役割分担とは、会社や職場の仕事を整理して、誰がどの仕事に責任を持つのかを決めることです。役割分担が決まっていると、仕事のモレやダブりが減り、社員は自分の持ち場に集中できます。
ところが、役割分担が曖昧なままの会社は少なくありません。「それは誰の仕事?」と聞いても答えがばらばらになる。結局、社長が拾って自分でやってしまう。こうした状態は、社員の責任感が足りないから起きるのではありません。仕事の持ち主が、会社のなかで決められていない。多くの場合、原因はここにあります。
この記事では、役割分担が曖昧になる原因と、決め方の4ステップを整理します。そのうえで、決めた役割分担を会社に残す方法をまとめました。
1. 役割分担とは?意味と決める目的
役割分担の意味
役割分担とは、仕事を機能やまとまりごとに分けて、それぞれに担当者を置くことです。「営業」「経理」「採用」のように大きく分ける場合もあれば、「見積書の確認」「新人の最初の一週間の面倒を見る」のように細かな仕事単位で決める場合もあります。
大切なのは、担当者の名前を決めるだけで終わらせないことです。その人が何に責任を持ち、どの状態になれば役割を果たしたと言えるのかまで決めて、はじめて役割分担になります。
職務分掌・業務分担との違い
似た言葉との違いは、次のように整理できます。
- 役割分担……仕事を分けて、誰が何に責任を持つかを決めること。もっとも広い言い方です
- 業務分担……日々の作業を誰がやるかを割り振ること。役割分担のなかの、作業レベルの話です
- 職務分掌……部署や役職ごとの職務の範囲と権限を、規程として文書にしたものです
中小企業では、職務分掌のような規程を最初から整える必要はありません。まず役割分担をはっきりさせ、それを書面に残すところから始めれば十分です。
役割分担を決める目的
役割分担を決める目的は、次の3つです。
- 仕事のモレとダブりをなくす
- 社員が自分の仕事の範囲と責任を理解して、自分で判断して動けるようにする
- 社長が持っている仕事を、少しずつ手放せるようにする
中小企業の社長にとっては、3つ目がとくに大切です。社長が現場から離れられない会社では、多くの仕事が「社長の担当」のまま残っています。役割分担は、社長が抱えている仕事を整理して、渡していくための土台にもなります。
2. 役割分担が曖昧になる4つの原因
役割分担がうまくいかない会社には、共通する構造があります。決め方を見る前に、原因を整理しておきます。
原因1. 仕事の全体像が見えていない
会社にどんな仕事があるのかが、一覧になっていない状態です。仕事が見えていないのに、担当を決めることはできません。気づいた人が、気づいたときにやる。こうして「誰かがやっている仕事」が増え、いつの間にか誰もやらない仕事も生まれます。
原因2. 一人が何役も兼ねている
小さな会社では、一人が複数の役割を兼ねるのは自然なことです。ただ、兼ねている役割が書き出されていないと、本人にも周りにも見えません。とくに社長は、営業も経理も採用も、気づけばほとんどを兼ねていることがあります。
原因3. 仕事の内容だけで、求める成果が決まっていない
「電話に応える」「伝言する」のように、作業を並べただけでは役割分担になりません。作業の羅列は、やることの範囲を決めてくれるだけで、何のためにやるのか、どうなれば良いのかを示してくれません。判断に迷ったとき、社員は社長に聞くしかなくなります。
原因4. 決めた役割が書き残されていない
口頭で決めた役割分担は、人が入れ替わったり忙しくなったりするたびに、少しずつ崩れます。新しく入った人は、前の担当者から聞いた範囲しか知りません。
役割分担が曖昧なまま残る原因は、社員の意識の低さでも、社長の指示の出し方でもありません。仕事が見えない、兼任が見えない、成果が決まっていない、書き残されていない。会社の構造の側にあります。だから、構造を整えれば役割分担は決まります。
仕事のやり方が特定の人に集中している状態については、属人化とは?意味と解消方法で整理しています。
3. 役割分担の決め方4ステップ
ここからは、役割分担を決める手順を4つのステップで紹介します。ポイントは、先に仕事の側を決めて、人の名前は最後に入れることです。
ステップ1. 会社の仕事を機能ごとに書き出す
最初に、いまいる人のことは考えず、会社に必要な仕事を書き出します。営業、サービス提供、経理、採用、教育、総務のように、機能の単位で箱に分けていきます。箱を線で結べば、組織図の形になります。
人を先に考えると、「この人にできることは何か」から発想してしまい、会社に本当に必要な仕事が抜け落ちます。まず機能を書き、そのあとで人を当てはめます。組織図の書き方は、会社の組織図の作り方・書き方で詳しく解説しています。
ステップ2. 箱ごとに「求める成果」を一文で書く
箱ができたら、それぞれの箱に「この役割は何を実現するためにあるのか」を一文で書きます。作業のリストではなく、求める成果を書くのがコツです。
たとえば営業担当の役割なら、次のような違いが出ます。
- 作業の羅列……新規開拓をし、商品の提案、契約を行う
- 求める成果……営業の流れに沿ってお問い合わせを売上につなげ、長く付き合えるお客様を増やす
成果が書かれていると、社員は「この作業はそもそも必要か」「いまの自分の動きは成果につながっているか」と、自分で考えられるようになります。判断の基準が文章として手元にあるので、迷うたびに社長へ聞く必要がなくなります。
ステップ3. 主な仕事を書き、人の名前を入れる
求める成果の下に、その役割の主な仕事を書き出します。このとき、実際に手を動かす仕事だけでなく、計画や改善のような考える仕事も入れます。どんな役割にも、考える仕事と動く仕事の両方があるからです。社長に近い役割ほど、考える仕事の比率が高くなります。
ここまで書けたら、はじめて箱の横に人の名前を入れます。小さな会社では、ほとんどの箱に社長の名前が入るかもしれません。それで構いません。いかに多くの役割を兼ねているかが、目で見て分かることに意味があります。人の名前が入った組織図が、そのままあなたの会社の役割分担の図になります。
ステップ4. 社長が手放す役割を決める
名前を入れた図を眺めると、社長が兼ねている役割がはっきり見えてきます。次の3つを考えます。
- 兼ねている役割を、いつ、誰に渡すか
- 誰をどの役割に配置するか
- いつ、どの役割に人を採用するか
全部を一度に渡す必要はありません。まず一つ、渡せそうな役割を選びます。渡すときは、ステップ2で書いた「求める成果」と、ステップ3の主な仕事を一緒に渡します。仕事の任せ方は、仕事の任せ方|部下に仕事を任せる5ステップと権限委譲のコツも参考にしてください。
会社の仕事を洗い出して、役割と成果を決め、社長の手を離れる形にしていく進め方を、無料のガイドブックにまとめました。
4. 役割分担を決めたあと、崩れないようにするには
書面にして、本人と合意する
決めた役割は、求める成果と主な仕事を書面にまとめて、担当者本人に渡します。口頭で伝えるだけでは、受け取り方が人によって変わります。書面にして「この役割で合っているか」を本人と確認し、合意をとります。
この書面は、一方的に押しつけるものではありません。本人が仕事の範囲を確かめ、分からない点を質問できるものです。上司と部下が同じ紙を見ながら話せるので、普段の会話も具体的になります。職務の内容を書面にまとめる考え方は、職務記述書とは?書き方5ステップとテンプレート・記入例でも紹介しています。
管理職の役割をはっきりさせる
中小企業で役割分担が曖昧になりやすいのが、管理職の役割です。社長も管理職本人も「うちの管理職の役割はこれだ」とはっきり言えない会社は多くあります。すると管理職は自分の現場仕事で手一杯になり、社長が走り回ることになります。
管理職の役割は、部下の仕事の質と量を整えることと、仕事のやり方を会社に残していくことです。これを求める成果として書くだけでも、動き方が変わります。管理職の仕事内容は管理職の役割とは?仕事内容と種類、求められるスキルで詳しく整理しています。
仕事の境目に、担当を置く
役割分担のトラブルが出やすいのは、役割と役割の境目の仕事です。たとえば、営業が受けた注文を現場に引き継ぐところ、新人が入ったときの教育、お客様からの問い合わせの一次対応などです。
こうした仕事は「誰の仕事でもない」状態になりがちなので、あらかじめ一つの役割に割り当てておきます。業務の流れ全体に責任を持つ役割については、プロセスオーナーとは?業務改善を推進する役割が参考になります。
半年に一度、見直す
会社は変わるので、役割分担も変わります。半年に一度、書面を見ながら、いまの仕事と合っているかを担当者と一緒に確認します。仕事が増えた箇所、誰も手をつけていない箇所が見つかったら、その場で書き換えます。
役割分担を上から配るのではなく、現場の人と一緒に作ると、決めた内容が根づきます。外から型を入れるやり方は、入れた人の目が届かなくなると崩れます。自分たちで決めた役割は、自分たちで守ります。
5. 役割分担についてよくある質問
少人数の会社でも、役割分担は必要ですか?
少人数の会社でこそ必要です。全員が何でもやる状態は柔軟に見えますが、誰が何に責任を持つのか分からず、社長が最後に拾うことになりがちです。まずは箱の数を少なくして、人の名前を入れるだけでも十分に効果があります。
社員が「それは自分の仕事ではない」と言ってきます。
本人の態度の問題と決めつける前に、その仕事の持ち主が決まっているかを確認してください。持ち主が決まっていない仕事は、誰に聞いても「自分の仕事ではない」と答えが返ってきます。持ち主を決めるのは、会社の側の仕事です。
役割分担を細かく決めすぎると、柔軟に動けなくなりませんか?
作業を細かく縛ると、そうなります。決めるのは作業の一覧ではなく、求める成果と責任の範囲です。範囲のなかのやり方は本人に任せます。成果が一文で示されていれば、社員は状況に合わせて自分で判断できます。
役割分担は、どのくらいの頻度で見直せばよいですか?
半年に一度が目安です。人の入れ替わりや、新しい仕事が増えたタイミングでも見直します。見直しのたびに書面を更新し、本人と確認します。
まとめ
役割分担とは、会社の仕事を整理して、誰がどの仕事に責任を持つかを決めることです。決め方は次の4ステップです。
- 会社の仕事を機能ごとに書き出す
- 箱ごとに「求める成果」を一文で書く
- 主な仕事を書き、人の名前を入れる
- 社長が手放す役割を決める
役割分担が曖昧になる原因は、社員の意識の低さではありません。仕事が見えていないこと、兼任が見えていないこと、成果が決まっていないこと、書き残されていないこと。原因は会社の構造にあります。だから、構造を整えれば役割分担は決まります。
役割分担が書面で残っている会社では、仕事が特定の人の頭の中から外に出ていきます。社長が現場にいなくても、仕事の持ち主が決まっているので会社は回ります。社員の方には、誰か一人に頼らずにこの会社が続いていくための取り組みだと説明できます。組織を整える全体像は、組織づくりとは?組織の作り方7ステップと3つの基本要素でも紹介しています。
まず一つ、書き出してみましょう。いま社長が担当している仕事を、思いつくだけ紙に書いてみてください。そのうち一つを選んで、「この役割は何を実現するためにあるのか」を一文にしてみます。会社の仕事を書き出して、役割と成果を決めていく進め方は、無料のガイドブックにまとめています。


