をやるかを決める前に、一度だけ確認しておくと効果が変わることがあります。それは「いまの顧客は、なぜ自社を選んでいるのか」です。
ここで注意が要ります。自社が考えている理由と、顧客が実際に選んでいる理由は、しばしば一致しません。
デザイナー出身の社長が立ち上げたウェブサイト制作会社の例があります。この会社は長年の経験から、自社が選ばれる最大の理由は「売れるデザイン」を提供できる点にあると考えていました。新規開拓の場でも、デザイン力の高さをアピールし続けていたのです。
ところが、リピート顧客数社に「なぜ私たちを選んでくれているのか」と尋ねたところ、返ってきた答えは違いました。顧客を惹きつけていた最大の要因は、デザインの良し悪しではなく「納品の速さ」だったのです。他社なら1週間かかる要件でも数日で対応できる。そこが選ばれる理由でした。
この事実が分かったあと、この会社は徹底的にスピード対応に注力することを決めました。社内の仕組みを一新し、さらなるスピードアップを実現しています。その結果、ウェブ上で頻繁にプロモーションを行うクライアント層からの支持を確実なものにしました。
もしこの会社が、確認しないまま販促を強化していたらどうなっていたか。デザインの実績を並べたチラシを配り、デザイン賞の受賞歴を打ち出していたはずです。労力はかかりますが、顧客が見ていないところを磨くことになります。
確認の仕方は簡単です。既存顧客5人ほどに、同じ質問を1つするだけです。同じ答えが3人から返ってきたら、それが自社が選ばれている理由です。そして、その言葉はそのまま販促物に使えます。顧客が使った言葉ほど、次の顧客に届く言葉はありません。
自社の選ばれる理由を言葉にする作業については、独自性とは?ビジネスでの意味と自社の独自性の見つけ方で詳しく扱っています。
販促を仕組みにする|7つの段階に施策を並べる
販促の施策を単発で並べるのをやめて、顧客が通る段階ごとに配置すると、抜けているところが見えるようになります。
私たちが使っているのは砂時計モデルという考え方です。顧客は次の7つの段階を通ります。
- 自社の存在を知る
- 興味を持つ
- 信用する
- 商品やサービスを試す
- 購入する
- リピート購入する
- 新規顧客を紹介する
通常の考え方では、購入までの流れだけを扱います。砂時計モデルが違うのは、購入したあとのリピートと紹介までを含めている点です。上半分が新規獲得、下半分がリピートと紹介にあたり、全体で砂時計の形になります。
目指す形は、下半分が上半分より大きくなること
この考え方の要点はここです。砂時計モデルがうまく機能すると、広告などの努力による新規開拓数よりも、紹介からの新規開拓数のほうが大きくなります。そうなると売上に占める広告宣伝費が減り、生産性が上がります。
多くの会社の販促は、上半分に偏っています。新規を集めるための施策は毎年考えるのに、リピートと紹介を増やす施策は「良い仕事をしていれば自然に増えるもの」として扱われがちです。ここが空欄のままだと、いつまでも新規獲得にお金を払い続けることになります。
各段階に「活動」「ツール」「指標」を置く
7つの段階それぞれについて、次の3つを決めます。
- 活動……その段階で会社側が何をするか。知ってもらうためのポスティングや検索対策など
- ツール……その活動を属人化させないための道具。資料のテンプレート、進め方を書いたマニュアルなど
- 指標……その段階で測る数字
2つ目のツールが、販促を続けられるかどうかを分けます。活動だけ決めても、やり方が本人の頭の中にあるなら、その人がいなくなった時点で止まります。ここは属人化を防ぐ作業と同じです。
販促の効果を測る5つの指標
最後に、何を見るかです。細かく測る必要はありません。次の5つで足ります。
- 顧客獲得コスト……1人の顧客を獲得するのにいくらかかったか。「CAC」とも呼ばれます
- 顧客生涯価値……1人の顧客が取引期間全体でいくら使うか。「LTV」とも呼ばれます
- 成約率……問い合わせから成約まで、商談から受注までの割合
- 広告の投資効果……広告からの売上を広告費で割った数字
- 投資回収期間……顧客獲得コストを、1か月あたりの顧客生涯価値で割った期間
この中でいちばん見落とされるのが、5つ目の投資回収期間です。顧客獲得コストだけを見ていると「1件5万円は高い」という判断になります。しかし、その顧客が3年間取引を続けるなら話は変わります。何か月で回収できるのかを出すと、いくらまで払ってよいかが決まります。
なお、これらの数字は販促だけで動くものではありません。売上そのものをどう分解して見るかは売上アップの方程式で扱っています。
販促に関するよくある質問
販促と販売促進は違うものですか?
同じものです。販促は販売促進の略で、意味の違いはありません。
社内文書では「販売促進」、日常の会話では「販促」と使い分けている会社が多いようです。どちらを使うかより、その言葉が指す範囲を社内でそろえておくほうが実務では大事です。
販促にはどれくらいの予算をかけるべきですか?
業種によって幅が大きいので、他社の平均を目安にしても意味がありません。自社で決めるなら、投資回収期間から逆算するのが確実です。
1人の顧客から1か月あたりいくらの利益が出て、何か月続くのか。それが分かれば、1人あたりいくらまでかけられるかが出ます。この計算をしていない状態で「売上の何パーセント」と決めると、根拠のない上限を自分で設けることになります。
予算がほとんどありません。何から始めればいいですか?
既存顧客への働きかけから始めることをおすすめします。新規獲得には広告費がかかりますが、すでに取引のある相手に連絡するのは費用がほとんどかかりません。
具体的には、しばらく購入のない顧客への連絡、紹介のお願い、購入後のフォローの3つです。砂時計モデルでいう下半分にあたる部分で、ここは予算より手間の問題であることが多いところです。
販促を強化したのに売上が伸びません。何が原因ですか?
順番に確認します。まず、知ってもらう段階で人が来ていないのか。来ているけれど成約していないのか。成約はするけれど続かないのか。
販促は背中を押す活動なので、そもそも人が来ていないなら効きようがありません。その場合に手を入れるのは集客の側です。逆に、問い合わせは来るのに成約しないなら、販促より営業の進め方を見るほうが早く直ります。組み立て方は営業の組織の作り方と強化方法にまとめています。
販促の担当者を置くべきですか?
人数の問題ではなく、担当が決まっているかどうかの問題です。専任である必要はありません。
ただし「手が空いている人がやる」という状態にはしないことです。販促は緊急ではないので、忙しい月から順に後回しになります。誰が、いつ、何を見て判断するのかを決めておかないと、繁忙期を境に自然に止まります。
販促の記録は、どこまで残せばいいですか?
凝った書式は必要ありません。1施策につき一行で足ります。
いつ実施したか、いくらかかったか、何件の反応があったか、来年もやるかどうか。この4つが並んでいれば、翌年の会議は「何をやろうか」ではなく「どれをもう一度やるか」から始められます。4つ目の「来年もやるか」を、その場で書いておくのがコツです。1年たつと、良かったかどうかの記憶はほぼ残っていません。
まとめ
販促とは販売促進の略で、購入を後押しするために行う活動全般のことです。集客や営業と並ぶものではなく、その流れの中で背中を押す役割を担っています。
方法は9つほどに整理できますが、即効性のあるものほど繰り返すと効かなくなります。特に値引きは、一度下げた価格が戻しにくいうえ、値引きを待つ顧客が育ちます。
そして販促が打ち上げ花火で終わる原因は、施策の中身ではありません。やった施策と結果がどこにも残っていないこと、成功の基準を先に決めていないこと、やり方が担当者の頭の中にしかないこと。この3つです。
どれも、担当者のアイデアや意欲とは関係がありません。会社の側に、選ぶための材料と残す形が用意されていないだけです。だから、そこは会社の側から直せます。
なお、仕組み経営では、集客や販促を含めた会社全体の仕組み化をご支援しています。詳しくは以下から仕組み化ガイドブックをダウンロードしてご覧ください。


