KPIとは?意味とKGIとの違い、中小企業の決め方5ステップ

KPIとは?意味とKGIとの違い、中小企業の決め方5ステップ



清水直樹
今日は、中小企業でKPIをどう決めて、どう使うかについてご紹介していきます。KPIという言葉は知っていても、決めた数字が現場の仕事とつながらず、いつの間にか誰も見なくなる。そんな会社は少なくありません。意味やKGIとの違いを整理したうえで、社長が毎日見張らなくても数字が動く使い方まで順番にお伝えします。

 

KPIとは、目標に近づいているかどうかを途中で確かめるための数字です。日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。最終的な目標を測る数字をKGI、そこへ向かう途中の進み具合を測る数字をKPIと呼び分けるのが一般的です。

ところが、KPIを決めたのに数字が動かない。会議で数字を読み上げるだけになっている。そんな声もよく聞きます。原因の多くは、数字の選び方と使い方にあります。KPIを決めただけで、その数字を上げるための仕事のやり方が決まっていないのです。

この記事では、KPIの意味とKGIとの違いを整理します。そのうえで、中小企業がKPIを決める5つの手順と、4つの視点別の例を紹介します。最後に、決めたKPIを現場の仕組みと会議につなげて動かす方法を解説します。

1. KPIとは?

目標までの進み具合を測る「途中の数字」

KPIは、目標に向かう途中で「このままで着けそうか」を判断するための数字です。たとえば「今期の売上を1億円にする」という目標があったとします。売上の数字は期末にならないと確定しません。期末に分かっても、そこから打てる手はありません。

そこで、売上を生む手前の数字を決めて、毎週や毎月追いかけます。問い合わせの数、商談の数、成約率、既存顧客の継続率などです。これらがKPIにあたります。途中の数字を見ていれば、結果が出る前に手を打てます。

KGIとKPIの違い

KGIとKPIは、測る対象が違います。

  • KGI(重要目標達成指標)……最終的に達成したいゴールを測る数字。売上高、利益額、顧客数など
  • KPI(重要業績評価指標)……KGIに向かう途中の進み具合を測る数字。商談数、成約率、継続率、不良品率など

KGIは「どこに着くか」、KPIは「どう着くか」を数字にしたものと考えると分かりやすいでしょう。KGIが一つに対して、KPIは複数あるのが普通です。

仕組み経営では、3〜5年後に必ず達成したい目標を「戦略的目標」、そこへ向かうために測るべき数字を「戦略的指標」と呼んでいます。戦略的目標がKGI、戦略的指標がKPIにおおむね重なります。3〜5年後の目標の立て方は、中期経営計画とは?で詳しく解説しています。

「結果の数字」と「原因の数字」

KPIを考えるとき、もう一つ役に立つ見方があります。数字を「結果の数字」と「原因の数字」に分けることです。

売上や利益は、目に見える結果の数字です。一方で、その結果を生む原因には、目に見えにくいものが多くあります。対応の早さ、品質のそろい方、お客様が感じる手間の少なさなどです。結果の数字だけを追うと、なぜ上がったのか、なぜ下がったのかが分かりません。原因の数字をKPIに入れておくと、現場が「何を変えればいいか」まで見えるようになります。

2. KPIを決めると会社の何が変わるか

社員が「何を優先するか」を自分で判断できる

目標が売上の数字だけだと、営業以外の社員は自分の仕事とのつながりが見えません。KPIが決まると、「自分の仕事はこの数字につながっている」と分かります。迷ったときに何を優先すべきかを、社長に聞かなくても判断できるようになります。

何を改善すべきかが数字で分かる

進み具合を数字で測っていれば、どこが遅れているかがすぐに分かります。問い合わせは増えているのに成約率が下がっているなら、手を入れるべきは集客ではなく商談の進め方です。勘や印象ではなく、数字で改善の場所を決められます。

社長が現場に張り付かなくても状況が分かる

KPIがない会社では、社長が現場の様子を自分の目で確かめるしかありません。だから社長は現場から離れられません。KPIが決まり、決まった場で数字が報告されるようになると、社長は数字を見て状況をつかめます。社長が現場を離れられないのは、社長の性格の問題ではありません。状況を知る手段が「自分の目」しかないという、会社の構造の問題です。

3. KPIがうまく機能しない5つの理由

KPIを決めても数字が動かない会社には、共通する特徴があります。

理由1. 数が多すぎて、どれも見られない

測れる数字は、探せばいくらでも見つかります。思いつくものを全部並べると、会議で読み上げるだけで時間が終わります。どれも大事に見えるので、結局どれにも手が回りません。

理由2. 結果の数字しか並んでいない

売上、粗利、受注件数。結果の数字だけを並べると、下がったときに「頑張ろう」としか言えません。何を変えればいいかが分からないからです。

理由3. お金の数字に偏っている

利益率だけを追うと、人件費や教育費を削れば一時的に数字は良くなります。しかし、その分だけ社員の負担が増えて人が辞め、あとから数字が落ち込むことがあります。お金の数字だけでは、こうした動きが見えません。

理由4. 測るだけで、上げるための仕事のやり方がない

「成約率を30%にする」と決めても、商談の進め方が人によってバラバラなら、成約率は担当者の腕しだいです。数字を上げる手順が決まっていなければ、KPIは「結果を見て一喜一憂する数字」で終わります。

理由5. 見る場が決まっていない

いつ、どの会議で、誰が数字を確かめるのか。これが決まっていないKPIは、決めた翌月から誰も見なくなります。

どれも、社員の能力ややる気の話ではありません。数字と日々の仕事をつなぐ部品が欠けている、という作り方の問題です。次の章では、この部品を最初から組み込んだ決め方を紹介します。

4. 中小企業のKPIの決め方5ステップ

手順1. ゴール(KGI)を決める

KPIは、ゴールから逆算して決めます。ゴールが決まっていなければ、途中の数字も決められません。

ゴールは、期限と数字ではっきり書きます。目標を立てるときは、次の5つの条件で確かめると抜けが減ります。英語の頭文字をとって「スマートの法則」と呼ばれる考え方です。

  • 具体的……できるだけ数字で表す
  • 測定できる……達成したかどうかを誰が見ても判定できる
  • 実現できる……かなわない夢ではない
  • 関連している……自社のビジョンや大切にする価値観と筋が通っている
  • 期限がある……「いつまでに」がはっきりしている

手順2. ゴールまでの道筋を描く

次に、ゴールに着くまでの道筋を考えます。ここがKPIを決めるうえでいちばん大事な工程です。どの数字を追うかで、会社が取る行動が変わるからです。

同じ「半年で10キロやせる」という目標でも、毎日の摂取カロリーを測る人と、毎日の運動時間を測る人では、やることがまったく違います。前者は食事を減らす作戦、後者は運動する作戦を選んでいます。会社も同じです。「新規の顧客数」を追う会社と「既存顧客の継続率」を追う会社では、現場の動きが変わります。KPIを選ぶことは、作戦を選ぶことでもあるのです。

道筋を描くときは、数字同士のつながりを考えます。「品ぞろえが増える→お客様の満足が上がる→来店が増える→売上が伸びる」のように、どの数字が上がると、次にどの数字が上がるかを矢印でつないでみてください。つながりが見えると、どこがボトルネック(流れを詰まらせている箇所)になっているかも分かるようになります。


手順3. 4つの視点から候補を出す

道筋が描けたら、測るべき数字の候補を出します。お金の数字に偏らないように、次の4つの視点から出すのが基本です。

  • 財務……利益や手元のお金の状態
  • 顧客……お客様の満足や継続、紹介
  • 業務……仕事の品質や早さ、成約の効率
  • 社員……社員の定着や成長

この段階では、多めに出してかまいません。社長一人で考えず、各部門の責任者にも聞きます。現場の詰まりは、現場の人がいちばんよく知っているからです。具体的な例は次の章で紹介します。

手順4. 数を絞り、目標値を決める

候補の中から、実際に追う数字を絞ります。仕組み経営では、会社全体で8つほどの戦略的指標を決めることを勧めています。部門やチームで毎週追う数字は、3〜5個に収めると無理なく見続けられます。

迷ったときは、次の問いで比べてみてください。

  • その数字が上がると、ゴールにどれだけ近づくか
  • 現場の動きで変えられる数字か
  • 毎週や毎月、手間をかけずに測れるか

絞ったら、それぞれに「いつまでに、どこまで」という目標値を付けます。今の数字が分からないものは、まず1〜2か月測ってみて、現状を知ってから目標値を決めても遅くありません。

手順5. 担当者と測り方を決める

最後に、KPIごとに担当者を決めます。担当者は、その数字を毎月確かめ、上げるための手を考える人です。あわせて、誰が、何を見て、いつ数字を集めるのかも決めておきます。

数字にしにくいものもあります。「対応が早い」「品質が良い」は、人によって受け止め方が違います。「どういう状態なら良いのか」を言葉にして、回数や割合で測れる形にします。たとえば「お問い合わせに当日中に返信した割合」のように、現場の動作に降ろします。測り方の工夫は、数値化とは?数値化できないものの測り方で解説しています。

5. 4つの視点別のKPIの例

ここでは、中小企業で使いやすいKPIの例を視点ごとに紹介します。全部を使う必要はありません。自社のゴールまでの道筋に合うものを選んでください。

財務の視点

  • 売上高経常利益率……売上のうち、どれだけが利益として残ったか
  • 損益分岐点比率……今の売上が、赤字にならない最低ラインからどれだけ離れているか。低いほど売上が落ちても赤字になりにくい
  • 自己資本比率……会社の資産のうち、返す必要のないお金がどれだけを占めるか
  • 手元資金で何か月持つか……売上が止まっても、今の手元のお金で何か月やっていけるか

顧客の視点

  • 顧客満足度……どれだけ満足してもらえたか
  • NPS……ほかの人にどれだけ薦めたいと思ってもらえるか
  • 顧客生涯価値……一人のお客様が、取引の期間を通じてどれだけ買ってくださったか
  • 顧客努力指標……お客様が商品やサービスを使うのに、どれだけの手間がかかったか

顧客努力指標の測り方は、顧客努力指標とは?で紹介しています。

業務の視点

  • 成約率……問い合わせや商談が、どれだけ契約につながったか
  • 不良品率・やり直し率……品質に問題があった割合
  • クレームの件数……一定期間に寄せられた苦情の数
  • 人時生産性……社員1人が1時間あたりに生み出した粗利
  • 処理にかかる時間……一つの作業や工程にかかる時間

人時生産性の計算方法は、人時生産性とは?で解説しています。

社員の視点

  • 離職率……一定期間に辞めた社員の割合
  • 社員の推奨度……社員が自分の会社を、働く場所として人にどれだけ薦めたいか
  • 研修や教育にかけた時間……仕事に必要な力を身につけるために使った時間
  • 資格の取得者数……仕事に必要な資格を持っている人の数

自社だけの数字を作ってもよい

決まった指標から選ぶだけでなく、自社の考え方を表す数字を作ることもできます。たとえば、私たち仕組み経営では「経営自立度」という指標を考えています。会社の業績が、特定のお客様や取引先、特定の社員に頼りすぎていないかを測るものです。自社が何を大事にしているかが数字に表れていると、社員にとって行動の手がかりになります。

KPIを上げる「仕組み」の作り方KPIを決めても、仕事のやり方が変わらなければ数字は動きません。目標から逆算して仕組みを作り、社長がいなくても回る会社をつくる手順を、無料のガイドブックにまとめました。

6. 決めたKPIを動かす。数字を仕組みと会議につなぐ

KPIは、決めるより動かすほうが難しいものです。ここでは、決めた数字を毎日の仕事につなげる3つの工夫を紹介します。

KPIごとに「上げるための仕組み」をセットで作る

KPIを決めたら、その数字を上げるための仕事のやり方も決めます。

著書『仕組み化の経営術』では、アメリカのスリーエム社の例を紹介しています。同社は「売上に対する新製品の比率」を指標にしています。そして、この数字を上げるために、アイデアを生み出してから市場に出すまでの段階を手順に分けた仕組みを持っています。アイリスオーヤマ社も「売上高に占める新商品比率50%」という指標を掲げ、毎週の商品開発会議でその数字を支えていることで知られています。

どちらも、数字と、その数字を上げる仕事のやり方がセットになっています。中小企業でも考え方は同じです。成約率をKPIにするなら、商談の進め方を手順として書き出し、誰が担当しても同じ流れで進められるようにします。手順があれば、数字が下がったときに「手順のどこを直すか」を話し合えます。

道筋の中でボトルネックになっている数字が分かったら、そこを上げる仕組みづくりから手を付けます。全部を同時に直そうとしなくて大丈夫です。

会議のリズムに組み込む

KPIは、決めただけでは誰も見ません。見る場を、会議の予定として先に決めておきます。目安は次のとおりです。

  • 週に1回……部門の定例会議で、原因の数字と今週やることを確かめる
  • 月に1回……経営会議でKPIの数字を確かめ、遅れている項目の対策を決める
  • 四半期に1回……KPIそのものが今も合っているかを見直す

会議の終わりには、誰が・何を・いつまでにやるかを必ず決めます。数字を読み上げるだけで終わる会議は、数字を動かしません。週次の会議の進め方は定例会議のあり方で、月次の会議は経営会議とは?で紹介しています。

数字を上げるやり方は、現場と一緒に作る

ゴールと、何を測るかは社長が責任を持って決めます。一方で、数字を上げるための仕事のやり方は、その仕事をよく知っている社員と一緒に作ります。

外から型を持ち込んだり、上から数字を降ろしたりするやり方は、早く形になります。ただ、自分たちで考えていないやり方は、見張る人がいなくなると元に戻りがちです。上から入れるのではなく、現場が作る。自分たちで作った仕組みなら、数字が下がったときにも自分たちで直していけます。

7. KPIのよくある質問

KPIはいくつ決めればいいですか?

会社全体では8つほど、部門やチームで毎週追う数字は3〜5個が目安です。多すぎると見きれず、少なすぎるとお金の数字に偏りがちです。4つの視点から最低一つずつ入っているかを確かめてください。

KPIツリーとは何ですか?

KGIを頂点に置き、それを分解したKPIを木の枝のように下へ広げて描いた図のことです。売上を「顧客数×客単価」、顧客数を「商談数×成約率」のように分けていきます。数字同士のつながりを目で確かめられるので、手順2の道筋を描くときに役立ちます。

OKRとは何が違いますか?

OKRは、挑戦的な目標と、その達成度を測る主な成果をセットで決める目標管理の方法です。KPIは「進み具合を測る数字」そのものを指す言葉で、OKRの中でもKPIにあたる数字が使われます。OKRについてはOKRとは?で詳しく解説しています。

社員が10人に満たない会社でもKPIは必要ですか?

必要です。むしろ人数が少ないうちのほうが、全員で同じ数字を見やすい時期です。最初はゴールと、それに一番効く数字を3つほど決めるところからで十分です。毎週の打ち合わせで数字を確かめる習慣を作っておくと、人が増えたときにもそのまま使えます。


KPIを人事評価に使ってもいいですか?

使えますが、注意が要ります。評価や給与に直結させると、数字を上げること自体が目的になり、本来のゴールから外れた動きが出ることがあります。まずは「仕事のやり方を良くするための数字」として使い、評価にどう反映させるかは仕組みが落ち着いてから考えるのがおすすめです。

まとめ

KPIとは、目標に近づいているかどうかを途中で確かめるための数字です。最終的なゴールを測るKGIに対して、KPIはそこへ向かう途中の進み具合を測ります。

決め方は、ゴールを決め、ゴールまでの道筋を描き、4つの視点から候補を出し、数を絞って目標値を付け、担当者と測り方を決める。この5つの手順です。

そして、KPIが動くかどうかを分けるのは、決めたあとです。数字ごとに上げるための仕事のやり方を作り、会議のリズムで毎週・毎月見ていく。この仕組みがあれば、社長が現場に張り付かなくても、会社の状態は数字で分かるようになります。

社員には、KPIを「お客様の役に立ち続けるために、自分たちがどこまで来ているかを確かめる数字」として説明できます。社長が見張らなくても数字が回る会社は、社長がいつか現場を離れたあとも続いていく会社です。

まず一つ、書き出してみましょう。自社のゴールを決め、それに一番効く数字を一つ選ぶところからで十分です。目標から仕組みを逆算していく全体像は、無料のガイドブックで順を追って紹介しています。


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