会社の新入社員オリエンテーションとは?
辞書によれば、オリエンテーションとは、「特定の位置に対して、誰かを方向付ける行為」とあります。会社における新入社員オリエンテーションに限定して考えると、新入社員を会社にとって望ましい方向へ導く行為と言えます。そのため、オリエンテーションでは、会社の理念や方針の説明のほか、各種ルールや仕組み、制度の説明、また同僚や上司との関係づくりを通じて、新入社員が会社で活躍できるように方向づけをしてあげることが大切になります。
新入社員オリエンテーションは、通常入社初日に行われます。そのため、新入社員が初めて会社の内部について知る機会になります。オリエンテーションを上手く活用することによって、早期の離職を防ぐことが出来ます。逆に言うと、オリエンテーションで新入社員に悪い印象を与えてしまうと、その印象を覆すことが難しくなります。以下の点に注意し、オリエンテーションを成功させましょう。
新入社員オリエンテーションの内容やチェックポイント
1.オリエンテーションに向けた準備
オリエンテーションでは、「この会社は整っている」という印象を与えることが大切です。必要な資料が何か欠けていたり、会場が乱雑だったりすると、「この会社大丈夫かな?」と不安になってしまいます。お客様を迎えるのと同じ緊張感でオリエンテーションの準備をしましょう。
また、貴重な入社初日を事務手続きだけで終わらすのは時間の無駄です。そのために事務的な手続きは事前に終わらせておくことがお勧めです。それによって、オリエンテーションでは、より大切な、会社の紹介や双方向のコミュニケーションに時間を使うことが出来るでしょう。
たとえば、
- 新入社員に署名や確認してもらう書類は事前に送り、作成してきてもらう。
- 仕事に必要なツール(ソフトウェアや機器など)のアカウント設定を終わらせておく。
- 新入社員に必要なものを入社キット(ハンドブックや名刺等)としてまとめておく。
などの準備をしておきます。
2.特別な演出を行う
先述した通り、第一印象が肝心です。オリエンテーションが事務的な手続きな終わることないよう、特別な演出をするのも良いでしょう。
たとえば、
- 経営陣とのランチ会を行う
- 会社のノベルティのパッケージをプレゼントする
- 社内ツアーを行う
- チームビルディングのワークショップを行う
などが挙げられます。
3.価値観や企業文化に触れる機会を設ける
新入社員が職場で活躍できるかどうかは、企業文化へのフィット(カルチャーフィット)度合いが大きく左右します。価値観が合う社員はより長く会社にとどまり、自主的に判断し行動できます。
採用の際にもカルチャーフィットを確かめることは大切ですが、オリエンテーションでも繰り返し、価値観や企業文化の共有を行いましょう。
- 自分たちの価値観は何か?
- 価値観を体現したストーリーは?
- 価値観がどのように実践されているか?
- 何が歓迎され、何が歓迎されないか?
企業文化で有名なザッポス社では、既存の社員が替わり替わり自社の価値観について語るセッションが用意されています。
4. バディ制度やメンター制度を活用する
バディ制度とは、同僚の中から一人、新入社員に職場での仲間を任命する制度です。バディは仕事仲間なので、仕事上の関係は基本ありません。新入社員にバディを付けることで、歓迎されていると感じてもらい、会社の仲間に加わるという決断を肯定してもらうことができます。バディ制度は通常、3か月から6か月間行われます。
一方、メンターは仕事上のサポートをしてくれる存在です。同じ部署の先輩社員や違う部署の管理職などがメンターになります。メンター制度も同じく3か月から6か月間行われます。
研究によると、バディ制度によって、新入社員の幸福度、モチベーション、生産性、定着率を向上させると言われています。さらに、メンターのいる社員は、同じ会社に留まる確率が2倍になるとされています。
バディ制度、メンター制度ともに新入社員サポートに有効な方法ですが、注意点としては、名目だけの制度にさせないことです。バディやメンターを指名したものの、指名された本人が何もサポートをしないのであれば、逆効果です。バディとして何をするか、メンターとして何をするかを明確にしたうえで制度の導入を行いましょう。
オリエンテーションでは、バディやメンターとの顔合わせや今後のプランを案内するようにします。
5. 自己紹介の機会を設ける
新入社員が自己紹介できる機会を設けましょう。これにより、既存社員と新入社員のつながりを創ることが出来ます。ただし、いきなり自己紹介してください、と言われても躊躇する人もいます。オリエンテーションで自己紹介をしてもらう場合には、事前にその旨を伝え、話す内容をまとめておいてもらうようにしましょう。人前で話す経験が少ない新卒社員なら猶更です。
会社の中で活躍するには、自己表現やプレゼンテーションの能力も必要です。そのため、オリエンテーションでの自己紹介をトレーニングの機会として活用する会社もあります。
6.給与/福利厚生の説明
人は必ずしもお金のために働くわけではありませんが、給与は社員と会社の関係性に大きな影響を持ちます。給与制度をはじめとする人事の仕組みについてはしっかり理解してもらうようにしましょう。会社に福利厚生がある場合、それを完全に理解してもらうよう説明する機会を設けましょう。
これらの説明に時間がかかる場合には、オリエンテーションと別日に設定します。
給与の仕組みや福利厚生は必ずしも社員の動機づけやエンゲージメントにつながるわけではありません。しかし、正式に説明されていなかったとなれば、働く動機は下がり、エンゲージメントも下がるでしょう。
7.オリエンテーションチェックリストの活用
オリエンテーションを滞りなく行うために、受け入れ側で活用するチェックリストを作っておきましょう。チェックリストを活用することで、すべての新入社員に漏れなく同じ体験を提供することが出来ます。
オリエンテーションチェックリストの項目例(あくまでサンプルです。自社用に作成してください)
- いつ、どこに集合してもらうか
- 駐車場/駐輪場の場所
- 連絡先
- 全社に新入社員の入社を知らせる
- デスク、事務用品、その他の備品の準備
- コンピュータやツールへのアクセス
- 会社概要
- 企業文化
- 価値観
- ビジョン/ミッション
- 方針
- 勤務時間・シフトの説明
- 給料日
- 身だしなみとドレスコード
- 休暇
- 休憩時間
- 新入社員トレーニングの手順
- 人事制度
- 社員ハンドブック
- 新入社員を主要スタッフに紹介する
- 組織図の説明
- バディの紹介
- 社内ツアーの実施
- 持ち物の置き場所
- 休憩室の紹介
- インターネットや電話の使用に関するポリシー説明
- ハラスメント
- 残業について
- 職場のセキュリティ、安全、緊急時の対応
- 施錠の仕方
- 救助の呼び方
- 事故の報告
- COVID-19 に関する計画
- 福利厚生制度への加入
- 職務と責任
- 勤務時間
- 会議システム
8.キャリア形成の支援
人は誰でも、自分には可能性あると感じたいものです。会社が自分のキャリア刑成の支援をしてくれると感じれば、より長くこの会社で働こうという気になります。ある調査によれば、職場で自分のスキルを向上させる機会があると感じている人は、幸福度が高く、仕事に充実感を感じているとのことです。
オリエンテーションにおいては、会社として提供できるキャリア形成の仕組みを説明しましょう。たとえば、研修制度や昇進昇格、資格支援制度などもそれにあたります。また、オリエンテーションと別日で良いですが、キャリアを考えさせるワークショップを開催することもお勧めです。
9.90日間の集中的なオンボーディングを行う
多くの中小企業では、オリエンテーションを行った後は現場でのOJT任せという場合も少なくありません。このやり方では新入社員が活躍できるかどうか、またこの会社で働き続けたいと思うかどうかが、その部署や上司次第になってしまいます。そうならないように、オンボーディングの仕組みを整え、会社として新入社員をサポートすることが大切です。
定期的に新入社員の状況をチェックすることで、彼らはサポートされていると感じ、社員が大切にされている会社であると伝えることができます。30日目のレビュー、60日目のレビュー、90日目のレビュー、そして毎週または隔週のチェックインを計画しましょう。特にリモートワーク環境においては、このような頻繁なコンタクトが意味を持ちます。
オンボーディングについてはこちらでもご紹介しています。
10.オリエンテーションの有効性を測定する
オリエンテーションの仕組みが整ったら、その有効性を測定するための指標を設定しましょう。指標が水準を下回っていれば、オリエンテーションの仕組みを改善する必要があります。
オリエンテーションの指標の例としては次のようなものが挙げられます。
- 1年以内の離職率
- エンゲージメント指数
- eNPS
- 評価制度による新入社員のパフォーマンス
オリエンテーションのサンプル内容
最後にオリエンテーションの一日の流れのサンプルを載せておきます。
9:00 AM – チェックイン
受付では、準備した情報、書類、記念品などを新入社員に提供します。ケータリング等による朝食を提供するのも手です。新入社員が他の新入社員や既存の社員と顔を合わせ、歓迎の第一印象を与えることができます。
10:00 AM – ウェルカムプレゼンテーションとアジェンダの確認
新入社員が全員チェックインしたら、集合して歓迎のプレゼンを行います。オリエンテーション当日のアジェンダの概要と、新入社員に何を期待しているかを説明します。
10:30 AM – 会社の理念、歴史など
次に、会社の歴史を紹介しましょう。また会社の理念(ミッション、コア・バリュー等)を説明し、組織がどのように形成されたかを大まかに説明します。また、企業文化を紹介します。新入社員があなたの会社で働く理由を紹介します。
11:30 AM – 各部門の管理者との顔合わせ
一方的な講義形式のオリエンテーションにしないために、部門ごとのグループに分かれさせましょう。同じ部署で働く新入社員が顔を合わせることで、直属の上司に気兼ねなく接することができます。
12:00 PM – 昼食休憩
午前中で、多くの情報を提供しました。ここで休憩を取り、心の余裕を与えてあげましょう
1:00 PM – 経営陣による歓迎
経営陣を招いて新入社員を歓迎し、話を聞いてもらいましょう。経営陣が忙しくて会場に来れない場合には、歓迎のビデオを用意してもらって、この場で流すようにします。
2:00 PM – 従業員ハンドブック
会社のポリシーやルールなどを期待した従業員ハンドブックを用意している場合には、それを使って、説明します。また、オリエンテーション終了後、ハンドブックを渡し、受領のサインをしてもらいまいます。
3:00 PM – 社内ツアー
ここまでで新入社員はかなりの疲労がたまっているはずです。そこで、足を伸ばしてもらうためにも、会社内を見学してもらいましょう。会社内を歩きながら、社風や職場環境について、より詳しい情報を紹介することが出来ます。
4:00 PM – 給与とFAQ
最後に、給与について説明し、必要な書類があれば記入してもらいます。残りの時間で、よくある質問について説明し、答えられないことがあれば他の社員を呼んだり、後日説明します。一日の最後には、今後の流れについて再度確認してオリエンテーションを終了します。
オリエンテーションの仕組みを創る
オリエンテーションで大切なのは、毎回内容が異ならないように、仕組み化することです。それによって、すべての新入社員は同じ体験をすることが出来ます。また、オリエンテーションとその後のオンボーディングや研修の仕組みもつなげる必要があります。
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