針鼠(ハリネズミ)の概念はどのようにして生まれたか?
「針鼠と狐」という随筆を書いたアイザイア・バーリンは、世の中には針鼠型の人間と狐型の人間がいると指摘しました。
狐は様々な戦略を考え、針鼠を捕獲しようとします。しかし針鼠は身体を丸めて身を守り、いつも生き延びます。狐は針鼠より賢いのですが、勝つのはいつも、身体を丸めるというシンプルなことを行っているだけの針鼠なのです。
この寓話が人のキャリアにも、企業経営にも同じく当てはまるわけです。
「偉大な企業」はシンプルにひとつのことだけを行っているのに対し、「良い企業」は、様々な戦略を練り、エネルギーを分散させてしまい、どの事業もそこそこのレベルにとどまります。
針鼠(ハリネズミ)を見つける3つの円
では、どのようにひとつのことに絞り込むのか?そのために「ビジョナリーカンパニー2」では、次の3つの円が紹介されています。
最近では自分のキャリアを見つけるため、起業ネタを見つけるためなど、自己啓発系のシーンでもこれの亜流バージョンが使われています。ただし、世間で使われているものと、「ビジョナリーカンパニー2」で紹介されている内容とは少し違っていたりするので、正しく理解することが大切です。以下に解説していきます。
自社が世界一になれること
自社が世界一になれる部分はどこか?同様に重要なこととして、世界一になれない部分はどこか?この円のポイントは以下の通りです。
- ”世界一になれること”であって、自社の中核的な能力(得意なこと)ではない。
- 今現在、その分野に従事していない可能性もある。
- 世界一になれる部分はどこか?を理解することが大切。これは世界一になりたいと思うことや、世界一になるという意思でもない。
- 自社の中核事業に何十年と従事してきたからと言って、それで世界一になれるとは限らない。
やはり、世界一というところがポイントだと思います。
日本は幸か不幸か、言葉のバリアーで市場が守られていたり、内需があるおかげで世界一という概念を持っている企業は少ないと思います。日本一であれば、大成功した企業になれるわけですから。
それでも、これから世界一ということは大事だと思います。日本一になったとしても、世界一の企業が日本に参入してきたら、まさに黒船来襲状態ですからね。
例:キンバリークラーク
消費者向け紙製品で世界一。元々は製紙会社として様々な商品を作っていたが、消費者向け紙製品(クリネックス等)に特化した。
経済的原動力になれること
偉大な企業は当然ながら、稼ぐ力も他の企業と比べて高いです。興味深いのは、書籍に出てくるすべてのビジョナリーカンパニーは、「X当たり利益」というひとつの財務的指標を追求していたことです。
たとえば、
- 社員一人当たり利益
- 顧客一人当たり利益
- ひとつのエリア当たり利益
と言った感じです。
このXが何かを発見することが非常に大切です。業界ごとに標準的な指標というのはあるかもしれませんが、必ずしも業界内の他企業が大切にしている指標が自社にとって適切か判断するには熟慮が必要となります。
情熱をもって取り組めること
これはビジョナリーカンパニーの特徴でもあるカルト的文化にも通じるかもしれません。ビジョナリーカンパニーは自社の事業について、過剰なまでに情熱を持っています。
ここで大切なのは、その事業に情熱を傾けようとするのではなく、”どの事業であれば情熱を持てるか?”を理解することです。
針鼠(ハリネズミ)の概念とBHAGの関係
針鼠(ハリネズミ)の概念と同じくらい有名なのが、BHAG(社運を賭けた大胆な目標)です。こちらは「ビジョナリーカンパニー1」で紹介されています。
詳しくは以下の記事でご覧ください。
BHAG(社運を賭けた大胆な目標)について解説。自己診断付。
これは本書に書いてあるわけではないですが、BHAGと針鼠(ハリネズミ)の概念は非常に関連性が高いと思います。なぜならば、BHAGも針鼠(ハリネズミ)の概念に一致するものでないと成り立たないからです。情熱が無かったり、儲からなかったり、世界一になれない分野でBHAGを設定しても達成は難しいでしょうからね。
「ビジョナリーカンパニー1」では、BHAGは、基本理念に沿っている必要があると解説されていますが、同時に、針鼠(ハリネズミ)の概念にも沿うものであることが必要でしょう。
どうすれば針鼠(ハリネズミ)の概念を実践できるのか?
では、どうすれば針鼠(ハリネズミ)の概念を実践できるのか?すなわち、どうすれば3つの円の中心を発見することが出来るのでしょうか?
ジムコリンズ氏は、針鼠の概念を確立するために、評議会を作って以下のサイクルを回し続けることを勧めています。
このように、針鼠の概念を確立するプロセスは、シンプルですが、簡単ではありません。ジムコリンズ氏によれば、ビジョナリーカンパニーは針鼠になるまでに平均4年かかっていると言います。ただし、ビジョナリーカンパニーが”良い企業”から”偉大な企業”へと変革をし始めたのは、この針鼠の概念を実践し始めてから、という調査結果もありますので、4年かけてでも発見する価値があるということでしょう。ぜひ実践してみてください。
針鼠の概念を実践するなら仕組み経営へ
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