KPTのフレームワーク

KPT法とは?振り返りの進め方を完全解説。



清水直樹
「振り返りをやってみたものの、なんとなく感想を言い合って終わってしまう」「改善ミーティングが続かない」——そんな悩みを解決するのがKPT(ケプト)です。

KPTは、Keep(続けること)・Problem(問題点)・Try(試すこと)の3つの視点で振り返りを行う、シンプルで実践的な改善フレームワークです。ソフトウェア開発の現場で広まり、いまでは営業チーム、製造現場、看護チーム、さらには個人の目標管理まで、幅広い場面で使われています。

この記事では、KPTの基本から具体的な進め方、つまずきやすいポイントとその解決策、そしてKPTを「会社の改善の仕組み」として定着させる方法まで、現場で本当に使える形で解説します。

KPTとは?振り返りを改善につなげるフレームワーク

KPT(ケプト)とは、仕事の改善やこれまでの活動の振り返りに適したフレームワークです。改善したい対象に対して、Keep(続けること)→ Problem(不満点・問題点)→ Try(試すこと)の順に考えを進めることで、改善のループを回し続けることができます。

KPTは、日本ではアジャイル開発のコミュニティ「オブラブ」の天野勝氏らによって体系化・普及した手法として知られています。天野氏は著書『これだけ!KPT』のなかで、あえて「振り返り」ではなく「ふりかえり」とひらがなで表記し、この手法を「けぷと」と呼んでいます。その背景には、KPTを単なる反省会ではなく、「過去の学びを、より良い未来をつくることに活かす行為」として捉える考え方があります。過去を責めるためではなく、これからを良くするために行う——これがKPTの根底にある思想です。

KPTが活躍する3つのシーン

個人の振り返りに使う——自分ひとりで仕事を振り返るときに活用します。毎週・毎月など定期的にKPTを行うことで、自分にとって効果の高い仕事のやり方を見つけられます。個人で行う場合は、Keep・Problem・Tryの順番にこだわらず、思いつくままに発散させながら書き出していくのがおすすめです。

上司と部下の1on1に使う——上司部下のミーティング(1on1)でKPTを使うと、その場の雰囲気や気分に流されず、続けるべきこと・改善すべきことを構造的に話し合えます。

チームで使う——プロジェクトチームでKPTを繰り返すことで、目標の統一やチームワークの強化につながります。本記事では、もっとも効果が出やすい「チームでのKPT」を中心に進め方を解説していきます。

KPTのフォーマット

模造紙やホワイトボードを3つの欄に仕切り、左上にKeep、左下にProblem、右側に大きくTryと書きます。そして、ボードの上部に必ずTheme(テーマ)を書いてから始めましょう。

kptフォーマット

テーマを最初に掲げておくと「何のために振り返るのか」が明確になり、参加者の意識(思考のベクトル)が揃いやすくなります。結果として、話が脱線しにくくなり、生産的な振り返りができるようになります。これは見落とされがちですが、KPTの効果を左右する重要なポイントです。

KPTの進め方|9つのステップ

ここからは、チームでKPTを行う具体的な手順を9つのステップで見ていきます。

1. 進行役(ファシリテーター)を決める

KPTを進めるにあたり、ファシリテーターを指定しておきましょう。役割は主に、会の準備をすること、時間を守ること、グラウンドルールを周知すること、そして最後に行動の合意をとることです。ファシリテーターはあくまで進行役(裏方)であり、自分の意見を前面に出しすぎないよう意識します。

2. KPTのテーマを決める

「何のために振り返るのか」を明確にします。テーマは集まる前に決めておくのが理想です。たとえば「商品Aの成約率を高めるには」「残業時間を減らすには」のように、本来の仕事に直結した具体的なテーマにすると、議論も具体的になります。目的が定まっていると、話が脱線するのを防げます。

3. 用紙と付箋を準備する

TrelloなどのITツールを使う方法もありますが、議論を深め、その場の力を使ってアイデアを引き出すには、大きめのKPTボードと付箋を使ってアナログで行うのがおすすめです。付箋を使うことで、人前で発言が苦手な人も意見を出しやすくなり、他人の意見に引きずられる前に自分の考えを書き出せるという利点があります。

4. 個人でKPTを書き出す

まずは各自が付箋に書き出していきます。このとき「一人○個」とノルマを多めに設定するのがコツです。数を指定しないと、ある人は1個、別の人は15個といった偏りが生まれ、その後の議論に影響します。多めのノルマを課すことで、本人が「些細だ」と思うようなことまで挙がるようになり、そこに実は仕事のコツや暗黙知が隠れていることが少なくありません。

Keep:今やっていて、これからも続けたいこと
Keepには、「今やっていて、これからも続けたいこと」を「〜する」という動詞形式で具体的に書きます。たとえば「見積もり」だけでは何をしたいのか曖昧です。「相手の目を見て挨拶する」「顧客訪問の前には必ず先方の会社概要や社長のプロフィールを確認する」のように、行動として認識できる形にしましょう。チームとして続けたいことだけでなく、個人的に続けたいことでも構いません。こうした個人のノウハウ(暗黙知)を表に出せるのも、KPTの大きなメリットです。なお、続けられる「行動」だけでなく、「うまくいった出来事(Good)」を挙げるのも有効です。良い結果を生んだ要因を考えるきっかけになり、場も明るくなります。

Problem:問題と認識していること
Problemには、いま発生している問題だけでなく、将来発生しそうな不安(リスク)も書きます。「問題」という言葉が重く感じられて意見が出ないときは、「不満に感じていること」「もう少し工夫できそうなこと」と言い換える(リフレーミングする)と、ぐっと挙げやすくなります。
ここで重要なのが、解決策まで書かないことです。たとえば「仕様の確認が不十分」と書くと、その中に「もっと確認する」という解決策が暗に含まれてしまいます。Problemには、その結果として起きた事実——「作った機能が顧客の要望と違っていた」——を書くようにします。解決策はTryで考えるからです。

Try:試したいこと
Tryには「試したいこと」を、行動に移せるよう具体的な動詞形式で書きます。内容は大きく2つ、Keepをさらに強化するアイデアと、Problemを解決するアイデアです。新しく始めることだけでなく、これまでやってきたことを「やめる」のも立派なTryです。
ポイントは、この段階ではあくまで「試したいこと」であって「やらなければいけないこと」ではない、という空気を保つこと。「書いたら必ずやらされる」と思うとアイデアが縮こまります。少し無責任なくらいの気持ちで、まずは数多く発散させましょう。「意識する」「心がける」「頑張る」といった抽象的なTryは行動につながりにくいので避け、第三者から見ても「確かにやっているな」と分かる具体的な行動にするのがコツです。

5. チームで共有する

個人で書き終えたら、ボードに付箋を貼ってチームで共有します。このとき、Keep・Problem・Tryをまとめて一気に貼るのではなく、まずKeepだけを共有し、いったん止めてからProblemへ進むのがおすすめです。考える範囲を狭く区切ることで、一つひとつを深く考えられ、集中力も高まります。付箋は1人1枚ずつ順番に貼り、似た意見は近くに貼ると、どれが多数派かが見えてチームの結束にもつながります。

6. KPT項目を整理する

各メンバーの意見を共有したら、優先順位の高いものをピックアップします。意見を出した本人に「なぜそう思ったのか(Why)」を聞くと、背景が分かって対応策が変わることもあります。ただし、すべての意見にWhyを聞くと時間がかかるので、必要なものに絞りましょう。

7. 行動(Try)を決める

多数挙がったTryの中から、実際に試すものを選びます。ドット投票(一人に数枚のシールを配り、試したいTryに貼ってもらう)が手軽でおすすめです。担当を決めるときは、自分が出したTryでなくても、やりたい人が自ら名乗り出る「サインアップ」方式にします。これは「手を挙げた人が一人で全部やる」という意味ではなく、「主担当としてやるが、みんなでサポートする」というのが基本ルールです。やる人と期限を明確にし、次回の開催日も決めて会を終えます。

8. 行動する

合意したTryを各自が実行します。改善策の作業も立派な仕事のひとつなので、通常のタスクと同じようにスケジュールやタスクボードに組み込みましょう。日々の朝会で進捗や効果を確認すると、より定着しやすくなります。


9. ステップ1に戻る(繰り返す)

このプロセスを繰り返します。KPTは仕事を改善し続けるためのループなので、「何回やったら終わり」というものではありません。短いサイクル(週次など)で回しつつ、ときどき2〜6か月の長いサイクルで俯瞰すると、小さな改善と大きな成長の両方を捉えられます。継続できる「仕組み」として組み込むことが何より大切です。

KPTがうまくいかないときのチェックポイント

「KPTをやってみたけれど効果を感じられず、やめてしまった」というチームは少なくありません。多くの場合、原因は手法そのものではなく運用にあります。つまずきやすいポイントを確認していきましょう。

グラウンドルールを決めていない

振り返りに限らず、会議には参加者全員が守る最低限のルールが必要です。たとえば「開始・終了時間を守る」「人の発言を遮らない」「原因の追究はしても、責任の追及はしない」など。ルールを紙に書いて全員が見える場所に貼っておくと、逸脱した行動があっても指摘しやすくなります。

無意識に「悪者探し」になっている

Problemを出すステップがあるため、議論はどうしてもネガティブな方向に流れがちです。さらに、その問題を個人のせいにしてしまうこともよくあります。しかしこれは禁物です。仕事は仕組みで動いており、問題は人ではなく仕組みが起こしているもの。「問題 対 私たち」という構図で、人と問題を切り分けて考えましょう。

テーマが抽象的すぎる

テーマが曖昧だと、書き出す項目も曖昧になります。「顧客満足度を上げるには」「商品Aの成約率を高めるには」のように具体的に設定しましょう。

思いつきで開催している

「そろそろKPTでもやろうか」と思いつきで開催すると、忙しさを理由に少しずつ先延ばしになり、いつのまにか誰も口にしなくなります。改善のリズムをつくるためにも、振り返りの時間をあらかじめスケジュールに組み込み、定期開催しましょう。

安心して発言できる場になっていない

「新人だから言えない」「前回否定されたから今回は黙っておこう」という空気では、KPTをやる意味がありません。どんな意見もいったん受け止める姿勢がチーム全体に求められます。心理的安全性が確保されてはじめて、暗黙知が表に出てきます。

分析中毒に陥っている

Problemを共有すると、自然と「なぜこうなったのか」という原因分析に議論が移りがちです。ここで時間をかけすぎると、肝心の改善策にたどり着く前に時間切れになってしまいます。原因分析が必要な重い問題に絞り、分析するまでもない問題は深追いしないことです。

「言ったもの負け」になっている

「Tryを出した人がそのまま担当する」というルールにすると、誰も仕事を増やしたくないのでアイデアが出てこなくなります。Tryを挙げることと、誰が担当するかは切り離して考えることをグラウンドルールにしましょう。

【発展】KPTを進化させた拡張フォーマット:KPTAとKPTT

KPTを続けていると、「実施を合意したTryが、結局実行されない」という壁にぶつかることがあります。その背景には、挙げたTryの粒度が大きすぎて、いざ実行しようとすると動けない、という問題があります。これを解決するために考案されたのが、KPTの拡張フォーマットです。

KPTA(けぷた):TryをActionまで具体化する

KPTAは、Keep・Problem・Tryに加えてAction(アクション)の欄を設けた手法です。Tryの欄では「無責任でいいのでアイデアを発散させる」ことに専念し、その中から選んだものを、Actionの欄で「誰が・いつまでに・何をするか」という実行可能なレベルまで具体化します。抽象的なアイデア出しと、具体的な行動への落とし込みを分けることで、「やりっぱなし」を防げます。

KPTT(けぷとつー):アイデアと実行を分ける

KPTTは、Tryを「アイデアのストック場所としてのTry」と「実際に実施するToDo」に分けたフォーマットです。ブレインストーミング的に脱常識なアイデアをTryに出し、その中から実施するものをToDoへ移すというプロセスが明確になり、「言ったもの負け」の回避にもつながります。このフォーマットに切り替えただけでアイデアが増えた、という実績もあります。

なぜKPTは効果があるのか?「解決志向」という背景

KPTがソフトウェア開発だけでなく、営業や製造、看護などさまざまな現場で機能するのには理由があります。その一つが、KPTが解決志向アプローチ(SFA:Solution Focused Approach)に基づいている点です。SFAはもともと心理カウンセリングの手法で、その名のとおり「原因追及」ではなく「解決」に目を向けるのが特徴です。

解決志向アプローチには、次の3つの中心原理があります。これがKPTの構造と見事に対応しています。

(1) うまくいっているなら、それを直そうとするな → これはKeepに対応します。
(2) 一度うまくいったなら、またそれをせよ → Tryで試してうまくいったことをKeepに移すことに対応します。
(3) うまくいかないなら、何か違うことをせよ → Problemに対してTryを考えることに対応します。

原因ばかりを追い詰めていくと、「ダメな自分」に意識が向き、心理的にネガティブな状態が強化されてしまいます。それよりも、まず良いところ(Keep)を確認してポジティブに始め、解決策(Try)を考えて希望のある未来を描いてポジティブに終わる——この「ポジティブで始まり、ポジティブで終わる」流れこそが、KPTが続けやすく、チームを前向きにする最大の理由なのです。

KPTとPDCA・YWTの違い

KPTとPDCAの関係

PDCAはPlan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)の頭文字をとった、おなじみの改善サイクルです。KPTは振り返りを中心としたフレームワークなので、PDCAの中では主に「C(評価)」に当たる活動と考えるとわかりやすいでしょう。Tryで改善案を出す点では「A(改善)」も少し含みます。つまりKPTは、PDCAをうまく回すための“振り返りエンジン”として位置づけられます。

KPTとYWTの関係

YWTは日本能率協会コンサルティングが開発した振り返り手法で、Y(やったこと)・W(わかったこと)・T(次にやること)の頭文字をとったものです。KPTと似ていますが、KPTが「問題(Problem)」にフォーカスしやすいのに対し、YWTは「わかったこと(学び)」に焦点を当てるため、分析中毒に陥りにくいという意見もあります。どちらが優れているということはなく、チームの状態や好みに合わせて選べばよいでしょう。なお、KPTでも問題を「不満・不安」に言い換えれば、ネガティブさはかなり和らぎます。

KPTに関するよくある質問(FAQ)

Q. 何人くらいで行うのが良いですか?

一人あたりの発言時間が確保でき、話しやすさを保てる10人程度までが目安です。それを超える場合は、ファシリテーターを立てたり、グループを分けたりするとよいでしょう。

Q. メンバー全員が集まれないときも開催すべき?

はい、開催すべきです。欠席者からは事前に意見をもらって当日に共有し、決まった内容をあとでフィードバックしましょう。


Q. 振り返るたびにProblem(やること)が増えてしまいます

Tryが効いて解決したProblemは外していきましょう。それでも増え続ける場合は、根本に共通の原因が潜んでいる可能性があります。一つのProblemに「なぜ」を繰り返して真因を探ると、ほかの問題も一気に解決することがあります。また、Keepややることが溜まりすぎたら、「これまでやってきたことをやめる」という引き算のTryも検討してください。

Q. テーマがなかなか決まりません

あえてテーマを決めずに始め、出てきたProblemの中から根が深そうなものを次回のテーマにする方法があります。それでも難しければ、「チーム内の信頼関係を築くために」をテーマにするのも一つの手です。

Q. KPTはいつまで続ければいいですか?

続けられる限り続けてください。プロジェクトなら解散まで、組織なら存続する限りが基本です。KPTという形式にこだわる必要はなく、慣れてきたらフリーディスカッション形式で語り合うだけでも十分に効果があります。

KPTは「会社の仕組み」を改善し続ける仕組み

ここまで、KPTの基本から進め方、つまずきやすいポイント、そして拡張フォーマットや解決志向という背景まで解説してきました。KPTの本質は、単発の反省会ではなく、チームが自分たちの手で改善を回し続ける「仕組み」をつくることにあります。問題を個人の責任にせず、「仕組みの問題」として捉え、全員で前向きに改善していく——この姿勢こそが、人に依存しない強い組織をつくる第一歩です。

私たち仕組み経営は、社長個人の馬力に頼った「人依存」の経営から、誰がやっても成果が出る「仕組み依存」の経営へのシフトをご支援しています。KPTのような振り返りの仕組みも、自社独自の再現性ある仕事のやり方——すなわち「仕組み化」——を築くための一歩です。

詳しくは以下から仕組み化ガイドブックをダウンロードしてご覧ください。


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