会社のナンバー2とは、社長の次に位置し、経営の判断に関わる人のことです。多くの社長が「自分の右腕がほしい」と考えます。ただ、ナンバー2を置いても会社が強くならない場合があります。この記事では、
- ナンバー2に向いている人
- ナンバー2選び&育成のステップ
- ナンバー2の役割、仕事
などについてご紹介していきます。
ナンバー2とは?意味と役職、右腕・番頭との違い
会社のナンバー2とは、社長の次に位置し、経営の判断に関わる人のことです。読み方は「ナンバーツー」で、英語表記から「No.2」と書かれることもあります。
ただし、この言葉に法律上の定義はありません。会社法が定めているのは取締役や代表取締役といった役職で、「ナンバー2」はどの会社でも自由に使える呼び方です。だから同じ「うちのナンバー2」でも、任されている範囲は会社ごとにまったく違います。
判断の目安になる問いを一つ挙げます。社長が決めた方針に対して「それは違うと思います」と言える人が一人でもいるかです。いなければ、そこにいるのは優秀な部下であって、ナンバー2ではありません。ナンバー2の価値は、社長と同じ判断をすることではなく、社長が見落としているものを持ち込めるところにあります。
ナンバー2に当たる役職名
日本の会社で、ナンバー2の位置に置かれることが多い役職を挙げます。
- 副社長
- 専務取締役
- 常務取締役
- COO(最高執行責任者)
- 本部長・事業本部長
- 社長室長
このうち会社法に定めがあるのは取締役や代表取締役などに限られます。専務も常務も本部長も、会社が自由に決めてよい呼び方です。名前が同じでも、担っている責任は会社ごとに違います。
ここで押さえておきたいことがあります。役職を用意することと、決めてよい範囲を渡すことは別の作業だということです。多くの会社が前者だけを済ませ、後者を空欄のまま置いています。肩書きは専務なのに、金額の大小にかかわらず社長の承認が要る。この状態では、本人も周りも何を任されているのか分かりません。
ナンバー2・右腕・番頭・参謀の違い
似た言葉が並ぶので、それぞれが指しているものを整理します。
- ナンバー2……社長の次に位置する人。組織のなかでの位置を指す
- 右腕……社長個人にとって頼りになる相手。位置ではなく関係を指す
- 番頭……もとは商家で使用人の最上位を指した言葉。いまは現場を仕切る実務の長という意味で使われる
- 参謀……判断の材料をそろえて案を出す役。決めるのは社長
- 経営幹部……経営の判断に関わる人たち全体を指す。一人を指す言葉ではない
実務でいちばん誤解が起きるのは「右腕」です。右腕は社長との関係で決まるので、社長が代われば消えます。ナンバー2をその社長の右腕として置いている会社では、社長交代のときに組織が一緒に揺れます。位置として置いているなら、次の社長のもとでも役割は残ります。
ナンバー2は要か不要か?
この記事はナンバー2をテーマにしていますが、世の中にはナンバー2なんて要らない、という不要論の人もいますね。そういう社長はだいたい
- 自分が万能だと思っているか
- 過去に裏切られた経験があり人を信用できないか
のどちらかに当てはまります。
ただ、歴史を振り返ってみても、偉大な企業や組織をリードしてきたリーダーには右腕が存在します。また、米国のスタートアップ企業の調査でも、一人で起業するよりも共同創業者がいたほうが成功率が高いというデータが出ています。
本当に優れた経営者は、自分は万能ではないことを知っています。だから自分に足りないことを自覚し、それを助けてくれる人を身近に置こうとするのです。
経営全般を担ったナンバー2「藤沢武夫氏」
たとえば、本田宗一郎氏に藤沢武夫氏は非常に有名なコンビです。技術屋のオヤジだった本田宗一郎氏はお金の面倒が苦手で、藤沢氏がそれを助けました。本田氏は、藤沢氏に実印も預けて全て任せていたと言われています。
ソニーを救ったナンバー2「盛田昭夫氏」
また井深大氏と盛田昭夫氏も同じような関係で有名です。盛田氏の実家は家業を営んでおり、昭夫氏はそれを継ぐ予定でしたが、井深氏の必死の説得によりソニーに参画したとされています。その後、盛田家は創業当初の資金面を支援し、ソニーの大株主になりました。
現代の急成長を支えるナンバー2「日高裕介氏(サイバーエージェント)」
1998年の創業以来、藤田晋氏と共にサイバーエージェントを日本を代表するネット企業に育て上げた日高裕介氏も、理想的なナンバー2の一人です。
営業成績トップだった藤田氏に対し、当時の日高氏は「成績はビリに近かった」と振り返ります。しかし、藤田氏が求めたのはスキル以上に「価値観の共有」と「無駄のないコミュニケーション」でした。日高氏は、藤田氏の抽象的な構想を「感覚」で理解し、それを具体的な組織文化や事業として実装することで、創業者のビジョンを形にし続けています。
三国志時代最強のナンバー2「諸葛孔明」

さらに歴史を振り返れば、三国志時代の諸葛孔明は劉備を助け、蜀を三国の一つにまで拡大させました。
ナンバー2の罠(デメリット)
今見たように、ナンバー2の存在は会社の成長に大きく貢献してくれる可能性もある一方、私たちが「ナンバー2の罠」と呼んでいる落とし穴もあります。ナンバー2のワナとは、以下のようなものです。
ナンバー2に依存している職人型ビジネスになってしまう。
職人型ビジネスとは、特定個人の職人技に会社の運営が依存してしまっているビジネスのことを指します。ナンバー2が活躍している組織では、確かに社長の仕事は楽になるかも知れません。しかし変わったのは依存する相手だけです。社長に依存するかナンバー2に依存するかの違いでしかなく、職人型ビジネスであることには変わりがありません。ナンバー2が辞めてしまったり、何かしらの原因で戦線離脱してしまえば、ゼロかマイナスの状態に逆戻りしてしまいます。詳しくは職人上がりの社長が失敗する理由と対処法でも解説しています。
ナンバー2と社長からの社員へのダブル指令。
一人の社員には一人の上司、というのが組織作りの大原則です。しかし、ナンバー2がいる組織では、社長とナンバー2の二人が実質上の上司、という状態になりがちです。この時の問題は、両者からの指示が時に矛盾するということです。これでは社員は混乱してしまいます。
偽・委譲型社長になりがち
“偽・委譲型”社長の口癖は、“ナンバー2に任せてるから、俺は何もやらなくていい”、“あいつがいるから俺は仕組み化できている”というものです。これは“たまたま”社長の意向に合う人が社内にいる場合に良く起こりがちです。実質、委譲しているのではなく、放任しているだけなので、最もトラブルに陥りやすい状態と言えます。
3つの罠に共通しているのは一点です。社長に集まっていた判断がナンバー2に移っただけで、どこにも書かれていない状態が続いていることです。これでは社長依存が右腕依存に置き換わっただけで、会社の強さは変わりません。その人が抜けた瞬間に元へ戻ります。
だからナンバー2に渡すのは、社長がやりたくない仕事ではありません。判断のよりどころと、決めてよい範囲です。この2つが言葉になっていれば、その人が抜けても次の人に渡せます。書かれていなければ、渡せるものはその人の頭のなかにしか残りません。
▶仕事の任せ方|部下に仕事を任せる5ステップと権限委譲のコツ
先にあげた例の通り、良い会社を創ろうと思ったら、ナンバー2の存在は非常に大事です。しかし、中には上記のような罠が原因で、人知れず袂を分かつ事例も多くなります。そうならないためにもぜひ以下からの内容を参考にされてください。
ナンバー2に向いている人の5つの特徴
ここからは、どんな人がナンバー2に向いているのかを見ていきます。先に一つ断っておきます。向いている人を性格で見分けようとすると、たいてい外します。理由はこのあとで書きます。まず、実際にナンバー2として機能している人に共通して現れる特徴を5つ挙げます。
1.社長と違う強みを持っている
社長が数字に強く営業が苦手なら、営業に強い人。社長が構想を描くのが得意で細部が苦手なら、詰めるのが得意な人。ナンバー2は社長のミニチュア版ではありません。似ている人を選ぶと、二人で同じ場所を見て、同じところを見落とします。
2.社長の言葉を自分の言葉に翻訳できる
社長が打ち出した方針を、そのまま現場へ流す人は多くいます。ナンバー2に必要なのは、その方針が何のためのものかを自分で理解し、自分の言葉で説明し直せることです。翻訳の一段が入るかどうかで、現場の受け取り方が変わります。
3.社長に反対意見を言える
先に書いたとおりです。反対意見が一度も出てこない関係は、良好なのではなく、言えなくなっているだけの場合があります。
4.決めたことを最後まで運べる
案を出して終わりにしないという意味です。案を出すところまでが参謀の役で、決まったことを現場で形にするところまでがナンバー2の役です。ここができる人は少ないので、見つけたら大事にしてください。
5.前に出たがらない
成果を自分のものにしないで、社長や現場に渡せる人です。目立ちたい気持ちが強い人は、ナンバー2の位置で長く働けません。本人のためにも、別の形で活躍できる場所を用意するほうがよい場合があります。
ナンバー2に向いている人の性格
性格で挙げるなら、面倒見がよい、調整が得意、目立ちたがらない、といったところがよく言われます。当てはまる人は確かに多いのですが、性格を基準に選ぶことは勧めません。理由は2つあります。
1つ目は、必要な性格が社長によって変わるからです。社長が細部まで詰めるタイプなら、ナンバー2は大きく構える人のほうが噛み合います。逆の組み合わせなら逆です。どの会社にも当てはまる「ナンバー2気質」のようなものはありません。
2つ目のほうが大事です。上に挙げた5つの特徴は、性格というより環境で決まる部分が大きいのです。悪い情報を先に出す人は、先に出しても責められないと知っているから出します。反対意見を言う人は、言っても不利にならないと分かっているから言います。社内を見渡して「うちには向いている人がいない」と感じるとき、疑うべきは人ではなく環境のほうです。
優秀なナンバー2とダメなナンバー2の違い
「ダメなナンバー2」と言われる人には、3つのパターンがあります。
- 伝書鳩型……社長の言葉をそのまま現場へ流す。翻訳が入らないので、現場は「社長がそう言っている」としか受け取れない
- 二重基準型……社長の見えないところで別の基準を作る。現場は二つの基準のあいだで判断できなくなる
- 報告調整型……社長には良い報告しか上げない。問題が表に出るのが遅れる
3つとも、本人の能力の問題ではありません。伝書鳩になるのは、方針の背景が本人にも説明されていないからです。二重基準ができるのは、会社としての判断基準が書かれていないからです。良い報告しか上がらないのは、悪い報告を持っていったときの反応を本人が学習しているからです。
優秀なナンバー2とダメなナンバー2を分けているのは、能力よりも、社長との間に何が言葉になっているかです。
「会社はナンバー2で決まる」は本当か
ナンバー2の重要性を語るとき、「会社はナンバー2で決まる」「組織の強さはナンバー2が決める」という言い方がよく使われます。半分は正しいと考えています。社長一人で決められることには限りがあるので、その次に位置する人の力量が会社の上限になる場面は確かにあります。
ただ、この言い方をそのまま受け取ると危ないところがあります。会社がナンバー2で決まるのなら、その人が抜けた時点で会社も決まらなくなるからです。実際、優秀なナンバー2が辞めた途端に止まってしまう会社があります。
正確に言うなら、決めているのはナンバー2その人ではありません。ナンバー2が育つ会社かどうかです。一人目が抜けても二人目が出てくる会社は強く、一人目に賭けている会社は脆いのです。
ナンバー2の採用と育成のステップ
では、実際にナンバー2を採用する、または育成していくステップをご紹介していきましょう。
1.社長が自分の弱みや癖を自覚する
私たちのビジネスの師匠でもあるマイケルE.ガーバー氏(「はじめの一歩を踏み出そう」著者)は次のように語っています。
あなたのリーダーとしての能力は、あなたがすべてのことについて良く知っているかどうかによって決まるものではない。それは、あなたが自分の強さや弱さについて、いかにオープンであるか、いかに正直であるかによって、決まるものである。
冒頭でも書きましたが、すべての人は万能ではありません。まずそのことを自覚することがリーダーとして大切なのです。
古いタイプの会社では、社長がボスであり家長であり、最も力を持っている存在としてみなされています。そのような会社の社長は、社員に弱みを見せません。結果として、あらゆる業務や意思決定が社長に依存してしまいます。結果としてそのような会社は、社長の体力や感性の衰えとともに、会社も衰退していきます。
一方、新しいタイプの会社では、社長が自分は万能ではないことを知っており、各メンバーがお互いを補完しあう関係性を作ります。そうなると自律的に動くチームが出来るようになり、社長が離れても大丈夫になります。
ですから強い組織を作ろうと思ったら、社長が自分に足りないことを自覚し、それを隠そうとしないことです。社員はそのような社長の姿を人間的であるとみなし、信頼感のあるリーダーだとみるようになります。これをトランスペアレント・リーダー(透明性のあるリーダー)と言ったりします。
社長の診断をしよう
より具体的には、「社長の思考の癖」と「社長の能力」を振り返ってみましょう。思考の癖とは考え方のパターンのことです。たとえば夢見がちであるとか、逆に細かいことを気にしすぎるといったものです。能力はたとえば数字が苦手とか、ITが苦手とかいったことです。
なのでここでは自分にどんな思考の癖があるのか、また、理想の会社を創るために、どんな能力が足りてないのかを自覚しておくことが大切です。
「仕組み経営」でもリーダーが自分の強みと弱みを診断できるツールを用意していますが、以下のような公開ツールを使ってもいいでしょう。
2.自社の理念(ミッション、ビジョン、バリュー)を明確化しよう
ナンバー2を採用したり、育成したりしようと思ったら、次の事実を胸に刻んでおくことが大切です。それは、
ナンバー2の優秀さはあなたの夢の大きさに依存する
ということです。
藤沢武夫氏も本田宗一郎氏の夢が大きかったからこそ、そこで自分の能力を発揮したいと思ったのです。
劉備が三顧の礼で諸葛孔明を招いた故事は有名です。これも劉備が漢王朝の復興という当時としては大それた夢を持っていたからこそ、孔明も夢に賭けたのです。
ナンバー2はあなたの”お手伝いさん”ではない
もうひとつ重要な事実があります。それは、
ナンバー2はあなたの夢実現を手助けする存在ではない
ということです。これは一見理解しにくいかも知れません。
ナンバー2が欲しい、という社長は、自分がやりたくない面倒な仕事をやってくれる人が欲しい、と考えていると思います。しかし、ナンバー2はあなたの”お手伝いさん”ではありません。
優秀な人ほど自分の夢を持っています。彼らはあなたの会社を手伝うことで自分自身の夢を実現できるからあなたのことを手伝うのです。このことを勘違いしていると、小物しかあなたの元にはやってきません。
あなたが価値ある仕事をしていなければ、価値ある人間にそれをやらせることはできない – サイモン・シネック
つまり、あなたに十分大きな夢があり、「自分もその夢を実現したい」という人がいたときにはじめて、あなたとナンバー2の良好な関係性が出来るのです。
そのためにまずあなたの会社の理念(ミッション、ビジョン、バリュー)を明確にすることです。これに関しては、以下のページに詳細を記載していますので、ぜひ参考にされてください。
3.ナンバー2の役割と仕事、人物像を明確にしよう
次にナンバー2の役割と仕事を明確にします。”何を探しているかを知らなければ、決して見つかることはない”という名言の通り、ナンバー2に何を求めているかを知らなければ、そのような人物が現れることがないのです。
ここでも多くの社長が勘違いしがちなことがあります。それは、「ナンバー2 = 自分の分身」だと思っていることです。要するに多くの社長は、自分のミニ版を作ろうと思ってしまう間違いを犯しがちです。
先述した通り、ナンバー2というのは社長の弱みを補完してくれる存在なのです。決してあなたのミニチュア版ではありません。
そこで、ナンバー2に求める役割や仕事、人物像を明確にしましょう。
ナンバー2の役割と仕事には、2つの種類がある
ナンバー2の役割と仕事には、2つの種類があります。組織上の公式な役割と非公式な役割です。
まず公式な役割とは、組織図の上でその人が担う役割のことです。これには典型的なナンバー2職であるCOO(チーフ・オペレーティング・オフィサー)や社長室長、または営業本部長、技術本部長などの場合もあるでしょう。
一方、非公式な役割には社長の良き理解者であったり、社長と社員の仲介者であったり、社長に忠告をしてくれる諫言役などがあります。
こんな感じで、あなたがナンバー2にどんな役割と仕事を求めるのかを明確にしておきましょう。
▶会社の組織図の作り方|中小企業・小さな会社の例と5ステップ
ナンバー2は後継者?
もうひとつ、ここで考えておかないといけないのが、ナンバー2は後継者になるのか、そうではないのか?ということです。ここを間違ってしまうと、後で面倒なことになります。
え、ナンバー2なんだから自分の後を継いでくれるんでしょ?
というのは間違いです。
将来は自分がリーダーになりたいと考えている人もいます。一方で、ナンバー2というポジション専門でやりたいという人もいます。その人が後継者候補になるのかそうでないのか、これは本人に聞いておかないといけません。人はそれぞれ夢や人生計画があります。ナンバー2になったからと言って、その人の人生をあなたがコントロールできるわけではないのです。
ただ、後継者にならないからと言ってナンバー2にしてはいけない、ということではありません。後継者は別に探せばいいのです。場合によっては、あなたの代で会社を売却する手もあります。
社長と補完関係にあるかを見る
どんな人がナンバー2に向いているかは、その会社の社長によって異なります。たとえば、社長が数字に強いけど、営業が弱い、ということであれば営業に強い人がナンバー2に向いているでしょう。したがって、ナンバー2に向いている人とは、社長と違った知識、違った能力、違った性格の人であることが理想と言えます。
しかし、いずれの場合にしろ、最重要なことがあります。それは、ナンバー2は理念を高いレベルで共有できる人でなくてはいけないということです。これは必須中の必須です。
もしかしたらあなたの会社には、「理念共有はいまいちだけど、仕事は出来るんだよな~」という人がいるかもしれません。社長としては仕事が出来るので、その人にナンバー2を任せたいと思うかも知れませんね。
しかし、これは危険です。理念共有度が低くて能力が高い人は、将来転職、または独立する可能性が非常に高いです。場合によっては社員を引き連れて独立、なんていうパターンも有ったりします。なので、「能力<理念共有度」の法則が大切です。
先述のサイバーエージェントの日高氏は、ナンバー2にとって最も重要なのは「経営者のトップを洞察し、その価値観を感覚レベルまで落とし込むこと」だと語っています。
スキルや実績がどれほど高くても、この「感覚のズレ」があると、事業が停滞した際に決定的な亀裂(クーデターや空中分解)を生みます。日高氏のように、「社長がどこへ向かいたいのかを、説明されなくても肌で感じ取れる」ような深い信頼と価値観の共有があるかどうかが、選定の基準となります。
この辺に関しては以下の記事でも書いていますので参考にされてください。
ナンバー2候補のチェックリスト
というわけで、ここではどういう人にナンバー2になってほしいかを見てきました。まとめると以下のようなチェックポイントになります。
- どの役職か?
- どんな強みを持っているか?
- 後継者候補かそうでないか?
- 理念の共有度は高いか?
事例:ナンバー2の真の役割は「経営者の価値観の実装」
サイバーエージェントの日高氏は、ナンバー2の役割を「経営者の価値観を感覚でつかみ、実装すること」だと定義しています。
多くの会社では、社長が大きな方針を打ち出した際、社員が「なぜそれが必要なのか?」と戸惑うことがあります。そこでナンバー2が、社長の意図を汲み取り、自分の言葉で社員に説明し、実行可能な仕組みに落とし込む。この「社長と現場のブリッジ(橋渡し)」こそが、組織を空中分解させないための要(かなめ)となります。
4.ナンバー2候補を(出来れば)二人見つける
次に実際にナンバー2候補を見つけるわけですが、ここでは出来れば二人見つけましょう。
なかなか中小企業では二人探すのは難しいかも知れませんが、これには理由があります。
まず一つ目に、単純にリスク回避のためです。ナンバー2も人なので、病気になったり、怪我したり、と不可抗力で戦線離脱する可能性があります。そのためにも一人だけだと危険なのです。
二つ目に、言い方が悪いですが、競わせるためです。最初はこの人がナンバー2にぴったりだ、と思っても、実際にナンバー2のポジションにつくと、落ち着いてしまって思ったような活躍をしてくれない人もいます。だからもう一人同じような役割を持たせて、その二人が成長しあえるような関係性を作るのです。
三つ目に、これも言い方が悪いですが、転覆を防ぐためです。ナンバー2を選んだあと、彼/彼女が派閥を作ってしまう可能性があります。社員を引き連れて辞めてしまうことがあります。ナンバー2が社員の心をつかんでしまい、社長のほうが言いたいことを言えなくなることもあります。ナンバー2が”自分のやり方”で勝手に仕事を進め始めることもあります。そうならないためにも、2人の候補者を見つけておくことです。
なお、候補を二人置くところまで来たら、その先は一人ずつ面談する形ではなく、経営の判断を話し合う場そのものを作るほうが早く進みます。
5.ナンバー2への期待値と彼らの計画をすり合わせる
ここまで来たら、ナンバー2(候補)の人にあなたの彼らへの期待値を伝えましょう。意外とこれをやっていない社長が多いのですが、大事なステップです。期待値というのは、彼らに将来どういう存在になってほしいのかを伝えるということです。
と、同時に彼らが将来どうなりたいのかも聞きましょう。何度かお伝えしていますが、ここであなたの夢と彼らの夢が共有出来ているかが大切です。
もし彼らが後継者候補でもあるならば、長期的なインセンティブ、すなわちストックオプションや株式報酬なども検討していいかも知れません。
また、彼らの役職を変える(上げる)のも手です。社長に一番近い役職を彼らに与えることで、社内のメンバーも、「あ、あの人がナンバー2なんだな」ということが分かるようになり、仕事がしやすくなります。
6.経験を通じてナンバー2を育てる
そして実際にナンバー2を育てます。ナンバー2を育成する塾も有ったりしますが、外部の研修に頼るだけではダメです。なぜなら、ナンバー2にとって何より大切なのは、会社の理念を共有出来ていること、そして、理念に沿った仕事のやり方が出来ることです。これは外部研修では身につきません。
また、彼らがリーダーとして育つには実地経験が何より大事だからです。日本の人材育成分野における権威、金井壽宏氏(神戸大学)は、リーダー育成に必要なこととして、
経験:薫陶:研修=7:2:1
という方程式を見出しています。これによれば、研修で得られることは1割しかなく、あとは実務経験と人からの薫陶だということです。
経営者感覚を身に付ける経験とは?
では実際にはどのような経験をさせればよいのでしょうか。日本の大企業では昔から、子会社を作ってそこの社長を経験させるやり方を取ってきました。中小企業でこれをやるのは簡単ではありません。リーダー育成には以下のような経験を積ませるのが良いとされています。
- 何もないところから何かを作り上げる
- 失敗している事業を立て直す
- 管理する人数、職域の増加
- ライン業務からスタッフへの移動
- ロールモデルの観察
- 事業の失敗
- 部下との対峙
- キャリアチェンジ
- 個人的なトラウマ
先述の金井氏はこれらを”一皮むける経験”と表現しています。
社長の役割はメンター&コーチ
こうした経験をさせている間、社長であるあなたは細かいところまで口出ししてはいけません。ここでの社長の役割はメンターやコーチとなることです。つまり、アドバイスをすることが役割であり、指示することが役割ではないことを頭に入れておきましょう。
ナンバー2育成でのNG事項
さて、ここまででナンバー2育成のステップを見てきました。最後にナンバー2育成におけるNG事項をご紹介しておきます。
放任
ナンバー2候補が出来始めると、社長がやりがちなのが放任です。ナンバー2が活躍し始めると社長には自由時間が出来ます。その時間を謳歌してしまい、業務を放任してしまうのです。これはNGです。先ほど言った通り、社長はナンバー2の良きメンター役、コーチ役にならなくてはいけません。
ダブル指示
ナンバー2に業務を委任しているのに、社長がナンバー2を通り越して社員へ直接指示するのもNGです。指示を受けた社員は、どちらの言うことを聞けばいいのか分からなくなります。ナンバー2のほうは自分の存在意義を失い、社員からの信頼も失います。
諫言を無視
優れたナンバー2は社長に諫言をします。歴史上、リーダーが諫言を聞き入れないというのは、組織が崩壊する大きな要因になっています。社長はナンバー2の諫言を聞き入れるだけの度量、人間力を持つ必要があります。
手足にする
ここまで読んでいただいた方はもうお分かりかと思いますが、ナンバー2は社長の手足ではありません。にもかかわらず、社長がやりたくないことを全部任せて小間使いのように扱う会社があります。これは良くありません。彼らはあくまであなたの足りないところを補完してくれる存在であることを覚えておきましょう。
なれ合い
サイバーエージェントの藤田氏と日高氏は元々親しい友人同士でしたが、起業したその日から「会社では『社長』と呼ぶ」と決め、馴れ合いを一切排除しました。日高氏は「私と藤田に特別な壁があると思われて、社員の成長を妨げるのが怖い」と語り、今でも社員との適切な距離感を保つことを意識しています。
ナンバー2と社長が親密になりすぎたり、二人だけの「聖域」を作ってしまうと、組織は「パブリックな存在」になれません。「親しき仲にも礼儀あり」を徹底し、ビジネスパートナーとしての緊張感を持ち続けることが、長期的な成功の秘訣です。
ナンバー2に関するよくある質問
ナンバー2は必ず必要ですか?
必ず必要とは言えません。社長が全社員の仕事ぶりを直接見られている規模なら、無理に置く必要はありません。ただ、社長のところで決裁待ちの列ができ始めたら、それが合図です。人数よりも、社長のところで止まっている案件が何件あるかで判断してください。
ナンバー2の役職は何になりますか?
副社長、専務、常務、COO、本部長、社長室長などが使われます。決まりはありません。大事なのは呼び方ではなく、その呼び方に対応する責任の範囲が書かれているかどうかです。
ナンバー2と後継者は同じですか?
別のものです。ナンバー2という役割で力を発揮したい人もいれば、いずれ自分が経営したい人もいます。本人に確認しないまま後継者だと思い込んでいると、あとで食い違います。記事のステップ3で触れたとおり、ここは最初に聞いておく項目です。
ナンバー2が辞めたらどうなりますか?
その人の頭のなかにしか判断基準がなかった会社では、業務が止まります。逆に、判断のよりどころと決めてよい範囲が文書になっていれば、混乱はしますが止まりません。ナンバー2が辞めたときに何が起きるかは、辞めてから決まるのではなく、置いた時点で決まっています。
ナンバー2が社員から嫌われるのはなぜですか?
多いのは、社長の意向を伝える役だけを担っている場合です。厳しいことを言う場面が本人に集まり、決めた理由は社長のところにあるので、現場からは「社長の代弁者」に見えます。防ぐには、決まったことだけでなく、なぜそう決めたのかを本人が説明できる状態にしておくことです。そのためには、決める場に本人が入っている必要があります。
ナンバー2に必要な心得は何ですか?
本人の立場で挙げるなら3つです。社長に見えていないことを持ち込むこと。決まったことは自分の言葉で説明すること。成果を自分のものにしないこと。この3つは、社長の側が「反対意見を言っても不利にならない」状態を作っていないと守れません。心得は本人だけの問題ではありません。
ナンバー2は一人に絞るべきですか?
絞らないほうが安全です。記事のステップ4で書いたとおり、候補は二人いるのが理想です。さらに進めるなら、経営の判断に関わる場そのものを作り、そこに数人が入る形にします。一人に集めきると、社長依存が右腕依存に変わるだけで終わります。
仕組みづくりの経験を通じてナンバー2を育てましょう
以上、ナンバー2育成について解説してきました。ぜひご参考にしていただければ幸いです。
なお、仕組み経営は、会社の仕組み化を進めながらナンバー2を育てられます。社長と一緒に自社の理念は何なのか、理念に沿った仕組みとは何なのかを考え、実行に移すことで経験を通じてナンバー2や後継者を育てられます。詳しくは以下のガイドブックに掲載していますのでぜひご活用ください。


