清水直樹
仕組み化のコンサルを入れたい、と思っている社長に向けて、コンサルを選ぶ基準をご紹介していきます。
はじめに:仕組み化のコンサルタントは本当に必要か?
「仕組み化を自社でやるべきか?」「コンサルを入れるべきか?」と考える方も多いでしょう。小規模な会社であれば、自分でマニュアルを作り、仕組みを整えていくことも可能です。しかし、会社が成長し、従業員が増え、業務が複雑になるにつれ、社内の知見やリソースだけで仕組みを作るのは限界があります。
私たちが考える仕組み化とは、単なる業務改善ではなく、「社長に依存せず会社が回る仕組みを作ること」です。これを実現するには、個別の業務効率化だけでなく、会社全体の最適化が必要です。しかし、多くの経営者は、自社の業務を客観的に分析し、全体最適の仕組みを構築するノウハウを持っていません。だからこそ、専門の知識を持つコンサルタントのサポートが有効になります。
では、仕組み化を任せるべきコンサルタントとは、どのような存在なのでしょうか?財務や営業、人事など、個別分野に特化したコンサルタントでは、部分最適に留まり、会社全体の仕組み化にはつながりにくいのが現実です。本記事では、会社の仕組み化を本当に成功させるために、どのようなコンサルタントを選ぶべきかを解説していきます。
1. コンサルタント自身が仕組み化に成功しているか?
仕組み化を支援するコンサルタントを選ぶ際に、まず確認すべきなのは「そのコンサルタント自身が仕組み化を実現できているかどうか」です。もし、コンサルタント本人がすべての仕事を自分でこなし、個別対応に追われているようであれば、その人は仕組み化の本質を理解していない可能性が高いでしょう。
本当に仕組み化ができているコンサルタントなら、単なる個人のノウハウに依存するのではなく、仕組みを活用して継続的に成果を出しています。たとえば、チームを組んで業務を分担していたり、独自のメソッドをシステム化して提供していたりするはずです。逆に、「自分でなければ対応できない」と言い切るコンサルタントは、そもそも仕組み化とは真逆の考え方で動いているということになります。
自分の仕組み化メソッドを再現可能にしているか?
仕組み化の目的は、会社や組織が「特定の個人に依存せずに」機能する状態を作ることです。そのためには、支援するコンサルタント自身も、自分がいなくても回る仕組みを持っている必要があります。たとえば、コンサルティング業務を標準化して他のメンバーが再現できるようにしていたり、オンラインプログラムやテンプレート化されたプロセスを活用していたりするかどうかをチェックするとよいでしょう。
「仕組み化できていない人が、他人の仕組み化を成功させることはできない」。これはシンプルですが、非常に重要なポイントです。表面的なアドバイスだけでなく、実際に仕組みが機能する状態を作れるコンサルタントを選ぶことが、成功への第一歩となるでしょう。
2. 全体最適の視点を持っているか?
仕組み化を進める際に陥りがちなのが、財務、営業、採用、業務改善など、特定の分野だけを最適化しようとする「部分最適」の考え方です。たとえば、営業の仕組みを強化した結果、受注が増えたものの、納品体制が追いつかず、かえって顧客満足度が下がるといったケースがあります。あるいは、財務を最適化してコスト削減を進めた結果、現場のモチベーションが低下し、業務の質が落ちてしまうことも考えられます。
会社というのは、各部門が相互に影響を与え合いながら機能している生態系のようなものです。一部を強化することで全体がスムーズに回る場合もあれば、逆にバランスを崩してしまうこともあります。そのため、仕組み化を支援するコンサルタントには、「会社全体のバランスを考えた提案ができるかどうか」が求められます。
特定部門だけではなく、会社全体を仕組み化できるか
社長のように全社視点で仕組み化できるか?
本当に優れたコンサルタントは、自分の専門分野にこだわらず、仕組みを導入することで他の部署や業務にどのような影響が出るかを考慮しながら提案を行います。たとえば、採用の仕組みを整える際に、人材育成や評価制度とも連動させる、あるいは業務改善を進める際に、単なる効率化ではなく、社員の働きがいや企業文化との整合性まで考えるといった視点を持っているかが重要です。
また、最終的にその仕組みが「会社のビジョン実現にどう寄与するのか?」を意識できるかどうかもチェックすべきポイントです。ただ単に業務を効率化するのではなく、仕組みを通じて企業の目指す姿に近づけるかどうか。その視点を持っていないコンサルタントでは、本質的な仕組み化を支援することはできません。
仕組みは単なるツールではなく、会社全体を成長させるための手段です。部分最適にとどまらず、会社全体の成長を見据えた提案ができるコンサルタントを選ぶことが、長期的な成功につながるでしょう。
3. 既存の仕組みを押し付けず、自社に最適化できるか?
仕組み化の支援を受ける際に注意すべきポイントの一つが、「この方法さえ導入すれば必ずうまくいく」といった画一的な仕組みを押し付けてくるコンサルタントです。世の中には多くの成功事例がありますが、それをそのまま自社に適用してもうまくいくとは限りません。むしろ、無理に外部の仕組みを入れることで、社内の混乱や反発を招くことすらあります。
会社は一つの生命体
会社は単なる機械ではなく、経営者や社員の価値観、働き方、企業文化によって成り立つ“人と仕組み”の生命体です。そのため、新しい仕組みを導入する際には、自社の文化や既存の業務フローとの相性を慎重に考慮し、必要に応じて調整・最適化することが求められます。
例えば、大手企業で成功した業務フローやマネジメントの手法を、そのまま中小企業に導入しようとしても、社員の規模や組織の意思決定スピード、社長と社員の関係性の違いによって、機能しないことが多々あります。また、シリコンバレーの先進的な組織運営を学んでも、日本の企業文化と合わなければ、社内の混乱を招くだけになってしまいます。
本当に優れたコンサルタントは、単なる仕組みの導入ではなく、「その会社にとって、どのような仕組みなら無理なく定着し、成果につながるか?」を考えます。そのために、まずは会社の文化や経営者の考え方、社員の習慣などを理解し、そのうえで最適な形にカスタマイズする柔軟な対応が求められます。
継続的なサポートが出来るか
また、仕組みを導入した後のフォローも重要です。新しい仕組みが現場に定着するまでには、必ず何らかの調整が必要になります。そこで、導入後の課題を一緒に検証し、柔軟に改善を加えていく姿勢があるかどうかも、コンサルタントを選ぶ際の重要な判断基準になります。
仕組み化の目的は、単に「外部の成功事例を真似ること」ではなく、「自社に合った形で機能する仕組みを作ること」です。コンサルタントが既存の仕組みを押し付けるのではなく、自社に最適な形へと調整・進化させる視点を持っているかを、しっかりと見極める必要があります。
4. 仕組み構築のメソッドに再現性があるか?
仕組み化のコンサルタントを選ぶ際に重要なのは、「そのやり方に再現性があるかどうか」です。たとえば、「A社では成功したが、B社ではまったく機能しなかった」というような属人的な手法を用いるコンサルタントは要注意です。成功事例を自慢げに語るコンサルタントは多いですが、実際に「その手法がどの会社でも機能するのか?」という点を深掘りして確認する必要があります。
仕組み構築のプロセスが体系化されており、誰でも理解し、実践できるものでなければなりません。もし、「社長のカリスマ性」や「特定の社員のスキル」に依存する形でしか成り立たないのであれば、それは単なる“属人的な改善”に過ぎず、本質的な仕組み化とは言えません。
本当に再現性のあるメソッドを持っているコンサルタントは、「どのような手順を踏んで仕組みを構築したのか」「どの企業にも応用できる普遍的な原則は何か」といったことを明確に説明できます。
全ての会社で機能する仕組みはない
また、企業ごとに事情が異なるため、「すべての会社で同じ仕組みが機能する」ということはあり得ません。もしそうであれば、すでに世の中の企業はすべて成功しているはずです。実際には、業種・企業文化・経営者の価値観・市場環境などが異なるため、一定の原則を持ちつつも、それを柔軟にカスタマイズできる仕組み構築のメソッドが必要です。そのため、コンサルタントが提供する手法が「どんな業界・企業でも応用できる原則」と「個別最適化が可能な柔軟性」の両方を持ち合わせているかを確認することが重要です。
仕組み化の再現性のチェック
具体的な判断基準として、以下の点をチェックするとよいでしょう。
・仕組み化のプロセスが、誰でも理解できる形で言語化・体系化されているか?
・異なる業界・規模の企業でも、同じメソッドを使って成功した事例があるか?
・そのメソッドが「特定の人」ではなく、「組織として機能する」ものになっているか?
・単なる「成功事例の紹介」ではなく、「なぜ成功したのか」を論理的に説明できるか?
仕組み化とは、偶然の成功ではなく、再現性のある成功モデルを作ることです。そのためには、仕組み構築のメソッドが属人的なものではなく、誰でも実践できる形に整理されているコンサルタントを選ぶことが不可欠です。
5. 仕組み化の本来の目的を理解しているか?
仕組み化の目的を単なる「業務改善」や「効率化」と考えているコンサルタントは、視野が狭いと言わざるを得ません。もちろん、業務のムダを省き、生産性を向上させることは仕組み化の一部ではありますが、それは本質ではありません。本当の仕組み化とは、社長が描くビジョンを実現するための手段であり、会社の成長を支える基盤を築くことです。その本質を理解していないコンサルタントを選んでしまうと、会社にとって重要な「未来のあり方」を考えずに、単なる「業務の標準化」や「コスト削減」の話で終わってしまいます。
たとえば、ある会社が「業界を変革するような革新的なサービスを提供したい」というビジョンを掲げているとします。その場合、求められる仕組みは、単なる業務の効率化ではなく、創造性を発揮できる組織づくりや、新しいアイデアが生まれる環境の構築です。しかし、仕組み化の目的を「単なる効率化」と考えるコンサルタントは、現場の自由度を奪うような細かいルールやマニュアルを作ることに固執し、結果として会社の成長を阻害してしまいます。
仕組み化は会社のビジョンを実現する手段
仕組み化の本質を理解しているコンサルタントは、最初に社長のビジョンを明確にし、それを実現するために必要な仕組みを構築します。
たとえば、
- 「この会社はどのような価値を世の中に提供するのか?」
- 「5年後、10年後にどんな企業になっていたいのか?」
- 「社長が交代しても、そのビジョンを追求し続けるためには、どんな仕組みが必要か?」
といった問いに向き合い、それに基づいた仕組みづくりを提案できるかが重要なポイントになります。
マニュアル化や標準化を目的化しない
また、マニュアル化や標準化そのものが目的化してしまうのも問題です。たとえば、「すべての業務をマニュアル化すればいい」「手順を標準化すればミスがなくなる」といった考え方に陥るコンサルタントは、現場の創意工夫や柔軟性を奪いかねません。重要なのは、「なぜこの仕組みが必要なのか?」「この仕組みを導入することで、会社のビジョン実現にどう貢献するのか?」という視点を持っているかどうかです。
仕組み化は、社長のビジョンを形にし、それを継続的に実現するための手段です。その本質を理解していないコンサルタントに依頼すると、単なる「作業の効率化」だけが進み、肝心の「会社の未来」が置き去りになってしまいます。だからこそ、仕組み化の目的を深く理解し、「どんな会社を創りたいのか?」に寄り添いながら仕組みを構築できるコンサルタントを選ぶことが不可欠です。
おわりに:コンサルタントを選ぶ基準を明確に持とう
以上、繰り返し述べてきましたが、仕組み化のコンサルタントは、単なる業務の効率化を助ける存在ではなく、会社の未来を形作るパートナーです。一時的な問題解決や部分最適の視点ではなく、社長のビジョンを実現するために会社全体の成長を支援できるかどうかが、本当に価値のあるコンサルタントを見極めるポイントになります。
仕組み化のプロセスは、一つの決まった方法があるわけではなく、会社の規模や業種、企業文化に応じた柔軟な対応が求められます。そのため、「この手法を導入すれば必ずうまくいく」といった画一的なアプローチを押し付けるコンサルタントではなく、貴社の状況をしっかりと理解し、最適な仕組みを構築できるコンサルタントを選ぶことが大切です。
本記事で紹介した以下の条件を参考に、自社にとって本当にふさわしいコンサルタントを見極めましょう。
- 自ら仕組み化を実践し、成功しているか?
- 会社全体の最適化を考えた提案ができるか?
- 既存の仕組みを押し付けず、自社に合わせたカスタマイズができるか?
- 仕組み構築のメソッドに再現性があるか?
- 仕組み化の本来の目的を理解し、ビジョン実現の支援ができるか?
なお、私たち仕組み経営では、コンサルティングとコーチングを組み合わせた方法で、御社独自の仕組み化をご支援しています。
詳しくは以下の仕組み化ガイドブックをダウンロードしてご覧ください。