「寛厳よろしきを得る」

「寛厳よろしきを得る」— 松下幸之助が言った意味と理想的な指導者像


清水直樹
松下幸之助氏は経営の神様として知られていますが、同氏の部下の指導方法として象徴的なのが、「寛厳よろしきを得る」です。

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松下幸之助のなにがすごいのか

寛厳よろしきを得る

「寛厳よろしきを得る」という言葉は、松下幸之助氏が理想のリーダー像として語ったものです。簡単に言うと、厳しさと寛容さのバランスを上手くとることが大事だ、という考え方ですね。

ただ、ここで勘違いしてはいけないのは、「優しさと厳しさを半々にする」みたいな単純な話ではないということです。松下氏の考えでは、リーダーは基本的に大きな寛容さを持つべきだけど、必要な場面ではしっかり厳しさを示すことも重要だ、ということなんです。

このバランスが取れていると、周りの人からの信頼も厚くなり、組織全体の成長にもつながります。厳しさだけでは人はついてこないし、甘やかしてばかりでも組織は強くなりません。だからこそ、状況に応じて「寛」と「厳」をうまく使い分けることが、リーダーに求められる大事な資質なんですね。

寛容と厳格のバランス

まず、寛容さと厳格さについてその基本的な意味を理解することが大切です。

寛容さとは

部下や社員の自由度を尊重し、彼らの自主性を引き出す姿勢です。自由に意見を述べたり、試行錯誤を通じて学んだりすることで、社員が成長し、創造力を発揮できる環境を作り出します。寛容さは、組織において信頼感を生み、社員が自分の意見を恐れずに出せるような環境を整える役割を果たします。

厳格さとは

目標達成に向けての規律を守ること、そして責任感を持ち、結果を追求する姿勢です。厳格さは、組織における基準やルールを守ることで、方向性を定め、必要な成果を上げるための強い意志を示します。しかし、この厳しさは単なる高圧的な態度ではなく、部下の成長を促すためのものであるべきです。

幸之助氏の「1:9」の教え

寛容さと厳格さ

松下幸之助氏が語った「寛厳よろしきを得る」の中でも特に印象的なのが、「優しさ9、厳しさ1」というバランスです。つまり、リーダーは基本的に寛容であるべきだけど、必要なときにしっかり厳しさを示す。その割合が9:1くらいがちょうどいい、という考え方ですね。

このバランスが大事なのは、厳しさが強すぎると社員が萎縮してしまい、自由な発想や自主性が失われるからです。でも、逆に寛容さばかりでは、組織としての規律が緩んでしまい、目標達成への意識や責任感が薄れてしまう。だからこそ、厳しさは「ほんの1割」に抑えつつも、その1割が組織全体に強い影響を与えるように使うことが重要なんです。

この1割の厳しさがあることで、組織には「ここは絶対に守るべき」という明確な基準ができ、社員も「結果を出すためにどうすればいいか?」と考えるようになります。ただのプレッシャーではなく、方向性を示し、目標達成に向けての指針となる厳しさですね。

幸之助氏は、この適度な厳しさこそが組織を引っ張るエネルギーになると考えていました。リーダーが厳しさを適切に使えば、社員からの信頼も生まれ、結果として組織全体のパフォーマンスが向上する。厳しさは「力で押し付けるもの」ではなく、「成長を促すためのエッセンス」として機能するべきなんですね。

寛容と厳格のバランスを実現するための具体的な方法

「寛厳よろしきを得る」を実践するための方法を見ていきましょう。

「寛容さ」の実践方法

寛容さを発揮するためには、まず部下や社員を信頼し、思い切って仕事を任せることが大切です。リーダーが細かく指示を出しすぎると、社員は「自分で考える必要がない」と感じてしまい、受け身になってしまいます。逆に、信頼されて仕事を任されると、自主性が生まれ、「どうすればうまくいくか?」を自分で考え始めます。この姿勢が、組織の中での積極的な意見交換や新しいアイデアの創出につながるのです。

また、失敗を学びの機会と捉えることも寛容さの重要なポイントです。失敗を責めるのではなく、「なぜそうなったのか?」を一緒に振り返り、次に活かせるようにすることで、社員は安心してチャレンジできます。たとえば、「ミスをしないこと」よりも「ミスから何を学ぶか」を重視する文化を作ると、社員はより積極的に動けるようになります。寛容さとは、単に甘やかすことではなく、成長のための安全な環境を提供することなのです。

「厳格さ」の実践方法

厳格さを実践するには、まず目標や結果に対して明確な基準を設定することが不可欠です。「頑張れ」ではなく、「この基準をクリアすることが成功だ」と具体的に示すことで、社員は何を目指せばいいのかが明確になります。そして、その目標に向かって努力することで、組織全体のレベルアップにもつながります。

さらに、時には厳しいフィードバックをすることも重要です。ただし、厳しさだけでは社員のモチベーションを下げてしまう可能性があるため、厳しく指摘した後には必ずサポートをすることがポイントです。たとえば、「ここがダメだ!」と言うだけではなく、「こうすればもっと良くなる!」と具体的な改善策を示すことで、社員も前向きに受け止められます。厳しさは、相手の成長を願うからこそ必要なものであり、「厳しくするのは、あなたの成長を本気で願っているからだ」と伝えることができれば、社員も受け入れやすくなります。

結局のところ、寛容さと厳格さのバランスを取るためには、社員の成長を常に意識し、「信頼すること」と「求めること」を両立させることが大切なのです。

まとめ:「寛厳よろしきを得る」を現代経営に活かす

最近では、少し厳しさを見せるだけで社員が委縮したり、離職したり、場合によってはパワハラと捉えられることもあります。そのため、多くの経営者が「どう指導すべきか」に悩んでいます。しかし、ただ優しく接するだけでは組織は成長しません。松下幸之助氏の哲学は、このような現代の課題にも大いに役立ちます。彼は「寛容さと厳格さのバランスこそが、強い組織を作る」と説いています。

信頼の上に成り立つ寛容と厳格

幸之助氏は「信頼がなければ、寛容さも厳格さも意味をなさない」と語りました。どれほど寛容でも、どれほど厳しくても、社員が経営者を信頼していなければ効果はありません。まず、社員の声に耳を傾け、自由に意見を言える環境を作ることが不可欠です。ただ「意見を出せる場」を設けるだけでなく、リーダーが本気で受け止める姿勢を持つことで、初めて信頼関係が築かれます。

厳格さが生むリーダーシップの効果

厳格さは適切に使えば組織の成長を促します。「1割の厳格さが9割の寛容さを支える」という考え方が重要です。寛容さだけでは方向性が曖昧になり、厳格さだけでは社員が萎縮します。例えば、目標は明確に定めながらも、その達成方法には裁量を与えることで、自由と責任のバランスを取ることができます。

また、リーダーの厳格さは一貫性があってこそ価値を持ちます。「どこに厳しくし、どこに寛容であるか」を明確にし、ぶれない姿勢を貫くことが求められます。

「寛厳よろしきを得る」リーダーへ

優れたリーダーは寛容さと厳格さを適切に使い分けます。社員が自由に意見を出せる環境を作りながら、成果を出せる組織へと導くことが求められます。

実践のポイントは、社員の主体性を引き出す寛容さと、組織の成長を支える厳格さのバランスです。例えば、意見を受け入れるだけでなく「どう活かすか」を共に考え、目標を明確にしながら達成方法には裁量を持たせる。また、フィードバックでは「どうすれば良くなるか」を具体的に伝えることが重要です。



最も重要なのは、リーダー自身が自らの言動に一貫性を持つことです。組織の成長に応じて、寛容さと厳格さのバランスを調整する柔軟性も必要です。「寛厳よろしきを得る」とは、単なる経営手法ではなく、リーダーの生き方そのものなのです。

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