品質管理とは、お客様の要求をはっきりさせ、その要求どおりの基準で仕事が行われるようにすることです。英語では「クオリティ・コントロール」と言い、頭文字をとってQCとも呼ばれます。
品質管理と聞くと、工場の検査や製造業の話だと思われがちです。しかし実際には、サービス業でも小売業でも、お客様に何かを届けている会社ならすべてに関わります。接客の仕方、納期の守り方、見積もりの正確さも品質の一部です。
この記事では、品質管理の意味と品質保証との違いを整理します。そのうえで、中小企業で品質が安定しない理由と、品質を保つ仕組みの作り方を6つの手順で紹介します。
1. 品質管理とは?
お客様の要求を基準にして、基準どおりに仕事をする
品質管理の出発点は「品質とは何か」です。品質とは、お客様が求めていることを満たしている度合いのことです。国際規格のISO 9000でも、品質は「本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度」と定義されています。
ここで大事なのは、品質を決めるのは作り手ではなくお客様だという点です。技術が高いことは、そのまま品質の高さにはなりません。その技術がお客様の求めることに合っているときに、初めてお客様は満足します。
品質管理は、このお客様の要求を基準として書き出し、毎回その基準どおりに仕事が行われるようにする活動です。
「後工程はお客様」と考える
品質管理でいう「お客様」は、商品やサービスを買う人だけではありません。自分の仕事を受け取って次の作業をする人も、お客様です。
営業が受注内容を設計担当に渡すなら、設計担当は営業にとってのお客様です。経理が請求書を作るなら、それを受け取る取引先がお客様です。社内の全員が「自分の仕事を受け取る人」に対して品質の責任を持つ。この考え方があると、品質管理は特定の部署の仕事ではなくなります。
品質保証・品質マネジメントとの違い
品質管理と似た言葉に、品質保証と品質マネジメントがあります。一般的には次のように使い分けられています。
- 品質管理……商品やサービスを作る過程で、基準どおりに仕事が行われるようにすること
- 品質保証……お客様に届けた商品やサービスの品質を約束し、問題があれば責任を持って対応すること
- 品質マネジメント……品質管理と品質保証を含め、品質に関わる活動を会社全体の運営として組み立てること
品質管理は作る過程に、品質保証は届けた結果に目を向けるものと考えると分かりやすいでしょう。品質マネジメントの国際規格として知られているのがISO 9001です。
2. 品質管理は製造業だけのものではない
サービスの品質も分けて考えられる
形のないサービスにも品質はあります。サービスの品質の研究では、お客様が次のような点を見て品質を判断しているとされています。
- 信頼性……約束した時間に、間違いなくサービスが提供されるか
- 応答性……問い合わせや依頼にすぐ対応してくれるか
- 能力……必要な知識や技術を持っているか
- 礼儀正しさ……敬意と思いやりを持って接してくれるか
- コミュニケーション……分かる言葉で説明し、話を聞いてくれるか
- 安全性……危険や不安を感じさせないか。情報が守られているか
- 物的要素……店舗や設備、スタッフの身なりが整っているか
こうして分けると、「うちのサービスの品質」がぼんやりしたものではなくなります。どこが基準に届いていないかを話し合えるようになります。
会社のすべての部門と仕組みが品質に関わる
品質は、現場の作業だけで決まるものではありません。悪い知らせをすぐ報告できる雰囲気があるか。情報が必要な人に届く会議があるか。採用や育成で、仕事の基準が伝わっているか。こうした会社の仕組みがすべて、最後にお客様が受け取る品質に表れます。
だから品質管理は、品質担当者を一人置けば済む話ではありません。会社の仕組み全体で品質を支えるものとして考える必要があります。
3. 品質管理の基本の考え方3つ
作らない、流さない
品質を保つ基本は2つです。第一に、商品やサービスを提供する時点で不具合を作らないこと。第二に、不具合が起きても、それを社外に流さないことです。
検査で不良を見つけることも大切です。しかし検査だけに頼ると、検査の手前で生まれる不具合は減りません。作る段階で不具合が起きにくいやり方を決めておくことが、品質管理の中心になります。
再発防止から未然防止へ
不具合が起きたとき、多くの会社は再発防止策をとります。同じミスが起きた箇所に、確認の手順を一つ足すような対応です。
これだけでは、別の案件や別の工程で似た不具合が起きるのを防げません。不具合の根本にある仕組みの穴を見つけて直すことで、まだ起きていない不具合まで防げるようになります。これを未然防止と言います。
自分の工程の出来を、自分で判断できる基準を持つ
品質管理の大前提は、一人ひとりが自分の担当する工程の出来に責任を持つことです。そのためには「これで合格かどうか」を本人が判断できる基準が要ります。
基準がないまま「品質に責任を持て」と言われても、社員は上司に確認するしかありません。結局は社長や一部のベテランの目に頼ることになります。自分の工程で品質を作り込む考え方は、自工程完結とは?で詳しく紹介しています。
4. 中小企業で品質が安定しない4つの理由
理由1. 品質の基準が社長の頭の中にある
小さな会社では、社長自身が最も目が利く職人であることが多いものです。何が良い仕上がりで、何がだめかは社長には分かっています。ところが、その基準が言葉になっていません。だから社長が見たときだけ品質が保たれ、社長が現場を離れると品質がばらつきます。
理由2. 合格の基準が人によって違う
同じ仕上がりを見ても、ある社員は「これで十分」と考え、別の社員は「やり直し」と判断する。基準がそろっていないと、お客様が受け取る品質は担当者しだいになります。
理由3. ミスが起きると、人を注意して終わる
不具合が起きると「二度とないように」と担当者を注意して終わる。よくある対応です。しかしこれでは、なぜそのミスが起きたのかという仕組みの穴が残ります。担当者が替われば、同じことがまた起きます。部署同士で責任を押し付け合うきっかけにもなります。
理由4. 悪い知らせが上がってこない
ミスを報告すると叱られる会社では、社員は小さな不具合を隠すようになります。社長が知るのは、お客様からクレームが来たあとです。
どれも、社員の能力や意識の低さが原因ではありません。品質の基準と、不具合から学ぶ手順が会社に用意されていない、という構造の問題です。次の章では、この部品を一つずつ作っていく手順を紹介します。
品質の基準を言葉にし、誰が担当しても同じ仕上がりで届けられる会社をつくる。そのための仕組み化の手順を、無料のガイドブックにまとめました。
5. 中小企業の品質管理の進め方6ステップ
手順1. 自社の品質を定義する
最初に、自社にとっての品質とは何かを決めます。出発点はお客様の要求です。いちばん確かな方法は、お客様に直接聞くことです。「もっとこうしてほしい」「これが困った」という声を集めます。
集めた声は、具体的なものから大きなくくりへと整理していきます。たとえば住宅リフォームの会社なら、次のようになります。
- 思いどおりの仕上がりになる……要望をしっかり聞いてもらえる/プロとしての提案がある
- 工事中のストレスがない……工期が守られる/近所に騒音やほこりで迷惑をかけない
- 工事のあとも安心できる……保証がある/不具合を相談しやすい
それぞれの要求に、お客様にとっての重要度を付けます。次に、重要度の高い要求を満たすのは自社のどの技術や工程なのかを結びつけます。お客様にとって大事な要求を支えている工程こそ、自社が品質を作り込むべき場所です。
技術に自信のある会社ほど、自社のこだわりとお客様の求めることがずれていることがあります。この手順で、そのずれに気づけます。
手順2. 不具合を予測する
次に、起こりうる不具合を前もって洗い出します。製造業では「故障モード影響解析」と呼ばれる方法がよく使われますが、考え方はサービス業でも同じです。
業務の流れを順に並べ、それぞれの工程で「何が起こりうるか」「その原因は何か」「お客様にどんな影響が出るか」を書き出します。そして、不具合ごとに次の3つを点数で見積もります。
- 影響度……起きたとき、お客様への影響はどれほど大きいか
- 発生度……どれくらい起こりやすいか
- 検出度……起きたとき、社内で気づくのがどれほど難しいか
3つを掛け合わせた点数が高いものから対策を考えます。たとえば予約制のサービスで「担当者が予約時間を取り違える」という不具合なら、前日にお客様へ確認の連絡を入れる、毎朝予約表を照らし合わせる、といった対策が考えられます。
人がミスを起こしにくくする工夫は、ヒューマンエラーとは?でも紹介しています。
手順3. 不具合の原因を仕組みで解く
それでも不具合は起こります。起きたときに、人を責めずに原因をたどる手順を決めておきます。
やり方は「なぜ起きたのか」を重ねていくことです。たとえば、見積もりの金額を誤ってお客様に出してしまったとします。
- なぜ誤ったのか……担当者が仕様書の数字を読み違えた。読み違えたのは、仕様書の書式が複雑だったから
- なぜ営業はそのまま出したのか……違和感はあったが、確認を頼む手続きがなかった
- なぜ上司が気づかなかったのか……金額の大きい見積もりを上司が確認する流れになっていなかった
ここまでたどると、直すべきものが見えてきます。仕様書の書式を簡単にする。疑問があれば誰に聞くかを決める。一定額を超える見積もりは上司が確認する。「次から気をつけます」ではなく、どの仕組みを直せば最も簡単に防げるかを考えます。
直したやり方は、手順書やチェックリストに書き残します。書き方はマニュアルの作り方で紹介しています。
手順4. 品質を評価する仕組みを作る
品質が保たれているかを、定期的に確かめる仕組みを作ります。満たすべき基準を項目ごとに決め、一定の期間で点数を付けていきます。
たとえば訪問修理の仕事なら「時間どおりに到着したか」「必要な道具を持っていたか」「作業後に元どおりに片付けたか」「お客様の質問に的確に答えられたか」といった項目です。それぞれを「できていない/基準以下/基準どおり/基準以上」の段階で評価します。
評価の基準を決めておくと、人によって判断が分かれる問題が減ります。クレームの件数ややり直しの割合など、数で追える品質の指標もあわせて見ておくと変化に気づきやすくなります。
年に1回、品質を振り返る場を設けるのもおすすめです。品質に貢献した社員をたたえ、次に直すところを全員で確かめる機会にできます。
手順5. 品質宣言を作る
品質宣言とは、自社がお客様にどんな品質を約束するかを言葉にしたものです。社内で共有するだけでなく、お客様にも示すことで、社員にとって日々の仕事の基準になります。
飾った言葉は要りません。「約束の時間を守ります」「工事のあとは来たときよりきれいにして帰ります」のように、率直で分かりやすい言葉にします。手順1で整理したお客様の要求のうち、特に大事なものを選んで書くと、宣言と現場の仕事がずれません。
手順6. 品質について教育する
品質は、仕組みと人の両方で成り立ちます。仕組みを作ったら、その考え方を社員に伝えます。品質の向上を妨げるのは、多くの場合次のようなことです。
- 今のやり方を変えたくないという気持ち
- お客様の要求や自社の品質の状態について、正しい情報がない
- 人によって判断が分かれる、主観に頼った確認
- 叱られるのを避けるために、不具合を隠したり小さく報告したりすること
これを防ぐには、測れる評価の仕組みを作ることに加えて、日ごろの関わり方を変えます。人を責めずに仕組みで解決する。分からないことを放っておかないよう伝える。品質に関する情報を誰でも見られるようにする。部署をまたいで話せる場を作る。
悪い知らせほど早く上げてもらうには、報告のルールを決めておくことも大切です。報連相のルール作りや心理的安全性の作り方もあわせて参考にしてください。
6. 品質管理でよく使われる手法
QC七つ道具
QC七つ道具は、品質の問題を数字や図で整理するための代表的な道具です。パレート図、特性要因図、グラフ、チェックシート、ヒストグラム、散布図、管理図の7つを指すのが一般的です。製造の現場で生まれたものですが、クレームの内訳をパレート図で並べるなど、サービス業でも使えます。
PDCAサイクル
計画、実行、確認、改善を繰り返して、仕事のやり方を少しずつ良くしていく考え方です。手順4の品質の評価は、このうちの「確認」にあたります。評価して終わりにせず、直したやり方を手順書に反映させるところまでを一回りとします。
標準化
最も良いやり方を決めて、誰が担当しても同じ手順で仕事ができるようにすることです。品質のばらつきを減らす土台になります。進め方は業務標準化とは?で解説しています。
7. 品質管理のよくある質問
社員が少ない会社でも品質管理は必要ですか?
必要です。人数が少ないうちは社長の目が届くので、問題が見えにくいだけです。人が増えると、社長が全部の仕事を確かめることはできなくなります。人の判断が一か所に集まれば、いずれは必ずあふれます。最初は、お客様にとって大事な要求を3つほど書き出し、それを守るための確認項目を決めるところからで十分です。
品質管理と品質保証は、どちらから始めればいいですか?
中小企業なら、まず品質管理から始めるのがおすすめです。作る過程で不具合を減らせれば、届けたあとの対応も減ります。お客様に約束する内容は、手順5の品質宣言で言葉にしていきます。
ISO 9001の認証は取ったほうがいいですか?
認証の取得は、各社が必要に応じて判断するものです。取引先から求められる場合は検討の対象になります。ただ、認証の有無にかかわらず、自社の品質の基準を決めて守る仕組みは必要です。まずは自社に合った形で仕組みを作り、必要になったときに認証を考えても遅くありません。
クレームが来たときは、どうすればいいですか?
まずお客様への対応を優先し、そのあとで手順3のように原因を仕組みまでたどります。クレームは、品質の基準のどこが足りなかったかを教えてくれる情報でもあります。対応の流れはクレーム対応マニュアルの作り方で紹介しています。
まとめ
品質管理とは、お客様の要求をはっきりさせ、その要求どおりの基準で仕事が行われるようにすることです。製造業だけのものではなく、お客様に何かを届けている会社すべてに関わります。
品質が安定しない原因は、社員の能力ではありません。品質の基準が社長の頭の中にしかなく、不具合から学ぶ手順が用意されていないことにあります。
進め方は6つの手順です。自社の品質を定義し、不具合を予測し、起きた不具合の原因を仕組みで解き、品質を評価し、品質宣言を作り、品質について教育する。基準と手順が会社に残っていれば、社長が見張らなくても品質はそろいます。
社員には、品質管理を「お客様との約束を、誰が担当しても守れるようにするための仕組み」として説明できます。担当者が替わっても同じ品質で届けられる会社は、お客様から長く選ばれ続ける会社です。
まず一つ、書き出してみましょう。お客様が自社に一番求めていることは何か。それを書き出すところからで十分です。社長がいなくても回る会社をつくる仕組み化の全体像は、無料のガイドブックで順を追って紹介しています。


