科学的管理法とは?
会社の社長であればマネジメントをどうやってやっていくかということに必ずと言っていいほど悩むと思います。会社員時代に部下を持ってマネジメント経験を持って独立する人もいると思いますが
一方で多くの社長、特に20代くらいで起業した社長というのは部下を持つ・人をマネジメントするという経験がないまま独立して、気づいたら社員が増えてきてマネジメントしないといけない立場になってる人も多いかと思います。
そうなると、どうやって組織をマネジメントしていくかということに悩むことになります。
ですので研修に行ったり勉強して学んでいくのですが、組織のマネジメントに関しては大体100年くらいの過去の人たちの積み上げがありますので、それをまず学ぶことによって、マネジメントの原理原則が学べるということです。
なので今日はマネジメントの原点、テイラーの「科学的管理法」の解説をします。
管理法の生みの親、フレデリックテイラーとは?
テイラーの正式名は「フレデリックテイラー」になります。今申し上げた科学的管理法というものを生み出して有名になった人です。
マネジメントというと、ドラッカーなどが有名ですが、ドラッカーよりもはるか昔にマネジメントを科学するということをやり体系化した人です。ドラッカーの本にもテイラーの話が出てきたりしますね。
この人は百数十年前の人物ですが、この頃からマネジメントに悩む会社というのはたくさんあって、テイラーはそういった会社に対してコンサルティングの仕事をしていました。
科学的管理法という名前自体は聞いたことのある人も多いと思うのですが、具体的に何を意味するかを知っている方は少ないと思いますので、今日はその話をしていきたいと思います。
科学的管理法が生まれた背景
テイラーは自分が生み出した科学的管理法を使って、色んな工場をコンサルティングする仕事をしていました。
そんな中、とある工場で、生産性が一人当たり3.7倍に増えました。どうやってやったかは後程ご紹介しますが、その前になぜ彼がこの方法を体系化しようと思ったか、という話をしようと思います。
ある時、銑鉄を運ぶ作業場があり、彼はそこの作業効率をいかに上げるかという仕事に取組み始めました。
当時の作業場はチームがありリーダーがいて、そのリーダーのやり方でやるという、非常に属人的なやり方で鉄を運ぶ作業をしていました。
なのでチームによって成果もバラバラだし、人によって作業効率もバラバラなので、中々成果が安定しない、生産性が安定しない。という状況でした。
当然ながら作業員を雇っている雇い主たちはもっと作業員に働いてもらって成果を上げたいと思っていたのですが、一方作業員の人たちは頑張って働いても給料が上がらないということであまり一生懸命働くということはしていませんでした。要するに怠惰な姿勢を取っていました。
そこで雇う側と作業員の間で対立が起こっていました。いわゆる、労使対立です。雇う側と作業側の対立が起こっていました。それを何とか解決しながら、且つ作業効率を上げようということでテイラーが考えたのが、「鉄を運ぶ作業を標準化して作業効率を上げていこう」ということです。
作業員の中にシュミットという人がいて、彼は元気がよく、いつも家から作業場まで1マイルくらいを走って通っていました。そして昼間は作業をして、帰りはまた走って帰って・・・ということで非常に体力のある作業員でした。
そこでテイラーはその人をモデルにして作業効率を上げる方法を考え出そうと、シュミットに自分たちが考えたやり方で作業をやらせることにしました。
そうすると、今までより鉄を運ぶ量が増えて、作業効率が上がったという結果が出ました。そして、「自分たちがシュミットにやらせた方法で他の作業員にやらせれば、全体の生産性が高まるのではないか」ということになり、作業のやり方や道具の使い方、時間の使い方をすべて決めて、そのやり方で工場、作業場を変革していきました。その結果、生産性が3.7倍に上がったという話です。
こちらが実際のデータなのですが、テイラーが入る前は作業場に労働者が400~600人いて、一人当たり、16トンくらい鉄を運べる計算でした。一人当たりの平均賃金は1.15ドル。もちろん物価が安い時代なのでこの金額です。
一方、テイラーが考え出した方法でやった所、労働者数が圧倒的に少ない、140人でできることが分かりました。そして一人当たりの鉄を運ぶ量は59トン。16トンから比べると大体3.7倍の量です。そして賃金も1.88ドルになり、雇う側も働く側も非常に特をしたという結果となりました。
そこでこのやり方をテイラーは体形化して、ほかの工場にもこの方法を広め、生産性向上に寄与していきました。
科学的管理法の原則は現代にも有効性を持つ
そして鉄の作業場で実験した結果を元に体形化したものが「科学的管理法」です。これは100年くらい前に生み出されたものなのですが、未だに大体の会社ではこのような手法が取り入れられていると思います。
もちろんこの方法だけではなくそこから進化して、テイラーの管理法への批判などもあったりして、100年が経ち別のやり方も出ているのですが、ベースはこの科学的管理法といえると思います。
なので、マネジメントをよりうまくやりたいという社長はぜひ今からお話しする内容を知っておいた方がいいと思いますのでご紹介していきたいと思います。
科学的管理法の概要
科学的管理法は大きく分けると5つで成り立っています。
1.課業管理
2.作業研究
3.指図票制度
4.新しい賃金制度
5.新しい組織
これらを一つ一つ見ていきます。
1. 課業管理
まず課業管理についてですが、これはいくつかの原理に分かれています。
課業設定の原理
「課業設定の原理」という難しい言葉ですが、これは「一人当たりどれくらいの作業量にすると効率よく働けるか」という分析と設定を指しています。
マネジメントをするときにはあまり無茶を言って仕事量を増やしても効果が上がらないということです。
テイラーは先ほどのシュミットを実験台にし、どれくらい仕事量を与えれば成果が出るのかということを分析しました。あまり仕事量を増やしすぎても早く疲れてしまい、返って生産性が落ちるということが分かりましたので、作業量が多ければ多いほどいいという訳ではなく、適切な仕事量を与えてあげることが課業設定の原理というものです。
標準的条件の原理
そして「標準的条件の原理」というもの。これは、”決められた仕事量をこなすのに一番いい作業のやり方は何なのか”。例えば、どういう道具を使えばいいのか。どういう動作をすればいいのか。ということを決めることになります。
達成賃率・未達成賃率
そして達成賃率・未達成賃率。
これは、「この作業をこれ以上頑張ってくれたらこれくらい賃料が上がります。これ以下だとこれくらいの賃率になります。」という報酬の定義をしっかり決めることです。雇う側にとても合理的だし、働く側にとっても合理的な率に設定するということです。
熟練移転の原理
次に、熟練移転の原理。
これはまさにシュミットの話で、シュミットはテイラーが決めた作業によって成果を出しました。
その熟練されたやり方を他の作業員に移転させるというのが熟練移転の原理です。良く、売れている営業マンのやり方をマネさせて、チーム全体の営業成果を高めるということをやりますが、それがまさに熟練移転の原理ですね。これを100年くらい前からやっているということです。
2. 作業研究
次に、作業研究。「課業管理でどれくらいの仕事にすればいいか。どういう動作、道具を使えばいいか」ということを分析しないといけないですがそれが「作業研究」によってなされます。
時間研究
まずは、時間研究。各作業にどれくらい時間がかかるかということです。例えば、鉄をすくいあげるのにどれくらい時間がかかるか。それを運ぶのにどれくらい時間がかかるか。それをストップウォッチで測り、各作業を分析しました。
動作研究
そして動作研究。
これは「ムリムダのない動作とはどういうものか」を分析するということです。時間と動作の研究によって適切な成果が出るやり方を見つけてそれを標準的なやり方として決める。
その作業のやり方を他の作業員にもやらせるというのが基本的な考え方です。
さすがに今の時代に社員の作業時間を図ったりすると、またそれはそれで問題があるという話になるかと思いますが、当時はやっていたんですね。
3. 指図票
次に指図票です。これは作業マニュアルです。うまくいくやり方を決めた時にはそれを他の人に移転させなくてはならないので、移転させるために「こういう風にやりなさい」という指図が必要です。それを紙にしたものが指図票ですね。今でいうマニュアルです。
指図票には3つのことが書いてありました。
どんな道具を使うか?
一つは道具。どういう道具を使えば一番生産性が高まるのかということ。昔は鉄を運ぶのにも人それぞれスコップの大きさが違ったようでした。だが、それを誰も気にせず自分がやりたいやり方でやっていた。それだとパフォーマンスが一定にならないため、道具を決めました。
どれくらい時間を使うか?
次に、時間の標準化。時間も、チームリーダーの指示で休んだり働いたりしていました。そうではなくて「これくらい働いたらこれくらい休む」という時間を標準化しました。
どう作業するか?
そして作業の標準化。どういう動作でやれば効率が上がるかというのを標準化しました。
そしてこの3つをまとめて、その通りにやらせる。それで生産性を高めようというやり方です。
4.賃金制度
4つ目の新しい賃金制度というのは先ほど言った通りです。これくらいのハードルを越えたらこれくらいの賃率にする。それより下がったらこれくらいの率にする。という基準を決めて、それより上がったら高い賃率で払う。それより低かったら低い賃率で払うという仕組みです。作業員から見て平等感が得られるように制度を作るということになります。
5.新しい組織
そして最後。新しい組織。これはテイラーの中では特徴的な考え方でした。先ほど言った通り、昔は、チームがあって、各チームのリーダーの匙加減でメンバーが働くというやり方でした。

なので、雇い主からすると、雇っている方のやり方でやってほしいものの、実際は現場のリーダーが力と権限を持っていて彼らのやりたいようにしかできなかった。そこで、働く側と雇う側の対立が起こっていました。
そこでテイラーは計画部というものを作り「どういう道具を使うか」「どれくらい時間を使うか」計画するということを決めました。リーダーは計画部が決めた通りにメンバーに指示を出して働かせるということで全体の統一感を出すやり方にしました。

今でいう、ライン部門とスタッフ部門を分けたという形です。こうすることで全体を底上げしました。
計画部という所は今の会社でいう、「管理署」という形ですね。チェーン店であれば計画部は「本部」。各店舗は本部の決めたやり方でやっていく。これが新しい組織ということですね。
今ライン部門とスタッフ部門をよく分けますが、この原点はテイラーの新しい組織の考え方だと言われています。
科学的管理法への批判や問題点、デメリット
というわけでテイラーの新しい管理法を紹介してきました。
「こうやればうちの会社も生産性が上がるな」と感じた方もいるかと思うのですが、一方で冒頭申し上げた通り、中々この通りにはいかないというのが人間ですよね。
機械にやってもらうのだったら今みたいなやり方でどんどん生産性は高まっていくかと思いますが、実際に働いているのは人間なので違ったことも考えないとうまくいかないというのは、だんだん分かってきたことです。
科学的管理法と人間関係論
ですのでマネジメントの分野は、テイラーのような「科学的に作業を分析して効率よくやっていきましょう」という路線と「人間を大事にするマネジメントのやり方」という両路線があります。
これがずっと対立してきたのですが、今はなんとなくそれらが融合された形で、マネジメントが成り立つようになりました。
テイラーは完全な効率重視として有名になったわけで、「人間関係論」の方に関しては、別途お伝えしたいのですが、とにかくテイラーは効率重視の派閥でした。
科学的管理法への批判、問題点
テイラーが科学的管理法を広めていったのですが、当時も色んな批判がありました。
主には二つです。
労使対立を引き起こす
一つは労使対立です。
本当は、テイラーは労使関係の対立がないようにするために科学的管理法を生み出したのですが、労使対立が起こってしまいました。
最初の例に出したように、テイラーがやったようにやれば雇う側も生産性が高まるし、雇われる側も賃金が上がったという事例がありましたが、中々世間的にはそれがうまく普及せずテイラーのやり方でやると労使対立が起こるという批判があったそうです。
特に、計画部と現場の対立が起こるというのがよく批判になったそうです。今でもありますよね。管理職と現場が対立する、本部と現場が対立するなど。そういったことが計画部と現場を二つに分けたことで起こりました。
計画部がない時代というのは現場ですべてを決めていたので現場のリーダーの言うことを聞いていればすべてうまく収まったものが、「現場を知らない計画部が決めたことをなぜやらないといけないんだ!」という形で労使協定が起こったようです。
人間性の欠如
そして、人間性の欠如。テイラーのやり方を突き詰めると、「人間は単純作業を繰り返せば生産性が上がります。」という話になりますが、人間なので感情が入ります。
それを考慮せずにやってきた為に批判が生まれました。やはり単純作業を反復してしまうと、わざと生産性を落としたりするということも出てきたため、そういうことを考慮できなかったことで批判が起きました。
テイラーの科学的管理法は現代でも応用できる
以上、科学的管理法について解説しました。後半でテイラーへの批判もあったとお話ししましたが、先ほど科学的管理法の5つのポイントは今でもマネジメントを考えるときに考慮しないといけない点なので、ぜひ頭に入れていただくと良いと思います。