経営ビジョン策定プロセスを完全解説。



清水直樹
ビジョンとは、会社が将来ありたい姿のことを指しています。この記事では、経営ビジョン策定について解説していきます。対象読者は中小企業や成長企業の経営陣になります。
※本記事で解説する経営ビジョンの策定は、当サイトのメインテーマである「仕組み化で勝手に成長する会社づくり」を実現するための重要なステップです。ここから、あなたの会社の未来を創る旅が始まります。

「ビジョンなんてなくても、日々の業務は回るし、売上も立っている」

中小企業の経営者であれば、一度はそう考えたことがあるかもしれません。確かに、目の前のキャッシュフローや顧客対応に追われる中で、遠い未来を描くことは、どこか贅沢で非現実的な行為に思えるでしょう。

しかし、本当にそうでしょうか?

変化の速度が激しく、明日がどうなるか誰も予測できないVUCAの時代。羅針盤も海図も持たずに、ただがむしゃらに船を漕ぎ続けることは、成長に向けた「航海」ではなく、ただ流されているだけの「漂流」になってはいないでしょうか。

この記事では、「経営ビジョン」という言葉にまとわりつく綺麗事のイメージを一度リセットし、それをいかにして企業の成長をドライブする強力な「エンジン」であり、進むべき道を指し示す「羅針盤」として機能させるかを徹底的に掘り下げていきます。

この記事を読み終える頃には、あなたは以下のことを手に入れているはずです。

  • 経営ビジョンの本質的な意味と、それが企業経営に与える絶大な影響の理解
  • “絵に描いた餅”で終わらせない、実践的なビジョン策定の具体的なステップ
  • 策定したビジョンを組織の隅々にまで浸透させ、血肉化させるための戦略
  • 歴史に名を刻んだ偉大な企業から学ぶ、ビジョン経営の成功法則

さあ、あなたの会社の未来を切り拓く、思考の旅を始めましょう。

経営ビジョンとは?その本質と”誤解”を解き明かす

まず、最も基本的な問いから始めましょう。「経営ビジョン」とは、一体何なのでしょうか。多くの教科書には「自社の将来ありたい姿」と書かれています。もちろん、それは間違いではありません。しかし、その定義だけでは、ビジョンが持つ本当の力を見過ごしてしまいます。

経営ビジョンの定義:未来を”予約”する言葉

経営ビジョンとは、単なる目標設定ではありません。それは、組織のエネルギーを一点に集約させ、未来の特定の状態を”予約”する、強力な宣言です。

例えば、私たち仕組み経営では「アントレプレナーシティを作る」という経営ビジョンを掲げています。

経営ビジョンの例

これは、起業家が会社を創り、成長させ、やがて引退し、第2の人生をスタートする…といった、すべての起業家が辿る道を支援するためのプラットフォーム構想です。このビジョンがあるからこそ、私たちは日々「このプラットフォームに必要なパーツは何か?」という問いを立て、サービス開発や投資の意思決定を行うことができます。

ビジョンが明確であればあるほど、日々やるべきことが明確になる。それは、進むべき道を示すと同時に、進まない道を断ち切る力を持つからです。

経営ビジョンの役割:それは”飾り”か、”武器”か?

優れた経営ビジョンは、額縁に入れて飾っておくためのものではありません。日々の経営活動の中で使い倒す「武器」です。具体的には、以下のような強力な役割を果たします。

  • 社内外への方向性提示: 組織全体が同じ未来を向き、迷うことなく進むための絶対的な基準となります。
  • 社員のモチベーション向上と一体感の醸成: 社員は単なる労働力の提供者ではなく、共通の未来を創るパートナーへと意識が変わります。
  • 経営判断の基準、意思決定の迅速化: 「この投資はビジョン達成に貢献するか?」という問いが、あらゆる意思決定のスピードと質を高めます。特に、ビジョンはアクセルであると同時に、「何をやらないか」を決める強力なブレーキとしても機能します。情報過多の時代において、この役割は極めて重要です。
  • 対外的な信頼獲得、ブランディング: 顧客、取引先、株主といったステークホルダーに対して、自社がどこへ向かっているのかを明確に示し、共感と信頼を獲得します。
  • 優秀な人材の確保と定着: 給与や待遇だけでなく、「この船に乗って、一緒に面白い未来を見たい」と思わせる力が、優秀な人材を引きつけ、離しません。

似て非なる言葉の迷宮:経営理念・ミッション・バリューとの違い

「経営ビジョン」を語る上で、必ずと言っていいほど登場するのが「経営理念」「ミッション」「バリュー」といった言葉たちです。これらはしばしば混同されがちですが、それぞれの役割は明確に異なります。ここでは、その違いを整理しておきましょう。

これらの言葉の定義は各社が独自に設定して良いものですが、一般的には以下のように整理すると、思考の混乱を防ぐことができます。仕組み経営では、これらビジョン・ミッション・バリューの3つを合わせて「理念体系」と呼んでいます。

経営理念:企業の”憲法”、変わらない北極星

経営理念(Corporate Philosophy)は、企業の存在意義や根本的な価値観、哲学そのものです。時代や環境がどれだけ変わろうとも揺らぐことのない、企業の「あり方」の根幹をなします。経営ビジョンが「目指す場所」だとしたら、経営理念は「なぜそこを目指すのか」という旅の動機や、旅の間ずっと見上げ続ける「北極星」のようなものです。

例えば、Googleが掲げる「ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる」という言葉は、ビジョンではなく、彼らがビジネスを行う上での根本的な哲学、すなわち経営理念です。

ミッション:果たすべき”使命”、存在理由 (Why)

ミッション(Mission)は、企業が社会において果たすべき「使命」や「存在意義」を定義したものです。「私たちは、なぜ存在するのか?(Why)」という問いへの答えがミッションです。

ビジョン:目指すべき”景色”、到達点 (What)

ビジョン(Vision)は、ミッションを遂行した結果、企業が将来的に到達したい「理想の姿」や「目指す景色」です。「私たちは、どこへ向かうのか?(What)」という問いへの答えがビジョンです。

バリュー:守るべき”約束”、行動指針 (How)

(コア)バリュー(Value)は、ミッションを果たし、ビジョンを達成するために、組織のメンバーが共有し、遵守すべき「行動指針」や「共通の価値観」です。「私たちは、どのように振る舞うのか?(How)」という問いへの答えがバリューです。

▶(コア)バリューについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

MVVの関係性:なぜセットで語られるのか?

これらMVV(Mission, Vision, Values)は、相互に深く関連し合っています。

ミッション(Why)という存在理由があるから、

ビジョン(What)という目指すべき未来が描け、


その未来に向かうためにバリュー(How)という共通の行動指針が必要になる。

この3つが一本の線で繋がっているとき、企業は強力な推進力と一貫性を手に入れることができるのです。

【事例研究】歴史と現代に学ぶ、ビジョン経営の神髄

経営ビジョンが単なるお題目ではないことは、歴史が何より雄弁に物語っています。今、私たちが当たり前のように享受しているテクノロジーやサービスも、その源流をたどれば、一人の起業家が描いた壮大なビジョンに行き着くことが少なくありません。

マイクロソフト:「すべてのデスクと家庭にコンピュータを」が創った未来

マイクロソフトの共同創業者ビル・ゲイツは、自著『ビル・ゲイツ 未来を語る』の中で、成功の秘訣を問われ、こう断言しています。

「マイクロソフトの成功の秘訣を教えてほしいとよくいわれる。(中略)いちばん重要だったのは、私たちが持っていた最初の経営ビジョンだったと思う」

マイクロソフトの経営ビジョン
経営ビジョンがマイクロソフト成功につながった

そのビジョンとは、あまりにも有名なこの一文です。

「A computer on every desk and in every home. (すべてのデスクと家庭にコンピュータを)」

彼は続けます。

「コンピューティング・パワーが安価になれば、いたるところにコンピュータが普及する。それを活用するためのすばらしいソフトが出てくるに違いない。私たちはその可能性を信じ、まだだれも手をつけていない時期に開発しはじめた。最初にこの経営ビジョンがあったおかげで、その後のすべてが多少なりとも楽になった」

ハードウェア開発に各社がしのぎを削っていた時代に、彼は「未来の主役はソフトウェアだ」という明確なビジョンを持っていました。このビジョンがあったからこそ、マイクロソフトは莫大なリソースをソフトウェア開発に集中投下し、世界を席巻する企業へと成長できたのです。

IBM:「私たちはすでになっているかのように振舞った」

かつてのコンピューター業界の巨人、IBM。その初代社長トーマス・ワトソンは、IBMの成功の理由をこう語っています。

「IBMが今のような会社になったのには、3つの特別な理由がある。1つ目は、最初から私たちの会社は最終的にどんな会社になるのか、という明確な青写真を持っていたこと。2つ目は、そんな会社であるならば、どんなふうに行動すべきかを自問自答していたこと。3つ目は、私たちは最初から、既に思い描いた会社になっているかのように振舞っていたことだ」

これは、ビジョンの力を示す非常に示唆に富んだ言葉です。ビジョンとは、未来の目標であると同時に、現在の「あり方」を規定するものでもあるのです。「理想の会社の社長なら、この場面でどう判断するか?」「理想の会社の社員なら、どう振る舞うか?」この問いが、日々の行動レベルまでビジョンを浸透させ、組織を理想の姿へと近づけていくのです。

ユニクロ柳井氏も学んだ「終わりから始めよ」という経営哲学

ファーストリテイリングの柳井正氏が推薦したことでも知られる経営書『プロフェッショナル・マネージャー』には、こんな一節があります。

「本を読むときは初めから終わりへ。ビジネスの経営はそれと逆だ。終わりから始めて、そこまで到達するために出来る限りのことをするのだ。」 -ハロルド・ジェニーン(元ITT社長)

ここでいう「終わり」こそが、会社の向かう先、すなわち経営ビジョンです。まず到達すべき未来の景色をありありと描き、そこから逆算して今やるべきことを考える。この「バックキャスティング」と呼ばれる思考法こそが、ビジョンを現実のものにするための要諦なのです。

ヘンリー・フォード:自動車を”大衆のもの”にしたビジョンの力

さらに時代を遡れば、自動車王ヘンリー・フォードがいます。富裕層の乗り物であった自動車を、彼はまったく異なる未来の道具として見ていました。

「大衆のための乗用車をつくる。価格が極めて安く、まともな給料を取っているものなら買えないものはおらず、家族とともに、神が作った広大な土地で楽しむことが出来るようになる。(中略)道路からは馬車が消え、自動車に乗るのが当然になる。」

このビジョンは、単に「安い車を作る」という目標ではありません。人々の生活様式、都市の構造、社会そのものを変革するという壮大な未来像です。このビジョンがあったからこそ、彼はベルトコンベアによる大量生産方式という、当時の常識を覆すイノベーションを生み出すことができたのです。

現代の成功企業に学ぶ – 彼らは何を”見て”いるのか?

時代は変わっても、ビジョンの重要性は変わりません。現代を代表する企業たちもまた、独自のビジョンを掲げ、事業を推進しています。

良品計画のビジョン:「感じ良い暮らしと社会」を共創する

「感じ良い暮らしと社会」へ向けてグローバルに貢献する個店経営の集団として世界水準の高収益企業体を目指します。(中略)地域に関わる方々が、「お互いさま」を合言葉に、小さくても固有の経済活動や豊かな文化を育む「感じ良い社会」が広がる未来を描いています。

単に「良い商品を売る」のではなく、「感じ良い暮らし」、さらには「感じ良い社会」を顧客や地域と共に「共創する」という姿勢が明確です。このビジョンが、無印良品というブランドの独特な世界観と、スタッフのホスピタリティを支えています。

ソフトバンクグループのビジョン:「情報革命で人々を幸せに」- 300年続く企業を目指して

創業者の私の最も重要な役割は、最低300年続くソフトバンクグループのDNAを設計することです。(中略)次の30年も引き続き情報革命で人々の幸せに貢献し、「世界の人々から最も必要とされる企業グループ」を目指す。

孫正義氏が見ているのは、30年後ですらなく、300年後という壮大な時間軸です。この長期的な視点と、「情報革命で人々を幸せに」という揺るぎない使命感が、一見すると関連性のないような多角的な事業投資を一貫したストーリーへと昇華させています。

スターバックスのビジョン:「人々の心を豊かで活力あるものにするために—ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」

彼らはコーヒーを売っているのではありません。


「サードプレイス(第三の場所)」というコンセプトを通じて、人々の心に豊かさと活力を提供しているのです。このビジョンがあるからこそ、一杯のコーヒーの品質から、店舗の空間デザイン、パートナー(従業員)の接客に至るまで、すべてが一貫した体験として顧客に提供されるのです。

【実践編】”絵に描いた餅”で終わらせない!経営ビジョン策定5つのステップ

では、実際に自社の経営ビジョンを策定するには、どうすればよいのでしょうか。ここで重要なのは、「策定のプロセスは、完成したビジョンの内容そのものと同じくらい重要である」という事実です。社員を置き去りにして経営陣だけで作ったビジョンは、共感を呼ばず、やがて形骸化します。

ここでは、中小企業でも実践可能な、5つのステップをご紹介します。

ステップ1: すべての始まりは「社長の人生計画」にある

「経営ビジョンなのに、なぜ社長個人の人生計画?」と疑問に思うかもしれません。しかし、特に中小企業において、会社は社長の価値観や人生観が色濃く反映された「自己表現の器」です。ビジネスをより良くしたいなら、まず経営者自身の内面に深く目を向ける必要があります。

自分は人生で何を成し遂げたいのか?

自分にとっての成功とは何か?

この事業を通して、世の中にどんな価値を残したいのか?

これらの問いに、すぐに出る完璧な答えは必要ありません。しかし、この自問自答のプロセスこそが、血の通った、魂のあるビジョンの源泉となるのです。

ステップ2: 時代の”風”を読む – 事業環境分析

ニトリの似鳥会長は「事業環境の変化を予測し、正しい計画を立てられるかどうかが、会社の運命を決めます」と語っています。社長の想いだけでなく、外部環境の客観的な分析が不可欠です。

  • PEST分析: 政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の大きな潮流を把握する。
  • SWOT分析: 自社の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を整理する。

重要なのは、自社の業界情報だけでなく、代替産業や最新技術の情報にもアンテナを張ることです。ビル・ゲイツが多忙な中でも「シンク・ウィーク(Think Week)」という、ひたすら情報をインプットし思考にふける時間を設けていたのは有名な話です。経営者こそ、現場から離れ、時代の風を読む時間が必要です。

ステップ3: “内なる声”に耳を澄ます – 関係者の巻き込み

社長一人で考えたビジョンは、独りよがりになりがちです。より現実的で、共感を呼ぶビジョンにするために、プライマリーインフルエンサー(主要な関係者)である社員、顧客、取引先の声に耳を傾けましょう。

  • 社員: 彼らは何を望み、どんな会社で働きたいと思っているか?
  • 顧客: 彼らは自社に何を期待し、どんな未来を望んでいるか?
  • 取引先: 彼らと共にどんな未来を築けるか?

アンケートや個別ヒアリングも有効ですが、可能であればワークショップ形式で、多様なメンバーが対話しながら未来を考える場を設けるのが理想的です。このプロセス自体が、後のビジョン浸透の土台となります。

ステップ4: “魂”を言葉に宿す – ドラフトの言語化

ここまでのインプットをもとに、いよいよビジョンを文書化します。どれだけ優れたアイデアも、言葉にしなければ存在しないのと同じです。まずはドラフトとして、A4用紙1枚程度にまとめてみましょう。

以下の問いを自分に投げかけながら、言葉を紡いでみてください。

  • 究極的に、我々は何をする会社なのか?
  • 顧客にどんな究極の価値を提供するのか?
  • どんな文化を持つ組織でありたいか?
  • 〇年後、私たちは社会からどんな存在だと思われたいか?

数値目標(定量的)だけでなく、「わくわくする」「誇りが持てる」といった感情(定性的)に訴えかける言葉を選ぶことが重要です。イラストやイメージ図を添えるのも良いでしょう。

ステップ5: “磨き上げ”と”最終決定” – フィードバックと完成

ドラフトが完成したら、再び関係者からのフィードバックを得る機会を設けます。ステップ3で参加したメンバーに見せ、意見を求めましょう。

「このビジョンを聞いて、わくわくしますか?」

「分かりにくい部分や、共感できない部分はありますか?」

「この未来を実現するために、自分なら何ができると思いますか?」

ここで得られたフィードバックをもとにドラフトを修正し、誰もが「これこそが自分たちの目指す未来だ」と納得できる最終版へと磨き上げていきます。

経営ビジョン策定で陥りがちな”罠”と5つのチェックポイント

苦労してビジョンを策定しても、それが機能しなければ意味がありません。ここでは、ビジョンが”絵に描いた餅”にならないためのチェックポイントと、よくある失敗パターンを見ていきましょう。

5つのチェックポイント

完成したビジョンが、以下の5つのポイントを満たしているか確認してください。

  • 崇高な意義はあるか?: 単なる自社の利益追求だけでなく、社会課題の解決や、より良い未来の創造に貢献するような、大義やロマンを感じさせるか。
  • オリジナリティがあるか?: 他社の模倣ではなく、自社ならではの歴史、強み、文化といった「らしさ」が反映されているか。
  • 社長の”本気”が乗っているか?: 社長の個人的な夢や人生観が反映され、その実現に向けた覚悟と情熱が感じられるか。
  • 関係者の”未来”を照らしているか?: 顧客、社員、取引先といった人々が、「この会社と関わることで、自分の未来も明るくなる」と感じられるか。
  • ありありと”情景”が浮かぶか?: 単なるスローガンや数字の羅列ではなく、ビジョンが実現した世界の様子が、映像のように目に浮かぶか。実現可能性と夢のバランスが取れているか。

うまくいかないビジョンの共通点

「ビジョンはあるけど、どうもしっくりこない」「作ったきり、お飾りになっている」。そうした企業には、いくつかの共通点があります。

  • 時代の要請がない: 社会の潮流からずれた、独りよがりなビジョン。
  • 個人的願望になっている: 「売上〇〇億円」「地域No.1」といった、社長の個人的な目標がビジョンになってしまっている。サイモン・シネックの言葉を借りれば、「ほかの人間と競争する時、誰もあなたを助けたいと思わない。ところが自分自身に戦いを挑むと、誰もがあなたを助けたいと思う」。ビジョンは後者でなければなりません。
  • 明確さの欠如: 「世界平和に貢献する」のように、あまりに壮大で曖昧なため、日々の行動に結びつかない。
  • 忘却: 作ったことに満足してしまい、日々の経営の中で語られず、参照されず、忘れ去られてしまう。

策定して終わりではない!ビジョンを組織の”血肉”にする浸透戦略

最高の経営ビジョンも、策定しただけではただのデータです。それを組織の隅々にまで浸透させ、社員一人ひとりの行動に落とし込んで初めて、ビジョンは生命を宿します。

トップの”熱狂”を伝え続ける – 継続的なメッセージ発信

ビジョン浸透の最大の鍵は、経営者自身が、誰よりもそのビジョンに熱狂し、飽きることなく、あらゆる場面で語り続けることです。朝礼、会議、社内報、1on1ミーティング… 機会を見つけては、自分の言葉でビジョンの意味や、それにかける想いを語りましょう。その熱量が、組織全体に伝播していきます。


“他人事”を”自分事”に変える – コミュニケーションと対話

ビジョンを一方的に伝達するだけでは、「会社の目標」で終わってしまいます。それを「私たちの目標」にするためには、対話が必要です。

説明会・ワークショップの実施: ビジョンについて社員が自由に質問したり、意見を交わしたりする場を設ける。

部署や個人の目標との紐付け: 全社のビジョンをブレークダウンし、「ビジョン達成のために、私たちの部署は何をすべきか?」「自分個人として何ができるか?」を考えさせる。

行動を”評価”し、文化を創る – 人事制度との連動

「言うこと」と「やること」が一致していなければ、組織は動きません。ビジョンで「挑戦」を謳うなら、挑戦した結果の失敗を許容し、むしろ称賛するような評価制度が必要です。ビジョンに沿った行動が正しく評価され、報われる仕組みを構築することで、ビジョンは具体的な行動基準として根付いていきます。

“見える化”で日常に溶け込ませる

人間は忘れやすい生き物です。ビジョンを日常的に目に触れる状態にしておくことが重要です。

  • クレドカードとして社員に配布する
  • オフィスの壁に掲示する
  • PCのスクリーンセーバーにする

Infusionsoft(現:Keap)という会社は、自社のビジョンを「MARS MISSION」という火星探査計画になぞらえた壮大なイラストにし、常に社員の目に触れるようにしています。こうした遊び心のある「見える化」は、ビジョンをより身近なものにします。

経営ビジョン策定後の共有

ビジョンの”賞味期限”と見直しの重要性

一度策定したビジョンも、永遠不変のものではありません。事業を取り巻く環境は絶えず変化します。特に、技術革新の速いIT業界などでは、定期的なビジョンの見直しは不可欠です。

ただし、安易な変更は禁物です。理念という根幹は変えず、社会の変化に合わせて「目指す景色」をアップデートしていく、という姿勢が重要です。見直す際も、策定時と同じように丁寧なプロセスを踏むようにしてください。

経営ビジョンを超えて – BHAGとMTPという新たな地平

最後に、経営ビジョンに似て非なる、しかし思考をさらに飛躍させるための概念を2つ紹介します。

BHAG(Big Hairy Audacious Goals)

経営学の名著『ビジョナリーカンパニー』で提唱された概念で、「社運を賭けた、大胆で、困難な目標」と訳されます。達成したかどうかが明確に判断でき、組織全体を奮い立たせるような、具体的で刺激的な目標です。
例:J.F.ケネディ大統領の「1960年代が終わるまでに、人間を月に着陸させ、無事に地球に帰還させる」という声明。

MTP(Massive Transformative Purpose)

シンギュラリティ・ユニバーシティのサリム・イスマイル氏が提唱する概念で、「野心的な変革目標」と訳されます。自社の成長だけでなく、その活動を通じて社会や世界に大規模な変革(トランスフォーメーション)をもたらそうという、極めて高い志を指します。
優れたMTPは、企業の周りに自然とコミュニティやエコシステムを形成し、絶対的な競争優位につながると言われます。
例:Googleの「世界中の情報を整理する」。このMTPの前では、「Googleよりうまく情報を整理する」と宣言する競合は現れにくいのです。

これらの概念は、あなたのビジョンをさらにシャープに、そして野心的にするためのヒントを与えてくれるでしょう。

結論:あなたの会社は、どこへ向かうのか?

ここまで、経営ビジョンの本質から策定、浸透、そして未来の概念まで、長く険しい道のりを共に旅してきました。

経営ビジョンとは、未来を描く「技術」であり、組織を一つの方向に動かす強力な「エネルギー」です。それは、不確実な航海における唯一の羅針盤であり、荒波を乗り越えるための乗組員の心を一つにする船長の「声」でもあります。

歴史が証明するように、偉大な企業はすべて、その始まりに力強いビジョンを持っていました。それは決して大企業だけの専売特許ではありません。むしろ、リソースの限られた中小企業こそ、進むべき道を明確に指し示すビジョンの力が、何よりも強力な武器となるのです。

この記事を読んで、あなたは自社の未来について、何を考えたでしょうか?

あなたの会社の船は、今、どこへ向かっていますか?

もし、あなたが描いたビジョンを”絵に描いた餅”で終わらせず、具体的な”仕組み”として組織に実装していくプロセスにご興味があれば、私たちがノウハウを凝縮した「仕組み化ガイドブック」が、あなたの次の一歩を踏み出すためのヒントになるかもしれません。以下より無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

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